夢封じる秘境   作:零式艦上戦闘機

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第一話

 薬屋 大助

 

「……ここ、どこだ?」

 おかしい。俺は詩歌と共に近くの人目につかない谷川に向かっていたはずだ。なのに何故桜が生え、両手でもてる程度の石が大量に置かれた小さな草地にいる?パニックになりそうだ。そこで手を誰かが強く握っていることに気付く。

「大助君?私達なんでこんな所にいるの?」

 詩歌だ。俺より混乱し、不安に思っていることが手を握る強さから伝わってくる。それを見て俺は冷静さを取り戻していく。

「詩歌、落ち着いて状況を整理しよう。こういうことが起きるパターンはいくつかある。一つ目は精神汚染系虫憑きの能力を受けて幻覚を見せられている。これは特環の訓練を受けている俺は破れる。二つ目は一部の特殊型の領域に閉じ込められた。これは俺より詩歌の能力が相性がいい。後は、何かの拍子にここまで転移してしまった、かな。まあどれか確かめるにしてもちょっと歩いて周囲を調べよう。ちょうどあっちに道みたいなのがあるし」

 詩歌を落ち着かせるために少し歩くことを提案する。詩歌が頷いてから手を引いて草原の方へ行く。この草原を見ているとどうも手抜き感があるなと思ったら同じ植物ばかりが生えている。どうやらパターン1か2の可能性が高い。草原の近くの森沿いをしばらく歩くと奇妙な不快感と共に気力がわいてきた。その時だった。森から何かが飛び出してきた。

「ガアァァァ!!」

「ふん!」

 ドカッ!

「ギャアァァァァ!」

 一瞬見ただけだが敵対的だったので思いっきり殴り飛ばす。今の俺はその気になれば即座に能力が使えるので便利だ。

「大助君。ものすごく飛んでいったけど、やりすぎじゃない?」

「いや、そうでもないみたいだ」

 殴り飛ばしたやつが空中で何とか姿勢を整え着地し、逃げていく。俺に防御無しで殴られてもまともに動くことが出来るやつはアリスのような同化型位だ。どうやらかなり頑丈らしい。

「森から追加のやつが何体か来るな。俺がそいつらを片付ける間に詩歌は一点攻撃でこの空間が破れるか確かめてくれ」

「う、うん」

 

 結局詩歌の攻撃で空間は破れず、その後も襲ってくるやつをしばらく倒し続ける羽目になった。

 

 ドカッ、ガシッ。

 最後の二匹のうち片方を踏みつけもう片方の喉をつかみ捕まえる。じっくりと眺めてみると狼のように見えるが違う何かだと良く分かる。

「やっと襲撃が終わったか。しかし、詩歌でも破れないとなるとパターン2じゃないみたいだな。となると1か3か。出来れば前者の方がいいんだが、うん?」

 視線を感じる。どうやらかなり遠くだがまだ残っていた奴がいるらしい。ちょっと脅してみるか。

 能力の出力を上げる。すると数か月ぶりの懐かしい輝く模様が腕に浮かび上がった。

「姿を見せろ!お前の位置は分かっているぞ」

 言い放つと掴んでいた狼?を思い切り投げつける。

「うわっ!」

 

 射命丸文

「はあー。何か良い記事のネタ無いものですかねー。このままだと今日も新聞が作れません」

 最近の幻想郷は停滞している。面白い事件も異変も起こらない。おかげで新聞があまり出せなくなってきた。もちろん古道具屋の新商品や河童の新発明、お仕置きされる妖精などといったネタはあるのだがこういうのはあまり連続して出せない上、印象も薄い。やはり読者の興味を引くのは大事件なのだ。事件が起こるのを待つだけではなく自分から面白い記事を書こうとしているが……。

「博麗の巫女密着取材、と言っても基本神社の掃除をするか縁側でお茶を飲むか位しかしない彼女を記事にしてもねえ。さすがにこれに手を出したら私は新聞記者として終わりますし。……おや?外来人の男女二人組みですか。あの密着具合からすると恋人同士ですかね。可哀相に」

 再思の道は妖怪達にとっては人間の狩場の一つだ。あの二人もすぐに食べられるだろう。まあそんなことはどうでも良い。さっさと記事のネタを……ドカッ!突然の音に驚いて下を見ると妖怪が中を舞っていた。

「……はい?」

 見ると少年の方が手を前に突き出していた。あの妖怪はおそらく少年に殴られたのだろう。しかしただの人間が殴ったところであんなに飛ぶだろうか?

「これは記事になりそうですね。ここらの妖獣をそそのかして見ますか」

 

 少年の方は予想以上に強かったようだ。私がそそのかした数十匹もの妖獣を全て無傷で倒してしまった。それも後ろに少女をかばって、だ。そして少女の方も得体の知れない力を持っているようだ。これはぜひ取材したい。

(どうやって近づきますかね。警戒心を抱かせては手間がかかりますし、難しいですね)

 そう考えながら二人を見ていたら少年の方と目が合った。

「姿を見せろ!お前の位置は分かっているぞ」

 そう言い放つと持っていた妖獣を思い切り投げつけてきた。

「うわっ!」

 あまりに非常識な光景に反応ができない。当たり前だ。投げてきたのは狼の妖獣。体重は二十貫は軽く有る。それを片手で持っていただけでも驚異的なのにこちらまで投げ飛ばしてきたのだ。それも自分の頭の上ギリギリを通る絶妙なコントロールとそのあと命中した木をへし折るスピードをつけて。頭の中で危険信号が鳴り響いている。

「次は当てる」

 踏みつけていたもう一体を持ち上げながら宣告する。あまりに冷たい目と声がそれを本気であることを悟らせる。

「3、2……」

「今すぐ出ますっ!だから待ってください」

 カウントダウンは止まったが、振りかぶった姿勢を崩そうとしない。出てきて大丈夫なのだろうか。

「………さっさと出てこい」

 出ない私にしびれを切らしたのか、声に怒りが混じる。ここで私はミスを犯してしまう。これは後で聞いたことだが、彼はこの時顔を出せという意味で出てこいと言ったのを、私は森から出てこいという意味と間違えて、全速力で彼の前まで行ってしまったのである。当然状況はさらに悪化した。

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