オーバーロード異伝 異形の天使たち   作:そよ風ミキサー

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前書き


ナザリックのターンです。

そして書いて気が付きました。

シャルティアのなんちゃって花魁言葉が難しい!

おのれペロロンチーノ!(八つ当たり
シャルティアのセリフを考えるとき、何度詰まった事か!
おかげでセリフがごっそり減ってしまいました……。

それと、主人公ちょっと持ち上げすぎちゃったかなぁと個人的に思う所があります。

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第5話 ナザリック地下大墳墓の守護者たち

 広大な草原の地下に広がるナザリック地下大墳墓。

 その第6階層に建造されたコロッセオに、7人の影が円を描くように立っていた。

 

 それらは皆人間ではない。

 ナザリックの持ち主達が創造した、このナザリックの各階層の守りを命じられた階層守護者達なのだ。

 

 

「皆、これはナザリックにとっての一大事よ」

 

 

 その場で最初に言葉を発したのは、ナザリック地下大墳墓の全てのシモベ達の統括者であるアルベド。

 黒髪を腰まで伸ばした純白のドレス姿の絶世の美女と言うべき彼女は、頭部からヤギの角に似たそれを左右から一本ずつ伸ばし、腰から漆黒の天使の翼をはやした非人間種族だ。

 

 そんなアルベドは、縦に割れた虹彩を持つ金色の瞳が緊張を孕んで細まっている。

 

 

「……確かに、これは想定外の事態。しかし、我々にとっても、ひいてはモモンガ様にとっても喜ばしい事の筈だよ」

 

 

 優しげな声でアルベドの発言を嗜めるのは、ナザリックの第7階層の守護者デミウルゴスだ。

 東洋系の顔立ちをした頭髪はオールバック。丸メガネをかけ、明るめの三つ揃いのスーツを着たインテリヤクザじみた男の様に見えるが、この男もまた人ならざる者である。

 両の耳は細長く、腰から延びるフルプレートで包まれた尻尾がそれを証明している。

 

 

「そうは言いいんすが、デミウルゴスだってモモンガ様から聞かされた時は固まっていたじゃありんせんか」

 

 

 合っている様で、何処か間違いのある廓言葉(くるわことば)を使って茶化すのは、10代半ばを未だいかぬ銀髪赤目に白蝋のような肌を持つ美しい少女。

 ナザリックの第1から第3階層までの守護を任されたシャルティア・ブラッド・フォールンだ。

 露出の少ない黒のボールガウン、フリルとリボンがあしらわれた同色のボレロカーディガン、腕にはフィンガーレスグローブを身に着けどこかの令嬢の様な佇まいをしたその少女の口から、人間ではありえない様な鋭い牙が覗かせていた。

 

 

「シャルティアぁ、あんたエラそうな事言ってるけど人の事言えないじゃん。……そりゃああたしもモモンガ様から話を聞いたときは驚いちゃったけど、さ」

 

 

 そんなシャルティアに物申したのは、スーツを着込んだ少年の様な外見の10歳程度の少女だ。

 金髪に褐色の肌を持ち、その両の瞳は金と紫のオッドアイ。極めつけは、両の耳が人間よりも長い事だ。

 少女の名はアウラ・ベラ・フィオーラ。ナザリック第6階層の守護者である。

 

 

「ヌゥ……アノ御方カ……」 

 

「こ、コキュートスさん、どうしましょう……」

 

 

 困惑気に声を漏らすのは、ナザリック第5階層の守護を仰せつかっているコキュートス。

 2.5mにもなる巨体を持つ、人型の昆虫と言う言葉がまさに当てはまる異形の存在。4本の腕を持ち、腰からは先端にスパイク付きの尾が伸び、冷気を纏わせた全身はライトブルーの外殻を持つ。

 

 そして、そんなコキュートスの様子に気弱な様子で問いかけるのは、アウラと同じナザリック第6階層の守護者マーレ・ベロ・フィオーレである。

 丈の短いスカート姿の大人しめの少女に見えるマーレの姿はアウラと同じ褐色の肌に金髪、そしてオッドアイと長い耳を持つ。アウラの〝弟”だ。少女の姿をしているのは、造物主の趣味が反映されているのである。

 

 

