【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~   作:不知火新夜

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72話_伝説と現実と

「遊星様、こちらで行政評議会の方々がお待ちです」

「はい。お迎えの方、ありがとうございます」

 

ジャックとのデュエルの後、行政評議会の使いの者を名乗る男性の送迎によって、シティの中心部にある行政評議会の議事堂へと連れて来られた俺、あのデュエルを用いたプロパガンダは成功したな。

とはいえ本番は此処から、此処では『シンクロ次元の英雄』不動遊星としての振る舞いや、俺自身の交渉力が求められる。

成否によって今後のランサーズの影響力が大きく変化する大事な状況、失敗すれば今後が厳しくなる。

 

「ホワイト議長。不動遊星様をお迎えいたしました」

「御苦労。後は私達が遊星様のお相手を」

「はっ。それでは遊星様、私はこの辺りで」

 

よし、行くか。

 

「ようこそ遊星様、遠路はるばるお越しくださいまして、ありがとうございます。私、このシティを束ねる行政評議会の議長を務める、ホワイト・タキと申します」

「不動遊星です。と言っても、今は榊遊矢という名ですが」

「存じております。先程のジャック・アトラスとのデュエル、拝見しました」

 

俺を招き入れるかの如くひとりでに開かれた議事堂の扉の前で俺を迎えてくれたのは、白い服に身を包んだ好々爺と言わんばかりの風貌の男性、ホワイト。

 

「行政評議会議員、ゲールと申します。先程のジャック・アトラスとのデュエル、実に素晴らしい物でした。流石は創世主様、往年の実力は健在である、と」

「同じく評議会議員、アスールと申しますわ。まさかこの目で赤き竜とその現身、その御姿を拝見する日が来るとは思いもしませんでした」

「評議会議員、グレイと申します。赤き竜とその現身が持つ圧倒的な力、正に伝説の通りでした。いやぁ、凄まじい物です」

「評議会議員、ボルドーと申します。さて遊星様、我々の自己紹介はこれ位として、先程のデュエルでおっしゃった事の真意をお尋ねしたいと申し上げます。ですな議長?」

 

ホワイト議長に続く様に自己紹介をした議員の面々も、議長と比べてやや年下、と言った感じかな。

ゲール議員は黄色の服に身を包んだ男性、アスール議員は青色の服に身を包んだ評議会では唯一の女性、グレイ議員は灰色の服に身を包んだ茶髪の男性、最後に自己紹介したボルドー議員は赤に近いオレンジの服に身を包んだ男性。

 

「おっと、そうでしたな。では遊星様、お越しいただいて早速で申し訳ありませんが、宜しいですかな?」

「はい。では順を追って説明します」

 

そのボルドー議員に同意を求められて同調したホワイト議長の問いに答える形で、俺はこれまでの経緯の説明を始めた。

4つの次元の存在、アカデミアによる各次元への侵略の事、それに対抗するべく結成されたランサーズの事等。

尤も今回は『不動遊星の生まれ変わり』としての振る舞いが求められる、それに辻褄を合わせる為に「アカデミアの侵略に対抗する為に、生まれ変わった次元において最大手のデュエル関連企業であるレオ・コーポレーションとの協力でランサーズを設立した」と、少し改変して説明したが。

そして、此処からがシンクロ次元に来た目的だ。

 

「今この次元へ潜入しているランサーズのメンバーは私を含め計36名、その誰もが私とて慢心していては、敗北は必至と言える程の、デュエルの実力を有しております。ですがまだまだアカデミアの蛮行を打ち破るには戦力が足りません。アカデミアは個々の実力こそ我らランサーズに劣る者ばかりですが、何百、何千ものデュエリストを抱えております、その頭数を活かした1対多による蹂躙や、デュエルせずに物理的に捻じ伏せる手段も講じて来るでしょう。それに対抗するとなれば今以上の人員増強が必要です。其処で是非とも我らと手を組み、アカデミアの侵略に共に立ち向かいましょう!」

 

説明を終え、議員達を見てみると、驚いたり、悩んだり、焦ったりといった様々な表情を浮かんでいたが、誰も俺の話を疑う様子を見せていなかった。

不動遊星というバックボーンを持っていると此処まで説得力が出る物なんだな。

 

「ふむ。俄かには信じがたい話ですが、遊星様が言うのであれば間違いは無いのでしょう。我らも、シティの住民達も、そのアカデミアの侵略に対して覚悟を決めねばなりませんな」

「シティが今あるのは遊星様のお力あってこそ、その遊星様の呼びかけとあらば住人達も、セキュリティもこぞってアカデミアとの戦いに志願してくれるでしょう」

「だがアカデミアとは何とも恐ろしい所だ、遊星様に此処まで言わせるとは…!

遊星様が此処まで危機感を持つアカデミアに、セキュリティは安全を守れるのか…!」

「遊星様のお眼鏡にかなった実力者揃いのランサーズを以てしても戦力不足、となると、我らの力添えは大して効力をもたらさないのでは…?

