ダイヤモンドを駆け抜けて   作:かりんと。

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第16話 一歩

*

 

もう直ぐ夏の大会予選が始まるという頃、亮は段々とだが確実に回復に向かっていた。

 

この分なら打撃面だけでも期待できるんじゃないか、と淡い期待を寄せてみるもそれは亮の代わりにベンチ入りした荷田君の扱いが酷いものになってしまう為、やはりその辺りの調整も兼ねて予選は出場しないというのが決まっていた。 頼れる打者が居ない中で、翔馬の居る星英を倒さなくてはいけない。 これは気合を入れる必要があるな、と思うがここに来て最近調子を崩している者がいる。

 

---佳月信弥だ。

 

「い、胃がキリキリする」

 

「あー…また彼女(・・)か」

 

「彼女て言うな!」

 

今話題に出ている少女が現れるようになったのは一体何時からだろう、と3塁側ベンチの奥の通路からこちらを見つめる某カバ系妖精似の少女とロングヘアーの茶髪の少女の姿を見て言葉を落とす。

 

彼女らの名前は左から春田(はるた)(らん)三橋(みはし)妙子(たえこ)と言う。 春田さんの名前は聞いたことが無かったが、三橋さんの方は何回か名前を耳にしたことがある。 頭脳明晰で、自治会入りを何回か断っている方だ。 あの紫杏が諦めざるをえないということは、相当意思の強い方なんだろうと思う。

 

さて彼女らのどちらが信弥を悩ませているのかと言うとそれは先に紹介した春田さんである。 彼女は話によるとまぁその所…謂惚れやすいという性格らしい。

 

「あかん!集中できん!湊叶!走ってくるさかいゲージ使うてええよ」

 

「うん、ありがとう。…無理はしたらダメだよ?」

 

「なはは…それが出来たらええんやけどなぁ」

 

普段の様子からは想像出来ないような暗い表情を作りながらランニングへと切り替えていった。

 

春田さんが信弥の事をこうも連日の様に見に来るというのは、どうやら信弥がやらかしたらしいという話だ。

 

『何と言ってもこのナオっちが手に入れた情報ですからね!信ぴょう性はバッチリですよ!』

 

と、とある緑髪の自称新聞記者からの情報なので確かな筋らしい。

 

信弥は普段あっけらかんとしている様な多らかな性格の持ち主である--が、自分のペースを崩されるのをとても嫌う傾向があった。

 

良く言ってマイペース、悪く言うと自己中心的…とはまでいかないがまぁそんな所である。

 

スイッチが入るとあの大河内先生ですら言葉を返せなくなる、と言えば話は早いだろうか。

 

そう、彼女--春田蘭さんは、信弥のペースを崩してしまったのである。

 

居残り練習をしており、最後まで残っていたということでグラウンドの整備をしていたところあの子が話しかけたらしい。

 

それくらいの事で、と思うかもしれないが僕たちにとってグラウンドは聖地と言っても過言では無い場所だ。 そんな所にいきなり関係の無い女性が入ってきて、折角整備した所を荒らされたら人はどう思うか--そう、芽生える感情は怒りだ。 僕はまぁ、軽いもので終わるかもしれない。 が、信弥は信弥で僕では無い。

 

恐らく育ってきた環境の関係もあるのだろう。 宗太もグラウンドに対する思いは強い。

 

その注意をする辺りで、どうやら信弥は春田さんの逆鱗に触れてしまったらしい。

 

仮にも勇気を出して言葉を紡いだと言うのに信弥と来たら、付き添いである三橋さんとの会話を始めたのである。 確かに三橋さんのルックスは整っているとは思うけど、仮にも想いを伝えに来た人の前でね…あ、先に信弥を怒らせたのはあちらなので一概に何も言えなくなってしまった。

 

とまぁ、この様な事情で春田さんは恨みを込めた視線を信弥に送り続けているというところだ。

 

…何だかそれを見ている僕まで胃がキリキリと痛くなってきた気がする。

 

既に何人か同じ症状を訴えかけている人もいるので気のせいでは無いのだろう…

 

大会が近い中、これが収まり信弥の調子も復調するといいんだけど。

 

*

どうやら僕の心配は杞憂に終わったらしい。

 

大会が始まると信弥は見事復調して見せた。

 

1回戦の相手は近年初戦敗退が続いている平面高校。 所謂格下(・・)だ。 絶対に取りこぼせない。

 

