【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~   作:不知火新夜

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70話_伝説の始まり

先攻 Yuya LP 4000 VS 後攻 Jack LP 4000

 

『おぉっとぉ!挑戦者である遊矢選手、第1コーナーを制した!よってこのデュエルは遊矢選手の先攻となります!』

「私の先攻。

まず『聖刻龍―アセトドラゴン』を妥協召喚。妥協召喚したアセトドラゴンの元々の攻撃力は1000となる」

 

聖刻龍―アセトドラゴン

効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 5

攻撃力 1000

 

俺が先手を取った事を知らしめるMCの声と共に召喚したのは、エジプトの九柱神『エネアド』の一柱である女神『アセト』をモチーフとした聖刻龍、アセトドラゴン。

聖刻モンスターはその身に、初代からの遊戯王ファンならお馴染みのウジャト眼の様なマークが刻まれたドラゴン族モンスター達で、その共通効果が持つ高い展開力とエクシーズモンスターによる制圧力で、一時はOCG環境のトップに君臨していた時期もあった。

その後禁止制限の改訂だったり、より高い展開力を誇るテーマが登場したりでトップから退きはしたが、『とある』モンスターの登場により、それとの相性の良さから再び使われたとか何とか。

 

「次にアセトドラゴンをリリースして『聖刻龍―シユウドラゴン』を攻撃表示で特殊召喚。このカードは自分フィールドの『聖刻』モンスター1体をリリースする事で手札から特殊召喚出来る」

 

聖刻龍―シユウドラゴン

効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 6

攻撃力 2200

 

アセトドラゴンと入れ替わらせる形で特殊召喚したのは、エネアドの一柱である大気の神『シュウ』をモチーフとした青き聖刻龍、シユウドラゴン。

 

「リリースされたアセトドラゴンの効果発動。このカードはリリースされた時、手札・デッキ・墓地からドラゴン族通常モンスターを、攻守を0にして特殊召喚出来る。

この効果でデッキから『ラブラドライドラゴン』を守備表示で特殊召喚」

 

ラブラドライドラゴン

通常モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 6

守備力 2400→0

 

『此処で遊矢選手、チューナーモンスターをリクルートして来ました!今の遊矢選手のフィールドにはチューナーであるラブラドライドラゴンと、チューナーでは無いシユウドラゴンの2体!これは来ますでしょうか!?』

 

そう、聖刻龍上級モンスターは自分自身がリリースされた時、除外さえされていなければ何処からでもドラゴン族通常モンスターを1体特殊召喚するという効果を持っている。

無論、手札からだけではなく蘇生、リクルートまで出来るとなれば便利すぎる為か、攻守を0にするというデメリットこそあるが、各種特殊召喚の素材にする等してフィールドから直ぐに離してしまえば、それはあって無い様な物と化している。

この効果によってリクルートされたのは、ラブラドレッセンスと称される美しい輝きを放つ鱗を持ったドラゴン、ラブラドライドラゴン。

 

「続いてシユウドラゴンをリリースして『聖刻龍―ネフテドラゴン』を攻撃表示で特殊召喚。このカードはシユウドラゴンと同じ条件で特殊召喚出来る」

 

聖刻龍―ネフテドラゴン

効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 5

攻撃力 2000

 

『おっと遊矢選手、シユウドラゴンをリリースしてレベルが1低いドラゴンを呼び出しました。レベルの調整でしょうか?ですがそれなら、直接出した方が良い筈ですが…』

 

MCの疑問の声を他所に、シユウドラゴンと入れ替わらせる形で特殊召喚されたのは、最初に召喚したアセトドラゴンと対になった姿の、エネアドの一柱である女神『ネフティス』をモチーフとした聖刻龍、ネフテドラゴン。

 

「リリースされたシユウドラゴンの効果発動。このカードはリリースされた時、アセトドラゴンと全く同じ効果処理を行う。

この効果でデッキから『エレキテルドラゴン』を守備表示で特殊召喚」

『成る程、リクルート効果を発揮する為のリリースの様ですね!これは失礼しました!』

 