それこそシティが誇るデュエリストスター程の実力者で無ければ…!」

 

議員達の意見は、俺の呼びかけとあらばという賛成派と、アカデミアの強大さに尻込みしたり、ランサーズとの実力差を考慮したりの慎重派、半々といった感じかな。

と、其処へ、

 

「遊星様、恐れながら申し上げたい事がございます。近々、このシティにおいて『フレンドシップカップ』と呼ばれる大会が開かれる予定で、只今参加者を募っている所です。シティの融和を図った大会で、優秀な戦績を挙げた者には我らが誇るデュエリストスター、ジャック・アトラス、クロウ・ホーガン、そして鬼柳京介とのデュエルを行えます。その事から人気の大会となっており、毎回多数の参加者希望者が集います。其処で今回の大会を通じて、遊星様にその実力を図って頂き、お眼鏡にかかるデュエリストをアカデミアとの戦いに招聘する、というのはどうでしょう?」

 

ホワイト議長が提案して来た。

まあ、言うなればつい最近俺達の次元で行われた舞網チャンピオンシップみたいな位置づけにしたいって事か。

 

「良いですね。その提案、お受けいたしましょう」

「おお、お受け頂けますか!ありがとうございます!」

「ですが昨日にこの次元に入ってからランサーズのメンバーに調査させた所、実力的な水準は中々の物と思われます。心配せずとも、この次元のデュエリスト達も中々の実力を有していると断言出来ますよ」

「そうですか、それなら一先ずは安心ですな」

 

昨日、柚子を圧倒したシュドナイさんとかが良い例だ、見た感じだとシンクロ次元の一般的なデュエリスト>俺達の次元の一般的なデュエリスト、かな。

おっとそうだ、

 

「そうそう、調査と言えば、ランサーズの第2部隊及び第4部隊による調査の折、そちらの治安部隊『セキュリティ』によって逮捕されてしまったとの情報を受けました」

「な、なんとそうでしたか!事情を知らなかったとは言え、セキュリティの者がご無礼を致しました!直ぐに、釈放する様命じます!」

 

第2部隊と第4部隊の面々が捕まっている事を伝えると、ホワイト議長は慌てた様子で端末を操作しだした。

 

「ロジェ長官。昨日セキュリティが捕縛した収容者の内、今から指定する12人の方達を即座に釈放する様に、頼みますよ」

『議長!?お言葉ですが昨日捕まったのは違法なライディングデュエルに講じた者達で』

「ロジェ長官。その中に、大義の為に身を投じた方達がいるのです。その方達を即座に釈放しなさい」

『ですが議長!昨日摘発したのは前々より違法性が指摘されたデュエル施設です、其処にいてデュエルに講じていたという事は』

「ロジェ長官。これは『創世主』不動遊星様の命です。直ぐに従いなさい」

『しかし議長!』

「ロジェ長官。

 

 

 

この命に背くという事は、シティへの、世界への反逆の意ありと受け取りますよ」

『っ!了解しました…!』

 

と思ったら連絡を始めたら一転、連絡先である、紫の服に身を包んだ金髪の、ロジェと呼んでいた男に対して、有無を言わさぬ威圧感で押し通してくれた。

 

「ホワイト議長、今のは?」

「ロジェ長官の事でしょうか?彼はジャン・ミシェル・ロジェ。セキュリティを束ねる治安維持局の長官を務める男なのですが、どうもシティの、この世界の価値観が理解出来ない様でして…」

 

いや、いきなり治安組織のトップに「犯罪者を釈放しろ」と言っても聞き入れる訳が無いと思うんですがそれは。

しかしホワイト議長の口振りからして、ロジェという男はこのシティの、いやシンクロ次元の出身では無いみたいだな。

ジャン・ミシェル・ロジェ、彼が何者なのか調べてみる必要があるな。

 

------------

 

「おのれ不動遊星、老いぼれ共を良い様に操って…!」

 

遊矢が思案を巡らしていた頃、当の治安維持局長官、ジャン・ミシェル・ロジェは怒りに震えていた。

 

「あの男がいては私の計画に支障が出るのは目に見えている、早めに対処せねば、私が築いたこの3年が水の泡と化してしまう…!