 各階層守護者達が持ち場を離れ、こうして一堂に介しているのにはわけがあった。

 つい先ほどまで、このナザリック地下大墳墓の支配者であるアインズ・ウール・ゴウンが誇る至高の41人のまとめ役、ひいては唯一このナザリック地下大墳墓に残られた至高の支配者であるモモンガから驚愕の情報がもたらされたのだ。

 

 アルベドは、己が愛してやまない主がここしばらく滅多に見せない様な嬉しげな口調で話していた姿を思い出す。

 

 至高の方々が姿を隠されてからと言うもの、モモンガは冷徹な支配者としてあり続けた。

 それ自体に疑問を差し挟む事などカケラ一つもありはしない。

 しかし、同時に臣下として、そして愛する女として、モモンガの有様に一抹の不安を覚える事もあった。

 彼の至高の御方は、深遠なる智謀を駆使してナザリックを切り盛りしてきたが、その際決してシモベに対し隙を作るような御方ではなかった。 

 ならば、己の主は一体何処で心の安らぎを得ているのか? そう考えると、アルベドはモモンガの心中に巣食う計り知れない苦しみを痛感し、ナザリックと、ひいてはモモンガを置いてその身を隠された至高の方々に対して叱責(しっせき)の念を禁じえなかった。

 

 我らを創造された御方々よ、何故我らを、あの御方を見捨てたもうた!?

 

 それが愛する者への重責となっている事も相まって、アルベドが他の至高の者達への感情が、崇拝よりも怒りを覚えたのはそう難しい事では無かった。

 

 しかし、そこであの御方が現れた。

 

 死を超越し、その先に御座(おわ)す異形なる者。

 その名はオルフェノク。不老不死の超越種として名を轟かせるその頂点に立つ者は、オルフェノクの王たる存在。御方の名はノア。

 

 かつて、アインズ・ウール・ゴウンがナザリック地下大墳墓を手に入れる前、それこそアインズ・ウール・ゴウン創設の頃から彼の王は至高の御方々とは密接な付き合いの関係だったと聞く。

 特に己が敬愛するモモンガとは親友の間柄で、至高の方々が御身を隠されていく中でただ一人モモンガと付き合い続けた御方だ。

 

 そんなオルフェノクの王の存在は、張り詰めたあの御方の御心(みこころ)に大いなる労りを与えて下さることだろう。

 

 

 しかしアルベドは、否、この場にいる階層守護者達一同は皆、彼の王に対して偉大なる至高の41人達と盟友であらせられるという尊敬の念と共に、大きな恐怖を抱いていた。

 

 己の眼前を阻むものを皆等しく灰に変え、魂すら残さず無へと消し去る恐るべき力を容易く振るう絶大な威力。

 生も、死すらも塗り潰す様な深淵なる暴威を迸らせる威容は、矮小なる存在であれば直視するだけで魂が灰塵の如く崩れ落ちてしまう事だろう。

 過去にアルベド達は、オルフェノクの王が来訪された時にその姿を見て崩れ落ちそうになった事がある。その時の衝撃が、今も尚アルベド達にとって彼の王を恐れる最大の要因となっていた。

 今でもその名を耳にするだけで、口にするだけで、過去の記憶が鮮明に蘇り、この身が恐怖に震えるのだ。

 

 そして忘れてはならないのが、その強大なる王が生み出し、配下とする54の直系眷属達。

 驚嘆すべきは、その〝すべての眷属達がナザリックの階層守護者達と同等の力を持っている”という事だ。

 至高の41人の方々が彼の王の住まう地へ訪問した際、そして彼の王がナザリックへ来訪した際に、眷属達の話が話題に出ていた事が度々あった為、アルベド達もその事を耳にして覚えていたのだ。

 至高の方々曰く、いずれもオルフェノクの王が生み出した眷属の名にふさわしい力を持つ者達だという。そして、油断ならない曲者揃いでもあるとも。

 

 

 その様なオルフェノクの王が、そう遠くない内にこのナザリック地下大墳墓へ再びやって来るのだ。

 

 

 今、ナザリック地下大墳墓は未曽有の事態に巻き込まれている。

 何せ、至高の支配者であるモモンガを以てして感知出来ずにこのナザリック地下大墳墓が別の世界へと移動しているのだ。非常事態以外の何物でもない。

 

