神様転生したら、犬に転生するように言ったのに大神に転生して、現代でメリーさんと仲良くしていたら問題児達と一緒に異世界に呼ばれた   作:天城黒猫

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まーた書いたのか。とか言われそうですが、頑張ろう。


ああ、召喚ね。よくある異世界にいって魔王を倒せとかいうやつ。

 あれから五年経った。

 俺は人間だった……そう、人間『だった』のだ。だけど今は違う。体は白く、体には紅色の隈取が刻まれている。

 今の俺は犬……いや、オオカミといったほうがいいだろうか。それもただの狼ではない。

『筆しらべ』という景色に筆を加えることで様々な現象を起こすことが出来るのだ。背中には銅鏡がどういう原理かはわからないが、浮かんでおり自在に操ることが出来る。

 ……ここまで言えばお分かりだろうか。今の俺はゲーム『大神』の主人公である狼———正確に言えば天照大神になっているのだ。まあ、今の俺は神性なんていうものはなく、ただ筆しらべが使える身体能力が高いだけの犬だけど。

 最も、この世界には八岐大蛇なんていうものは封印されていないし、復活もしていない。

 というかまごうことなき近代だ。道はコンクリートで覆われ建物はビルが並ぶ。そんな時代だ。妖なんていうものも————まあ、メリーさんとか七人ミサキとかの都市伝説は実際にいるが、ほとんど消滅している至って平和な世界だ。荒廃もしていないので、やることもない。

 やることといったら、他の野良犬達とエサを取り合ったり、先ほど言った都市伝説勢と話したり、筆しらべの練習をしたりするぐらいだ。

 まあ、なんやかんやで日々楽しく過ごしている。

 なぜ俺が大神になったのか。それは神様転生という物が原因だ。そう、神様転生。よく見る「チートあげるから転生して来い」というやつである。

 そこで選んだチートは一つだけしか選べなかったが、あの時の俺は疲れていたのだろう。日々チームのミスで残業し、そのくせして残業手当なんか貰えないブラックな会社に勤めていた。

 社畜ならば何も思わないのだろうが、俺はまだ学校を卒業したばかりの新米ペーペーな社員だった。勿論最初はやる気に溢れていたが、僅か四年で限界ギリギリになっていたのだ。

 そんなときに神様転生。俺は神様と会う前に路地裏を元気に駆け回る野良犬を見て、「野良犬は自由でいいなぁ……」とか思っていたので、犬になることを望んでしまった。

 それがこの結果だよ。普通の犬ではなく大神なのは神様の気遣いなのだろうか。おかげで疲れることもなく他の犬よりも身体能力が高い。

 なので、縄張り争いとかエサの争奪戦とかに負けることもなかった。

 まあ、人間は順応力が高い生き物なのだろう、おかげで最初の一か月ほどは戸惑ったが三か月もたてばすっかり犬生に慣れていた。

 途中で保健所に襲われたり筆しらべの練習をしているところを人間に見つかったりして、都市伝説勢に加えられたりもしたことがあったが、まあだいたいは道行くスーツの人々を見て「お疲れ様でーす」と犬語で吠えてみたり、というか犬語しか喋れない。

 スローライフを送っていた。そんな犬生に機転が起きたのだ。

 きっかけは一枚の手紙。その手紙はある日昼寝していた俺の頭に降ってきたのだ。

 宛先には達筆な字で「大神殿へ」と書かれいた。

 だけど犬の俺の手は肉球なため、開けることは出来なかった。さて。どうしようかと悩んでいるところに俺に声をかけるヒト———ヒトではないか。人形というか、妖怪というか。

 その人は腰まである綺麗なブロンドの髪を携え、服は純白のワンピースを着ている。可愛らしい少女がいた。

 

「何それ?手紙?ふーん、アンタに手紙を出すなんていう変わり者もいるのね」

 

 だが、その少女はとても小さい。精々が身長三十センチというロリ真っ青のミニマム少女。人形である。彼女は俺と同類———といっても神様転生を果たしたわけではなく、都市伝説に加えられる現代版妖怪の中でも知名度が高い都市伝説の重鎮なのだ。

 名前はメリーさん。電話を適当に掛けて番号が当たるとその人の元に少しずつ、少しずつ電話を掛けながら近づいていき、後ろに移動したら「あたしメリーさん。今貴方の後ろに居るの」といいハサミで振り向いた人の顔をザックリとやっちゃう娘なのである。

