最近オーバーロードの二次創作が多く投稿されているので情動的に、つい(その場にひれ伏しながら
大変申し訳ないのですが、続くかどうかは未定です。
――――――――――――――――――――――――――――――
西暦2100年代、人類の科学は更なる進歩を見せた。
しかし、それと引き換えに自然の環境は更なる悪化を伴った。
技術進歩の弊害で大気は汚染され、人工肺を手術で取り付けなければ外に出る事も危うくなり、星の見えた夜空は既に過去のものとなってしまった。
だからだろうか、人の娯楽は外へでは無く、屋内へと追及されていく傾向にあったのは。
DMMO-RPG ユグドラシルオンライン。
北欧神話をベースに作られた仮想空間で各々が一人の主人公として楽しめるこのゲームは爆発的な人気を誇っていた。
数百種類に渡る種族、二千を超える職業、更に各プレイヤーの技量があれば外装等が自由にカスタマイズが出来る。
この特色は多くのユーザーを魅了し、各々が自分だけのキャラクターを作成して世界に一つだけのキャラクターで冒険を楽しむ事が出来た。
そんな多くのユーザーの中に、〝彼”はいた。
自室でチェアに腰かけて専用の機械を身に着け、ユグドラシルの世界にダイブした〝彼”は現在、石造りの大きく開けた建造物の中にいた。
そこは〝彼”がプレイヤーとして作り上げた個人用の拠点だ。
しかし、その部屋は体育館の面積にも匹敵するほどに広く、一人で使うにはあまりにも大きすぎた。
しかも、この部屋以外にも複数の部屋があり、拠点全体の広さはもはや一つの学校の面積はあるだろう。
ギルドのみが作れるギルド拠点程の機能は無いが、課金に課金を重ねて隠密性と他プレイヤー達の侵入防止を完備させており、生半(なまなか)な事では侵入は出来ない造りになっている。
〝彼”の姿はまさしく異形だった。
全身を白と灰色の2色で彩られたその姿は飛蝗と言った表現が近い。2m以上の大柄な体格は逞しく、その表面を禍々しい外骨格の様な硬質物が覆っている。
紫色の大きな二つの複眼と額から延びる節くれた触角。両の肩から伸びる布状の物体は、まるで天女の羽衣の様に宙を漂っていた。
蟲王(ヴァーミンロード)と呼ばれる昆虫種族の最上位種がいるが、〝彼”の種族は違った。
何を隠そう、〝彼”は蟲に近い姿をしていても天使系列の種族なのだ。
―オルフェノク―、その様な名称を持つ〝彼”の種族は、人間を選んだプレイヤーが特殊な条件をクリアして死に、そして復活すると変異を遂げる風変りな種族である。
そんな〝彼”――プレイヤー名を〝ノア”と名乗る異形は、用意した格調の高い椅子に腰かけ、頬杖をつきながら〝それら”をため息交じりに眺めていた。
ノアの視界に並ぶそれらは灰色の異形達。二本の脚と腕を持ち、一つの頭部を持つという意味では人型であろうが、それら全てが全く違う姿形をしていた。
姿形は違うが、それらの異形は全て姿の大本であるモチーフがあった。
オオカミ・ウマ・ヤギ…………中には何をトチ狂ったのか、オクラをモチーフにしたものがあったが、全て動植物であるという事だ。中には神話にしか出ない生物が少し混じっているが。
その数は54体。
これらすべての異形もまたオルフェノクだ。
しかし、このオルフェノク達はノアが作った眷属達なのである。
〝使徒再生”。オルフェノクの種族スキルとして存在するそれは、プレイヤー以外のモンスターを殺す間際に行う事で一定の確率で己の眷属として生まれ変わらせる事が出来るのだ。
初めてその能力を手に入れたノアは、試しに何体か作成した後ある事を思いついた。
それは、外装のデータを書き換えやデータクリスタルを利用して、様々な姿と能力を持った眷属を作る事だった。
しかも見た目だけではない。各々の個性と能力を際立たせてちゃんと戦力としても数えられる強い眷属を、だ。
