薬屋大助
紅魔館は早くも霧に包まれていた。ただでさえ暗いのにこの霧のせいで視界がだいぶ悪い。おまけにこの霧には精神汚染作用があるようだ。この中では訓練した者でないと長時間活動できないだろう。里まで広がったら危険だ。そして詩歌も。
「大助君、私この霧の中だとあまり………」
やっぱり精神攻撃に対する訓練をあまりやっていなかったか。七那に連れ出されるときや重要な戦い以外では拠点から動かなかったらしいからな。
「分かった。なるべく早めに終わらせる」
塀を越えて紅魔館の敷地内に入る。気のせいか視界が赤い。
「あの吸血鬼を探す。主犯は間違いなくあいつだ」
「急ごう」
館の内部には霧が入り込まなかった。そういえば吸血鬼は招かれないとその人の家の中に入れないと聞いたことがある。これなら里の人間も家に閉じこもっていれば大丈夫だろう。長期間こもれるだけの食料が有ればの話だが。まあ、いざとなれば霊夢を引きずってきてここに放り込もう。俺が解決しなくても良いというのは気楽だな。
「これなら急がなくても大丈夫だな。前来た時は大雑把に調べただけだけど、今回は詳細に調べてみるか」
「そうだね。そう言えばここ、図書館が有るんだよね。私達でも読める本が有るかなあ」
「有りますよ」
後ろから聞こえた声に振り返ると咲夜が立っていた。
「……もうばれたのかよ」
「それはこちらのセリフです。まさかこの霧がもう気付かれるとは」
「そこで釣りをしていたらこの霧が見えてな」
「……満月の日ならともかく今日は新月ですよ。何故そんなことを?」
「新月の夜にごく稀に現れる巨大魚…フゴッ!」
「静かに。……お嬢様に聞かれたらどうしてくれるんですか?」
咲夜が素早く詩歌の口をふさぎ、辺りを見回す。あの吸血鬼はいないようだ。
「……なるほど。大変だな」
「分かって頂いて何よりです。しかし、何しにここへ?あなた達は異変の解決を禁じられているはずですが」
「調査だ。異変発生から解決まで出来るだけ詳しく調べることが俺達の仕事だ」
「なるほど、分かりました。発生については私が説明しましょう」
異変の原因は予想通りレミリアだった。この霧はあいつが太陽の光を遮るために作り出したもので、あいつの気が込められており、さらされると体調が悪くなっていくそうだ。幸いなことに家の中に入り込まないようだが。
「いつごろやめると思う?」
「おそらく止められるまででしょうね。昼間に日傘をささずとも遊びまわれる絶好の機会ですから」
あいつ吸血鬼のくせに日傘さえあれば大丈夫なのか。
「さて発生原因も分かったのだから、ここを調べる必要はなくなったわね。出口はあっちよ」
確かに調べる口実が無くなった。こいつ結構頭がいいな。
「分かった。また来るよ。最後に聞きたいんだが図書館ってどこに有るんだ?」
「地下よ。本は読んだら本の場所に戻しておいてね。パチュリー様が探せなくなるから」