オーバーロード異伝 異形の天使たち   作:そよ風ミキサー

2 / 9
前書き

たたたたたっくん! 続いちゃったよ!?(顔面にアイロン痕を遺しながら

まさかの連続投稿、やれば出来るものですね。

本作に登場する各オルフェノクですが、原作とは似ている様な全くの別人だと思ってください。

――――――――――――――――――――――――――――――


第2話 夢の続きをしよう

「も、申し訳ございません! 王の前でこの様な情けない姿をさらしてしまい――」

 

「それはもう良い」

 

 

 眷属達が落ち着くのはそう時間を要さなかった。

 自分達の主が自分達を見捨てないと知るや、今度は無様な姿を見せてしまった事を恥じて猛烈な謝罪を始めた馬型オルフェノクに、ノアは手を横に振った。

 

 どっと気疲れが出たノアは、先程まで座っていた椅子に深く座り込むと、顔を片手で覆いながら部屋の天井を見上げる。

 

 

(落ち着け、今の状況を把握するんだ。そうだろう?)

 

 

 己に言い聞かせるように心の内で何度も呟く。

 そして深く深呼吸を繰り返していくと、ノアは次第に冷静さを取り戻していった。

 

 上げていた顔を戻し、再度眷属達を見る。

 落ち着きなおした眷属達は、己の命令を待つ臣下の如き様相で跪いたまま動く気配がない。恐らく此方からの指示を待っているのだろう。

 馬型のオルフェノクも取り乱していたのがうその様に、洗練された騎士の様な佇まいだった。

 ……様に見えたが、周囲から馬型オルフェノクへ責めるようなきつい視線の様なものが感じられ、当の馬型オルフェノクも気まずそうに見えた。

 

 

 何だかなあと思いつつも、ノアはある事を思い出した。

 この眷属達を作成するにあたってのキャラクター設定だ。

 

 せっかくだから外見だけでなく、中身の方もしっかりと作り込んでやろうと思い立って各々の設定項目に書き込んでいたのだ。

 一歩間違えれば若かりし頃の暗黒の思い出として闇に葬りたくなるような設定を作り出した事もあったが、あれはそのまま殴り棄てる勢いで消した記憶がノアには苦い思い出としてあった。

 

 ともかくとして、そのキャラクター設定によれば、馬型のオルフェノク、通称〝ホース”は生真面目で人当たりが良いのだが、真面目過ぎて時折感情が空回る事がある。と設定に書いていたはずだ。

 と、言う事は、今回はそれが悪い方向に生きてしまったという事なのだろうか。忠誠心に厚い騎士の様なキャラを目指したのだが、まさかこの様な姿を見せるとはノアは思いもよらなかった。

 

 

 だが、それらが反映したとして、何故それが眷属達に適応されたのだ?

 ユグドラシルのNPC達は、独自に感情を持ち、思考して会話をするほど高度な機能は備わっていなかったはず。もしそれがあるとすれば、ユグドラシルはすさまじい技術で作られたオーバーテクノロジーだという事になってしまう。

 

 だが、そんな事は今まで聞いたことが無い。まさか、その新機能を搭載したユグドラシルの新作がユーザー達に内緒でサプライズとして披露されたのかとも可能性を広げて見たが、企業がやるにして悪ふざけが過ぎるように思えた。

 

 そして何より問題なのは、ノアが改めて運営側への連絡を試みようとして全く応答がない事。

 さらに言えば、ログアウトすら出来なくなってしまっているのだ。

 

 

 しかし、それだけでは足りない。現状を知るには、情報が足りな過ぎた。

 そこでノアは、更なる一手を試みる事にした。

 

 

「ローズはいるか?」

 

「ここに」

 

 

 ノアは出来るだけ支配者の様な雰囲気で呼びかけた。どうやら自分に対して並々ならぬ忠誠心を感じた為、社会人の様な敬語で言葉を発するのが躊躇われたのだ。

 

 その声に応じたのは自信に満ちた男の声。眷属の中から姿を表したのは、バラの様な頭部を持つオルフェノク。

 全身が他の眷属より外殻が薄いスマートなデザインをしており、顔の上半分がガラスの様な透明な硬質物で覆われた姿をしている。

 

 眷属の名はローズ。ノアが作り上げた眷属の中でも指折りの実力を持つオルフェノクだ。

 ローズはノアの前まで来ると、優雅な動作で跪いた。

 

 ホースが騎士のそれならば、ローズは貴公子のそれだった。

 

 

「拠点の外の状況を知りたい。周辺を調べ、事細かに私に伝えるように」

 

「お任せください我らの王よ。このローズ、必ずや貴方様のご期待に添えて見せましょう」

 

 

 立ち上がり、深々とお辞儀をした後ローズはその場を後にした。

 本来ならば最低でも2名からのチームで行動させる事が望ましいのだが、ローズの場合単独行動の方が動きやすく、いざとなった場合瞬時に拠点へ戻る術があるため単独行動向きなのだ。

 

 

「他の眷属達はウルフ、ホース、ライオ、ドラゴンを指揮官とし、この拠点内の警備を勤めるように」

 

 

 次にノアはこの拠点内の防備を固める事にした。

 元々眷属達はこの拠点内の守護を主として続けているので、眷属達は本来の職場へ戻るようなものである。

 

 

「そしてゴート、お前は私の側へ」

 

「畏まりました」

 

 

 大勢の眷属達が部屋から移動しようとした際ノアが呼び付けたのは、穏やかな50代男性の様な声を持つヤギ型のオルフェノク、ゴートだった。

 

