ダイヤモンドを駆け抜けて   作:かりんと。

20 / 29
「週刊パワスポーツ」--スカウトとは何か

*

 

季節は夏真っ只中--8月。 この時期になると兵庫県西宮市のある場所に大勢の人々が集まることがある。

 

それは全国に数多く存在する高校野球部の中で--今年の夏の頂点を決める勝負が繰り広げられるからである。

 

この記事を読んでくれている読者の方々は9割方存じている事だと思うが、万が一知らない方が目を通してくれていることもあると考え先述を述べさせてもらった。

 

今回、本来球団スカウトの立場にある私 影山がこの記事を書くことになったのは1つの理由がある。

 

記者とは違う視点--スカウトとしての立場からみた選手たち、甲子園の様子を書いてほしいとのことだ。

 

早速だが、私の視点から見た甲子園について記述していこうと思う。

 

*

 

我々にとって甲子園とは--選手の質がはっきりと表れる場だと認知している。 スカウティングをするに当たって、選手の能力は非常に大事だ。

 

まず私たちスカウトという者は各プロ野球球団に所属している球界関係者の事を指す。

 

スカウトとは名の通り、自分が所属している球団に「有望な選手」を引き込むための係のことだ。

 

各球団のスカウトは、それぞれ10人前後存在し、北海道・東北、関東、関西、四国、九州といった各地区を担当している。それらのスカウトの目に止まれば、より選手の情報を引き出そうと、スカウトが試合や練習を見に球場等に足を運ぶことになる。

 

その年々で注目される選手は勿論変動する。

 

そこで重要視されてくるのは--如何に早く有望株の選手を見つけ、話を持ちかけるかにある。

 

ドラフト会議にて、指名された選手が入団拒否を表明することはままある事だ。 それを避けるために、なるべく早く目を付け、私たちは貴方の事をしっかりと評価しているということを示す必要があるのだ。

 

では我々スカウトがどの様な点で選手を評価していくか--まず投手から述べたいと思う。

 

投手として、スカウトの目に止まるポイントは投げるボールのキレ、速度そして、野球センスやスケール感の大きさ。

 

高校野球界にも、150km/hや140km/h台後半のボールを投げる投手が存在する。

140km/h台後半と言えば、プロ野球の投手の中でも速い方にあたるが、速い球を投げるからといって、我々スカウトの評価がそれほど高くないことも珍しい話ではない。

 

先程記述した様に野球センス--つまりこれからの伸び代等も重要な要素の一つを担ってくる。

 

良く「完成された」等と言った言葉が使われるが、我々からしてみるとそれはどうだろうと言う意見を持つ。

 

高い完成度を持つ投手は確かに存在する---これについては野手も同じく---ここ最近の投手で言えば2年前に甲子園を制した「あかつき大学附属高校」の当時のエースにして、現在猪狩カイザースにてプレーしている猪狩守が上がるだろうか。

 

しかし彼の様な存在は--非常に稀有である。

 

毎年ある程度騒がれる選手と言うのは登場するが、それでもある程度は底が知れているという者が多い。

 

--周囲の期待に応えようとし、自滅する選手は珍しくないからだ。 それはつまり、余りに過度な評価の仕方は--選手を潰してしまうこともあるという事。

 

酷な事を言っているように見えるだろうが、そうではない。 純粋にその選手の事を評価して判断をしている。 勿論我々だってスカウトとしての誇り(プライド)をかけて、1位指名する選手を選出するが、そこには球団側の事情等も関係してくるということを少しだがここに落としておくことにする。

 

その点で、猪狩守は頭抜けたモノを持っていた。

 

彼の様な存在で漸く「完成度が高い」と言えるのかもしれない。 一度高い者を見れば、それに類似するもので無ければならないという心理描写が働いているとも取れるが、目指す場所は彼だ。

 

それが誰が言ったか知らないが、彼の同年代を「猪狩世代」等と評するところに表れているのだと思う。

 

選手としての質--それを見極める為にも実際に足を運んで観察することが大事になってくる。

激戦を勝ち抜いてきた精鋭の集まりの勝負を見れる場所--甲子園はまさにその行為にうってつけなのである。

 

投手について続けようと思う。

 

プロ野球界には、140km/h前後のスピードでも、1軍で活躍している投手が多く存在する。投げるボールのキレが良かったり、抜群のコントロールを持つからだ。

 

先述の通りスカウトは、投手を見る時、球速よりもストレートや変化球のキレに注目をする。

 

