とは言っても、佳月の彼女はまだ登場しないです。 もう少しです。
星英戦の後日、飯占キャプテン達3年生は野球部を引退した。
飯占
「本日で俺達3年生は野球部を引退する。それで次のキャプテン何だが、坂内!お前に任せたいと思う。それと副キャプテンとして基宗!それと寺河を推薦したいと思う。坂内は主軸と投手陣の纏め、それとチームを引っ張って貰うことになるからな。掛かる負担も大きいだろう。基宗達を中心にして、しっかりとフォローしてやってくれ。」
はいっ!と僕らは返事をする。
飯占
「引退と言っても、大学のセレクションや社会人野球、一応俺はプロを目指してるからな、身体を鈍らせないように顔は出すからな。」
坂内先輩が新キャプテンとしての抱負を述べ、坂内さんをキャプテンとした新チームが始動した。
長谷部
「寺河ちょっといいか。」
寺河
「あ、はい。大丈夫です。」
長谷部
「この前の試合はほんと済まなかった。一人で乱れて挙句の果てにチームを敗北させたからな。…寺河。これからもお前はエースを張るだろうけど、要らないエゴは捨てろよ。間違ったプライドは滑稽なだけだからな…まぁ、俺が言えることじゃないけどな。呼び止めて済まなかったな。哀れな先輩の戯言だと思って聞き流しといてくれ。」
寺河
「いえ、ほんとそう思いますよ。だから俺は捕手のサインには首を振らないんです。一人じゃ勝てないから。」
長谷部
(…やっぱこいつには適わないな。)
長谷部もまた今日で親切のユニフォームを脱ぐ。 エゴを捨てた彼はまだ成長するだろう。
*side乾
俺は今、モップを片手に持ち、廊下にぶちまけられたワックスの掃除をしている。
何故こうなったかと言うと、話せば長くなるのだが話そうと思う。
話は少し遡る。
「だぁ、面倒くさいな。無駄に飛ばしやがって、と言うか早くネットの穴を修繕しろよ。」
俺は不平を漏らしながら先輩、飯占キャプテンが飛ばした打球を拾いに森に向かっている。
外野ネットは高く普段は森に行くようなことは無いのだがたまにこういう事があるのだ。 今回の場合はネットに空いていた穴が原因だ。
勢いよく転がり、穴を通過したボールはめでたく森に消えていきましたとさ、はぁ、ほんと面倒くさい。
ボールを探して森に入ると視界の中にボールが飛び込んできた。
「とりあえずあって良かった。さて拾って帰るか。」
ボールを拾い、グラウンドの方角を振り向いた瞬間
「あわわわわっ、助けてです!」
「え?」
俺が不意を突かれ上げた素っ頓狂な声は頭上からの襲撃により無かったことになった。
咄嗟に、俗に言うお姫様抱っこの姿勢に入り受け止める体制を作る。
-が、体制が悪かった点、想定外の衝撃により耐え切れず地面に倒れ込む。
「あいたたた、うっかり足を滑らしてしまいました。」
薄目を開けると同時に鈍痛が身体を襲う。 受身が取れなかった為、強かに打ち付けた様だ。
「怪我はないか?」
俺の声に反応し、緑髪の少女がこちらを振り向く。
「あ、はい、傷1つありませ-あー!すみません!助けて頂きありがとうございます!」
緑髪の少女は俺の身体の上からサッと飛びのき、頭を下げる。
「いや、それなら良かった。」
ゆっくり身体を起こし、両手でユニフォームについた土を落とす。
「あ、これ。」
緑髪の少女は傍に転がっていた硬球を拾い上げ俺に手渡してくれた。
「ありがとな。っとまだ自己紹介をして無かったな。俺は乾。乾勝利だ。勝利とかいて、
「私は高科奈桜をと言います。ナオっと気楽に呼んで下さいね。」
「ああ、よろしくな。俺のことも好きな呼び方でいいぞ。」
「はい、わかりました。勝っくん。」
「え、今なんて言った?」
「え、ですから
俺は暫し呆然とした。
「え、えっと何で勝くん?」
「乾君の下の名前は勝利ですよね。その勝を音読みして勝くんです。」
なるほど、と思わず頷いてしまう。
「まぁ、ナオが呼び易いのならそれでいいぞ。」
俺はポリポリと頭を掻きながらいう。
呼び名なんて、そんなに深いものじゃないしな。
「ん?そういえば何でナオは木の上何かに居たんだ?」
その質問をした瞬間、明らかにナオが動揺した。
「え、えっとですね。そう!鳥を観察していたんです!」
「鳥を観察していた?」