意気揚々と制作に乗り出したノアだったが、その道のりは困難を極めた。
必要とされる膨大なデータクリスタルの量、各個体の能力の辻褄を合わせるべく装備やアイテムを買い揃えるために繰り返される重課金、外見のデザイン。
ユグドラシルにのめり込んだノアは中途半端を嫌い、立派な眷属を作るために奔走した。
途中何度も折れかけはしたものの、結果、ユグドラシルプレイヤーの中で知り合った友人達の手を借りて現在の眷属達が出来上がったのだ。
――感無量である。
あくまでNPCであるため、プレイヤーであるノアが指示を出さなければ全く動かない銅像の様な存在であるが、拘り抜いたデザインと均一に並ぶその姿に、ノアはこの光景を見るたび何度も感動を覚えていた物である。
……だが、それも今日で終わる。
ユグドラシルオンラインが、本日0時をもってそのサービスを終了するのだ。
根強い人気を誇っていた大手ゲームも、12年の年月を得てとうとう終わってしまうのだ。
「……勿体ない」
動くはずの無い口部の外殻から悔いの念が漏れた。
奇しくも稼働開始をしていた当初から、学生の身分で始めはプレイしていたのにそれが終わりを迎えるというのは古参の身であるノアには残念でならなかった。
ユグドラシル2が出るという話も聞いたことが無い。となればこのゲームは完全に消滅してしまうのだろう。自分が今まで築き上げてきた12年間の思い出も。
何も思い出は眷属作成だけは無い。プレイしていく間に体験した冒険や、プレイヤー達と交わした友好の数々。瞼を閉じれば今でもあの楽しかった思い出が浮かび上がってくる。
そこでふと思い出した。
自分に良くしてくれた、あの友人達の事を。
既に自分も含めて皆が社会人となり、大半が生活の都合でユグドラシルから離れてしまったが、今でも現役で頑張っているプレイヤー達がまだいるのだ。
思い浮かべるのは一つのギルド。
ユグドラシル内でも悪名の高い、異形種のみで構成されたギルド、〝アインズ・ウール・ゴウン”。
悪名というのは、彼らがPKを積極的に行っていたからであるが、その構成員である41人のギルドメンバー達は、どれもが皆曲者ぞろいの面白い人達だった。眷属作成を手伝ってくれたのは、其処のギルドの人達だったのだ。
とある騒動で其処の構成員であるたっち・みーとの出会いを経緯に、よく彼らのギルド拠点であるナザリック大地下墳墓へ招待されたが、その中はどれもが趣向を凝らした素晴らしい出来だった。
おどろおどろしいダンジョンから趣味の良い洒落た王宮の如き建造物、そしてそのナザリックを守るモンスター、そしてそれらを統括する守護者達等、自分一人では想像もつかない世界は眷属作成に大いに参考にさせてもらった。
しかし、そんな素晴らしい出来だったギルドもメンバー達が徐々に抜けていき、現在はギルド長が一人で切り盛りしながら続けているのだ。
あれほどの大拠点を維持するのは生半可な物では無い。課金しなければいけないものもある筈だというのに、一人残ったギルド長は苦笑しながら大したことではなさそうに振る舞っていた。
――――きっと、ギルドメンバー達が戻る場所を守っていたのだろう。
ノアはメンバーの大半が欠落したナザリックにお邪魔した事があったが、其処でギルド長と話していた際、最盛期の頃のナザリックを懐かしそうに語ってくれたが、その背中は酷く寂しそうに見えた。
そんなギルド長、モモンガにノアはフレンドメッセージを送ろうとしたが、しかし止めた。
恐らく他の残ったメンバー達と最後の会話を楽しんでいる頃だろう。
仲間意識の強いモモンガが楽しんでいる所を邪魔するのは忍びない。
それに、ノア自身も目前に迫っているユグドラシル終了の前に、この場で自分が作り上げた眷属達と最期を過ごそうと思っていた。
アインズ・ウール・ゴウン以外の友人達にも別れの言葉は済ませてある。あとは、自分自身への別れを告げるだけだ。