 一応俺も不思議な力を使う犬として都市伝説に加えられており、都市伝説というか近代版妖怪のサークルの顔見知りなのである。

 そんな彼女は俺の頭に掛けて足をぶらぶらさせながら地面に置いてある手紙を眺めている。

 ————ああ、そうだ。良い考えが思い浮かんだ。

 メリーさんの持っているハサミで手紙の封を開けてもらうのだ。

 

ワンワンッ(そのハサミで手紙を開けて)!!」

「ん?どうしたのよ。ポチ、急に吠えて」

 

 だけれどそれを伝えようにも俺は犬。妖怪ではないにしても、声はワン。という吠え声のみしか喋れない。しかもメリーさん、俺をポチと名付けているのだ。まあ、いいんだけれど。この手紙を開けなければ話にならないのだ。

 だから声ではなく、前足で手紙をタシタシと叩いて注目させる。

 

「手紙がどうしたの?あ、コレアンタのよね。ふーん、ポチじゃなくって……おお?か、み?なんていう大層な名前だったのねえ。けどポチのほうが呼びやすいからポチって呼ぶわよ。異論は認めないわ!」

 

 ちがーう!名前なんてどうでもいい!しかもポチのまんまかい!最も俺もそっちのほうが呼ばれなれているからいいんだけどさぁ、今は手紙!て・が・み!なの!

 より一層前足を激しく動かしてメリーさんに訴える。

 その思いが通じたのか、メリーさんは俺の頭から飛び降りて手紙を持ち上げる。

 

「あ、もしかしてこの手紙開けてほしいの?」

ワンワンワ(イクザトリィー)!」

 

 メリーさんはそう言いながら首をこてん。と傾げる。

 その通り!と俺は頭を縦に振る。

 

「わかったわ、……ちょっと待っててね」

 

 メリーさんは背中に背負っている毎日磨いているため、太陽の光を反射してピカピカに光り輝いているお洒落な装飾が最低限、無駄なく施された銀のはさみを抜いて手紙の封をジョキジョキと、一生懸命切ってくれる。

 

「ホラ!できたわよ!ありがたく思いなさい!」

 

 メリーさんはそう言いながら小さな体で小さな胸を張って、どや顔をして俺に手紙を差し出す。しかもご丁寧に折りたたまれたのを広げてだ。そんな小さな気遣いがメリーさんのいいところなのだ。

 

ワンッ(ありがとう)!」

 

 お礼の印に一声吠えて改めて手紙を読む。

 そこにはやはり達筆な字で奇妙な事が書かれていた。

 

『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能(ギフト)を試すことを望むならば、己の家族を。友人を、財産を、世界の全てを捨て、我らの"箱庭"に来られたし』

 

 ————そして、俺の視界は光に包まれた。

 

 目を開けて見ると、初めに映ったのは白いドレスに身を包んだいかにもお嬢様な感じの少女だった。

 そして次に映ったのは、湖。とても小さい湖だが、すこしずつ、少しずつ大きくなって————いや、これは俺が落ちているのだ!一体全体どういうことだ?全く持ってわからな———いや、心当たりが一つだけある。俺を転生させた神様の仕業なのだろうか?

 考えていてもキリがない。このままでは水に叩きつけられてトマト的な事になってしまうだろう。いくら水だからと言っても侮ることなかれ。プールに腹から飛び込むと痛いだろう?それと同じだ。こんな上空から叩きつけられると痛いどころではないだろう。

 改めて回りを見まわす。ヘッドフォンをつけた不良っぽい少年が一人、おとなしそうな印象の少女と、その近くに三毛猫……アレオスか?だとしたらすごいな。が一人と一匹。そして先ほど目についたお嬢様が一人。合計三人と一匹…………

 

「キャアアァァ!?なによコレー!」

 

 そんな叫び声が俺の犬耳に入ってきた。……この声は聞き覚えがある。というかありすぎる、さっきまで一緒にいたのだから。

 メリーさんの声だ。恐らくは俺に巻き込まれたのだろうか?まあいい。人数が変わろうとやることは変わらないのだから。

 改めて数えなおすと合計三人と一匹、俺を含めると二匹か?あとメリーさん一体。(人形だからこの単位で良いと思う)

 そして、意識を湖へと向ける。————世界が停止する。

 そして、停止した世界で湖に筆で丸を六つ描く。再び世界が動き出す。

 そうすると、丸を書いたところに蓮が現れる。これは蓮之花神という筆しらべの技だ。効果は丸を書いたところに蓮を出現させるというもので、ゲームではこれを使い、水の上に足場を作って川を渡ったりということができる。