 ノアがゴートを側に置いたのは他でもない、自身の護衛兼執事として働いてもらおうとしたのだ。

 

 ゴートはモチーフこそヤギであるが、その戦闘力は眷属中最強だ。一番最初に作ったのがこのゴートだったという事もあり、ノアにとっては馴染み深い眷属でもあった。

 更に各眷属のまとめ役という設定もあるため、困った時は自分をサポートしてもらいたいというノアの密かな狙いもあった。尤も、実際は何処までやれるのか分かりはしないのだが。

 

 椅子に腰かけたノアの邪魔にならない位置に立ち、何時でも指示を仰げるようにと待機しているその姿をノアはじっと見た。

 

 足首や首周りに蓄えた毛皮、全身が外殻で覆われているが、頭部は何処かヤギの頭蓋骨を思わせるような作りをしており、左右の額からヤギの角に似た器官が伸びている。

 間違いなくこれは自分が作った眷属、ゴートだ。

 

 

「……如何いたしましたか? ノア様」

 

 

 長く見続けていたらしく、視線に気が付いたゴートが気遣わしげにノアへ伺ってきた。

 

 

「何でもな……いや、そうだな」

 

 

 誤魔化そうとしたノアだったが、思い切って訊ねてみた。

 

 

「お前達は私の眷属で、生きているのだな?」

 

 

 今までのNPC然とした様子ならばこの様な事、言うつもりは無かったのだが、あまりにも生き生きとしている為聞いてみたくなったのだ。

 ノアの質問にゴートは何処か面喰った様子を見せたが、次には優しい声音で答えてきた。

 

 

「勿論でございます。我ら眷属一同、偉大なオルフェノクの王であらせられるノア様によって創造され、命を授かった者達でございます。新たな命を与えてくださったノア様へ永遠の忠誠を誓う所存ですぞ」

 

 

 まさか、過去のユグドラシルの記憶があるというのか?

 些細な事でもこうして調べてみると、更に知りたくなることがボロボロと出てくる。

 

 それと同時に、其処まで言われたノアはゴートに対して何か言おうとしたが上手く舌が回らず、結局はそうか、とだけ短く返して終わった。

 

 ノアはゴートと言う眷属に対して、思う所がある。

 始めて作った眷属というのもあるが、それだけではなかった。 

 

 

――幼い頃に死に別れた、父の姿を重ねて作ったなど、例え口が裂けても誰にも言えない。

 

 

 ノア――鈴木輝雄は幼い頃に火災事故に巻き込まれ、両親と死に別れている。

 その際、母は炎に巻かれて先に死に、父が燃える自身の体を気にせず息子である自分を助けた後に息絶えた姿が否でも記憶にこびりついている。

 

 そんな過去を持つが故に、ノアは子供の頃は孤児院で育ったが、心に大きな傷を負った為満足に他者とコミュニケーションを取る事もままならない日々が続き、一時は完全に孤立した事もあった。

 その後は何とか持ち直して食い扶持を稼ぐ術を手に入れ、現在に至る訳なのだが、それでも完全に払しょくされたわけではない。ふと、何らかの拍子にあの恐ろしい過去が顔を覗かせてくるのだ。それだけ、目の前で親が焼け死ぬ光景が幼い彼には衝撃的であった。

 

 そんな最中に見つけたのがユグドラシルオンライン。そこで気晴らしにプレイを続け、異形種狩りに遭いながらもそれらをやり過ごして眷属作成スキルを身に着けた。そこで記念すべき最初の眷属のイメージに、密かにもう一つのコンセプトを込めた。

 

 

――強く、優しい父親。それがゴートを作成するにあたって秘められたもう一つのコンセプトだった。

 

 

 そしてゴートが完成した後、他の眷属を作り際にも似たような裏コンセプトをぼんやりと考えつつ制作を続けた。

 

 ぶっきら棒でも根の優しい眷属、偽悪的だが面倒見が良い眷属、その他etc……。

 

 そして気が付けば54体の眷属が出来上がった。

 そんな彼らが今、意思を持っている。

 

 

 ……だからもし此処がユグドラシルではなく、そしてリアルの世界に戻れなかろうと憂いは特に無かった。

 未知の新天地に放り込まれたという不安が大きな心配事だが、ノアは眷属達とこの世界で生きて行くのも良しと考えていた。

 

 

(この世界なら、寂しくは――)

 

 

 

 

 すると突然、頭に何者かの声が聞こえた。

 驚いたノアが改めてその声に耳を澄ませると、聞き覚えのある声だった。ユグドラシルのフレンドメッセージがこの様な形で機能したらしい。

 

 

 どうやら、この現象に陥っているのは自分だけではないらしい。

 ノアは不謹慎ながらもそれに安心してしまったが、気を取り直して声の聞こえる方へコンタクトを試みる。

 

 

 

 その相手はアインズ・ウール・ゴウンのギルド長、モモンガだ。




――――――――――――――――――――――――――――――
後書き

ヤギさんは不動の最強角。
ゴートはバットマンで言う所のアルフレッド、暴れん坊将軍ならば爺の様な立ち位置にしたいです。

ちょっと無理やり感がありますが、今作の輝雄さんはこんなキャラとなりました。
潜在的な眷属こと家族大好きなオルフェノクの王様。一人ぼっちにさせますと、頭の触角と背中の羽衣(?)が萎れます。

……だんご大家族を聴きながら書いたのは不味かったのでしょうか……?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。