目を覚ますと、俺の目の前は真っ赤に染まっていた。けたたましい鳴き声が聞こえ、肉の焼ける音が響く。
そう、ここは地底火山のエリア9。
ん?紛らわしい言い方をするな?一体何を想像したかは知らんが、一つ言わせてくれ。なんじゃありゃ、と。
いや、認識は出来てる。情報はある。見て、聞いて、理解している。だが俺は、この現実が受け止められない。信じられない。
なぜ、目覚めた俺の目の前に、テオ・テスカトルが居るんだ。そして、なぜ俺に殺意を向けているんだ。
「グオオオオオオオ!」
考えてる場合じゃない。俺は走り出した。しっかりと。自分の足で、あれに勝てるわけがない。どうやっても、何の装備もない俺が死なない理由がない。
しかし俺の思いとは別に、足が言うことを聞かない。腕を振り、大地を踏みしめ、一刻も早く逃げ出さなければいけないのに、走ることができない。恐怖で足がすくんでるのかもしれない。ならば、這いずってでも生き延びてやる。
そうと決まれば伏せる。前足を出す。後ろ足で進む。前足を出す。後ろ足で進む。前足を......前足!?
咄嗟に自分の体を確かめる。
「............」
「グルルルルルル...」
「......にゃんじゃこりゃあああ!!」
「グオオオオオオオ!」
「!あ...」
ズガンッ!
忘れていたテオさんに容赦なくぶっ飛ばされて、そのまま溶岩ダイブ。あぁ、このまま生きたまま溶けるのか。などと達観していると、体が燃える様子も、熱さもない。
まさかもう死んだのかと思い、自分の体を動かすと、ちゃんと意識通りに動いてくれた。そして、しっかりと溶岩の中にいる自分に驚いた。が、すぐに納得した。
あぁ、アイルーって溶岩平気だっけ、と。
そう、なんと今回のちょんじさんはアイルーになっていました。
「...おい、貴様大丈夫か?」
アイルーってなにさ。普通モンハンの世界舞台にするんならハンターだろ。なんで猫なん、ありえへんわ。
「...そこの猫だ。聞いておるか?」
ああもう、大元の奴、事前に言っとけよ。ってか逝ってくれ。...ん?そういや、昨日寝た後の夢でなんか言ってたな。えーっと、
『暇を持て余した、神々の、遊び』
だったか。
...............
「そのぉ...」
「あんにゃろおおおおおおおお!」
「!?」ビクッ
アァァホかあぁぁぁ!遊びでアイルーにされるこっちの身にもなれやあぁぁぁ!
「い、いい加減にせんか!!」
「あぁん?」
「!?、む、貴様、ただのアイルーではないな。」
あぁ、テオさんいたね。てか喋ってるね。なんかの小説で古龍種は人語が解せるって書いてあったな。事実か。ん?なんかさっきと違って怖くねぇな。なぜだ?
「おーい、また無視かぁ?儂も寂しくなってきたぞぉ...」
このジイさん寂しがり屋かよ。
古龍の威厳がすげぇ勢いでなくなるな。
「儂古龍種だよ?新参だけど古龍なんだよ?なんでネコなんぞに無視されとるんじゃ?...」
新参とかあんのかよ。しゃあねぇ、相手してやるか。
「おい、ジイさん。」
「!お、なんじゃなんじゃ?」
「さっき俺のことただのアイルーじゃないなって言ったよにゃ。」
「う、うむ。」
「あれどういう意味だにゃ?」
「そのまんまじゃよ。とてもアイルーとは思えんほどの膨大なエネルギーを感じたんじゃ、それこそ古龍の儂が一瞬気圧されるくらいのな。」
なるほどねぇ、やはり神としての中身が反映されてんだろうな。
「うーん、そうじゃ!」
「んにゃ?」
「お主、儂と一緒に来んか?」
「はあ?」
「ええじゃろ?な、な?」
「ええー」
「儂が直々に特訓してやれば、お主は高みへ登りつけるはずじゃ、それにほら、儂、結構モテるんじゃぞ?じゃからの、ええオンナの一人や二人...」
「興味ねぇわ。」
龍が紹介するオンナってなんだよ。
うわぁ...ジイさんすげぇ落ち込んでる。背景にズーンって書いてありそう。
「そうか、見たところその体に慣れておらんようじゃったから、体の動かし方から教えてやろうと思ったんじゃが、仕方ない。ここでお主は低能なイーオスの毒に侵され、リノプロスに轢かれてクンチュウの餌になるんじゃろうの。あぁ、惜しい人材をなくしたわい。」
「ちょっと待てジジイコラ」
「な!?ジジイじゃとっ!こんな口調でもまだ100年も経っとらんピチピチの...」
「いいから、俺の師匠になってくれにゃ。」
ジイさんの言ったことになったらシャレにならん
「?...おお!ということは...!」
「ああ、ついて行ってやるにゃ。」
そして、俺はアイルーの体のままこの寂しがり屋のテオ・テスカトルにつかまって、地底火山を後にした。
この時、テオ・テスカトルはこのアイルーのことを孫のように思っていた。そしてちょんじは気づいていなかった。古龍をビビらせることができる奴が、イーオスなどごときにやられるはずがないことに。