 まあ、無いよりはマシだろう。気休めみたいなものだ。蓮は大の大人がのってもビクともしない強度を誇るが、それでもこんな上空から落ちた人を受け止められるかは分からない。

 ————そして、遂に湖に落ちる。

 その結果、ぼよよーんと湖がトランポリンみたいに俺達を受け止めた。

 元から見えない緩衝材のようなものを張ってあったのだろうか。それなら心配は無用だったようだ。

 

「うわっ!?なんだこりゃあ!?面白いなオイ!」

「ちょっとーポチ!早く何とかしなさいよ!私泳げないんだから!」

 

 皆上手く蓮の上に乗ったようで、濡れることはなかった。どうやら蓮を出したのは無駄ではなかったようだ。というか俺は泳げないので、蓮を出さなければ溺れてしまうことだろう。

 そして不良っぽい少年や少女達は、各々目を輝かせたり、戸惑ったりしているようだ。そんな中メリーさんの喚き声が聞こえた。

 ……へいへい、今すぐ何とかしますよっと。と一吠え。

 意識を世界に向け、停止する。

 筆をクルリ。と描き、世界が動き出す。

 そして風が吹き、蓮を湖の岸まで押していく、これは『疾風』という風を起こす筆しらべだ。ゲームでは掛け軸を足場にするために使われる。

 そして、皆陸に上がったため俺も陸に上がる。

 メリーさんがすたたたーっとこっちに駆け寄ってきて俺の頭の上にのっかる。いつもここにのっかるのだ。気に入っているのだろうか?そういえばゲームでもイッスンとかいうキャラが頭にのっかていたなとどうでもいいことを思い出す。

 

「よくやったわ、ほめて使わすわよ!」

 

 メリーさんはそう言って俺の鼻をバシバシと叩く。やめてほしい、犬の鼻は敏感なのだ。けど前にソレを指摘してもやめなかったため、諦めている。

 

「此処……どこだろう?」

「さあな。まあ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」

 

 大人しそうな少女の言葉に不良っぽい人が答える。……世界の果て?なんだそれ、めっちゃ気になるんだけど。大亀とか、いつの時代の世界構造だ。

 

「まず間違いないだろうけど、一応確認しておくぞ。もしかしてお前たちにも変な手紙が?」

「そうだけど、ますは"オマエ"っていう呼び方を訂正して。————私は久遠飛鳥よ。以後は気を付けて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴女は?」

「……春日部耀。以下同文」

「そう、よろしく春日部さん。次に、野蛮で凶暴そうな貴方は?」

「高圧的な自己紹介ありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子揃った駄目人間なので、用途と容量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」

「そう、取扱説明書を書いてくれたら考えてあげるわ。十六夜君」

「ハハ、マジかよ、今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」

 

 不良っぽい人が十六夜君で、お嬢様が飛鳥ちゃんで、大人しそうな子が耀ちゃんね。というか皆第一印象どおりだな。というか中々にアクが強そうだ。

 ん?三人ともこっちを見ている。

 飛鳥ちゃんが口を開いた。

 

「で、最後にそこの銅鏡を背負った犬?かしら、貴方も私たちと落ちてきたわよね?」

「……犬じゃなくて狼だと思う。白くてカッコいい」

 

 あ、そうか。俺たちのことか。そりゃあ気になるよな。……人語喋れないんだけど、どうしようか?

 と俺が悩んでいたら、メリーさんが突然叫んだ。恐らくは指摘されなかったことに腹を立てているのだろう。

 

「あーもー!この犬はポチ!私のシモベよ。というかさっきからさらっと無視しないでよ!」

 

 ……シモベじゃないんだけれどなぁそれに大神だし。いつからシモベになったんだろうかと抗議の鳴き声を上げてもその声は届かない。

 ……まあいいか。メリーさんもマトモに人間と向き合うのは初めてだろうから、威嚇しているんだろう。妖怪は陰から襲うのが常套手段だからな。

 

「ご、ごめんなさい。まさか人形が喋るとは思わなかったの。それで、貴女は?」

「……ごめん」

「ハハハ、おもしれえなホント!」

「ふふん。そっちの白いのと地味そうなのは許してあげるわ!だけど、そっちのいかにもなヤンキーは許さないわ!」

「おお、こりゃあ怖いな」

「むう、私の名を聞いて恐れおののきなさい!私は————」

 

