話の進行に合わせて変わって行くかも知れません。
練習に混ざれる様になり、本格的な練習が始まった。
車坂監督の野球スタイルは
『打って、打って、打ちまくる!』
みたいだ。 マシンの速度を135km/hから140km/hにセットし打撃を行う。
入部してからかなり経過したが130km/h超の球を打つなんてまだまだ厳しい。
テストの時も厳しかったけど、バットに伝わる衝撃が中学の時の非じゃ無い。
目は慣れてきてもそれを引っ張る力はまだ無い。
偶にヒットが生まれるけど、大半が内野ゴロやフライだ。 このままじゃ『凡打製造機』みたいな感じで呼ばれてしまう。
痺れる手を振りながら先輩と交代する。
「余り気にするなよ天道。」
ヘルメットを脱ごうとすると坂内さんに声を掛けられる。
「最初は打てないのが普通だ。幾らシニアなどで鳴らしていても最初は壁にぶつかる。“身体の成長”というな。同じ高校3年生でも身体の成長が止まっているか、まだ出来ていないかで差が大きくでる。キャプテンは身長は止まってるだろうが体重はまだ増えるな。だから焦るな。これから作っていけばいい。」
「で、でも翔馬は!」
「目の前で“兄”であるあいつにあんな活躍をされ、刺激を受けたのはわかる。1年生であの投球が出来るのは歴代でも稀だろうな。今年プロ入りした猪狩守以来の本格派サウスポーと言ったところか。あの地肩の強さは確かに抜けている。しかしそんなあいつにも弱点は有るんだ。まず第一にスタミナが無い。よって長いイニングスを投げきれない。この前も継投で逃げられただろ? 2つ目に、ほぼ完成してしまっている。1年にしてあの能力だが、逆に言ってみれば伸びしろが少ないんだ。」
僕はそれを黙って聞いている。
「今から悲観することは無い。自主練だってしっかりやっているし、学業面も問題無い。焦らずに、じっくりと、身体を作っていけば必ず通用するさ。」
「あ、ありがとうございます!とりあえず筋トレしてきます!」
「余り無理はするなよ。」
(まだ筋力が足りず飛距離こそ出ていないがあのミート力。ほぼ確実に芯の近くで捉えていた。上っ面に当たったり下面に当たっていたのもあったが。俺もコンパクトな振りを意識して見るか。)
簡素な作りの室内練習場に入り、筋トレを始める。
チューブトレをしてからダンベルをゆっくりと上げる。 その時に先ほどの会話を回想する。
不思議と胸のつっかえが取れた気がする。
言われて見れば確かに色々と焦っていた気もする。ゆっくりと登っていけば良いんだ。 その歩みを止めなければ、いつかは追いつく。
そして追い越す。 それに“あいつ”にも負けない!
ゆっくりと負荷を掛けながら次のトレーニングであるバーベル上げを行ってからケアをし、切り上げることにした。
*
「ちゅ、中間テストー!」
夜の親切寮外で勝利の声が響く。
「うん。あと1週間後だよ。今回のテストは範囲も狭いしアドバンテージが取れる。だから明日から1週間は自主練時間を削ってでも勉強しないと。」
練習に合流したと思えば直ぐに中間テストが控えていた。
「げぇ、部活が出来ねぇじゃん。それは困るな。」
「あっ、赤点とったら補習だから頑張らないと。」
「ほ、補習!練習が出来ねえじゃないか!」
「同じようなこと2回言わないでよ…勝利、授業中ちゃんとノートとかとってる?」
「いや、とってない。絶賛睡眠時間だ。」
ヤヴァイ。分かっていたけどヤヴァイ。
これは間違いなく赤点コース。暫く勝利と越後、岩田の顔は見れそうに無いな。
「だぁー!何でこれがこうなんだよ!因数分解って何だよ!自然のままにしておけよ!」
「全くやれやれだぜ。」
部活も停止し、みんなで集まり放課後の教室で勉強をしている。
今は勝利と越後に亮が数学を教えているところだ。
「ふっ、この問題を作った人は馬鹿だな。馬鹿に違いない。」
「何当たり前なことを言ってるんだ乾。俺たちが解けない問題を作るなんてやれやれだぜ。」
あ、やばい、亮がキレる。
ゴゴゴゴゴっと、何やらオーラが出てるよ。
「いいかァ、お前らァ!基本問題もろくに解けていないじゃあねぇか!いいから、黙って解いてろォ!」
「「は、はい!!」」
…速報、亮の口調が壊れる。
このままだと僕に飛び火しかねないし集中しないと。
僕も数と式は曖昧だからな。 しっかり復習しておこう。
「いいか、湊叶。数学ちゅうのは何も頭の中だけで考えるんやない。図に表したりするのも大事や。例えばこの集合の問題なんかはド・モルガンの法則を使ってやなー」
だ、ダメだ。基礎問題すら厳しい。
やばい、頭がショートしそう。
と、とりあえずテスト範囲のワークを解きまくろう…
キーン コーン カーン コーン
「つ、疲れたでやんす。」
テストが終わると荷田君がこちらにやって来た。
「やはり、1日に5教科テストがあるのはキツいな。」
亮が伸びをしながら言った。
「同感や。わいも数学は自信あるけど、他の教科があかんわ。」
「って、ことは6教科死亡じゃん(笑)」
あ、宗太のやつエグいな、傷を抉った…
翔は普段と変わらない様子だし、平均より少し上くらいと見た。
「てか、明日もまだ3教科有るんだよな…」
肩を落として宗太が言う。
「全部で8教科か。中学の時より大変だな。」
