射命丸文
「まあ、とりあえずこちらも敵対行動ととられても仕方のないことをしたという非もありますし、一旦これまでのことを水に流してやり直しましょう。私は射命丸文。新聞記者をしている烏天狗です。あなた方の取材に来ました」
「薬屋大助です。虫憑き、まあ特殊な能力を持っている人間だと思ってください」
「同じく虫憑きの杏本詩歌です。よろしくお願いします」
何とか自己紹介までこぎつけられた。これまでの苦労がようやく報われそうだ。最初姿を見せたとき二人は敵意と殺意むき出しだった。それも仕方ない。うっかり全速力で飛んで二人の前に出てしまったからだ。そこからかなり時間をかけたとは言え関係をここまでマシにできたことに自分をほめたい。いまだに銃をしまってくれていないが。
「ところであなた達が妖怪に襲われているところを見ていたんですが、大助さん強いですね。あんなにいたのに全て倒すとは。虫憑き……でしたか、それは皆あんなに強いものなんですか?」
「いや、このレベルの虫憑きはオレと詩歌を含めても五人しかいないですね。大半はさっきの妖怪より弱いです」
「ほお、では詩歌さんもすごい力の持ち主と、見せてくれます?一応目で一回確かめてから記事を書く主義なんで」
「えーと」
「一片だけなら大丈夫と思う」
「じゃあ、壊れて、少しだけ」
春だと言うのに空から雪が降ってきた。それは彼岸花の上に落ち、彼岸花を引き裂いて地面に落ち、一気に深い亀裂を作り地震を引き起こした。
「なっ!」
「詩歌はあの雪を大量に降らせるが出来きます。弱点は制御があまり出来ないこと」
「それをおいてもすさまじいですね。じゃあ大助さんももしかしてさっきは本気じゃなかったりします?」
「そりゃあもちろん。アレを本気と思われるのはちょっと心外ですね」
思ったのよりさらに上の化け物だったらしい。里に連れて行く約束をしていたが予定を変更して神社に連れて行き外の世界に帰ってもらおう。
「ところでここ幻想郷について軽い説明はしましたよね」
「特殊な結界に囲まれた妖怪といった人外がいっぱいいる所、ですよね」
「ええそれであってます。そして私はお二人を人間にとっての安全地帯である人間の里に連れて行くお約束をしていましたが、あなた達は人間の里で暮らすには強すぎてややこしいことになるので外の世界に帰っていただきます」
薬屋大助
やはりそうなるか。自分達の力が基本的に人間より強い妖怪から見てもかなりのものだというのは、こいつが取材を申し込んできたことからうすうす察していた。何せこいつは人間を襲う対象、食料と認識していることが何気ない言葉から伝わってきた。
「一応どういったことが起こるか予想でいいから聞かせて欲しい」
「人間は基本的に妖怪がいる暮らしを受け入れていますが、それを嫌う人間もごく一部ですがいます。里で暮らすとなると間違いなくそういう連中が近づいてきますし、今まで受け入れていた人間からもそういうよからぬ考えを持つ者が現れるでしょう。そうなると私達妖怪としてもあなた達の『処分』を考えなくてはいけません。あなた達にとって一番いいのは幻想郷からの追放ですが………」
最悪の場合見せしめとして殺す、と言うことか。確かにそうなるくらいなら帰ったほうがいいだろう。
「人間社会から離れて暮らせるほどの技術や知識は無いし、分かりました。そうします」
「助かります。それではこれから外の世界に戻るための場所に案内しますが、その前に見てみたいものとかあります?簡単なものなら何とかしますけど」
「特に無いな。詩歌は?」
「…妖精が見たいなあ」
「ああ、外の世界の人間が見たがる割と定番ですね。ここからちょっと移動した所の湖にすむ妖精を見に行きましょう」
霧の湖と言う場所についた。非常に霧が濃いので遠くが見渡せない。一度はぐれたら合流に苦労しそうだ。そして霧のせいかかなり寒い。
「探しているのはチルノという体から冷気を出している妖精です。この寒さからするとすぐ近くにいるようですね。飛び掛ってこないところを見ると昼寝でもしているみたいですね。この妖精に関して注意しなければならないのは触れたものを瞬間的に凍らせるので触れないことです。凍傷になります。まあ体はこれくらいなので見逃すと言うことは無いでしょう」
「大きいですね」
小さい子供並みだぞ。手のひらサイズだと思ってた。
「力がある妖精ですからね。ああ、いたいた。あそこです」
「……霧が濃くて見えません」
「ああ、こういうところは人間ですね。よっと」
射命丸さんは持っていた葉っぱのようなうちわを振って風を起こし霧を晴らした。彼女が指差しあたりを見てみると確かに言ったとおりの大きさの氷で出来た羽を生やした少女が湖の水面を凍らせて無防備に寝ていた。
「これが、妖精」
「イメージが壊れそうだ」
「大抵はあなた達のイメージであってます。ただ見つけるのに時間がかかるのでアレを選んだんです。さて妖精も見たことですし、神社に行きましょう」
「あの、一つ聞いていいですか?」
「なんです?」
「あなたの後ろの方に見える大きな赤い洋館は?」
「赤い?そんな洋館……昨日までは有りませんでしたね」
風で霧が晴れたことによりさっきまで見えなかった赤色の洋館が姿を現していた。