 メリーさんは仮面ライダーがとるような変身ポーズをビシィ!ズバッ!バシッ!と決めた後にドヤ顔で胸を張りながら言う。

 

「都市伝説知名度ナンバーワン!電話の向こうから少しずつ近づいてくる恐怖!振り向いたら背後からハサミでぶっすり!華麗な人形少女ことメリーさんよ!」

「……ええ!?」

「マジでか!?あのメリーさんなのか?実在していたとはなぁ。ということはそっちの犬、いや狼は……」

 

 メリーさんの紹介に十六夜君と耀ちゃんはびっくりしている。まあ、確かに都市伝説がイキナリ目の前に現れたらそうだよなあ。俺も初めてあったときはそんな感じだったよ。本当にいるとはなって。

 というか飛鳥ちゃんは首をかしげている、メリーさんの事を知らないのだろうか?確かに箱入りって感じだし、パソコンとかには触らせて貰えなかったんだろうか。

 そんなに驚くとメリーさんが調子にのってポカやらかすから、その辺にしたらどうだろうか。

 

「ポチ、お前は『白野威』か?」

 

 十六夜君が俺にそう聞いてくる。……白野威。それは俺の都市伝説での渾名だ。なんでもネットでは車よりも早く走って風や水を操り、人々を驚かす。なんていう感じになっているようだ。

 肯定の吠え越えを一つあげる。十六夜君も耀ちゃんも驚いている。飛鳥ちゃんは相変わらず首をかしげている。

 

 ————まあ、これでお互いのことも分かっただろうし、さっきからそこで俺たちのことを除いているヤツ。出て来いよ。

 

 そして、筆しらべを発動する。茂みの前に円とその円に刺さるように棒を一本。林檎の様なものだ。

 そして、茂みの前に小ぶりの花火が現れ、爆発する。

 

「うぎゃああああぁぁぁぁ!?」

 

 叫び声が聞こえるが、さっきから隠れて俺たちのことを試すようにジロジロ見るほうが悪い。

 そして、上からヒュルルル———っと落ちてきたのは、バニーだった。兎というわけではなく、ウサミミをつけてミニスカートのバニーだ。……人前というか外にそんな格好で出るとは、よくわからないが色々とあるんだろう。イジメか、ただの痴女か。オッパイがけしからんし。まあ、放っておこう。

 

「お前……」

「意外と……」

「容赦ない……」

「な、なによコイツ!?痴女?痴女ね!よくやったわ、これで私たちの平和は守られたわよ!」

「ぐふぁ!?黒ウサギは痴女じゃありません!」

 

 十六夜君たちがこっちに何やら非難の視線が刺さっているが、知ったこちゃあない。というかメリーさんはなんでそうなるのだろうか。

 バニーがメリーさんの言葉にダメージ受けているけど、そんな格好しているのが悪い。自業自得だ。

 さて—————

 

「お前が俺達を此処に呼んだんだろう?まあ、そうでなくとも、俺達を呼んだ奴に関係するものか?痛い目を見たく無ければさっさと知っている事を、吐いたほうが身のためだぞ?……だって」

 

 んんん?耀ちゃんが俺の言ったことをそっくりそのまま復唱しているんだけれど……もしかして言葉通じているのか?

 俺の疑問に耀ちゃんは頷く。

 

「……うん。私は動物たちの言うことが分かるの。良かったら友達になって?大神?」

 

 それは驚きだ。まあ、あの手紙には才能(ギフト)とか書かれているから、そういったものを持っている人たちが集められたのだろうか。あの二人も何かしらの力を持っているのだろう。

 耀はそう言って手を差し伸べる。俺はその手に前足を置く。要はお手だ。

 ポチのほうが呼びなれているし、ポチでいい。これから通訳とか頼むかもしれないけど、よろしくな。

 

「うん。よろしく」

 

 その耀ちゃんの顔は微笑んでいた。……ぼっちだったのだろうか?

