ダイヤモンドを駆け抜けて   作:かりんと。

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第11話 副会長になってみよう

「へ、僕が自治会副会長?」

 

「そうだ。是非とも君に頼みたいんだ」

 

2年に進級し数日が経過した頃、僕たち監督生は会議室に招集された。

 

何でも1年間監督生として過ごしてきたメンバー内で話し合い自治会役員を選出するようだ。

 

「んー、僕じゃ力不足だと思うけど」

僕は今神条に副会長という役職をやってくれと頼み込まれている。

 

「そ、それに他の人の意見も聞いてみないと…」

 

モブA

「俺は賛成だな」

 

モブB

「ああ。俺もそう思う」

 

・・・・・・

 

紫杏

「という訳だ。これで君に拒否権はなくなった訳だが」

 

-どうやら僕に逃げ道はないらしい

 

湊叶

「…みんながそこまで言ってくれるなら僕はやるよ」

 

何故こんなに抜擢されたのかと言うと以前僕が提案したドーベルマンの廃止の件が大きいらしい。

 

疑問に思ったから提案しただけなんだけどなぁ。

 

紫杏

「ああ、感謝するぞ天道。」

 

湊叶

「出来る限りのことはするよ」

 

紫杏

「うむ。さてとこの事を発表し、早速ルール作りに入るぞ」

 

「「「おおー!」」」

 

(〜教室〜)

 

『今年の自治会会長に選出された神条だ。誠心誠意、自治会役員たちと、この学校の為に励むので全校生徒諸君も協力を宜しく頼む。以上だ』

 

信弥

「…あれ、もう終わりかいな。えらい短い挨拶やなぁ」

 

宗太

「今のはうちのクラスの神条か?」

 

荷田

「そうでやんすね。」

 

勝利

「自治会長って何だ荷田くん?」

 

荷田

「青葉くんに聞いた話でやんすと、他の学校の生徒会長的なポジションに当たるようでやんす」

 

勝利

「ふむふむ」

 

「普通は立会演説会か何かをしたりするみたいだけど、この学校は監督生から選ぶらしいよ」

 

信弥

「自治会かぁ、あんまりどんな活動しとるか知らんなぁ」

 

「うちの学校は、学校の力が強くて行事や部活動の予算に自治会の権限何か無いからな」

 

宗太

「へぇ、詳しいな友沢」

 

「ふっ、全部湊叶の受け売りさ」

 

信弥

「ん?ってことは自治会は何をしとるんや」

 

「あぁ、大まかに言うと監督生のリーダーだな。風紀の監視、ペラの没収、校内パトロールに設備の改修とかもしてるらしい」

 

勝利

「へぇ〜、働き者なんだな」

 

「て、俺らは思うけど部活に入ってない生徒にとってはウザいらしいよ」

 

信弥

「…野球やってて良かったわぁ」

 

(〜自治会室〜)

 

紫杏

「本校は男女が同じ空間で過ごすことになり、既に風紀の乱れが報告される状況になっています。ではお手元に配布した資料をご覧下さい」

 

紫杏

「効果的ですが過激なプランAから無為無策とも言えるプランGまで7段階の対策を用意…」

 

大河内

「おい神条!」

 

紫杏

「何でしょうか大河内先生」

 

大河内

「このプランAは要するに、“容疑をでっち上げて生徒を何名か退学させる”と読み取れるが?」

 

紫杏

「それに付いて、ここからは彼がご説明します。おい、天道」

 

湊叶

「はい、ご説明します。」

 

僕が椅子から立ち上がると全員の視線が僕を捉えた。

 

えっと、ちょっと怖いんですけど、特に車坂監督が…

 

湊叶

「コホン…結果的に言うと大河内先生の言う通りです」

 

大河内

「バカモン、やり過ぎだ!」

 

湊叶

「心配しないでください。それは他のプランの危険度を明確にするための比較対象として挙げたに過ぎません。では、続いてプランBをご覧下さい」

 

陸奥

「監督生の権限の強化…あら、さほど問題があるように思いませんけど?」

 

湊叶

「残念ながら現時点でも、安易に監督生の権限を用いる者が居るらしいんです」

 

大河内

「うむ、その話は俺も聞いたことがあるな」

 

先生、話に乗ってくれるのはありがたいですけど、そのジト目はやめてください…

 

