プロローグ
???
「またダメだったわ。何度やっても幻想郷が滅ぶと言う未来は避けられない。アイツを倒すには幻想郷の外の力も借りないといけないみたいね」
「しかし、外の世界にそれだけの力を持つ者がいるでしょうか?」
「分からないわ。でも探すしかないでしょうね」
薬屋 大助
クリスマスの日に特環を脱走してから俺と詩歌はきらりに紹介されたアルバイトの賃金と俺の貯金を切り崩して生活していた。こう言うとギリギリの暮らしをしているようだが実際は生活が苦しいと感じたことは一度も無い。何故ならきらりの紹介してくれたアルバイトは賃金が悪くないし、俺の貯金もとんでもない額だからだ。具体的な額は言わないがこれを見たきらりいわくサラリーマンの生涯賃金を大幅に超えているらしい。そういうわけで俺達が働いているのは怠けない様にするためという色合いが強い。
「あっ、大助君、おかえり」
「ただいま、詩歌」
住んでいる大きめのアパート(これもきらりの紹介)に戻ると先に帰っていた詩歌に迎えられた。
「きらりさんからの定期連絡が来たよ。千莉さんが欠落者から復活したって」
「へえ、じゃあ圭吾のやつ喜んでいるだろうな。からす、リコルに続いて三人目か。もっと成功例が増えるといいな」
「そうだね」
夕食を食べ終えると普段は詩歌とテレビを見たり話したりして過ごす、が今日は違う。
「気のせいかと思ったけどやっぱりそうじゃ無かったよ。詩歌は?」
「私の方も同じ。これってどういうことなのかな?」
虫憑きはどのタイプも能力を使うために一回”虫”を出す必要がある。しかし俺と詩歌はそのステップを踏まずに能力が使えるようになっていたのだ。しかも、
「それに、私の方は能力を使っているのにどこにも”虫”がいなかったよ」
「オレも能力を使っている間は身体に模様が浮き上がるはずだけど無かった。だから最初は鍛えているからかなって思ったんだけど。でも特に問題なのが」
「「夢を”虫”に食べられる感じがしない」」
初めての事態に困惑するしかない。ふと”C”の言っていた言葉がよみがえる。
”夢をかなえた虫憑きは存在しません。人類の見たことが無い、恐るべき怪物に生まれ変わる可能性さえあります。”
今の変化がまさしくそれかもしれない。
「どうしよう?」
「うーん」
今、俺達がこうして特環から離れ、自由でいられるのは俺達を連れ戻す事で得られる利益より、捕獲の際に生じる被害の方が大きいからだ。だがここで俺達に起きている変化が知られるとそれが覆る。逃げようとした場合、貴重なサンプル兼強力な戦力として特環が全力を持って確保しに来るだろう。月姫、霞王、照といった2号指定達はもちろん、ハルキヨ、アリス、レイディー・バードといった1号指定達も来るかもしれない。そうなれば俺達はいずれ終わりだ。特環に自分から戻るべきだろう。だが、折角手に入れた『今』を手放したくない。
「いずれ特環に戻る事になるけど、今はオレ達に起きている事を調べよう。能力が増えていないか、とかさ。詩歌ならもっとうまくコントロールできるようになったかとか調べないと」
嘘だ。本当は今からでも戻ったほうが良い。
「でも………」
何か言いかける。そして
「そうだね。まだ調べないといけないことがたくさんあるよね。だから戻るのはちょっと早いね」
迷った末俺に同意した。
???
「彼らなら何とかなりそうね」
「ええ、彼らの能力や戦歴は私達から見てもすさまじいとしか言いようがありません。彼らならきっと」