この試合で信弥は4打数3安打2打点と猛打賞を記録し存在感を示した。

 

因みに僕は3打数3安打1四球という結果である、出塁率10割どんなもんだい。

 

因みにスタメン出場者は全員安打を記録している。

 

投手陣の方はと言うと、寺河さん5回、勝利4回という系統で繋ぎスコアは14-0と圧勝することが出来た。

 

監督から言わせてみればまだまだ足りないらしいが…。

 

とは言え1勝を飾ることが出来たのは大きいと思うし、このまま波に乗れればチームにも勢いが付く。 躓かず、1戦を大事に戦っていきたいと思う。

 

その後の試合も順調に駒を進めていき、試合は準決勝を迎えた。

 

対戦相手は---鉄砂高校。

 

今年頭角を表してきた高校だ。

 

何でも1年生ながらもエースを担うのは、元プロ野球選手、佐藤勇太さんの息子 佐藤翔太君らしい。

 

坂内さんによると注意しなければいけないのはタイミングを崩しに来る超スローボール。

 

この山鳴りの球が打ちにくいい、と言ったらありゃしない。

 

山鳴りの球と言うのは、従来の軌道とは違い線で捉えることが極めて難しくなる。 つまり、点で捉える打撃は非常に厳しいものだというのが容易に想像ができる。

 

真っ直ぐ水平に来るものならそれに対して平行になるなる様にバットを振れば大抵は捉えることが出来る。 が、山鳴りとなると話は違ってくる。

 

普段のスイングが身に付いている僕らからするとこの山鳴りの球は苦手らしい。

 

緩いボールというものは僕たち打者の打ち気を誘う。 大きいのを打つというイメージを少なからずしてしまう為、振りがいつもより大きいものとなってしまう。 その為山鳴りと相まってボールの上面をバットが捉えてしまう。

 

結果は見事なゴロの山だった。

 

7回まで何と無安打(ノーヒット)に抑え込まれてしまう。 これにはもう車坂監督はカンカンである。 守備の方では勝利が珍しく四球を出してしまい、なんやかんやでそれが三塁に進み、次打者の弱い内野ゴロで失点を許してしまった。

 

打撃面が悪いので守備のリズムに悪影響を及ぼしているのだ。

 

ここで車坂監督は動きに出る。

 

1塁を守る岩田に代えて、十彩を起用してきた。

 

そして、これが型にハマった。

 

キィーン!と快音が響き、打球は中堅手(センター)正面へと弾き返される。

 

この打撃を見て僕たちは漸く、大振りという呪縛から解き放たれた。

 

超スローボールに加え、スローカーブ、パームボールと遅い変化球を持つ佐藤君だったが、伊達に「打の親切」として名は通っていない。

 

修正は可能だった。

 

肘をしっかり身体に引き付け、ヘッドを固定し、腰で回転することにより、コマのように遠心力を保ちながらそれをボールにぶつける。

 

そうするとスイングはシャープかつ、打球は鋭いものにへと変貌する。

 

この回に一挙8得点を挙げ、試合は勝負が付いた。

 

目の前の欲に囚われて大事な事を忘れていた。 僕たちはスタンドに居るみんなの分も戦っているということに。

 

後続の投手からも坂内さんが甘く入った直球を左翼中段に弾き返し、追い討ちをかける。

 

結果は9-1と、序盤の接戦が嘘のような差のついた試合になった。 因みに勝利の完投勝利である。

 

超スローボールは間違いなく僕らを苦しめ、階段を1段進ませてくれた。 ちょっとずつだけど成長していることを噛み締めながら皆、来週に控えた決勝戦(VS 星英)に対して闘志を燃やす。

 

余談だが、高校に戻ってから鬼のような千本ノックが僕たちを襲ったのは当然の結果である。

 

*

 

「俺たちは今、何の為にここに居る--佳月」

「答えは1つ--星英を倒す為や」

「そうだ。俺たちは去年、途中まで主導権を握っていて逆転されたんだ。1度掴んだ勝ちを奪われたんだ、これ以上の屈辱は無い!また同じ気持ちを味わいたいか神谷」

「無論、やり返すのみ!」

「さぁ、秋大の再戦(リベンジ)の時だ。今日まで培ってきた力を全て出し切ろう。そうすれば結果は自ずと転がってくる。皆で甲子園に行くぞ!」

 

坂内さんの熱い言葉に「おう!!」っと皆で答える。 気合いは充分、これ以上無いモチベーションで試合に挑める。

 