エレキテルドラゴン

通常モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 6

守備力 1000→0

 

先程のラブラドライドラゴンの時の様にリクルートされたのは、古代より生きる電気を帯びたドラゴン、エレキテルドラゴン。

 

「更にネフテドラゴンをリリースして2枚目のシユウドラゴンを攻撃表示で特殊召喚。

リリースされたネフテドラゴンの効果発動。このカードもリリースされた時、アセトドラゴン達と全く同じ効果処理を行う。

この効果でデッキから2枚目のラブラドライドラゴンを守備表示で特殊召喚」

『遊矢選手、一連の展開によってフィールドに4体ものレベル6ドラゴン族モンスターを揃えました!その内2体はチューナーであるラブラドライドラゴン、残りの2体はチューナーではありません!さあ、どんなモンスターを出してくるのか!』

 

MCの言う通り、今現在俺のフィールドには、シユウドラゴン、エレキテルドラゴン、2体のラブラドライドラゴンが存在する。

このままレベル12モンスターをシンクロ召喚、と行きたい所だが、生憎普通のシンクロ召喚で出せるレベル12モンスターは、俺のこのエクストラデッキには存在しない。

ならばどうするか。

 

「私はレベル6のシユウドラゴンに、レベル6のラブラドライドラゴンを、

 

 

 

マイナスチューニング!」

『ま、マイナスチューニング?』

 

MCの困惑した様な声を他所に、シユウドラゴンは白き光に包まれ、一方のラブラドライドラゴンは黒き闇に包まれ、互いに近づいて行く。

そしてその2体が重なり合った瞬間、白と黒が入り混じった奔流が解き放たれる。

これにより、さっき言っていた『とある』モンスターが降臨する…!

 

「混沌の次元より沸き出でし力の源、原点にして全ての頂点!この現世でその無限の渇望を暫し潤すが良い!神臨せよ、赤き竜よ!『アルティマヤ・ツィオルキン』!」

 

アルティマヤ・ツィオルキン

シンクロ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 0(ルール上は12)

攻撃力 0

 

『あ、赤き竜…!?』

 

MCが呟いたのを起点に周囲が上空を向けると其処には、俺が呼び出した『赤き竜』の姿があった。

赤き竜、それは『遊戯王5D’sの世界』において大昔、邪悪な戦乱を治めるべく君臨、遊星だった頃の俺達シグナーに『龍の痣』と、力を分け与えた存在である。

その『伝説』の存在は、

 

『何という事でしょう…!

遊矢選手、あの伝説の赤き竜を、嘗てこの世界を救った『救世の神』を、君臨させました…!』

 

このシンクロ次元でも知られている、下手したらその異名は『遊戯王5D’sの世界』以上に轟いているかも知れないな。

 

「この場に集まりし観客達よ!今この場に君臨した赤き竜が、決してまやかしでは無いと言う事、あの姿から感じる圧倒的な力から分かるであろう!その赤き竜と共に戦ったデュエリストは、この世界の有史において1人しかおらん!そう、

 

『神の相棒』『創世主』『決闘竜の使い手』様々な異名で今尚語り継がれる伝説のデュエリスト、不動遊星ただ1人!今俺が対峙しているデュエリスト、榊遊矢は、

 

その不動遊星が生まれ変わりし存在である!」

『な、』

「何だってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

「何…だと…あの…不動…遊星が…!」

 

赤き竜の登場を待ち構えていたかの様に行われた、ジャックの宣言によって会場は驚きに包まれた。

 

「そうだ!私は嘗て不動遊星として赤き竜と共に、この世界を滅亡に導かんとする存在『Z-ONE』と戦い、打ち破って見せた!だが今、この世界に再び滅亡の危機が迫っている!それを防ぐために私は此処とは別の世界で生まれ変わり、其処で仲間を募り『ランサーズ』を結成し、再びこの世界へと舞い戻って来た!」

 

