知ってる。
探索。それは未知の樹海へ入り、旅団ポイントの獲得、ギルドクエストの解放、プーギーの服の収集、ノラオトモのスカウトなど、時間無制限で狩り、採取が楽しめる夢のツアーだ。もちろん往復キップで、終了地点の馬車(竜車?)に乗り込めば拠点に帰ることも可能だ。
ゲーム時代はソロプレイ限定だった探索も、現実になったこの世界では関係無い。現に我が主人アッシュは、狩友のさしみんこと刺身魚雷と向かうらしい。その準備の為、刺身魚雷宅へ向かっている。なにを準備するのだろうか...?
「さあ、着いたよちょんじ。ここがさしみんのおうち。」
「...でかくねぇかにゃ?」
「まぁ、色々置き場に困ってね、団長さんに頼んで、大きな家にしてもらったの。」
置き場に困るって何だ...
「さあ、ここで突っ立ってても仕方ないし、ガレージに行こうよ!」
「ええ、こっちよ。」
ガレージ...?
家の裏手に回ると、確かにそこにはガレージがあった。明らかにオーパーツなシャッターその他。世界観が崩れる...!
「さ、開けるわよ。」
ガラガラと音を立てて開くシャッター。
バルバレの外れに家があって良かった、騒音被害が酷そうだから。
中に入ると、布が被せてあるが明らかにバイクと思わしき物が4台、詳しくは知らんが装甲車っぽいの1台、その他重機たくさんが待っていた。
意味不。
待て。あれ絶対戦車だろ、布掛けてあるけど絶対戦車だろ。お前は何と戦っているんだ。
「さあ、乗って。」
「あいよー。」
「待たんかいっ!」
当然のようにバイク二台に跨る二人を止めたのはもちろん俺だ。待て、なぜそんなきょとんとしているそこの2人。おかしいだろ、おかしくないか?おかしいのは俺か?
「あー、説明が欲しい?」
「あったりまえにゃ。」
「どこから話そっか。」
「昨夜の続きから頼むにゃ。」
絶賛大混乱真っ只中のちょんじさんは正当なる説明を要求する。なんやかんやあって昨夜ははぐらかされたからな。
「行きながらでいいんじゃない?」
「「おー、それもそっかー。」」
この場で説明が始まりそうな気配に、さしみんが一つ提案をした。確かに時間の節約という面で見ても効率的である。アッシュと2人でさしみんに拍手を送る。
「......なんだか、いきなり仲良いわね、あなた達」
「「そうか(な)?」」
「既に阿吽の呼吸じゃないの...」
さしみんになんか呆れられてしまった。解せぬ。
それはそうとバイクに跨るアッシュとさしみん。俺はアッシュの背中に張り付くように搭乗した。
「じゃあ行きがけに説明するとして、目的地は未知の樹海、取り敢えず境界付近でおk?」
「おうにゃ」
いよいよ出発とアッシュはバイクを吹かす。吹かす吹かす。エンジン音が木霊するが本当に郊外で良かった、さもなくば公害訴訟待った無しだ。
...............今の笑うとこ。
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彼女曰く、前世の仲良し4人組+αでモンスターハンター・ザ・リアルを体験すべく日本のユニバーサルなスタジオに向かっていたところ、思いっきり事故って死んだらしい。
んで、5人一緒に緑髪の猫っぽい神様(それ俺じゃん)の元で神様転生をしたと。ただ年齢にバラつきがあったらしく、まだ一人合流出来ていないんだとか。実際、アッシュは16〜18歳位なのに対し、さしみんは20超えててもおかしくない外見をしているしな。
「そしてそして、転生特典というものがあって、三つだけ好きな特典を与えられたんだ。わはは、凄かろう」
ふむ、アイツ(大元)のことだ、変な特典(一方通行の力とか、王の財宝とか)は与えてないと思うが、確認はした方がいいな。
「んにゃ、どんな特典なのにゃ?」
「あ、気になる?えーっとねーあたしの特典は......」
「アッシュ、そろそろ着くわよ!」