あと一歩で甲子園(夢の舞台)へと手が届く。

 

ふぅ、と高鳴る胸の鼓動を抑えるために深呼吸を行う。 中学の頃もそれなりに大舞台に立ったことはあるけど、それとこれとは緊張感がまるで違う。

 

星英ベンチを見つめるとバチッと火花が散るような感覚に陥る。 敵も感情を剥き出しだ。

 

「この試合、勝って笑おう。さぁ行くぞ!」

 

坂内さんの号令と共に駆け出す。 試合が始まるこの挨拶から勝負は始まっていると言ってもいいだろう。

 

---AM12:30---

 

『夏の全国高校選手権大会三重県予選も遂に大詰めを迎えます。天気予報では曇り後雨というものでしたが、無事快晴となりました。 2年生エース天道翔馬を中心とし、甲子園連続出場を狙う星英と対するのは近年実力を伸ばしてきている親切。「自分達は挑戦者です。ただひたすらに全力でぶつかるだけ」と親切主将坂内は答えます』

 

開始時刻となり、遂に試合が始まった。

 

『春夏連続出場を成し遂げている星英の中心は何と言っても2年生ながらにしてエースを任された天道翔馬投手でしょう。彼を中心に今年も羽生監督はチームをまとめ上げました』

 

段々と球場の熱気(ボルテージ)が上がっていくのが肌で感じられる。 良い緊張感だ。

 

『対する親切の注目は1年秋からエースを担っている寺河君。今大会は準決勝で敢えて登板させないという完全にこの決勝に向けて的を絞って来ています。昨年夏・秋と星英に対しては良い投球を見せています。今年度は2年生を主体にチームが仕上がっています。「打の親切」と呼ばれる力、それを打線が遺憾無く発揮すれば充分勝利の可能性は存在します!』

 

『守ります親切高校守備の紹介です。打席順に読み上げていきます。中堅手 神谷君 二塁手天道君 捕手 坂内君 三塁手 佳月君--- 』

 

『---ウグイス嬢に寄るスターティングメンバーの発表も終わり、いよいよ決勝戦--前回覇者星英高校 対 悲願の優勝を目指す親切高校の試合が幕を開けました。実況は私堀江良信でお送りします』

 

「1回表 星英高校の攻撃は 1番 二塁手 小鉢君 背番号 2」

 

「締まっていくぞぉ!」

 

さぁ、火蓋は切って落とされた。

 

*

『試合は予想通り、緊迫した投手戦となっています。天道・寺河両投手による好投はこの伊勢倉田山球場を湧かせます。「スミ1(・・・)」を守り続ける寺河投手に親切高校応援団は拍手を送ります』

 

試合は終盤7回に差し掛かり、電光掲示板(スコアボード)には見事な0の羅列が並ぶ。

 

「へ〜、球場ってこんな風になってるんだ。さてと、無事勝ってるといいんだけど、あれ?まだ点は入ってないんだねぇ」

「いや准良く見てみろ--左下だ」

 

先程球場に訪れた3人の内、テンガロンハットを被った1人の男が指でその先を示す。

 

「あそこに“1”の文字があるじゃないか」

「わ、ホントだ!維織さん!湊叶君達勝ってますよ!」

「そう……それは、本当に良かった」

「ははは、維織さんはここに来てもいつもの維織さんだな。准、お前もこの落ち着き見習えよ」

「余計なお世話よ!貴方こそ、ヒモを卒業してまともな職に付くべきだとは思わないの!?」

「な…痛いところを」

「ふっふっふっ、カブトムシ…臭い…」

「う、忘れもしない黒歴史…!」

「2人共…茶番は良いから早く座る。他の人の迷惑」

「「う…すみません」」

 

「それにしてもどうやって点を取ったんだ。パッと見て分かるくらい湊叶君の兄・翔馬君は抜けた才能を持っている良い投手だ」

 

「--僅かなチャンスを物にしたんですよ」

 

手を顎に添えている男--朴木 仁 が思考に潜っていると不意に左側から声を掛けられる。

 

「あれぇ?美女が2人もいるって言うのにナンパなんてしてるの?このヒモめ」

「何て事を言うんだ!っと、教えてくれてありがとう」

「いえ、この位造作もない事です」

「へぇ、今時珍しい凄い礼儀正しい子だね」

「そう…准ちゃんよりも数倍」

「…維織さん酷い」

「幾ら准でも維織さんには適わないな」

 