例えどんなに球速が速くても、ボールのキレやコントロールが悪ければ、プロ野球で活躍は出来ないからだ。

 

精密さ(コントロール)は、プロ入り後にも磨くことは出来るが、ドラフト候補となる目安としては、右投手で140km/h、左投手で135km/h以上の球速があり、ボールにキレがあることが大きなポイントになってくる。

 

続いては打者にポイントを当ててみようと思う。 これは守備位置(ポジション)も多い為、様々な競争が行われる。

 

打力がある。 足が速い。 肩が強い。

 

この3点は非常に重要になってくる。

 

打球が速いということは、バットを振るスピードが速く、かつ、バットの芯に当てるのが上手いという証拠になる。

プロ野球の投手は、投げるボールにキレが存在する為--スイングスピードが速く、かつ、芯に当てるのがうまくなければ、入団しても1軍で活躍することは難しいとされる。

 

変化球を打てることも大切だ。 日本の投手は、変化球を投げることが多いので、アマチュアレベルの変化球を打てなければ、プロでは必ず通用しないと言っても過言では無いだろう。

 

本塁打の多さは、相手投手の問題もあるので、あまり問題にはしないが、それでも無いより多い方が良い。 勿論、全国大会で本塁打を打てば注目されるが、それより重要視するのは飛距離。

 

日本には--遠くへ飛ばせる選手が少ない。

 

同じホームランでも飛距離の出る選手はスカウトの目に止まりやすいのだ。

 

他にも色々な点は存在するが、大事なのは投手同様に野球センスと呼ばれるものだと私は思っている。

 

投手、打者を問わず、野球センスやスケールの大きさを感じさせる選手は我々スカウトに期待を持たせる。

 

野球センスの良い選手とは、一般的に何をしても上手い選手の事だ。あれこれ考えなくても、体が勝手に反応するような選手で、一般的には「持ってうまれた才能」と言われる。

 

一言で言えば「天才」というものだろう。

 

スケールの大きさを感じさせる選手というのは、一般的に「やわらかいバッティングをする」、「動きがしなやか」、「ひじの使い方が柔らかい」などといわれる技を持つ選手を指す。

 

身体の使い方が柔らかく、野球のプレーにも柔軟性が存在する。そのうえで、実際の身長より大きく見える選手は、スカウトの目にも止まりやすい。 等身大より大きく見えるというのはそれだけで武器になる。

 

例・相手投手が近くに見える → 威圧感が凄い 等。

 

結論として両者に求められるのは個々を強く示す--圧倒的な武器が必要という事。

 

---どんなものでもいい。

 

我々スカウトを「これは中々」と唸らせることが出来る武器を持っていること。

 

これが今後活躍していく目処の立つ選手の特徴だ。

 

色々述べたが、これらは選手を思って述べていることだと言うことをどうか理解して欲しい。

 

私の記事に「何様のつもりだ」、「好き勝手抜かして」等と反感を持つ者も居ると思う。

 

そういう人たちは是非ともその熱意を野球にぶつける等して貰いたいと思っている。

 

我々スカウトとて数多く存在する野球ファンの1人なのだ。 活躍する選手が増えればそれは大きな楽しみとなる。

 

強い気持ちを持って、野球に臨んでいる選手を見れる場所が甲子園。

 

純粋に勝ち負けを楽しむも良し。

 

自分の推している高校を応援するも良し。

 

しかし--もし敗北した場合等に過度なバッシングを与えるなどと言うのは控えてもらいたい。

 

自分が好いているからと言って、その高校の選手たちを責めることは出来ないのである。

 

彼らは彼らで我々には知り得ない努力を積んで、“その場”に立っている。

 

場に立っていない我々にその選手を侮辱する権利は決して無いのである。

 

願わくば--「尊敬」の気持ちというものを持つことを忘れないで欲しいと思う。

 

これはスカウトとしての言葉ではなく、野球ファンとしての純粋な心からの気持ちである。

 

重複するが勝負云々より、選手の質が試される場所。

 

我々スカウトはその様に甲子園を捉えている。

 

そこで繰り広げられる激闘の数々、生まれるドラマと野球ファンを魅了するものが多いのも甲子園の魅力だろう。

 

長々と綴ってしまったが、我々スカウトも根っこは野球が大好きと言うことを知って貰いたい。

 

私の言葉に矛盾が生じていても、仕事と私情は違うと寛大な言葉で許して貰えると嬉しく思う。

 