「はい!所謂バードウォッチングです!」
「へぇ、なるほど。鳥を観察ね。そう言えば先週の昼休みも森に居なかったか?」
「え、何故ですか?」
「いや、屋上で因数分解について、一人で不平を零していたら緑髪が見えたからさ。」
何かしてたのか?と付け足す。
「い、いや、別に何もしてないですよ。今日と同じバードウォッチングです!」
「へぇー、ナオは鳥を観察するのが好きなのか。」
「ええ。まぁ、そんな感じです。」
(隠密術の練習をしてたなんて、口が裂けても言えないですね。)
「え、何か言ったか?」
「い、いえ何も言ってません!」
「そ、そうか、それなら良いんだけど。」
「あ、勝くん。そろそろ練習に戻らないと不味いのでは?」
あっ、と思わず声を出す。
「そうだな。そろそろ戻るわ。じゃあ、またなナオ。」
「ええ、本当に有難うございました。」
俺はナオに手を振って、その場を後にした。
帰ったら飯占キャプテンに遅いと怒られてしまった。 解せぬ。
「あ、そう言えば何であいつはあんな所に居たんだ?鳥くらいならこんな場所まで来なくとも居るだろうに。」
ナオと別れた今では真偽を知る術はない。
高科奈桜か、面白いやつだ。 さてと、練習に---
…湿布貼ってからにしよう。
ナオと会うのに日はそんなに経たなかった。
あれから1週間後、暇つぶしに森を散策していると古い校舎を見つけた。 恐らく旧校舎と言ったところだ。
地面が抜かるんで居たので少し慎重に成りながら校舎の周りを歩く。
「あれ、ここだけ真新しい。」
裏側に回ると、明らかに不自然。 壁の一部だけが綺麗に塗装されていた。
「ドアもあるし、もしかして外に出られるのか?」
ドアノブを手にとろうとしたその時、
「ふぅ、疲れたですよ。流石にこれだけの量を運ぶのはナオっち一人では骨が折れますね。」
と聞き覚えがある声がした。
ガチャッと音を立てて、ドアが扉が開く。
「ただいまですよ〜。」
「おかえり。」
「え?」
「え、な、何故勝くんがこんな
「それは俺もお前に言いたいよ。まずその荷物は何だ。」
・・・・・と沈黙が流れる。
「こ、これはですね…お菓子です。」
お、あっさり口を割ったな。
「ふーん、まぁ、俺は監督生じゃないし、取り締まるつもりは無いが、幾つか質問させてくれ。」
「まず何で外出出来るんだ!この扉は何なんだ!一体どうなっている!」
「あー、えっとですね。不思議ですが扉は新しいままそこにかけてありました。だからナオっちが設置したんです。因みに鍵は自分で作りました。工作が上手だなナオと褒めてもいいんですよ。自慢ですけど、技術は5でした。」
「あ、そうか。うん、凄いな。」
「あれ?思ってたより反応が薄いですね。」
「え、あぁ、まぁな。じゃあ2つ目だ。何でお前はこんな所に居る。と言うか金はどうしてるんだよ。帰省のバス代とかは金庫に保存されてるはずなのに。」
「ふふん、ナオっちを舐めないでくださいよ。いいですか-」
そこから15分弱ナオは話し続けた。 大まかに言うとどうやらナオは友好関係をより良くする為に頑張っているらしい。その一貫で“新聞部”もやっているみたいだ。 この学校は文化部が無いので、自称って点が有るけど。 それと俺はどうやら面倒くさい奴に関わってしまったらしい。
「さ、勝くん撮りますよー。」
カシャっとカメラのシャッター音が鳴り、ナオがニコッと微笑む。
いや、キュピーン!と目を光らせていた。
その笑みに気づいたのはナオと別れてから、つまり今日だった。
廊下を歩いていると、ふと目に緑髪が目に入った。
ナオだった。
「あ、勝くんこんにちはです。」
「あ、おう。」
何かおかしい。 物凄く違和感を感じる…
あ…
「おいナオ!何でお前ここにいるんだよ!」
そう。違和感の正体はそれだった。
本来なら男女が完全に分離されているこの学校。
一般的に男子校舎と呼ばれるこの棟にナオが居るのはおかしいのだ。
そしてその理由も下らないことだった。
「ったく、お前は…」
その時だった。
「むっ。そこの女子生徒!すぐさまこちらにこい!」
大河内先生に見つかったのは。
「あ。ヤバイですね。逃げましょう!勝くん!」
「え?」
声を出すや否や、俺は制服の襟を捕まれ無理矢理引っ張られていく。
「ちょ、ナオ、首が締まる!」