 その様な非常事態の折、同じくこの世界へ移動した者が、彼のオルフェノクの王とその眷属達であった。

 モモンガは何らかの手段で彼の王との連絡手段を確立したのだろう。第6階層のコロッセオに召集を受けた階層守護者達が偉大な至高の支配者へ忠誠の儀を執り行った後、すぐにモモンガは地表の調査に向かわせていたセバスを連れてオルフェノクの王と緊急会談を行ったのだ。

 

 その後、この第6階層のコロッセオにて再び召集を受けた階層守護者達はモモンガからの通達により、先の来訪について通達が下ると同時に彼の王達への歓待の段取りを仰せつかったのだ。

 

 そして今、モモンガが自室へ戻っても尚こうしてこの場で階層守護者達は頭を悩ませていた。

 

 

「とにかく、これは絶好の機会よ。彼のオルフェノクの王達へ我々ナザリック地下大墳墓の、アインズ・ウール・ゴウンの威をお見せするのよ」

 

 

 アルベドは拳を握り締め、他の階層守護者へそう言う。

 幸いにも地の利は此方にあるのだ。ならば総力を尽くして至高の御方のご友人とその眷属達を歓迎して差し上げれば、それは自ずと主であるモモンガの威光へと繋がると確信している。

 

 

「その通りだよアルベド。手始めに、歓待の際に用意するシモベ達について考えていおいた方が良いだろうね。出迎える相手は、至高の41人の古い御親友であらせられるオルフェノクの王。恐らく大勢の眷属達を引き連れて来られるはずだ、生半可な内容ではかえって失礼にあたるだろう」

 

「そう言う事なら、私は選りすぐりの配下のアンデッド達を手配するでありんすよ。美しく着飾らせれば、場の彩りにはなるでありんしょう」

 

「じゃあ、あたしはマーレととっておきの魔獣達を用意するよ!」

 

「が、頑張ります」

 

「ナラバ私ノ方カラハ一級の装備ヲ施シタシモベ達ヲ出ストシヨウ。…………アノ御方ガ来ラレルノナラバ、〝奴”モ来ルノダロウカ?」

 

 

 各々の階層守護者達から意見が出始める。

 皆、自分達が所属するナザリックをより良く見せるために知恵を出し合いっていた。

 

 そして、アルベドがそんな守護者達を見渡して一言。

 

 

「皆、意見が出始めたみたいね。ならば―――」

 

 

 それは、守護者統括としての雰囲気を纏っていた。

 アルベドの雰囲気が変わった事を察した他の守護者達が佇まいを直した。 

 

 

「――これは、ナザリック地下大墳墓がこの世界に来て最初の大仕事である。此処で出た意見は全て私の方で一度取りまとめ、しかる後に各自の役割分担を追って通達する予定である。……これより、改めて会議を執り行う。各員、モモンガ様の御威光をあの御方に照覧いただく為に奮起せよ」

 

 

 アルベドの号令に伴い、改めて階層守護者達はオルフェノクの王の為の歓待の儀式について打ち合わせを始めた。

 各階層守護者達の目に覇気がこもる。

 

 全ては、我らが敬愛するモモンガの為に。

 

 

 

 

 

『うん?』

 

『どうしましたか、ノアさん?』

 

 

 所変わって此処はノア達オルフェノクの拠点の中、ノアは自室でモモンガとメッセージのやり取りをしていたのだが、その最中人間で言う所の鼻に当たる個所に妙なむず痒さを感じた。

 よもやこの体でくしゃみの予兆かと密かに驚いて身構えていたが、その感覚もほんの一瞬で終わり、何だったのだろうかと一人首を傾げていた。

 

 

『……いえ、何やら鼻がむず痒く感じた気がしたのですが、どうも気のせいみたいです』

 

『え゛、オルフェノクってクシャミするんですか?』

 

『さぁ、流石にそんな話は聞いた事ないのですが……』

 

 

 其れこそ神のみぞ知る事であって、プレイヤーから成ったノアには分からぬ事である。

 ノアはそんなしょうもない話題から、これから待ち受けているビッグイベントについて話を切り替えた。

 

 