あ、亮の口調が戻った。
「これが期末だと12だっけ?それくらいになるんだよな…辛いわ。」
ずーんと言う効果音が似合いそうな今の宗太は萎えている。
その気持ち、わからなくも無いけど…
「責めて2教科ずつ、4日に分けるとか、初日3教科、残り2教科的な感じに分けて欲しかったね。」
最後の僕の言葉にクラスのみんなが おお! と反応を見せる。
「次の自治会会議で一応言ってみるよ。」
「頼むわ。こんなんばっかやとテストの度に疲労するからな。」
「さて、そこで伸びている乾と越後を起こそう。あと15分くらい休んだら勉強するか。」
「だね。」
明日は数学が2つある。数1はまだ解けるけど、問題は数Aだ。しっかり集合を叩き込まないと。
というか、それより何で普段6限なのに今日は5限だったんだ?それなら僕がさっき言ったようにすれば良かったのに。
*理事長室
親切高校理事長の山県剛司郎は不機嫌だった。
窓を開け、今どき珍しいパイプをふかしている。
右足を子気味に揺らし床をノックする。
山県がイラついているのは先ほどの教育委員会との会話が原因だった。
数分前
「さてさて、本日見学していただいてどうですかな、この学校は。」
「いやぁ、誠に素晴らしい。この国で失われつつある規律、そして集団への奉仕精神!この学校こそが教育の防波堤であると本日、私は確信致しました。」
「校長先生、校長先生。文部科学省の方も、このように、このように仰ってくれておるぞ。」
「はい、ありがとうございます。」
「ただ…少し気になることが。」
「む、何かね?」
「この国は男女共学校でありますよね?しかし、今日拝見した限りでは少々実態に問題があるのでは、と。」
申し訳なさそうに進言してくる文部科学省の方の表情に思わず眉間にシワがよる。
「我が校のオリジナル制度、気に…気に入らんかね?」
「私個人の意見ではともかく、上の方に報告するとなるとその…問題になるかと。」
心配そうな表情を見、嘘はついていないとわかる。
しかし…
「そもそもこの学校が手本、手本にしたのは、戦前の英国パブリックスクールなのだよ。ワシがそこに在籍していた頃はそもそも男子のみの学校でね。そもそも学問というのは男の…」
「ああ、わかります、わかります。そういう時代でしたからね。ですが、ほら。今は男女同権の時代でして。」
「そ、その考え自体が間違っておる!若い男女が席を同じくするなど。」
いつの時代も男が上でなくてはならない。
キャプテン・シーを発揮し、女性を引っ張らなければならない。
そして『親切の心』を持つことが大事だと山県は考えている。
「まあまあ理事長。それで、教育委員会としては現状の改善を要求するのですかな?」
「まぁ、そういうわけでして。」
顔をしかめて山県は答える。
「わしは、わしは些か不愉快だ。校長!後は任せる!」
バタンと扉をしめ、校長室を後にし理事長室に向かう山県。
「…まぁ、理事長は強固な教育理念をお持ちの方ですからな。」
「その、ぶれない姿勢はまことに結構だとは思うのですが。…それで、大丈夫ですか?」
「こういう日が来るのは予想しておりましたから。まぁ、お任せ下さい。」
「すみません、ではお願いします。」
「ええ。遠いところまでお越しいただき有難う御座いました。今教員に遅らせるので少しの間お待ち下さい。」
「御丁寧に有難うございます。それでは失礼します。」
そして、今に至る。
「理事長。」
「…不本意だが会議を行う。文部科学省の方とも連絡を取り合って、より良いパブリックスクールを目指す。」
「分かりました。ではあと10分後に会議室で会議を。他の教員たちも直ぐに集まるでしょう。」
ニコッと微笑む元田校長。
まるでこうなる事がわかっていたかの様に。
「では行こうか。」
パイプを片付け、窓を締める。
上着だけ替え、元田校長の後をついていく。
議論は何回かにわけて行う方が良さそうだと、少し笑みを浮かべてから山県剛司郎は会議室に入って行った。
* inパワフル高校
「ナイスボール!いい調子だな!“鈴本”!」
「まだまだですよ。次行きます!」
ワインドアップから右腕を振るってボールを投じる。
半速球のボールは捕手の手前で不規則に変化する。
「くっ!」
「だ、大丈夫ですか!」
「ああ気にするな。それにしても相変わらず取りづらいったらありゃしないな。それだけ打ちにくいって事だ。」
「僕の中学3年間の集大成ですからね。」
「ああ。それにしてもお前をこれ程本気にさせた天道湊叶ってやつは凄いんだな。」
「はい。今まで見た中で最も優れた1番バッターでした。結果的に打たれたのは4番でエースの友沢亮ですけど。」
「あ、そいつは聞いたことがあるな。」
「去年のベスト4ですよ。投打のセンスが半端無かったです。優勝した上野シニアのエース藤内も凄かったですけど。」
「確か“帝王実業高校”に行ったやつだったな。」
「そうです。セカンドの蛇島も一緒に。」
「で、大輔、お前と組んでたやつは“聖タチバナ学園”だったか?」
「はい。キャッチングセンスが抜群で-っと、つい話してこんでしまいましたね。次行きます!」
ストレートを投げ込み、汗を拭う。
(聖…そっちはどうなんだ?)