湊叶

「現状の混乱を乗り越えるため、なまじ監督生の権限を拡大すると将来に禍根を残すことになりかねないでしょう。これは先のプランAに次ぐ危険な方法と言わざるを…」

 

車坂

(あ〜、早く終わらねえかな)

 

湊叶

「以上で終わります」

 

僕は頭を下げ、椅子にどっと、座り込む。

 

あー、緊張した…2人(大河内・陸奥)の威圧が凄かった。

 

ほんと、よく神条はあんなに物怖じせずに話せるな。

 

その神条が話を纏めて一回目の自治会会議は終了した。

 

今日決まった新しい校則を載せたチラシを作り、自治会役員で分担して掲示板に掲示しに行く。

 

何て言うか、荷田君が知ったら怒りそうな校則だけど…まぁ、何れ分かるか。

 

和那

「ふわぁ、疲れた。しあーん、帰ろーで」

 

紫杏

「ああ、そうだな。それではな天道、助かったぞ」

 

湊叶

「こちらこそ。やっぱり君は凄いよ」

 

紫杏

「ふふ、ここは素直に受け取っておくことにしよう」

 

湊叶

(素直ってつけるところが素直じゃないよ)

 

-そう思ったのは僕だけの秘密だ。

 

(〜翌日〜)

 

勝利

「あれ、何か張り出してあるぞどれどれ…恋愛禁止令(こいあいきんしうながし)?」

 

「…素直に読みなよ、普通は令のことを【うながし】とは読まないよ」

 

荷田

「変なことは知ってるんでやんすね」

 

宗太

「恋愛禁止令。自治会が新しいルールを作ったのか」

 

信弥

「なになに…‘男女生徒がみだらな行為を連想される行動をとったら、ペラ没収または無償奉仕活動’とな」

 

荷田

「むきー!オイラの青春バラ色ライフが〜…それにしてもみだらな行為でやんすか、何か興奮するでやんすね」

 

「五月蝿い荷田」

 

信弥

「具体的に書いてあるで。‘学校内で理由もなく手を繋いでいるとか、教室に2人きりでいる’のはアカンらしいな。これごっつ厳しないか?」

荷田

「うおお!オイラの想像もいけないことになりそうでやんす!」

 

宗太

「荷田落ち着け。それにしても…窮屈になりそうだな」

 

「多少のことは多めに見て欲しいなって感じだね」

 

勝利

「まぁ、野球が出来たらそれでいい」(野球バカ)

 

荷田

「あ、そう言えば“特別反省室”の噂は知ってるでやんすか?」

 

信弥

「何やそれ。聞いたことないな」

 

「むっ、それなら昨日湊叶に聞いたな。確か-」

 

(〜教員室〜)

 

大河内

「校則に度々違反した者は“特別反省室”に送られそこで洗脳され、従順な生徒に改造される。…なんだこれは」

 

紫杏

「たわいも無い噂です。監督生を使い、意図的に流しています」

 

大河内

「全くバカなことを。いたずらに校内を混乱させるだけだな」

 

紫杏

「…少々思慮が足りませんでした。天道」

 

湊叶

「…噂の撤回だね」

 

紫杏

「話が早くて助かる。頼んだ」

 

湊叶

「ん、わかった」

 

大河内

「俺からも生徒に伝えよう」

 

(〜教室〜)

 

大河内

「特別反省室の噂は根も葉も無い噂だ。“絶対”に信じないように」

 

信弥

(否定するちゅうことは)

 

宗太

(寧ろ怪しいな)

 

紫杏・湊叶

(ふぅ、これで良し)

 

(あれ…)

 

気付けば季節は5月に入っていた。

 

それももう終わりが近い。

通りで中間テストやらが合ったはずだ。

 

毎日が充実しているとこんなにも時が過ぎるのは早いのか。

 

2年に上がったということで色々な変化が起こった。 自治会と部活の両立は難しいけどその分楽しいし、時間を無駄に出来ないと練習については如何にして成長するか効率を考えるようになった。

 

笑顔でノックを受けていたらみんなにドン引きされた、お前Mかよって…あ、十彩は「こっち側に湊叶さんも来てくれたんすね!」とか言ってたけど、ちょっと意味がわからないや。まぁ、僕のことを否定してくれてないって言うのはわかるけど。 それにしてもMは酷い…