 

「ちょっーとまちなさい!だったら私も友達になってあげないこともないわよ!」

「そうね。よろしければ私とも友達になってくれないかしら?私たちって正反対なのだろうけど、以外に仲良くやっていけそうなの」

 

 メリーさんと飛鳥ちゃんが気恥ずかしそうに耀ちゃんに言う。

 耀ちゃんは嬉しそうに、だけどどこか恥ずかしそうに笑いながら頷く。

 

「あ、あのー。もういいでしょうか?皆さん」

 

 バニーが起き上がっておずおずと訪ねてくる。ああ、今まで忘れていたよ。それでもなんとか皆バニーの前に座って聞くだけは聞こうといったスタイルでいる。

 バニーさんは咳払いをして、両手を広げる。

 

「それではいいですか、皆様方。定例文で言いますよ?言いますよ?」

「さっさとしなさいよ!」

「は、ハイ……ようこそ!"箱庭"の世界へ!我々は皆様方にギフトを与えられた者たちだけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと召喚いたしました!」

 

 ギフトゲーム……ねえ。まあ、異世界のゲームなのだろうけど、平和的にチェスとはいかなそうだな。異世界だからバトルとかするんだろうか。……案外八岐大蛇もいたりして、シャレにならないなソレ。

 

「ギフトゲーム?」

「そうです!既に気づいてらっしゃるんでしょうが、皆様方は普通の人間、普通の動物、普通の人形ではございません!その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます!『ギフトゲーム』はその恩恵を用いて誘い合うゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できるために作られたステージなのでございますよ!」

 

 ……オモシロオカシクねえ……そりゃあ胡散くせえなオイ。まるでセールスマンみたいだぜ?バニー。

 

「先ず初歩的な質問からしていい?貴女の言う我々とは貴女を含めた誰かなの?」

「YES!異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって数多とあるコミュニティに必ず属していだだきます!」

「嫌だね」

「属していただきます!そしてギフトゲームの勝者はゲームの"ホスト(主催者)"が提示した商品をゲットできるという、とってもシンプルな構造となっております」

 

 へえ、なるほどな……提示した商品をゲット……つまりは賭けの一種というわけだよな。これはますます怪しい。というかもう確信に近づいている。まあ、わざわざ異世界から俺達を呼び出すんだ。大抵は何かがあるよな。

 

「………………主催者って誰?」

「様々ですね、暇を持てあました修羅神仏が人を試す為の試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自開催するグループもございます。特徴として、前者は自由参加が多いですが、"主催者"が修羅神仏なだけあって凶悪かつ難解なものが多く、命の危機もあるでしょう。しかし、見返りは大きいです。主催者次第ですが、新たな恩恵(ギフト)を手にすることも夢ではございません。

 後者は参加のためにチップを寄贈されるシステムです」

「後者は結構俗物ね……チップには何を?」

「それも様々ですね。金品・土地・権利・名誉・人間……そしてギフトを賭け合うことも可能です。新たな才能を他人から奪えばより高度なギフトゲームに挑むことも可能でしょう。ただし、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然————ご自身の才能も失われるのであしからず」

 

 黒ウサギはこちらに媚びるような笑顔を見せるが、その陰には黒いものがある。……しかし、やっぱりそういうコトか。

 なにが失われたのだろうか?金?土地?権利?名誉?人間?はたまた……それらすべてか……?

 

「そう、なら最後にもう一つだけ質問させて貰っていいかしら?」

「どうぞどうぞ!」

「ゲームそのものはどうやったら始められるの?」

「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録していただければOK!商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加していってくださいな」

 

 へえ、ということはこの世界はそのゲームが法であるということか?こんなラノベどこかで見たことがある……ああ、ノゲノラか。……この世界天翼種(フリューゲル)とかいないよな?いたとしたらいくら十六夜君でも勝てそうにないよな。

 だけど、そんな世界で治安は大丈夫なのだろうか?

 飛鳥ちゃんも同じようなことを思ったのか、黒ウサギに質問していた。

 

「ふふん?中々鋭いですね。しかしそれは八割正解の二割間違いです。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。ギフトを用いた犯罪などもってのほか!そんな不逞な輩は悉く処罰します。————が、しかし!ギフトゲームの本質は全く逆!一方の勝者だけが全てを手にするシステムです。店頭に置かれている商品も、店側が提示したゲームをクリアすればタダで手にすることも可能だというころですね」

「そう、中々野蛮ね」

「ごもっとも。しかし、主催者は全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めからゲームに参加しなければ良いだけの話でございます」

 

 ある程度のルールはあるというわけか。まあ確かにそうでなければ箱庭は無法地帯になっているだろう。

 そして黒ウサギは懐から封書を取り出した。

 

「さて、皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには、箱庭の世界における全ての質問に答える義務がございます。が、それらすべてを語るには少々お時間がかかるでしょう。新たな同士同士である皆さんをいつまでも野外に出しておくのは忍びない。ここから先は我らのコミュニティでお話をさせていただきたいのですが……よろしいですか?」

 