『それにしても、顔合わせの場所でナザリックを使わせていただけるのは助かりました』

 

 

 地上の草原でモモンガと別れた後もノアはモモンガとメッセージでやり取りをしていたのだが、その際計画していた顔合わせの場をナザリック地下大墳墓にすると言う提案がモモンガから出されたのだ。

 ノア達がいる拠点では、もしモモンガ達が来た場合は明らかに手狭になるし、地上の草原地帯の一角を会場にするというのはあまり賢い選択とは思えず、消去法として広大な面積を誇るナザリック地下大墳墓が最適だと言う事で決まったのだ。

 

 ノアの礼に対して、モモンガは朗らかな声で返してきた。

 

 

『気にしないで下さい。ノアさん達をナザリックの配下達と一緒に歓迎させていただきますよ』

 

『い、いやぁ……そんなVIPみたいな待遇を受けてしまうと、何だか恐縮してしまいます』

 

 

 ノアからしてみれば、こちとら一般市民の感性しか持っていないのだから、変に高待遇で迎えられても緊張でギクシャクして恥をかきそうだと心配になってしまうのだが、モモンガはそうは思っていないらしい。

 

 

『とんでもない! ノアさんは十分その待遇を受けて当たり前の人なんですよ。私にとってノアさんは、アインズ・ウール・ゴウンのメンバーと同じ仲間なんですから』

 

『それはまた、過分な評価ですね。でも、そう言ってくれてありがとうございます』

 

 

 ノアは、モモンガからこうもストレートに好意を示されて照れざるを得なかった。少なくとも、自分ならばそんな言葉はこっ恥ずかしくて口に出来ない。根っこの純粋さが違うのだろうとノアは自身を皮肉った。

 

 こうして会場はナザリックに決まったわけだが、ノアはモモンガだけに準備の手間をかけさせるつもりは無いため、此方は此方なりの準備を推し進めておこうと考えていた。

 

 

(眷属達は最低でも半数以上は連れて行ってやりたいな。……見栄えも兼ねて〝ベルト”は……止めておこう、警戒の原因になりそうだ。かと言って拠点の守りが手薄になるのも避けたいし……こいつは留守番役が必要だな。眷属達から不満が出なければいいんだが)

 

 

 その時は留守番手当として何か振る舞ってやる必要があるのかな、等と上の立場として組織の運営方法に則って彼是(あれこれ)考える。

 リアルの頃は一端の平社員であったので、突然この様なものの見方を求められても殆ど手探り状態であった。

 

 しかし、今は曲がりなりにもオルフェノクの王なのだ。ノアは眷属達をガッカリさせないように、王の威厳を身に纏う義務があるように思えた。 

 何時だって、子供(眷属)はカッコいい親(王)でいてほしい筈だと思うのは、何も自分だけでは無い筈だ。

 

 

(これは失敗できないぞ。後でモモンガさんにも話して事前にリハーサルしておいた方が良さそうだ。モモンガさんだって恥をかきたくないだろうし)

 

 

 気分は重大な案件のプレゼンを任された時の様な心持だ。

 今回失敗したらお客と上司の信用が失われるのではなく、眷属やナザリックのシモベ達からの信頼が失われるというある意味仕事よりも恐ろしい内容だ。失望の眼差しを眷属達から向けられようなら、もう立ち直れそうにない。

 そう考えると、背筋がひやりとする思いだが、同時にやる気もみなぎってくるという物だ。

 

 

『モモンガさん、ちょっとご相談があります』

 

『相談ですか? 何でしょう?』

 

『今回の顔わせの件なんですけども……私達も――――』

 

 

 こうして、何処かで階層守護者達が心魂を注ぐ勢いで取り組んでいるのと同時に、渦中の本人達も事前の打ち合わせを執り行う事となった。




――――――――――――――――――――――――――――――
後書き


次回はオルフェノクの眷属サイドか、そのまま顔合わせの回になるかと思います。


どうでもいい余談ですが、千と○尋の神隠しに出る油屋みたいな所で疲れを癒したいです。(おしら様の恰好しながら
いつか、何かの作品でそんなシーンを描いてみたいですね。“神々さま”を聞いてひどくそう思います。

……あかん、ナザリックが油屋に見える(死
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