射命丸文
運が良い。折角見つけたネタが駄目になったすぐ後に新しいネタを見つけられるとは。同行者を送り届ける前に取材を軽くしたい。
「あー、えっと、オレ達は特に急いでいないので取材どうぞ」
「えっ、良いですか?では早速」
被写体が大きいのでまず空中から写真を一枚撮る。それで気付いたが屋敷だけではなく、門への道も赤で統一されている。よっぽど主人は赤色が好きなのだろうか?あと明かり取りの窓が建物の大きさに比べてかなり少ないのも気になる。
「結界が不安定ではないこの地域に現れた所を見ると外の世界で忘れられた何がしかの住処のようですね。ここの説明をかねて取材できるように交渉してみましょう」
ちょうど門からここの住人らしき人影が出てきた。
「取材、ですか。私にはそれを決める権限が無いのでちょっと上の方に聞いてみますね」
この屋敷、「紅魔館」の門番をしていると言う妖怪、紅美鈴はそう言うと門の中に入った。しばらくするとメイドを連れてきた。
「初めまして、私がここのメイド長である十六夜咲夜です。ここの取材をされたいそうですが、現在主人が就寝中なのでまた日を改めていただきたいのですが」
「そうですか、ではあなた達の取材だけでも」
「申し訳ありません。私達もこの事態に対処しなくてはなりませんので、そういう時間は。それに」
視線を私の後ろに向け、
「あなたもやらなくてはいけないことがあるようですし」
後ろを振り返ると屋敷を眺めながら待っている二人がいた。仕方ない。今回は諦めよう。
「ここの主人は吸血鬼かな」
「えっ?何でそうなるの?」
「窓が極端に少ないこと。あの構造は日光のような外からの光を取り入れることをほとんど考えていない構造だ。ここから外部からの光を嫌っていると推測できる。外部からの光といえば日光、そしてそれが嫌いな妖怪でパッと思いつくものと言えば吸血鬼だ」
「確かにそれくらいしか思いつかないよね」
「まあ、鼻が短い天狗もいるから外れているかもしれないけど」
博麗霊夢
私は博麗の巫女。妖怪退治と結界の管理と祈祷が仕事だ。……本当はこれに異変解決が加わるのだが、私の覚えている限り異変が起こったことは一度も無い。異変を起こすような気力が残っている妖怪がいないのだ。それどころか退治されるほどはしゃぐ妖怪すらほとんどいない。
「あー、暇だなあ」
「妖怪退治の巫女が妖怪だらけのこの幻想郷で暇なのは大問題ですね」
独り言に返事が来た。慌てて声がした方に振り向く。
「……なんだ、あんたか。後ろの二人は?」
ブン屋の文だった。なぜか同行者を二人も連れているが。
「外の世界に帰して欲しい人間です。この二人が里にいると幻想郷の不安定化に繋がる恐れがあるのでお願いします」
久しぶりに驚いた。天狗にここまで言わせる外来人がいるとは。特徴がほとんどない男と私と同じくらいの少女なのに。
「なるほど、分かったわ。早速戻す」
外来人を外の世界に戻すのはわりと簡単だ。あまりやったことが無いが大丈夫だろう。そう思っていたが……
「あれ?」
出来ない。そんな、もっと難しい結界を緩ませる術が出来るのに何で?
「あの、大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。ちょっと時間がかかるだけで」
使う術を結界を緩ませる術に変更する。これは外の世界に近いと放り出されてしまう危険があるが、外来人二人が先に放り出されるだろうからそれを見届け次第やめよう。それで良い。
「その二人をここから出されるのは困るわね。霊夢、やめなさい」
薬屋大助
ようやく外の世界に戻れると言う神社に着いた。これで帰れる。今日のことはだいぶ後に昔こんな不思議な体験をしたと言う話をするときに使えるだろう。賽銭箱の前の階段に座ってボーっと空を眺めている少女がこの神社の巫女、博麗霊夢らしい。……俺が知る巫女服というものからかなりアレンジと言うか袖位しか一致している所がない服を着ていたので言われなかったら分からなかっただろう。話は射名丸さんがつけてくれた。だが様子がおかしい。
「あの、大丈夫ですか」
「大丈夫よ。ちょっと時間がかかるだけで」
どう見ても大丈夫に見えない。俺達は本当に帰れるのだろうか?そう考えていると突如空間に切れ目が入りそこから中華風の服を着た少女とそいつに付き従う尻尾を大量に持つ人以外の何かが姿を現した。
「その二人をここから出されるのは困るわね。霊夢、やめなさい」
少女は姿からは想像もできないほどの力を感じさせている。恐ろしいことに”浸父”の本体に近い。付き従っているほうも二号指定以上の力を感じる。
「……なんだ。あいつらは」
「しっぽが生えていないほうは八雲紫。ここでもトップクラスの大妖怪です。そしてこの場所の創り手でもあります。付き添っているのは彼女の式八雲藍。九尾の狐です。でも妙ですね。外来人がどうなろうが不干渉を貫いているはずの彼女たちが出てくるなんて」
どうやらすぐには帰れないらしい。
「はじめまして。外の世界最強の薬屋大助さん、破壊の権化の杏本詩歌さん。妖怪の賢者、八雲紫です。こっちは私の式の」
「八雲藍です。以後よろしく」
「その妖怪の賢者サマたちがなぜ俺たちの帰還を邪魔する?」
背中のホルスターから銃を取り出しながら問いかける。すると紫は微笑みながら答える。
「それはもちろん、あなたたちをここに招いたのは私ですから」
「遊びでってわけじゃなさそうだな。どういうことだ?」
「それを話す前に」
スッと手にしていた扇を振る。すると隔離空間に入ったよう周囲の景色が見えなくなった。
「ちょっと周囲から隔離させてもっらたわ。では話しましょう。あなたたちをここへ呼んだのは」
「あなたたちの力を借りるためよ。もちろんただでとは言わない。住居や食料も供給するわ。どう?ちょうど潜伏場所を探していたのでしょう?」