昨年のシニアリーグのベスト8チーム佐八シニア。
その主力であった“鈴本大輔”と今打撃練習をしている“
類まれなるパンチ力を持っている天性のアーチストである大力。名前通りパワフルなバッティングが売りだ。 因みにあだ名は『パワプロ』といい、大力からパワフル、颯呂のふろをとってそうなったらしい。
本人も最初は嫌がってたらしいが、周りに浸透してしまったので諦めたそうだ。
何はともあれ彼らが全国に知れ渡るのは早いだろう。
*in聖タチバナ学園
たたたたた、と学園の廊下を水色のサイドポニーを揺らしながら1人の少女が走る。
「やっほー聖!」ポン
左肩を叩かれた紫色のハーフアップの少女がビクッと身体を揺らす。
「な、何だみずきか。脅かさないでくれ。」
「あれ?何でそんなにテンション低いの?」
「別に低くない。みずきが高いだけだ。」
「何か引っかかる言い方ね。」
「それより早く練習に行こう。今日も投げ込みとランニングだ。」
「今日も“ダーリン”達は守備練習?」
「多分そうだと思うぞ。初心者もいる訳だし、守備だけはそこそこのレベルにしとかないとって神木がぼやいてたからな。」
紫色のハーフアップの少女が続ける。
「正面の当たりをエラーされた大変だし、みずきへの負担を減らす為だそうだ。」
「さっすが“ダーリン”!よ〜し、聖!早く行って投げ込みましょう!」
「ああ!」
グラウンド
「あ、みずきちゃんに聖ちゃん。」
2人の少女がグラウンドに着くと同時に、部室から『Tb』の文字が入った帽子を浅くかぶった灰色の髪の少年が出てきた。
「遅かったね。生徒会?」
スパイクの紐を結びながら少年が問う。
「そうよ。私は昼休みの残りを、聖は先生に頼まれて少し用事をしてたんだって。」
「ふむふむ。」
紐を結び終えた少年は立ち上がり、バッティンググローブを手にはめ始めた。
「じゃあ、俺はみんなにノックをしてるから、2人は軽くアップをしてきて。今日は実践練習するからみずきちゃん頼むよ。」
「まっかせて!その代わり手加減しないからね!ダーリン!」
「そう来なくっちゃ!」
橘みずき・六道聖・そして“ダーリン”と呼ばれた
*in帝王実業高校
カァン!カァン!と打球音が鳴り響く。
「何やってるんだ!今のは回り込めば取れただろ!逆シングル何て格好つけるな!」
鋭い打球が内野陣に降り注ぐ。
「よぉーし!蛇島ナイスキャッチだ!上がっていいぞ!」
帽子をとりニコッと笑みを浮かべ守木監督に礼をしてからベンチに戻る。
蛇島桐人
昨年のシニアリーグの覇者である上野シニアの4番セカンドを務めていた選手。
青色のオールバックで、瞳は細く紅い。
ブルペンで投げ込んで居るのは蛇島と同じく上野シニアの主力の
左投げのスリークォーターで、左投手には珍しい“あの球”を中心としたインコース攻めの強気なピッチングスタイルの投手。
燃えるような赤髪に、水色の瞳のイケメン。
3年生のエース志摩と共に甲子園を狙う!
後半はライバル高校の主要キャラ紹介です。
詰め込みすぎてgdgd