少し先行していたさしみんから報告が来る。話を遮られたが大して問題はない。
「うーん、まぁ、直接見てもらった方が早いか。行こう、ちょんじ!」
「はいにゃー」
到着したのはこれぞ入口!と言わんばかりの森の隙間。二人が徐に取り出したのは剥ぎ取りナイフ。邪魔な枝や蔓をバッサバッサと斬り開きながら奥へ奥へとズンズン進む。
正直、鬱蒼としすぎてとても戦えるとは思えない。それに、探索とは言え、はじめはベースキャンプから始まるはずだ。まさか歩いて向かうのだろうか。
「ってかバイク置きっぱだ!」
「うわっビックリした!」
「ああ、あれなら大丈夫よ。召喚出来るから」
突然大声を出した俺にアッシュは飛び跳ね、さしみんは爆弾発言を落とす。
「召喚?」
「そう、私の特典の一つ」
「さしみんはね、竹槍重工っていう重機製造会社の跡取りだったんだ。で、そこで製造されていた近代兵器の類を自由に召喚することが出来るの」
「それは......世界観どこ行ったにゃ」
為された説明に嘆息する。ガレージにあった諸々の正体が判明した。そして気になるのは後の二つだ。
「他の特典は?」
「そうね、ここにいるアッシュと、マグっていう眉毛がいたでしょ?それからまだ合流出来てない娘は共通なんだけど......」
「もうね、ゲームの主人公とほぼ同じ仕様にして下さいってお願いしたの!」
「うん?つまり......?」
「HP無くなっても死なずに力尽きるだけで済むし、どんな攻撃を食らっても吹き飛ぶだけだし、超高高度から落ちても着地と同時に走れるんだよ!」
................わぁすごいチート。もう人としてどうよってくらいチート。
「でもデメリットもあるよ。回復する時はあの気合の入ったポーズをしないと効果が無いし、武器振り回すのも制限が掛かるし、弾かれた時無駄に仰け反るし」
「でもそのデメリットを補って有り余るほどの有用性があるのよ。モンスターに齧られてもある意味平気だし、装備を着替えるのも一瞬だし、武器防具の破損なんて起こらないし」
「エロ同人展開を回避だね!」
「.........そうね」
確かに、ゲーム基準のモンスター(な)ハンターなら、かなり安全だな。問題は最後の一つだが......
「それで、三つ目の特典は何にゃ?」
「まぁはっきり言えば容姿チートかしら。
転生する際、私が思っている通りの姿になっていたわ。ただ誤算だったのは......成長しちゃった事よ」
「ん?」
「さしみんは生粋のロリコンさんだったからねぇ」
「貴女も似たようなものでしょ?」
「あたしはロリ以外でもイケるもーん!」
何を言っているんだコイツら。
俺は今確実に死んだ魚の目をしている。断言できる。
まぁ最後はともかくさしみんの特典は把握できた。一部世界観が崩壊しているが、それでモンスターを虐殺したりとかは無さそうだ。自然と共存してこそハンターだからな。
もしそんなことしてたら......矛盾を押し通してでもこの刺身魚雷を討伐していただろう。それこそ神の力を使って。
さて、問題はアッシュだ。昨晩薄っすらと聞いた話に繋がるだろう。仮にも主人となるんだ、真剣に聞かないとな。
「次はあたしだね!一つ目はさしみんと同じ、ゲーム仕様。それから昨日少し言った装備によって性格が変わる奴」
「なんでそんなのにしたにゃ?」
「えぇ?だって、多重人格って......良いじゃん?」
お、おう、そうか。まぁ、下手に口出しするもんじゃ無いな。
「んで、最後。三つ目の特典は、ちょんじ、君だよ」
「は?」
「神様のちょんじさんに言ったんだ。貴方が欲しいって、そしたら猫なら良いぞって言ってくれたの。まぁその影響で筆頭オトモが5匹に増えるとは思わなかったけどね」
なんと俺は転生特典だった。あれか?悪魔アイルー的なポジションなのか?俺魔王兼矛盾神だぜ?なんか扱いひどくね?
