これはバケモノの子の二次創作です。基本的には原作に沿ってますが時々大きく外れます。
※注意!!!!
お父さんが蓮に誤解されてしまいます。嫌な方は出来るだけ見ないようにしてください。
知らない人たちがオレと母さんのマンションに入ってきた。家にある物を全部ダンボールにつめこんで、ガムテープでダンボールをとじてつみ上げていく。
母さんの服も、母さんの靴も、母さんのベッドも全部部屋の外に運んでいく。
「そろそろ行くぞ。蓮」
おじさんがオレの名前を呼んで、うで時計を見た。引っこし会社の人たちに作業を指示しているのは本家の親せきたちだ。
「……」
オレは答えずに、まどに近い部屋のすみで体育ずわりをして下をむいていた。
「あの、これ、どうしましょう?」
引っこし会社の人がこまった様子で聞く。
「ああ、それはこちらで運びます」
本家のおばさんの声がする。そっちを見ると母さんののどぼとけを入れた分骨つぼと写真立てに入っているまだ生きていた時の母さんの顔写真。
「蓮、母さんが突然いなくなって寂しいかもしれんが、交通事故だから仕方がない。お前は本家が後見人になって引き取る。いいな」
そうおじさんが言う。
「あなたはウチの家系唯一の男の子で、大事な跡取り。これから何不自由なく育ててあげるから」
おばさんが言う。
アルバムから何まいか写真がおちる。まだ前の小さなアパートにすんでいた時の、父さんと母さんと3人でとった写真だ。
あのころは楽しかった。オレはまだ小さかったし、なにより3人でちゃんとくらせていたんだから。今、こんなことになるなんて思いもしなかった。
「蓮! わかったら返事ぐらいしろ!」
おじさんが大声を出す。
前もこんな大声を出したのを、オレはよくおぼえている。急にアパートに弁護士を連れて乗りこんできて、むりやり父さんと母さんを引きはなした。
それはたぶんオレが『家系唯一の男の子で、大事な跡取り』ということと関係がある。そのせいで母さんはずっと泣いていた。いつもそうだ。この人たちは自分の思い通りにするときに、同じ声を出す。
でもオレは本家の親せきより父さんの方がムカついた。あの時なんで母さんが泣いているのに何もしなかったんだ?どうしてこいつらの言うことにしたがったんだ?
「父さんは何でこないの?」
「あいつのことはもう忘れろ」
「なんで?父さんは父さんだ」
「母さんとあの人が離婚したの、知っているでしょ?親権も裁判所がこっちって認めたの。もう赤の他人なのよ」
むりやり父さんと母さんを引きはなしたのにおばさんが言う。この人たちのところに行くなんてぜったいイヤだ。
「なら、一人で生きてく」
「蓮!言う事を聞きなさい!」
「お前らのところになんて行くもんか! お前らなんて大嫌いだ!」
言いおわる前にオレは外に飛び出していた。
一人で生きてくと言ったけどオレは父さんを探していた。父さんの会社はこのへんにある。オレは父さんに会うために会社までの道を走って行った。
暗くなってきた。もう夜になったんだ。あれから走って父さんの会社に来た。車できた道は歩いてくるととても長かった。
会社の前ですわって父さんをまつ。会社の入口をじっと見たまま。長い間まっていると父さんが会社から出てきた。オレは立ち上がって声をかけようとする。
「父さ……ん?」
オレの目にありえないものが写ってきた。父さんが……あの母さんと仲の良かった父さんが、オレの知らない女の人と一緒に出てきた。女の人から手を組んでいるけど、父さんも照れていて嬉しそうだった。
「蓮!?どうしてこんな所にいるんだ?母さんはどうした?」
父さんがオレを見つけて声をかけてきた。オレはそれに何も答えられなかった。
母さんと離婚してまだそんなにたってないのに、父さんはもう他の女の人とつき合ってるの?母さんが死んじゃったっていうのに!
