*
『--甲子園行きを決めたのは、親切高校!!見事接戦をモノにしました!星英、連覇ならず!!』
「よっしゃあ!勝ったぞぉ!」
主審の判定に寺河さんはマウンドで声を上げる。
「やったな、皆」
マウンドに駆け寄った仲間に基宗先輩が語りかける。 こういう時も冷静なんだなって思ったけど良く顔を見てみると笑みを堪えているのがわかった。 その様子に思わず小さく笑いを零す、坂内さんも気付いたようだ。
「--俺たちの夏は続いている。このまま上り詰めよう」
勝って兜の緒を締めよ、との言葉通り坂内さんは既に先を見据えている。 対戦相手への礼儀も欠かさない。
「2-0で親切の勝ち!礼!」
ありがとうございました、と礼を終えてから漸く実感が湧き上がってくる。
---星英に勝ったんだと。
「湊叶」
電光掲示板を眺め、感慨に浸っていると背後から声をかけられる。
--この声を聞くのはいつ以来だろうか。
「翔馬…」
振り向いた先に居たのは自身の双子の兄--天道翔馬だった。
「1つだけ言っておく。今回だけだ。俺たちが負けるのはな。--次は
「違うよ翔馬。次も
「ふん、言うだけなら誰にでも出来る。…最後に、もう1つだけ。--甲子園、頑張ってこいよ」
「--当たり前だろ。翔馬たちの分までやりきってくるさ」
僕の言葉に翔馬は笑みを浮かべてベンチにへと歩いて行く。 左手に力が入っているのが遠目でもわかる--それでも涙を見せないのはエースとしての意地なんだろうなって思った。
翔馬がベンチに入って行くのを見届けてから僕も向きを変え、ベンチへと引き返す。
「湊叶」
また不意に声をかけられる--亮だ。
「やったな甲子園」
「うん。やっぱり先輩は凄いなって思ったよ。坂内さんは翔馬の動揺を逃さずに2打点だし、寺河さんは完封だし、基宗さんもずっと落ち着いていた。何か、凄い人たちと野球をしてるんだなって強く思ったよ」
「そんな事言われると、今すぐにでも戻りたくなるな。--もうすぐ俺もそっちに向かう」
「うん、待ってるよ」
スタンドとグラウンドという近い様で遠い距離。
去年の夏は僕がスタンド席からマウンドに立つ亮を見ていた。 今年は2人で立つつもりだったけど、形は去年と逆のものになってしまった。
その事がこの僅かな距離に重みを感じさせる。 気持ちを背負うということは誇らしさと同時に責任を強く負う。 その事がただ身に染みた。
---絶対足は引っ張らない。
そう強く決心して僕は球場を後にした。
星英高校 対 親切高校 -- 親切高校 勝利
星英 000000000 0 4 1
親切 10000001✕ 2 6 1
坂内大也 4打数3安打2打点1本塁打
*
熱戦の余韻が冷めきらない翌日、紫杏に労いの言葉と共に新聞を手渡された。
--内容はこうだ。
『星英高校、まさかの予選敗退。2年生エース天道翔馬2失点。8回2失点と粘りの投球を見せるも打線は親切・寺河梓真の前に沈黙。親切は6対4で星英優位という下馬評を覆し、この投手戦を制した---』
『「双子対決!!」--制したのは弟・湊叶の親切高校!星英主将・小鉢涙無し「完敗です」---』
『熱戦制す!鉄腕・寺河9回4安打13K!3年目にして遂に才能が開花!女房役・主将坂内も2打点!試合を2人で決めた!---』
と、数種類の新聞があるがどれも書き方は違うものだった。
「大変な試合だったな。見ていてハラハラしたぞ」
「そうだね。僕もずっと緊張してたや」
「初回の立ち振る舞いから見てそうは思わなかったがな」
肩を竦める動作をして紫杏は少しおどけてみせる。
「あー、粘ったやつか。あの時は集中してたからなぁ」
「朴木さんたちも褒めていたぞ」
「朴木?」
はて、とここで僕は首を傾げる。
朴木なんて名字は早々いないし、心当たりがある人物が一人いる。
「その人って、風来坊みたいな人?」