「だからこんな説明もしたし、君が垂れ流してる力も見えるし、そのせいで小型モンスターが寄ってこないのも分かってるんだよ」
え、あー、なんか静かだと思ってたら、俺のせいだったっぽい。
「悪ぃ、それは無意識だったにゃ」
取り敢えず勝手に威圧してたのを引っ込める。テオのジジイと修行してた頃に発現したんだろうな、この力。もしかしたら筆頭ランサーさんとやったケチャワチャの狩猟時、ケチャワチャがやたら錯乱してたっぽいのも関係がありそうだ。
「あ、引っ込んだね。良かった、これで狩りが出来るよ」
「まったく、暇なのも考えものね」
「済まんかったにゃ」
「あぁいいよいいよ気にしなくて。のんびり採取ってのも、探索の醍醐味だし」
色々な説明を挟みながらも、ようやく本格的に探索がスタートした。
が、
「.........何も出ないね」
「.........ジャギィ一匹いないなんて、一体...」
「.........もう威圧はしてないはずにゃ」
クンチュウやブナハブラは時々見えるが、それ以外のモンスターが一切いないのだ。まるで古龍が出現しているかのように。
「あ、そうにゃ」
「なに?もう帰る?」
「いやちょっと試してみるにゃ」
二人から少し離れ、茂みの濃いところに向かって、「ランフォオオオオオオオオ!!!」と叫ぶ。すると20秒もしないうちにランポスのランフォが顔を出した。
「な、なんだよ、この大変な時に」
「ぅわ、本当に出てきた」
「どういう意味だコラ、って用が無いならマジで帰るぞ」
「まぁ待てちょっと乗せろ」
「あっなっおい!?」
ランフォの背に跨り二人の元へ戻る。
「おおおー!すごいすごい!なんかちょんじがうにゃあああああって叫んだと思ったらランポスにライドオンしてるー!ライダーだ!モンスターライダーだ!あ、でもアイルーだからニャイダーだ!ぅわっほぉぉぉい!」
「げ、人間っ!ハンターかっ!くそっハメられた!」
アッシュがなんかフィーバーしてんだけど。
ランフォもなんか勘違いしてんだけど。
「待て待て待て待て。お前ら落ち着け。頼むから落ち着け」
「分かった」
「ああ、すまん」
「素直ねぇ」
「......ほんとにな」
さしみんの意見に全面的に賛成だ。それより、
「落ち着いたところで、ランフォ、何があった?」
「何があったもクソもねぇよ、お前にビビって誰も出てこねぇんだよ」
「俺?何かしたっけ?」
「こっちが聞きてえよ何したんだよこの古龍級生物が。前に見た時よりも龍脈と深く繋がりやがって」
......ん?え、なに?
「なになに!なんて言ってるの!?」
「通訳してくれると助かるのだけど」
あーそっか、モンスターの言葉は分からないのか。
「なんか俺が古龍級らしい」
「え?何か不思議なことある?」
「え?」
アッシュの言葉に思考が止まる。
「だってちょんじ神様なんでしょ?」
......確かにテオのジジイと互角に殴り合ったりしてたわ。文字通り古龍級じゃねーか。
「むしろ古龍級止まりなのがおかしいのよ」
さしみんの意見ももっともだ。だがそれはアイルーの肉体の限界があるからだろう。無茶な運用して弾けて混ざったら元も子もない。
「なぁ......俺たちの心の平穏のためにも、さ」
ランフォが言いにくそうに話しかけてきた。
「早いとこ帰ってくんね?」
あー、まぁ、そうなるよな。
「なんて言ったの?」
「早よ帰れとさ」
「うーん、そうだね、何も出来ないしね」
アッシュに伝えれば、案外あっさりと帰投が決まった。
「じゃあ召喚するわね?」
「お願いしまーす!」
「えいっ」
さしみんが可愛いかけ声とともに手を翳すと同時、2メートル程離れた位置に二台のバイクが出現する。
光る演出とか無いのかよ。
いやまあ要らないけど。
「なっはっ?おい!ありゃ何だ!」
「気にすんな、騒音モンスターだ」
当然ついてこれないランフォに説明する。騒音とは言ったが、マフラーの改造なんかはしていない。わざわざしなくてもこの世界じゃよく響くんだな。
「ほらちょんじ早く早くー!」
「おーう!あばよランフォ。また来るぜ」
「二度と来なくていいッ!」
軽口を叩きながらランフォに別れを告げ、アッシュの背中にしがみつく。そうして俺たちは何をしたわけでもなく未知の樹海を後にした。