「大っ嫌いだ……」
「……え?」
オレは父さんをにらみつける。父さんはおどろいて声を上げる。
「父さんなんて大っ嫌いだ!」
オレはまた走り出す。
「あっ! 待ってくれ蓮! これはご……」
父さんが止めようと走ろうとしたけど女の人がだきついていたから、すぐには動けなかったみたいだ。その間にオレはうらろじに入って行った。
父さんからも逃げたオレはシブヤに来ていた。歩いていると親といっしょにいるやつらを何人も見た。そいつらの顔は幸せそうで、のんきで、うれしそうだった。胸の中から声がした。
(大嫌いだ)
何かが暴れだしている。
(大嫌いだ……大嫌いだ……)
そいつは外に出たがっている。とびらを強い力でたたいている。じっと、がまんしてそいつを止める。でも止めようとすればするほどとびらをたたいている。たたく力が強くなっていく。
(大嫌いだ……大嫌いだ……大嫌いだ……)
オレは気づいた。これはのろいだ。あのイヤな本家の親せきたちにむけたのろいだ。オレを助けに来てくれず、浮気していた父さんにむけたのろいだ。幸せそうで、のんきで、うれしそうなオレ以外の全てにむけたのろいなんだ。
のろいはむねのおくから何度もはげしくたたいてきた。苦しくてもうがまん出来なかった。はき出さないとバクハツしてしまいそうだった。
その時、すごい力が強くなって、のろいはついにオレのむねのおくから飛び出した。
「大嫌いだ!」
オレは、声に出してさけんでいた。まわりにいた大人たちはギョッとして立ち止まった。どうしたんだとこっちを見てくる。オレはその場からにげる様に走り出した。
橋の下の自転車が止めてある場所でオレはならんでいる自転車の間にすわって、組んだ手に顔をうめた。今日はここでねるしかない。もうつかれてクタクタだ。
そうしていると、だれかが近づいてくる。
「まったく何だっていうんだ。要は猪王山より強きゃいいんだろ?品格?意味わからねぇ」
「宗師さまも無茶言うねぇ。前にお前に弟子入りした奴はどのぐらい持った?」
「1ヶ月……1週間?……いや1日……」
「午前中だぜ、午前中!」
2人の男がサンダルの音を鳴らして、オレの前を通りすぎていく。1人は声が高くて早口だ。もう1人は低い声だ。たぶん体も大きいだろう。その男がわめく。
「メソメソ泣くような奴は嫌いなんだよ!」
「選り好みしてる場合か。こうなったらそこら辺の人間でもタワシでもつかまえて、弟子にするんだな」
「ああそうかい。わかったよ!」
声の低い男が急にふりむいて戻ってくる。
「おい冗談だよ、真に受けるなよ!」
男の足音が近づいてきて、オレの前で止まった。
「やい」
オレは返事をしなかった。
「やい、って言ってんだ」
男はドンと足を踏み鳴らす。声の通り大きな男なんだろう。地面がゆれた。
「おめえ、生きてんのか?」
「……うるせえ」
「口がきけるってこたぁ生きてるな?おっかさんはどうした?」
「うるせえ……」
オレに母さんのことを聞くな。
「じゃあおとっつぁんは」
「うるさい!」
父さんのことを聞くな!
「答えろ。おとっつぁんは」
「うるさいうるさいうるさい!」
オレはがまんできなくなって顔を上げた。
「これ以上話しかけたらぶっ殺すぞ!」
オレは男たちをにらみながら言った。
男たちは2人ともマントをかぶっていた。オレに話しかけていた男はふくろに入れた長い棒のような物を持っている。
「たいした鼻っ柱だな。面をよく見せろ」
大きな男はマントの下からゆっくりと手を伸ばしオレの顔をつかんで強引に引き上げた。
「バケ……モノ……!」
目の前のことが信じられない。男の顔がクマのようだった。いや、実際ににクマだった。茶色い毛のツキノワグマみたいな顔だった。
夜中の渋谷の何の変哲もない高架下。そこが、俺と熊徹の出会った場所だった。