「何をもって風来坊と定義しているのかわからんが、特徴と言えばテンガロンハットを被っていたな」
「…会ったのってその人だけ?」
「夏目准さん、野崎維織さんといった方々と知り合ったよ」
「あー…そうなんだ」
「どうかしたのか?」
「ちょっとね。--嬉しいなぁ何て思ったりしてさ」
「そういう事か。自身の知人が応援に駆けつけてくれるのは頼もしい。それに、力になるものな」
紫杏の言葉にうん、とだけ返して晴れ渡る空を見上げる。
---そっか、観に来てくれてたんだ。
維織さんはほんとにマイペースで、基本移動は家と書店と世納さんの経営する喫茶店にしか足を運ばない。 それはまるで遠前町から出るのを拒んでいるかの様だった。
だからこそ昨日の試合を観に来て貰えたというのは素直に嬉しいものだ。
朴木さんが徐々にだけど、維織さんを籠の中から連れ出そうとしてくれているんだな、という事実に胸が熱くなるのが分かる。
まだ始まったばかりだ。 ここで満足していられない。
甲子園ではもっと頑張らないと。
准さんも観てくれているみたいだし、気は抜けない。
ほんと、やらかしてしまった時が怖いんだ…。
*
「はー、全く凄い勢いだな」
誰も居ない静かな屋上でふーっと、大きく息を吐き出す。
その主は乾勝利だ。
予選準決勝では完投をする等と甲子園出場の大きな原動力となった。
決勝戦では中盤以降、ブルペンに入り“いつでも登板できる”という圧力を星英に与えていた。
当然新聞にもその事は記載されており、2年生ながら中心メンバーとして活躍した勝利らは教室で歓喜の渦に揉みくちゃにされた。
現在勝利らのクラスに居る野球部員はと言うと--乾、越後、佳月、神谷、天道、友沢、荷田、本庄といった面々である。
騒がれるのも無理はないだろうという話だ。
その中でも特にナオが凄まじいものだった。
自分の事のように喜んでくれるのは嬉しいが、ちょっと行きすぎだというのが勝利の心境である。
人の声援や期待を浴びることに慣れていない勝利はただただこういう時は、はにかむことくらいしか耐え忍ぶ術を知らない。
とりあえず少し休もうと、足早にベンチにへと進み始めたところで声をかけられる。
「お久しぶりです乾君。随分と疲れているようですね?」
声の主に向かって成るべく笑顔を作りながら返答する。
「あぁ。参ったよ、あんな経験は初めてだ…」
「クスクスクス、何だかこんな風に疲れている乾君は面白いですね」
「ははは…まぁさらが笑ってくれるなら俺はそれでいいよ」
「ふふ、あ、遅れてしまいました。--甲子園出場おめでとうございます」
「ありがとうさら。小学校からの夢がもう叶ったもんだから、何だか不思議な気分だよ」
「それだけ乾君たちの力が上がったという事ですよ。私は向こうに駆けつけることは出来ませんがここから応援してますね」
「うん、ありがとうさら。今は気合を入れればどこまでも入る気がするし、凄く気持ちが滾っているんだ。この調子で臨みたいって思うよ」
「お勉強の方もそれくらい熱心に取り組んで貰えると助かるのですが」
「ぐ…それは手厳しいな」
「クスクスクス、冗談ですよ」
それから2人はたわいもない話に花を咲かせていた。
---ほんと、前と比べて笑顔が増えたな。
以前のさらは名前を呼ばれるだけでそれはもう顔をリンゴのように赤くして走り去って行ったものであった。 それと比べると随分と慣れたように思う。
話し始めてから何分が過ぎただろうか、いずれにしよ屋上に到着してから幾分かの時が流れた。
嵐前の静けさとは、この事を指すのかもしれない。
その緑色の少女は勢い良く扉を開け、屋上にと姿を表した。
(…何か音がするなぁって思っていたらやっぱりナオか。これは大人しく出ていくべきだな。)
さらに小さな声で「またな」と伝え、奥からナオの前へと姿を見せる。 建物の構造上、勝利とさらが居た場所はナオの位置から丁度死角になっていた。