 

坂内さんと基宗さんの独自のメニューを熟して行き、しなやかさと力強さを兼ね備え、尚且重しにならない筋力をつけることを目標とし頑張っている。

 

ショートは身体が重いと不利だ。 左右の強い当たりに反応が遅れるからね。 だから小回りの効く筋肉が欲しい。 大きいのがポンポン打てるわけじゃないけど欲しい物を得るには犠牲が必要となってくると僕は思っている。

 

それに今の僕のモットーは“機動力”だ。

 

その為にも重い鎧は要らない。 羽のような軽い物がいる。

 

それに…今は投手の練習もしているしね。

 

車坂

「集合!」

 

監督から集合がかかる。

 

車坂

「今からオーダーを発表する。呼ばれた物は返事をしろ。大きな声でだ。」

 

そう、今から練習試合が行われる。

 

対戦相手は聖タチバナ学園。

 

試合のオーダーは次のようになっている。

 

1番 中 神谷 (左)

 

2番 二 天道 (両)

 

3番 捕 坂内 (右)

 

4番 三 佳月 (右)

 

5番 一 友沢 (両)

 

6番 遊 基宗 (右)

 

7番 右 越後 (左)

 

8番 左 田代 (右)

 

9番 投 寺河 (右)

 

信弥

「スタメン4番やぁ!!」

 

「…なんだ俺は先発じゃないのか」

 

勝利

「くそぉ、投げさせて貰えねぇ…」

 

「…まぁまぁ、次があるって」

 

原作キャラ

(出番寄こせよ)

 

スタメンに選んで貰えたけど、セカンドか。

 

守備には自信があったんだけどなぁ、まぁとにかく今は試合に集中だ。

 

*タチバナside

 

「さぁ試合だ!練習試合と思わずに本戦同様の緊張感を保ちながら戦おう!」

 

みずき

「ふふん、親切打線をキリキリ舞いさせてやるんだから!」

 

「意気込んでるところ悪いが、みずきはリリーフだぞ」

 

みずき

「わかってるわよ!もぉ!岬くん!しっかり抑えないと承知しないからね!」

 

わかってるよ、と耳を抑えながら若草色の髪をした少年が答えた。

 

天城 岬(あましろ みさき)

 

タチバナの先発だ。

 

「何か僕緊張してきたわ」

 

みずき

「何緊張してるのよ原くん!しっかりしなさい!」

 

「ひぇ、堪忍してな」

 

「試合開始だ!みんな行くぞッ!」

 

「「「おおー!!!」」」

 

聖タチバナ学園オーダー

 

1番 右 仙波 (左)

 

2番 二 原 (右)

 

3番 捕 六道 (右)

 

4番 三 神木 (左)

 

5番 投 天城 (左)

 

6番 遊 栂崎 (両)

 

7番 中 八雲 (左)

 

8番 一 大京 (右)

 

9番 左 水野 (左)

 

先攻 聖タチバナ学園

後攻 親切高校

 

 

「ストライークッ!バッターアウトッ!」

 

エンジン全開。 初回を3者連続三振。それも9球で。

 

神無月

「ナイスピーです、寺河さん!」

 

寺河

「いぇい!どんなもんよ」

 

パァーンとハイタッチをしている、あれ、いつの間に意気投合したんだ?

 

っと、タチバナの先発を見ておかないと。

 

---天城 岬 君か。

 

サイドスロー投手で球速はスピードガンを見たところ130km/h前半。 変化球はまだ見てないけど宗太が粘ってくれるからそれで判断、最悪僕もヒットを捨てて、後続に繋がるように情報を引き出そう。

 

キィン! パシィ!