小さな笑を浮かべてから朴木は女性に向き直る。

 

「あの良かったら詳しくその得点の場面を説明して欲しいんだけど」

「解りました。まず親切の先頭打者である神谷が動きを仕掛け---」

 

『さて、この試合の貴重な得点場面を振り返りましょう。親切は初回に揺さぶりを掛け、天道君に僅かな動揺が生まれたところに上手くつけ込みました。1番神谷君、2番天道湊叶君。この2人の働きが非常に大きいと見られます。密かに話題に上がっていた「双子対決」--同じ名字の時点で気付いてられている方も見られるかと思いますが、親切・天道湊叶君は星英・天道翔馬君の双子の弟との情報が入っています』

 

「2番天道--湊叶が粘りに粘った。普段のアイツからは考えられないような気迫でした」

 

『弟・湊叶の粘りが身を結び、兄・翔馬は四球を与えます。先頭の神谷君もバントジェスチャー揺さぶり見せるなどそれも貢献したかと』

 

「出塁し、牽制を2回程貰ってから単独盗塁を仕掛けました。これが成功しまして、3番主将坂内さんのライト前に落ちるヒットで得点です。本塁に突入する際、アイツは泥臭く突っ込みました。タイミングは際どいものだったのですが、湊叶の気迫が得点を呼び込んだのでしょう」

 

流石(さっすが)湊叶君。こう言うのを聞くと成長しているんだねって思うよ!」

 

「本当にその通りだ。丁寧にありがとう、えっと」

 

「失礼、遅れました。私は--神条紫杏。湊叶とは高校の同級生なんです」

 

「なるほど。俺は朴木仁。俺の左にいるのが夏目准で、右に座っているのが野崎維織さん」

 

「野崎…違っていたならば御容赦下さい。もしかして、NOZAKIグループのご令嬢」

 

「うん。良く知っていたね…貴女からは何か特別な力を感じる…大事に使ってね」

 

「その様に言って頂き光栄です。では、そろそろ。暑いので熱中症に注意してください」

 

「うん、大丈夫…長々とありがとう」

 

「神条紫杏ちゃんか。湊叶君と同級生ってことは2年生かぁ、凄く大人びてる様に感じたね」

 

「あぁ。博識で、准お前よりも礼儀正しい子だな」

 

「二度とその口が利けないようにするよ?」

 

「じょ、冗談だ…だからその威圧感を閉まってくれ…それより維織さん。あの子から特別な力を感じるって言ってたけどそれって一体?」

 

「詳しくは私もわからない…ただ、1つ言えるのは彼女には素質があるということ」

 

「ふむ…これが天才と凡人の違いか…感性がまるで違う」

 

「それは一旦置いておいて、今は湊叶君のチームを応援しよ。折角来たんだしさ〜」

 

「それもそうだな。このままの流れなら恐らくは--」

 

*

『8回表、星英今試合最大のチャンスです!守備のもたつきもあり、1死満塁の状況を作り出しました!今まで完封ペースの寺河大ピンチを迎えています。ここで打者(バッター)は4番天道翔馬!この場面に球場の熱気は跳ね上がります!--親切高校ここで守備のタイムを使います。両チーム共に大事に行きたいところです』

 

「ここに来てあの集中力は恐れ入るな」

 

打席を外し、念入りにスイングの確認を行う翔馬を見て坂内が話す。

 

「1死満塁--ここは勝負に出るしかない」

「そうだな。満塁とは言え、我々にとっても守りやすいものがある。寺河気持ちで負けるなよ」

 

いつも寡黙な男、基宗が燃えていると親切ナインたちは思う。

 

「当たり前だ!ここで引いたら絶対後悔するっていうのがあるからな--皆、頼むぞ!」

 

 

 

「んー、どの角度で見てもこれってピンチだよね?」

「あぁ…間違いないな。ヒット1本で流れが変わる。同点は勿論、2点目が入る可能性もある。それにヒットが出ないとしても、ワイルドピッチによるパスボール、守備の乱れ、加えて相手は4番と来た。厳しい戦いになるのは確実だろうな」

「やっぱりそうなんだ」

「あぁ。三塁に走者(ランナー)がいるって言うのが肝なんだ。さっきも言ったように捕手が後ろに逸らせば試合はそれで振り出しになる。それを避けようとするには---」

「落ちる球が使えない。逸らす危険があるから」

「流石だな維織さん。その通り、落ちる球はリスクが高い。そうなってくると、かなり的が絞られてくるんだ」

「なるほど〜、野球は奥が深いねぇ」

「だから野球は楽しいんじゃないか」

「そんなの聞いていると野球したくなってきちゃった」

「なら今度ビクトリーズの練習に」

「あ、ダメダメ!ピエロがいるわ!」

「あー…そうだったな」

 

