「ふっ、はぁっ!」
「まだまだ、これからっ、じゃ!」
「そっちは、残像だっ!」
「なんじゃと!?」
「嘘だっ喰らえ!」
「ぬ!甘いわぁっ!」
ドゴーーン...ぼとっ
「ちょっ...ジイさん、爆発はダメにゃ、流石のちょんじさんでも死ぬにゃ...」
「むぅ...お主やりおるな。」
「おうよ...ちょいと休憩するにゃ。」
「そうじゃな、根を詰めてもしょうがないからの。」
ふぅー...あ?あぁ俺だ、ちょんじさんだ。
何してるかって?見ての通り、ジイさんと戦って特訓中だ。あの後、未知の樹海に来た俺たちは、誰もいないのをいいことに暴れているって訳だ。
だいぶこの体に慣れてきたからジイさんと戦っているが、最初はランポスの群れに投げられて死ぬかと思った。このジイさん意外とスパルタだ
「しかし本当にアイルーとは思えん動きをしよるわい。戦いながら嘘を吐いてフェイントをかけてきおるし。野生からすれば十分脅威となるだろうのぉ。」
「まぁ言葉が通じないと意味がないけどにゃ。」
「よく考えてみるのじゃ。言葉が通じないのはレベルの低い奴らじゃ。レベルの低い奴らには負けぬ動きができる以上、言葉が通じるほど強い奴との戦いではフェイントが使える。お主はかなり脅威じゃよ。」
あながち間違ってねぇかもな。なんせ元魔王兼神やってたからな。それなりに修羅場をくぐってきたと自負してるさ。嘘ですごめんなさい。
「ふむ、初日でこれだけ動ければいいじゃろ。今日はもう遅い、寝るとするか。」
「む、そうか。寝床とかあるのかにゃ?」
「うーむ、お主は自分でこさえるがいい。儂は雑魚寝で構わん。」
「師匠が野宿してんのに、弟子の俺が野宿しないのはおかしいにゃ。」
「そ、そうか?なら好きにするがいいわい。」
こうして、アイルーとしての一日が終わった。
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しばらく、未知の樹海で修行をした。実に一ヶ月の間だ。
暦があるのか分からないが、30日くらい戦っていたから、今ではジイさんと互角に戦える。爆発は未だに死ねるけど。武器も手に入れた。俺のアイデンティティ、有刺鉄線が無かったので、ツタの葉を使って鞭を作った。
「そろそろ頃合いかの。」
「何がにゃ?」
「儂が教えることはもう無いのう、ということじゃ。」
「あらー、もうそんな感じかにゃ。」
「うむ、本日を持って、儂らは師弟の関係から解放される。よく頑張ったの。」
ジイさんちょっと涙目だぞ。そんなに別れが寂しいのか?
「お前はもう十分強い。じゃが儂以上のモンスターなんぞ山とおる。決して慢心せず、常に己の限界を目指せ。良いな?」
「おう、長文ご苦労様にゃ。」
「...それでは、儂はここを離れる。いつハンターに見つかるか分からんからの。」
「ジイさん。」
「ん?なんじゃ。」
「最後に、本気で手合わせ願えるかにゃ?」
「時間がないと言うに......まぁよい、始めるか。」
この日、俺とジイさんとの特訓が終わる。しかし、これが始まりであることに、割とすぐに気付くのだ。
未知の樹海に、激しい衝突音が響く。質量では負けているはずだが、そこは神力の応用で対応している。最初の頃はちょっかいを出していたランポスたちも、今では俺を格上と認め、エリアの隅で威嚇するだけだ。
ふと、視線を感じた。だがジイさんの本気は油断してちゃ致命傷になる。これが終わったら確認に行こう
朝から始めて、既に太陽は真上にある。二匹共疲労が祟ってきた。何しろぶっ続けで戦っているのだ。疲れて当然だ。と、そこへ...
「今だ、突撃!」
「「「はっ!」」」
突然ランス部隊が飛び出してきて俺とジイさんの間に入った。リーダーはあの筆頭ランサーだ。視線の正体はお前らか。
筆頭さんは俺を守る形で陣を組み、ジイさんを警戒している。
「もう、大丈夫だからね。キミの戦いを見せてもらったよ。キミがここで防いでいたおかげで、このテオ・テスカトルが近隣の町に行くのに余裕ができた。礼を言わせてくれ、ありがとう。」
うわぁーお。筆頭さんすげー勘違い。
「そろそろ潮時かの。」
ジイさんがなんか言ってる。
「儂はもう何も教えることは出来ん。後はお主が好きに生きればいい。逞しく生きろ、悔いのないように生きろ、寿命まで生きろ。いいな?」
そう言ってジイさんは背を向ける。突然唸ったかと思えば背を向けたジイさんに筆頭さん達は反応できない。俺は叫んだ。
「待てよクソジジイ!」
「んなっ!?馬鹿者!誰に向かって言っておるか、仮にも儂はお主の師じゃぞ!?」
なんか言ってるが、無視して叫ぶ
「俺はなあっ!アンタに会えて、本当に感謝してんだ!地底火山で拾われて、充分戦えるようになった!ここに来てからも、いろんなことがあった!寝苦しい夜も、他の大型モンスターが来た時も!アンタは弱かった俺を守ってくれた!俺はっ、俺はあっ!アンタに恩返ししたかった...それで別れが近いと知って、せめて、せめて何もできなかったからと、最後に全力が出せるように...!うぅ...」
ヤバい、涙腺が崩壊した。涙が止まらねぇ...
「ば、馬鹿者...!そのようなこと気にするでないわっ!儂は古龍だ。果てしない時を生きる。今回のはただの気まぐれじゃ!それを、恩だなどと......」
ジイさんが気丈に振る舞う。
でも、目尻に涙が溜まっている。
そして、一瞬優しい顔になったと思ったら
「ありがとうの、慕ってくれて。達者でな。」
そう言って飛び上がる。
「待てよクソジジイ!最後の決着はどうなるんだよ!?」
「カカカ、もっと力をつけい!そしたらいつか、いつか白黒付けようではないかっ!」
そうしてジイさんは空に舞い上がる。一雫、未知の樹海に、落としながら。
筆頭さん達には内容は分からない。いわばモンスター公用語を使っているから。だがしばらく、ここで呆けるしかないようだった。
よし、感動の別れを完璧に演出したぜ。
古龍の涙を入手しました。
疑問があるかもしれないので補足。
ちょんじさんの語尾に「にゃ」が付く時と付かない時がある。モンスターとしゃべる時は付かない。人間としゃべる時は付く。あと心の声には付かないっていう風に区別します。