最後にだが、今大会にて私が注目している選手を記述して行きたいと思う。

 

「彼ら」は中学時代の時から評価していた選手になる。

 

評価はCからSの区分で行っている。

 

藤内 直哉

・178cm 75kg

・左投げ左打ち

・投手 最速144km/h スリークォーター

・帝王実業高校

・U-15の日本代表。守護神として活躍。

・現在は先発完投型

・打たせて取るの省エネがモットー。しかし、大事な打面では三振を獲りに行く心の強さを持つ。

・横変化を好んで使う。

・球種はツーシーム、H(高速)シュート、カットボールが現在知られている。

・直球に拘りを持つ。

・1年秋まではシュートのみだったが、オフにフォームを見直すことによりカットボールを習得。

・1年時、甲子園春夏連覇。

・評価 S

 

観月 春

・180cm 75kg

・右投げ左打ち

・投手 最速145km/h オーバースロー

・パワフル高校

・U-15のエースを務めた。

・大きな縦変化「Vスライダー」が決め球。

・先発完投型

・打者としても非常に能力が高い。

・投手は鈴本もいる為、野手として出場することが多い。

・球種は直球とVスラのみ。不器用だが変化量はかなり多く、直球より精度が高い。

・評価 B+(仮---現在は肩を怪我しているため。)

 

大力 颯呂

・185cm 80kg

・右投げ右打ち

・内野手 三塁手(内野はどこでも守れる。)

・猪狩世代「波羽 風蕗」と同じく“パワプロ”のあだ名を持つ。

・天性の飛ばし屋。

・チャンスに非常に強い。

・強靭な手首(リスト)を持っており、それを活かして逆方向にも強い当たりを放つことが出来る。

・中学時代3連続本塁打を記録したことがある。

・評価 A+

 

寺河 梓真

・182cm 70kg

・右投げ右打ち

・投手 最速147km/h

・親切高校

・中学時代から光るモノを感じさせていたがここに来て漸くその才能が開花。

・珍しい球種「フォッシュ」を操る。

・指につけた滑り止めをふっと、吹き飛ばす癖がある。(これにより、スイッチが入る。)

・捕手坂内と息ピッタリの投球を見せる。

・奥行きの存在を使い始めた。

・評価 A

 

坂内 大也

・175cm 70kg

・右投げ右打ち

・親切高校

・強肩硬守の扇の要。

・大きな試合に出場するのは今回が初めてだが、この世代のNo.1捕手と言っても過言では無い。

・監督、仲間からの信頼は厚い。

・右打ちが上手く、安定感がある。

・リードに定評有り。

・セカンドへの送球は2秒を切る。

・女性ファンが多い。

・評価 A+

 

友沢 亮

・182cm 78kg

・右投げ両打ち

・U-15 日本代表

・投手 最速135km/h(1年時)

・親切高校

・中学時代投手として活躍していたが、高校2年夏(現在)は野手に転向している。

・走攻守揃った天性の安打製造機

・高校生にして独自のスタイルを確立している程才能を感じさせる。

・来年のドラフトでの上位指名が確実とされている。

・評価 A+

 

天道湊叶

・172cm 60kg

・右投げ両打ち

・内野手 (遊撃手・二塁手)

・親切高校

・シニア時代全国ベスト4を経験。

・俊足、堅守を誇る。 グラブ捌きに定評がある。

・昨年度準優勝校星英に双子の兄がいる。

・スナップスローが得意。

・非常に「眼」が良いが、パンチ力にかける。

・評価 B

 

神木 翼

・173cm 65kg

・右投げ左打ち

・内野手(三塁手)

・4番打者としては小柄な体格だが、打席に入るととても大きく見えると彼と対戦した投手は語る。

・投手との駆け引きの上手い珍しいタイプ。

・長打より巧打が光る。

・チャンスにとても強く、得点圏打率は地方大会では8割に達した。

・カーブを打つのが非常に上手い。

・評価B+

 

柊 和弥

・177cm 68kg

・右投げ右打ち

・投手 最速140km/h スリークォーター

・球八高校

・「神童」のあだ名を持つ。(ALBプレイヤーの神童とは関係無。)

・元プロ野球選手水木を養父に持つ。

・少年野球チーム「ガンバーズ」の主将を務め、全国大会優勝を成し遂げた経歴を持つ。

・U-15にも選ばれた過去があるが、辞退している。

・七色の変化球を操る。

・無名の球八高校を甲子園へと導いた原動力。

・評価 A++

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。