「あ!見つけましたよ勝くん!随分とナオっちから逃げ回ってくれましたね〜」
「違う違う、俺は人混みが苦手だから少し風に当たりに来ただけだよ」
「む〜、それなら仕方ないですね」
ちょっとテンションについていけなかったと言うのはグッと堪える。
「とにかく、教室に戻りましょう。皆待ってますよ?」
「あ、あぁ、わかったから袖を引っ張るな!服が伸びる!おい、ナオ…ぬぁー!」
勝利に有無を言わせずナオはどこにそんなに力があるのかと思わせるような怪力を見せ、勢いそのまま勝利を連れ去ってしまった。
「乾君は…おね--高科さんと付き合っているのでしょうか?」
残された少女--
*
ここ親切高校にはちょっとした森が校内に広がっている。 それは本来男子寮と女子寮を隔てる目的で作られたものであったが、校風が変化し、校則の変化も伴ってその森はかつての要塞の様な使われ方はしなくなっていた。
森林の中を少年2人が歩いている。
--神谷宗太と本庄翔である。
久しぶりの休日、2人はそれを先日の決勝戦ですり減った精神を回復する為に使用していると言ったところだ。
暫く歩いた所で2人の歩みが止まった--別れ道だ。
「翔は、海を見に行くんだっけ?」
「うん。海は僕を独りにしてくれるからさ」
「何か深いこと言ってるっぽいけど、あんまりわからないな」
宗太は小さく笑い、翔に手を振って森の奥へと進んで行く。
その姿が見えなくなってから翔はひっそりと呟く。
「--嘘も方便ってね」
・・・
翔と別れた後、宗太は深い森の中を歩いていく。 キャンパスを覆う大きな森とそれらを囲う壁の存在。 それが大きくこの学校の特色を示していた。 この学校の実態が世間に流れていなかったのはこう言った徹底ぶりからであった。
--そんな森の中に1つ奇妙な空間が存在する。
本当に森の奥地、しかし女子寮から適当な距離を保っているその場所は地面がしっかりと踏み固められて草は生えておらず、木の葉や枝が引き千切られてその空間には日が差し込めていた。
この場所は元来この様な状態では無かった。 元々木々が少なかったという所はあるかもしれないが、それにしてもこの様に開けていることは無かったのだ。
「…はぁ、はぁ…ふっ!」
この場所を作り上げたのは現在この場で何やら動作を繰り返している1人の少女だ。
彼女の動きは独特で、それは所謂古武術と呼ばれるものであった。
動作の主--大江和那はこの古武術の正体である---イバラキ流短槍術の継承者である。
彼女はここでの修行を日課としており、槍の代わりに物干し竿を用いた鍛練は木々を相手にして力を付けていた。
彼女の姿を確認し、宗太は息を潜めて近くにへと歩み寄る。
そして息を深く吸い、不意に声を発する。
「こら!ここで何をしている!この場所は生徒は立ち入り禁止となっているはずだ!」
「ひっ!か、堪忍や〜」
「ははっ!やっぱり、思った通りの行動を取ってくれたな」
上手くいったと、意地の悪い笑みを浮かべて目の前でうずくまっている少女を見る。
「な、何や宗太君かいな!心臓が飛びでるかと思ったやん!3年は寿命が縮んだ!どないしてくれるねん!?」
「馬鹿だなぁ、心臓は飛び出ないし、寿命は縮まないぞ」
「言葉の綾ってやつや!」
はー、全くと言い、頭を擦りながら和那は言葉を続ける。
「それより、宗太君こんな所に居てええの?」
「何でそんなこと聞くんだ?」
「いやだってその、甲子園出場を決めて野球部は今校内のそこら中で引っ張りだこやん?」
「何だその事か。それならもう充分喜んだし、言葉も受けた。いつまでも浮かれている訳にはいかないからな。ミーハーの担当は湊叶や信弥に任せるさ」
「ミーハーって、そこまで言わんくてもいいんとちゃう?」
「んー、少し言い過ぎたか?俺は思ったことをそのまま口にしただけなんだがな」
神谷宗太は現実主義者である。