そしてそれに便乗する様に、俺もまた宣言した。

 

不動遊星。

『遊戯王5D’sの世界』ではシグナーの1人として様々な敵と戦い、滅亡の危機から世界を救った伝説のチーム『5D’s』の一員として、アニメ本編にあたる期間での出来事が終わった後に語られ、その後は研究者として永久機関『モーメント』の制御装置『フォーチュン』を開発した『世界最高のエンジニア』とも呼ばれる様になった。

其処でも英雄として後世に語られる名前ではあるのだが、殊にこのシンクロ次元においては、その名前の重みは全く違う。

今から数百年位前、このシンクロ次元にも滅亡の危機が迫っていた。

『今の世界を全て破壊、再構築する事で理想の世界を実現する』との名目で天より舞い降りた存在『Z-ONE』が、『時械神』モンスターの力を駆使して全世界に侵略を開始したからだ。

それに対し当時のシンクロ次元の人々も対抗はしたが、Z-ONEが従える時械神達の余りにも強大な力の前に成すすべなく蹂躙されていった。

もう駄目かと人々が絶望しかけていたその時、不動遊星は現れた。

時械神すらも凌駕する程の力を誇る赤き竜を相棒とし、それに仕えし竜『決闘竜』を従えた遊星はZ-ONEや時械神モンスター達と互角の戦いを繰り広げ、激戦の末にZ-ONEを打ち破った。

シンクロ次元は滅亡の危機を脱したのだが、長きにわたるZ-ONEの侵略によって世界は破壊しつくされ、生き残った人々も決して多くなかった。

そこで遊星はその生き残った人達のリーダーとして、ある時は世界の復興に心血を注ぎ、ある時は生き残った人々を束ねる為の政治構造を構想する等奔走し、皆の協力もあって今のシティの、シンクロ次元の中心たるこの街のひな型を作り上げた。

人々はそんな遊星の姿に崇拝とも言える敬意を抱き、彼がデュエルの際に愛用していたという理由で『シンクロン』モンスターの半分くらいは禁止か制限カード、また赤き竜を神臨させる際の素材カードとして使われた『太陽風帆船』も禁止カードとなり、その流通数も極僅かだとか。

…以上がシンクロ次元における不動遊星と言うデュエリストの逸話だと、俺は以前、ユーゴから聞いていた。

 

「だが今はデュエルを続けよう!私がいない数百年もの間に、この世界のデュエリストがどれ程の力を得たか、見定めねばならない!

私はカードをセット!

この瞬間、赤き竜の力が解放される!

私がカードをセットした事で、赤き竜の力により、エクストラデッキからレベル7か8のドラゴン族、或いは『パワー・ツール』シンクロモンスターを現出させる!

星海を切り裂く一筋の閃光よ、魂を震わし、世界に、仲間に、友の心に響け!『閃珖竜スターダスト』!」

 

閃珖竜スターダスト

シンクロ・効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 2500

 

ともあれ今はデュエルだ、と、余りの急展開に固まっていたMCや観客に告げ、俺自身も切り替えてプレイを続行した。

その俺が赤き竜の力によって現出させたのは、遊星だった頃の俺の相棒であったシンクロモンスター『スターダスト・ドラゴン』そっくりな姿の決闘竜、スターダスト。

 

「此処で私は、今セットした魔法『タンホイザーゲート』発動!」

 

タンホイザーゲート

通常魔法

自分フィールド上の攻撃力1000以下で同じ種族のモンスター2体を選択して発動出来る。選択した2体のモンスターは、その2体のレベルを合計したレベルになる。

 

「タンホイザーゲートの効果で、共に攻撃力が0となっているエレキテルドラゴンとラブラドライドラゴンのレベルを12に変える」

 

エレキテルドラゴン レベル 6→12

ラブラドライドラゴン レベル 6→12

 

「そして私は、レベル12となったエレキテルドラゴンに、同じくレベル12となったラブラドライドラゴンをマイナスチューニング!」

 