 

8球粘った末、結果はピッチャーライナー。

 

僕はネクストサークルから立ち上がり左打席に向かう。

 

宗太

「変化球はスライダーとカーブくらいだな。そんなに変化量も大きくない。それに…」ボソ

 

宗太から情報を受取り、礼を言ってから左打席に入る。

 

初球はアウトコースにストレート、ボール。

 

2球目、真ん中低めにストライク。

あれ、ほんとだ

 

3球目

 

キィン! と外に来たストレートを流し打つ。

 

ショートの栂崎君が飛び込むけど届かずに打球はレフト前に抜けて行く。

 

1塁ベース上でふぅと息を吐き出し、天城君を見る。

 

『変化球はスライダーとカーブくらいだな。そんなに変化量も大きくない。それに“ボールの出処が見易い”』

 

宗太の言った通りだ。 普通の投手に比べて出処が見易い。 まだ初回で身体が温まりきってないって言うのもあるかも知れないけど、普通の投手と比べると打ちやすいイメージがある。 サイドスローに左打者が優位って説は案外馬鹿にできないのかもしれない。

 

大京

「スチールッ!」

坂内さんへの初球、僕はいきなり盗塁を仕掛ける。

 

牽制も無かったし楽々2塁に到達出来た。

 

さぁ、スコアリングポジションにランナーを背負わせたぞ。

 

あとは坂内さんに返してもらうだけだね。

 

キィィン!

 

--鋭い打球はセカンド原の頭上を越え、右中間へ抜けていく。

 

僕は迷わず3塁を蹴り、ホームへと向かう。

 

坂内さんの2塁打であっさり先制。

 

尚もチャンスでバッターは---

 

信弥

「わいのばんやぁ!」

 

車坂

「喧しい!さっさと打席に行け」

 

カキィィィン!

 

打球は快音を響かせ、センターへ伸びていく。

 

これで2点目か、取れるうちにとっとかないと---え?

 

神無月

「坂内さんバックだ!」

 

聖タチバナのセンターが打球に追いつこうとしていた。

 

「八雲慌てるなよ!充分間に合うぞ!」

 

--六道の言葉通り、この大飛球に八雲が追い付いた。

 

不味い、これじゃダブルプレーに…

 

栂崎

「ボールセカンッ!」

 

--八雲から返球されダブルプレーとなる。

 

なっちゃうよね、あれは仕方ないか。

 

信弥

「あ、あれに追いつくんかいな」

 

ベンチに戻ってきた信弥が悔しそうに漏らした。

 

「…あの走力はびっくりしたね。それにあの肩も」

 

車坂

(まだ決定できる訳じゃないが、タチバナは守りのチームか)

 

2回表、タチバナの攻撃は4番神木くんから。 左打者だし、引っ張ったら僕の方に来る可能性もある、強い打球も頭に入れておこう。

 

--外を上手く使い、カウント1-2と追い込む。

 

(っ、厳しいコースに投げてくるな。それだけ警戒されてるのか?)

 

ギィン!

 

「ファールッ!」

 

---くそ、甘い球が来ないぞ。

 

一度靴紐を結び直し、神木は打席に戻る。

 

5球目、寺河の右手から放たれた白球は--

 

「なっ!」

 

--シンカー気味にストンと利き手側に変化し、空を斬らせた。

 

「な、何だ今のボールは」

 

神木くんの理解(しこう)が追いつかない。 それもそうだ、僕だって初見であの球を見た時は驚いた。

 

 

 

「な、何ですかこの球」

 

寺河

「ふっ、“フォッシュ”ってボールさ」

 

 

「フォッシュ…初めて聞きますね」

 

坂内

「まぁ、そうだろうな。あまり見られない珍しい球種だ。高速フォークと言うのが正しい呼び方らしいぞ」

 

「へぇ、ありがとうございます坂内さん」

 

坂内

「ああ。このバカが投げたいって聞かないものだからな。少し調べてみたんだ」

 

寺河

「誰がバカだ、それに高速フォークより俺はフォッシュのが格好いいと思うぞ」

坂内

「誰のことだろうな。まぁ好きに呼べば言いさ、お前のは少し変化が違うらしいからな」

 

「それってつまりオリジナル変化球ってことですか?」

坂内

「まぁ、そういう事だ。ライジングショットという変化球があるくらいだ、好きに呼んだって構いはしないさ」

 

寺河

「ふむ。決めた。フォッシュって単語は外せないから俺のこの球は…」

 

寺河

「“スライドフォッシュ”こう呼ぶわ」

 

坂内

「梓真らしいじゃないか。ちゃんと特徴を理解していたのか」

 

「特徴…ですか?」

 

坂内

「あぁ、梓真のフォッシュ、スライドフォッシュはな…」

 

スパァンッ!