それは物事を贔屓目無しで捉え事が出来るという事だ。
宗太の性格はとても真っ直ぐ--自分に正直と言ってもいい。 思った事を隠さずに相手に臆することなく言葉を述べる様は真に自分を持っている者と言っても過言では無いだろう。 宗太が最近自治会に顔を出すようになったのもその性格の為である。
「悪いな嘘が下手で」
「下手に誤魔化すより、余っ程その方がええよ」
和那は優しく語りかける。
宗太の言動は優しさから成り立っているのに和那は気付き始めているからである。
「ふーっ、実の所な、教室は騒がしいから逃げてきたんだ」
「何や、やっぱりそんな所やと思ってたわ」
「おろ、バレてたか。そういやこの間購買で---」
先ほど彼女に述べた「いつまでも浮かれている訳にはいかない」という言葉に嘘はない。
気負い過ぎるのもダメだが、しっかりと気を整えようという心構えだ。
それをするには自身が心を許している人と話す等してリラックスするのがいいと宗太は考えている。 それに、和那は武道家としての一面もある。 心の保ち方等で得られることは多いだろう。
・・・
「相変わらずここは落ち着くね」
「翔か。--改めてだが甲子園出場おめでとう。本戦も是非頑張ってくれ」
「うん、もし出番が回ってくるなら全力を尽くすよ」
「そうか。…座らないのか?」
「あ、うん、座るよ」
ザザーンと波の音が聞こえる。
そう、ここは文字通り断崖絶壁に位置している。
親切高校の立地は特殊になっており、女子寮の更に奥に進むとその先には海が広がっている。
この切り立った崖に近づこうとする人間はかなり少ないと思う。だが、翔の左隣に座る女性--天月五十鈴は少し変わっていた。
『ここは何も無いところだが、不思議と落ち着くんだ。柵は無いし、確かに危険はある…しかし、それが良いのかもしれない…こうして崖の端に立っていると、自分という存在の小ささが垣間見える気がしないか?』
初めてこの場を訪れた際、五十鈴に述べられた言葉だ。
翔は決して学力が低いわけではない、寧ろ最近は伸びてきており優秀と言ってもいいだろう。
それでも突然のこの言葉には困惑を示す他無かった。
「前に、天月…こほん、五十鈴が言ってたことがあるだろ。--自分という存在の小ささが垣間見えるって言葉。あれについて少し考えたんだ」
翔はついこの間、五十鈴を名前で呼ぶ許可を得たが、元々それほど女性と話すことが無い為まだ呼び捨てに慣れていない。
「…ほう?」
「何となく言いたいことがわかった気がする。海は、自分を独りきりにしてくれるんだなって。自分自身について見直す場なのかなってさ--どう思う?」
「驚いたな。私もその考えとさして違わないよ。ここに居るとな---」
数十分くらい経過しただろうか、五十鈴は話を終えると満足そうな笑みを浮かべた。
「甲子園、私も応援に向かわせてもらう」
「それは、尚更頑張る理由が出来たな」
「実はな、私の幼少期の頃の話になるんだが親友と呼べる友達がいたんだ。--その友達が進んだ高校が甲子園に出場する」
「え、何て高校?」
「球八高校--彼女とは
「そんなことがあったんだ…」
「気にしないでくれ。瑠璃ちゃんはその先で元気に過ごしているらしい。ついこの間手紙が届いてな。彼女の進学先が球八高校という事がわかったんだ」
「球八高校か…その子は応援に来るの?」
「野球部のマネージャーをしているらしい。運が良ければスタンドで会えるかもしれないからな。その面でも甲子園には期待している」
「…会えるといいね」
「…うん、先のことなのにもう楽しみにしている自分がいる」
「大丈夫、会えるさ」
---全力を尽くすだけだ。
太陽の光を反射して、銀白色に輝く水面を見て翔は強く心にそう刻み込んだ。
*
着々と日は過ぎて行き、遂に僕たち親切高校野球部は移動日を迎えた。