その後も展開を続けた俺、セットした魔法を発動してレベルを変えた2体で、新たなる神を呼び出す。

先程赤き竜を呼び出したのと同じく、エレキテルドラゴンは白き光、ラブラドライドラゴンは黒き闇に包まれ、互いに近づいて行き、

 

「決闘の地平に君臨する最初にして最後の神、混沌を束ね姿なき身を現世に映さん!舞い降りよ、赤き竜の現身よ!『究極幻神アルティミトル・ビシバールキン』!」

 

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン

シンクロ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 0(ルール上は12)

攻撃力 0→3000

 

『流石は『創世主』不動遊星の生まれ変わりである遊矢選手、と言うべきでしょうか、私達の目の前で今、信じがたい事が起こっております…!

赤き竜に、決闘竜の一角であるスターダストは勿論の事、赤き竜の現身すらも今、このフィールドに君臨いたしました…!』

 

重なり合った瞬間に先程とは比べ物にならない位の勢いを誇る、白と黒の奔流が解き放たれ、それが晴れた後には、巨人の様な上半身と、大蛇の様な下半身を持った赤き竜の現身が姿を現した。

その、赤き竜と並び立った姿は、MCすらも余りの驚きで震え声になる等の存在感があった。

 

「赤き竜の現身、その攻撃力は、フィールドのモンスターの数×1000ポイントとなる。私はこれでターンエンド」

 

Yuya

LP 4000

手札 0

モンスター アルティマヤ・ツィオルキン(攻撃表示)

      閃珖竜スターダスト(攻撃表示)

      究極幻神アルティミトル・ビシバールキン(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

…はっきりと言って置こう、正直、これはジャックとのデュエルを利用した政治的な宣伝、いわばプロパガンダだ。

不動遊星としてZ-ONEと戦い勝利し、世界を滅亡の危機に救った、というシンクロ次元とは関係ないにしても決して間違っていない前世を持ち出し、ひょんな事から手にした赤き竜とその現身、そして『決闘竜』の数々を用いた『今まで封印していた』デッキを使う事で、俺がこの世界の英雄『不動遊星』の生まれ変わりとして振る舞い、その俺が今シンクロ次元に再び来た、つまりシンクロ次元にとって滅亡の危機が再び迫っているという事をシンクロ次元の人々に伝えて不安を煽りながらも、ランサーズの存在を明らかにして人々の希望となり、シティのトップである行政評議会との接触をスムーズに、優位に進める、というのが目的だ。

正直デュエリストとして、今やっている事は最低だと思う。

デュエルを政治の道具として利用する事、それははっきり言ってしまえば、戦争の道具として利用しているアカデミアと余り変わらないからだ。

デュエルは、デュエルモンスターズは自分と対戦相手が勝利を目指して全力でぶつかり合い、その中で自分や相手は勿論、周りの人々も白熱させ、笑顔にさせ、心の底から楽しい想いにさせる、そんな神聖な物だという俺の信条に真っ向から反する行為。

それを体現したエンタメデュエルを掲げる俺が今行っている事を、もし父さんが見ていたとしたら、失望して親子の縁を切ろうと言うかも知れない、或いはその歪んだ精神を叩きなおすと指導に乗り出すかも知れない。

だけど俺はこの事を後悔していない。

ランサーズのトップ、最高指揮官『榊遊矢』として、アカデミアの侵略の魔の手から俺達の次元、シンクロ次元を守る為にはどうすれば良いか、考えた末に出した最善の手がこれだからだ。

 

嘗て遊星だった頃は、生まれて直ぐに起きた大災害『ゼロ・リバース』を食い止める事が出来なかった。

遊馬だった頃は、シャークや璃緒達、バリアン世界の面々を、ドン・サウザントによって運命を弄ばれた存在達を救う事が出来なかった。

遊矢となった今でも、デニスを救う事が出来なかったし、素良も、恐らくは…!

俺はもう、誰かを救えなかった事を後悔したくない、だから俺は、今の俺に出来る事を精一杯する!

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