ノアは椅子から立ち上がり、居並ぶ眷属達の元へ歩み寄る。
一体一体見落としの無い様に爪先から頭のてっぺんまで懐かしむように眺める。皆、手間暇のかかった、自慢の眷属達。
苦労をして作り上げた為か愛着が湧き、素晴らしい我が子を育て上げた父親の様な万感の想いすらあった。
視界の隅に映る時間を確認する。既に終了まで5分を切っていた。
名残惜しむかのようにノアが眷属達に振り向き、再び椅子に腰かける。
眷属達のデータは既に全体保存している。これを基に、ノアは眷属達のフィギュア作成を計画している。そういうサービスをしてくれる会社が存在しているのだ。
もう、1分を切った。
これが終われば、ノアはユグドラシルプレイヤーから一社会人、鈴木輝雄としての日々に戻る。
しかし、何年経とうともこの電脳世界で経験したことを忘れはしないだろう。
「さらばだ、我が愛しい子らよ」
最期に何か一つ、気取った事でも言ってみるとしよう。
そう思ったノアの口からこぼれた声は、言った本人でも予想外に父性愛に満ちた声が出た。
そして、ついに刻限となる。
別れを惜しみながらも静かに目を閉じ、ノアはリアルの世界への覚醒を待った。だが。
「……あれ?」
何やら様子がおかしい。
ノアは時間が経っても未だに意識の覚醒が来ない事に違和感を覚え、目を開き、驚愕した。
目の前の眷属達が、音を立てながら慌ててその場に跪いたのだ。
そんな命令を出した記憶は無いのだが……。
いや、そんな事よりも何故未だにユグドラシルが起動しているのだ?
まさか、運営側のサーバーダウンミスか?
しかし、そんな事があり得るのだろうか?
ノアは混乱しつつも、現状の事態を知るべくGMコールを試みようとした。
「お、王よ、今の御言葉は一体どのような意味なのですか?」
しかしそれは叶わない。
何故なら、いつの間にか眷属達の列から前に出ていた騎士の様な姿の馬型オルフェノクが、跪いた体勢のままノアへ話しかけていたのだ。
しかもその体は震え、凛々しい声は困惑と悲しさがない交ぜになったものだ。
まるで、親から見放されようとして絶望した子供のようにも感じられた。
よくよく見れば、他の眷属達も大小あれ、みなが困惑しているように見える。
中には鼻をすする音まで聞こえる始末。
ちょっと待て、これは一体どういう事なのよ?
感情があるはずのないNPC達が、まさかこんな態度をとるとは思わずノアは狼狽しそうになるのを必死で抑えた。
「王よ! も、もしや我らをお見捨てになられるのですか!? 何か我らにご不満がございましたでしょうか!? 貴方様の仰る事は何でも致します! ですのでどうか、我らをお見捨てにならないでください! どうか……どうかっ!」
眼の前で跪く馬型のオルフェノクの兜のような顔からポロポロと涙が床に零れおちる。それに連れられ他の眷属達までめそめそと泣き始める始末だ。
「い、いや。ちょっと……待って、待ちなさい」
54体の灰色の強面の異形達が一斉にすすり泣くこの恐るべき光景に、ノアは慌てて椅子から立ち上がると、彼らを慰めた。
「私は何処にも行かないから。今のは冗談、言葉のアヤ。だから、ね?」
駆け寄って馬型オルフェノクの背中を優しくさすり、他の眷属達にも先ほどの言葉を訂正する。
なんだこれ! どうなってんの!?
正直泣きたいのはこっちの方だと思いながら、ノアは眷属達が落ち着くのを待って今後の事を検討する事にした。
――――――――――――――――――――――――――――――
後書き
ネタとして前々から考えていた物をたまらず文にして投稿してしまいました。
流れなどはとっさに書いたものですので、色々とガバガバのふわっふわです(白目
主人公のリアルの元ネタは555に登場した彼です。文字違いですが、別の世界の彼という事で。
ちなみに仲間はモグモグしません。敵なら別ですが。