出発の前にと理事長、校長、紫杏と3人から激励の言葉を一言ずつ貰ってからバスに乗り込む。
応援団は自治会が抜粋し、試合前日に到着する予定となっている。
甲子園大会は例年通り8月6日に開催されることが決定している。
新たに選出された
・・・
帝王実業高校
「へぇ〜、弟が出てくるんだ。久しぶりだな、なぁ蛇島!」
「そうですね、シニアの準決勝以来…楽しみです」
蛇島と呼ばれた男に声をかけるのは、昨年度の夏の甲子園大会覇者である帝王実業の2年生エース--藤内直哉だ。
「親切と言えばあの友沢も進んでいたな。エースの寺河って人も良い投手らしいし、骨のある試合になりそうだ」
「そうなるといいですね (ククク、誰が来ようと優勝するのは我らが帝王実業と決まっている。なぁに、邪魔をするやつは壊してしまえばいいのさ)」
善が存在すれば悪もまた居ると言うのは至極当然の話なのかもしれない。
「(精々頑張るがいい…友沢亮)」
友沢に対して優秀選手賞を奪われたという認識を持っている蛇島。 その眼は紅く、そして鋭い物へとなっていた。
2年生左腕ながら最速144km/hを計測するエース藤内を要し、今年も帝王は優勝旗を獲りに行く。
・・・
聖タチバナ学園
「聖ちゃん新聞見た!?」
「あぁ、見たぞ。三重からは親切が出てくるな」
「あの強力打線が全国の強豪にどれだけ通用するか見物だな」
「何余裕ぶってるのよ岬君!貴方は立ち上がりが課題なんだからそれを克服してから大口を叩きなさい!」
「…そんなつもりで言ったんじゃないんだけどな、いや参ったなぁ」
「まぁまぁみずきちゃん、岬もそれは分かってるはずだよ。」
「ダーリン、貴方も素振りの手が止まってるわよ?」
「うっ…厳しいなぁみずきちゃん」
天城岬はスロースターターである。
この前の親切高校との練習試合ではそこを付かれ、失点を許してしまったが秘めている能力は非常に高い。
1年生の頃から試合に出場している--試合慣れをした選手たちがどこまで伸び伸びと試合を出来るかが鍵、と監督である大仙はコメントをしている。
---注目は主将を務める神木 翼。
・・・
パワフル高校
古豪パワフル高校は復活をかけた大きな試合に勝利し、甲子園出場を決定した。
昨年度は予選決勝戦にてライバル校である“あかつき大学附属高校”に惜しくも敗れたが、今年は体制を立て直して見事に勝利を収めた。
中でも大きな原動力となっているのが4番としての仕事を果たす主砲--大力颯呂だろう。
今大会既に5本の本塁打を放つなどして注目を浴びている。3番に座る観月春や、5番に入った新1年生の東條小次郎も加え、打線に厚みが増している。
この打線を抑えるのは一苦労となりそうと思われる。
投手も鈴本を中心に安定したものにと仕上がっている。
・・・
球八高校
決して整っているとは言えない設備の中で戦ってきた高校が存在する。
その高校は人数が大会参加が認められる10人しか存在せず、圧倒的不利と呼ばれる中前評判を覆し、愛知県予選優勝候補であった海洋学院高校を破って出場する。
その高校の名は--球八高校。
「はい、ドリンク。あんまり練習しすぎたらダメですよ?」
「サンキュ
「
「大丈夫だよ。それに瑠璃花が俺の力になってくれるんだろ?--なら絶対に大丈夫だよ」
「…そうですね。貴方がそう言うんですもの、私はそれを信じます」
「ありがとう瑠璃花」
「おーい、いつまで惚気けてるんだ?キャプテンがノックしないと始まらないぞ」
「悪い悪い、今すぐ行くよ」
「…もうすぐ会えるね、鈴ちゃん」
伝説の少年野球チーム“ガンバーズ”を率いて、見事最後の大会で優勝を収めた時の立役者--柊和弥は今度は球八高校を率いて再び全国の舞台へと戻ってくる。
しかも今回は南雲瑠璃花も同伴だ。
以前よりも数段力が付いているのは目に見えるだろう。
今大会が初出場となる球八高校、どのように甲子園に旋風を巻き起こすのか。