一体どこにこんな力が有るのやら。
「おい、そこのお前!早く止まれ!」
「あはは、止まれと言われて止まる乾じゃないですよ!」
「ちょ、何で名前出すの?!」
ふとナオが足を止めた。 急に止めたもんだからこっちは加速が付いている。 ぐぇっ、と思い切り首が締まった。
「あー、ありましたよ。これで対応しましょう!」
そう言ってナオは白い液体を撒き散らし始めた。
伝家の宝刀---ワックスである。
「さ、逃げますよ!」
「え、俺も?」
「当たり前です。それとも-あの時の写真をばらまかれたいですか?」キュピーン
「やめてください!」
後ろを振り向くや否や、全力でダッシュする。
が、
「あ″…」
何故か後方にもばらまかれていたワックスを踏んだ俺は---盛大に廊下にスライディングした。
「あ、ごめんなさいでーす!」
謝っている素振りを見せるものの、ナオの足は止まらない。 すばしっこいやつだ。
「さて、乾。後片付けをして貰おうか。」
後ろを振り向くと、大河内先生の姿があった。
あ、所々濡れている。 …先生も転けたのか。
そんな訳で今に至る。
とりあえず廊下に撒かれたワックスは勿体無いので、そのままワックス掛けをしている。 丁度掃除も終わった後だしな。
でもそれより…このワックス塗れの制服をどうにかしたいな。
*side本庄
何時もの様に森林浴をしていた。
少し言い方に語弊があるな。 これは森林浴なんて大それた物じゃない。 ただ気の向くままに森を歩いているだけなのだから。
それにても…
「不味いな、迷ったぞ。」
不覚。 いつもと違うルートにしたらまさか迷ってしまうなんて…ドーベルマンを避け、人目を避けていたら完全に日が暮れてしまった。
顎に手を当て思考を巡らせる。
とりあえず来た道を戻ろうか。 いや、暗すぎてよくわからないな。 まぁ、いい。 とりあえず一歩を---踏み出した瞬間、俺は何かにぶつかった。
「うっ…」
ん、人の声だ。 それも女子の---
「す、すみません。あのお怪我は、」
衝撃で振らけている女性を受け止める。
「あ、ああ。大丈夫だ。済まない私の不注意だった。」
「いや、俺も見てなかったからおあいこ様だよ。」
雲の切れ目から灯された月明かりが俺達を照らす。
(すっごく綺麗な子だ…。)
月明かりに映された彼女は神々しさを感じるほどに美しかった。
「あの、名前を伺っても良いかな。」
「ん、ああ、別に構わない。天月五十鈴。1年だ。」
「俺は本庄翔。君と同じ1年だ。部活は野球部に入ってる。…天月さんは何部?」
「私は陸上部だ。一応推薦で入って来たからな。」
「へぇ、短距離?」
「うん、よく分かったな。」
「はは、たまたまだよ。」
俺が言い終わると同時に誰かがやって来た。
天月さんは俺を茂みの奥に押すと凛とした表情を作った。
「誰がそこにいますの?」
「私です、天月です。」
現れたのは女の先生。 一目見ただけで分かる。 ガミガミと説教するタイプの人間だと。 俺の予想は当たり、話は30分にも及んだ。 怒り疲れたのか、女先生は帰って行った。
「もう出てきても大丈夫。」
その言葉に俺は茂みを越えて、先程まで先生が居た場所に向かう。
「ごめん。俺だけ隠れて。」
「気にしなくていい。いつものことだから。それより君が出てきた方が余計にややこしくなる。」
「あー、違いないね。あの先生なら…」
「それと気になっていたのだが、本庄、お前はどう言う目的でこの森を歩いていたんだ?」
「ただ気が向くままに歩いていただけだよ。森を歩くのは好きなんだ。」
「なるほど。しかし余り深入りするのは得策とは言えないな。先程の様なことにもなるし、ドーベルマンに見つかりかねないからな。」
「それもそうだね。あ、そろそろ戻らないと。それじゃ。」
「ああ。こんな学校だからもう会うことは無いと思うが。」
天月さんに手を振りながら、俺は寮へと急いだ。
因みに着いたら8時半だった。 危ない危ない。
天月五十鈴さんか、それにしても可愛い子だったな。
乾君のルートは奈桜桜空でした。
本庄君は天月五十鈴ルート。
神谷君は以前登場した和那ルート。
佳月君は三橋妙子ルートとなっております。
因みに友沢くんは橘みずきとなっております。
次話で、1年生編は終了です。