 

「ストラーックバッターアウトッ!」

 

滑るように、落ちるか。 ほんとに、伝家の宝刀だ。

 

坂内さんがインコースに構え、そこに寺河さんが投げ込む。

 

ククッと打者の手元で変化した球に打球は詰まり、僕の元に転がってくる。

「アウトッ!」

 

これでスリーアウト。 タチバナの攻撃が終了となる。

 

2回裏、先頭打者は亮から。

 

湊叶

「亮」

 

「ああ、じっくり見てくる」

そう言って亮は左打席に入る。こういう時両打ち(スイッチヒッター)の人って良いよね、相手に併せて打席に入れるから。まぁ、僕も両打ちだけど…

 

カキィィィン!

 

--初球(・・)を完璧に捉えた打球はライナー性を保ちながらそのままライトフェンスを越えていった。

 

湊叶

「…ナイスバッティング。よく見ていくんじゃなかったの?」

 

「打てそうだったからな。振ってみたら当たった。それがたまたまホームランになっただけだ」

 

湊叶

「嘘つけ、狙ってたくせに…」

 

「…ふっ、だが打てそうと思ったのは本当だ。あのフォームは左打者に対して余りにも無力、マイナス面しかない」

 

湊叶

「…随分と辛口なこと。」

 

続く基宗さんと越後が凡退するも田代がライト前にテキサスヒットを放ち、2アウトながら出塁する。

 

寺河

「よっし、俺も続くか」

 

--アウトコース、外に逃げていくスライダーで三振に倒れる。

 

寺河

「あら…」

 

 

「打者が1巡したね---次の回から?」

 

「うん。変えようと思う。もう一巡試してもいいけど、左打者に対して何も出来てないからね」

 

--ビシッと天城の頭に手刀が入る。

 

「っつ、って、みずきちゃん!痛いよ!」

 

みずき

「うるさーい!何2点取られてるのよ!次の回から私が行くわよ!」

 

「まぁまぁ、みずきちゃん落ち着いて。岬もちゃんと考えてるから」

みずき

「むぅ…」

 

(…こりゃほんとに次の回からは本気で投げないと酷い目に合いそうだ)

 

みずき

「うぅ、しっかり抑えてきてよね!」

 

「うん、任せといて」

 

坂内

「サード!」

 

信弥

「ほいきたっ!っと!そいや!」

 

「アウト!」

 

9番水野もサードゴロに打ち取り、タチバナの3回の攻撃が終わる。

 

さてと、この回はトップに戻って、宗太からだ。

 

宗太

「…っく!」

 

「バッターアウトッ!」

 

変わった。

 

宗太

「見てたから解ると思うが…」

 

宗太が悔しさで顔を歪めながら言う。

 

これは引き締めて行かないと簡単に喰われそうだ。

 

打席に入り天城君を見る。

 

すぅ、っとスムーズにグローブを振りかぶりグイッと身体を捻る、背中の背番号が見えるくらいに。グローブにギュッと力を入れ“カベ”を作る。踏み出される左足に遅れ、カベとなったグローブがゆっくりと始動する。踏み出しと同時にテイクバックに入り身体に隠れていた右腕が突然出現する。

 

くっ、それに加えてプレートの目一杯左端三塁側から対角線に投げてくる。 これだけ厳しいと…

 

「ストライークツー!」

 

内の奥行を狙ってくる球に手が出ない。

 

カウント0-2、追い込まれている、厳しい球でも打ちに行き、甘い球は必打だ。

 

--ガバァと身体を捻るサイドトルネード投法から“半速球”が投げ込まれる。

 

来たっ!引き付けて反対側に…

 

チェックゾーンで下降した球は僕のスイング音を置き去りにし、六道さんのミットに収まった。

 

この変化は…

 

「シンカーか」

 

湊叶

「うん。恐らくね」

 

「…ここから見ていてもはっきり分かるくらいキレてたな」

 

--ギィンと詰まった音がし、 打球は天城のグローブに収まった。

 

坂内

(キレが初回とは比べ物に成らない。同じ130km/hのストレートでもこの回のは“生きた”ストレートだ)

 

--防具を付け終え、タチバナサイドに居る天城を見つめながら坂内は思う。

 

坂内

(こりゃ厄介なことになりそうだ)





【挿絵表示】


神谷宗太くんです、まゆげさんに描いて頂きました。
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