『タイムが解けマウンドに集まった選手たちが守備位置(ポジション)に戻ります。外野はやや深めに守り長打に警戒、勝負に臨むようです』

 

坂内から送られるサインに寺河は首を横に振ることなく力強く頷く。 投手と捕手が信頼しあって生まれる絆だ。

 

大きく振りかぶって投球フォームに入る。

 

走者は居るが関係無い。

 

満塁の為、盗塁の心配がない為だ。

 

寺河の初球--スライドフォッシュは今日一番のキレで坂内のミットに飛び込んだ。

 

「朴木さん、落ちる球は投げないって言ってたじゃん」

 

夏目准は自身の横に座る男に不平を漏らす。

 

「--なるほど、そう動いたのか」

「何がそうなの?」

「いいか、さっき寺河君が投げたものは確かに下変化の物だった。でもそれはな“ストライクからストライク”という後逸の危険が少ないものなんだよ」

 

その言葉に夏目ははっとした表情を作る。

 

「これは勇気あるリードだ。初球にあの球を見せつけることによって翔馬君は落ちる球もあるという思考に縛られる」

「絞った選択肢がまた増えちゃうんだ」

「あぁ。さぁ、どうなることやら」

 

『---ボール!僅かに外れました!これでカウントはフルカウントにもつれ込みます。大変な試合になってきました!フルカウントにしてワンアウト満塁!次が勝負の一球となるのか---』

 

またもサイン交換を一度で済ませ、寺河が投球に移る。

 

選ばれた球種は---ストレート。

 

胸元低めに向かう厳しいコース。

 

カァーン!と音が鳴り響いた。

 

「--セカンドッ!」

 

驚きながらも振り抜かれた打球は低く、投手寺河の左を抜けていった。

 

その打球の行方に両チームは異なる反応を見せた。

 

『打球は上がらずとも鋭さを保って寺河の左を抜けていく!これはセンター前に--あっと二塁手天道湊叶が良い所を守っていた!身体を落として逆シングルで追い付き、そのまま流れるように二塁へ送球!遊撃手基宗が受け取りベースを蹴って一塁へ!判定は--アウト!塁審に右腕が上がっています!4-6-3のダブルプレー!これは非常に大きなプレーが飛び出ました!大きく落胆する星英応援団と対し、親切応援団は割れんばかりの大歓声です!』

 

「っしゃあぁぁ!ナイス湊叶!」

 

『寺河君が大きく吠え、好守を見せた湊叶君を笑顔で迎えます!一方、打った兄・翔馬君は一塁ライン状で足を止め天を仰ぎます。打球の当たりは悪くありませんでした、しかし、それを上回る弟・湊叶君の守備。双子対決はどうやら弟に軍杯が上がったようです』

 

「初球に落ちる球を使うことによって坂内君は翔馬君に“フォーク系統もあるぞ”という餌を播いた」

「それは、餌は餌でも疑似餌」

「うん、だからさっき准が言ったように球種の選択肢が広がったんだ。一度起こったことは二度あるって言うだろ?」

「二度あることは三度ある しか聞いたことがないけど、維織さんあるの?」

「うん、ちゃんと存在する」

「へぇ、朴木さん意外と博識なんだね」

「ふっ、見直したか」

「全然、だってヒモだし」

「こほん…とにかく俺が言いたいのは脳裏を落ちる球がチラつくってことさ。下変化の球は捉えにくいから脅威だしね」

「難しいけど、レベルの高い駆け引きをしてるってことはわかったよ」

「あのストレートなら見送り、良くて弱いゴロだと思ったんだが、流石は天才と称されることはある」

 

---これからが楽しみだ。

 

 

『---追い込んだ!マウンド上の寺河非常に落ち着いています。ゆっくり辺りを見渡して呼吸を整えます。サインに頷き投球に移ります。ゆっくりと振りかぶって第3球目を投げました--決まったぁ!空振り三振!試合終了!寺河完封勝利!最後は三球三振で仕留めて見せました!親切高校悲願の甲子園出場です!---』

 




オリキャラの中で最後になりましたが佳月のルートを示すことが出来ました。 これから段々と出していけたらなと思います。

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