何の為に赤馬零王から離反したと言うのだ…!」

 

そう呟くロジェ、そう、ロジェは遊矢が考えた通り、このシンクロ次元の出身では無い。

元々は融合次元、それもアカデミアの出身である。

だがアカデミアが他次元への侵略を開始した3年前に離反、このシンクロ次元へと舞い降り、紆余曲折を経て今の地位に上り詰めた。

その地位が今、遊矢の登場によって揺らごうとしている、故にロジェは怒りの表情を浮かべ、遊矢を陥れようと画策していた。

 

『成る程ね、まさかアカデミアから離反して来たとは』

 

それを、遊矢の相棒である精霊、ユベルが見ていたとは気付かずに…

 

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一方その頃、

 

『プロフェッサー、報告であります』

「キサラ、どうした?」

『榊遊矢の始末の命でスタンダードに潜入したでありますが、其処で幾つかの情報を入手したであります』

「そうか。では聞こう」

 

融合次元にあるデュエルアカデミアのとある一室にて、零王はキサラから報告を受けていた。

 

『まずは件の榊遊矢でありますが、どうやら既にスタンダードにいない様子であります。スタンダードのデュエリストに吐かせた所、どうやら榊遊矢達数十名のデュエリストは、ランサーズという部隊を結成して、他次元へ向かった様であります』

「ランサーズだと?」

『そうであります。ランサーズ、正式名称『LanceDefenceSoldiers』は、我々アカデミアの進撃を阻止するべく設立された私兵組織であり、プロフェッサーの子息である赤馬零児や、レオ・コーポレーションが設立を主導した様であります』

「成る程、零児の差し金だったか。となると、柊柚子やセレナもまたそのランサーズに加わっていると考えた方が良いな。分かった、では次の報告を」

 

遊矢達が既に他次元へ飛んだ事、自らの目的を阻むかの様な目的で、息子である零児がランサーズを結成した事に渋い顔をした零王であったが、キサラに次の報告を促した。

 

『その吐かせたデュエリストでありますが、我々の知らぬモンスターカード、及びそれを用いた召喚方法を駆使していたであります。何でも、ペンデュラムモンスターと、それを駆使するペンデュラム召喚、だとか言っていたであります』

「ペンデュラム?」

『こちらがそのペンデュラムモンスターであります』

 

2つ目の報告を始めたキサラ、その内容に疑問を覚えた零王の反応を待っていたかのように、キサラが転送したカードは『マイルド・ターキー』と『ゴースト・ビーフ』、いずれもサイコロの目によってペンデュラムスケールを変動させる事が出来るカードだ。

 

マイルド・ターキー

通常・ペンデュラムモンスター

炎属性

鳥獣族

レベル 4

攻撃力 1000/守備力 2000

ペンデュラムスケール 青:7/赤:7

【ペンデュラム効果】

1:1ターンに1度、自分メインフェイズに発動出来る。サイコロを1回振る。ターン終了時まで、このカードのペンデュラムスケールを出た目の数だけ下げる(最小1まで)。

 

ゴースト・ビーフ

通常・ペンデュラムモンスター

闇属性

獣族

レベル 7

攻撃力 2000/守備力 1000

ペンデュラムスケール 青:4/赤:4

【ペンデュラム効果】

1:1ターンに1度、自分メインフェイズに発動出来る。サイコロを1回振る。ターン終了時まで、このカードのペンデュラムスケールを出た目の数だけ上げる(最大10まで)。

 

「通常モンスターの様だが、む?下半分が魔法カードの様な緑のカードフレームになっている?」

『そうであります。ペンデュラムモンスターはいわば『魔法カードでもあるモンスターカード』であり、普通にモンスターゾーンに出すだけではなく、魔法カードとして発動する事も出来るのであります。尚、魔法カードとして発動する場合は、デュエルディスクの両脇にあるペンデュラムゾーンと呼ばれる場所に表側表示でセットする形になっているであります』

「言わばフィールド魔法の様な専用エリアにセットする、永続魔法としても使えるモンスターカードか…」

『そして1ターンに1度、そのペンデュラムゾーンにペンデュラムモンスターが2枚セットされている時、セットされたペンデュラムモンスターに記されたペンデュラムスケールの間、例えば4と7であれば5と6、といった感じで、その数値に合ったレベルを持つ手札か、エクストラデッキに表側表示で存在するモンスターを好きな数だけ特殊召喚する、これがペンデュラム召喚であります。尚、フィールドから墓地へ送られるペンデュラムモンスターは、代わりにエクストラデッキに表側表示で送られるであります』

「ペンデュラム召喚、か。融合やシンクロ、エクシーズともまた違った、エクストラデッキを活用する召喚法という訳か。そして他の召喚法と比べて持久力に特化している、厄介な物を生み出してくれた様だ。報告は他にあるか?」

『報告は以上であります』

「分かった。どうやら障害は榊遊矢1人だけではない、最早スタンダード自体が、我々にとって脅威の存在と化したという事になる。我々も本腰を入れねばならん。報告、感謝する。キサラ、引き続き任務に当たって欲しい。必要ならば他の『ホルアクティ・フォース』も同行させるが?」

『今は大丈夫であります』

「そうか。では健闘を祈る」

 

その言葉を最後に零王は通信を切り、すかさず、他の場所へと連絡を入れた。

 

「私だ。早速だが、いまからとあるカードのサンプルを送る。それをベースに新たなるカードカテゴリの開発に当たれ」

 

この指示が、新たなる騒乱の号令になるとは、この時はまだ、誰も分からなかった…

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