 黒ウサギはさっさと話しを終わらせるつもりか……いや、恐らくはそのコミュニティとやらに所属させてから全てを明かすつもりか?おれはいよいよ悪質だな。それほどに切羽詰まっているのか。

 これはアレだな、「アンケートとるんでそこのカフェでご協力をお願いします」というやつと同じような手口だな。

 ……メリーさん。黒ウサギの話が長いから寝るのはいいけど、よだれを垂らすのはやめてほしいんだが……

 

「待てよ。未だ俺が質問していないだろうが」

 

 十六夜君の言葉は殺気に満ちたものであり、黒ウサギを威圧する。そのことに気が付いた黒ウサギは作り笑顔をやめ、聞き返す。

 

「……どういった質問です?ルールですか?ゲームそのものですか?」

「そんなのはどうでもいい。腹の底からどうでもいいんだ。黒ウサギ。ここでオマエに向かってルールを問いだしたところで何かが変わるわけじゃねえんだ。俺が聞きたいのは……たった一つ。手紙に書いてあったことだ」

 

 そして十六夜君は俺達を見まわして天幕によって覆われた都市に向ける。

 ああ、確かに俺もそれは別に気になっていたところだ。あの手紙には『全てを捨てて来い』と書いてあった。妖怪のような存在の俺たちは別に良いとして、人間である彼らはそうはいかないだろう。

 だから見返りが。全てを捨てるほどに見合うだけの物があるのか。

 

「————この世界は面白いか(・・・・)?」

 

 その問いに黒ウサギは自信満々といった様子で答える。

 

「————YES。ギフトゲームは人を超えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より面白いと、黒ウサギは保証致します♪」

 

 なるほど、確かにそうだろう。この世界はヒトの身でないからこそ分かる。あたり一面妖気に満ちた魔境。何が待っているのか分かったものじゃない。

 だからこそ、聞かせてもらおうか。

 

「『……黒ウサギ、質問だ。耀ちゃん、通訳頼むぜ』だって」

「はいな、大神様。何でございましょうか?」

「『……いいや、訂正だ。言い方を変える』」

「?どういうことでしょう———キャ!?」

「『これは質問ではない。尋問だ』」

 

 俺の言葉に黒ウサギは戸惑う。だけどそんなことはどうでもいい。黒ウサギは悲鳴を上げて突然倒れる。なぜならば俺が筆しらべを使ったからだ。使うのは基本中の基本、『断神』。筆を斬りたい対象に横一文字に描く。

 だが今回は威力を抑えたため黒ウサギを押し倒すのにとどまった。

 そして背中にある銅鏡を操り、黒ウサギののど元に突き立てる。

 

「……これは、どういうことでございますか?何か不備があったならば謝罪致します」

「『不備?不備ねえ。大アリだ、お前は何故俺達を箱庭に呼んだ?』」

「それは、あなた方にオモシロオカシク遊んでもらおうと……」

「『回りくどいのは嫌いだ。だから単刀直入に聞こうか。————黒ウサギ、お前が所属しているコミュニティは今どうなっている?』」

「ッツ!それは—————」

 

 黒ウサギは口を詰まらせる。確かにそれは黒ウサギにとっては今最も聞かれたくない言葉だっただろう。だけど、これだけは聞いておかなきゃならない。

 

「———それは確かに私も興味があるわね。()()()()()()()()()()()()

「な————これは———分かりました」

 

 飛鳥ちゃんがそういうと、黒ウサギの口が不自然に動いて話す。洗脳系の能力といったところか。

 

「黒ウサギのコミュニティは衰退の危機に陥っています。コミュニティの象徴である旗印も、名のるべき名もなく、ノーネームと呼ばれています、かつては箱庭でも巨大な繁栄をもたらしたコミュニティでしたが、一夜で滅ぼされました。その原因———魔王を倒す為に皆様方を異世界から呼び出しました」

「魔王!?何だその超カッコいい素敵ネーミングは!箱庭にはそんな奴がいるのか!?」

 

 十六夜君がキラキラした目で黒ウサギを見る。どうやら彼は力を持て余しているみたいだし、その力をぶつけられそうな相手が居ることに喜んでいのだろうか。俺としては不安だが、その中に八岐大蛇が入っていそうで。

 

「いいえ、十六夜さんが思ってい描いているような魔王とは差異があるかと……魔王には主催者権限(ホストマスター)という箱庭における特権階級を持つ修羅神仏で、彼らにギフトゲームを挑まれたが最後、誰も断ることは出来ません。私たちは主催者権限を持つ魔王のゲームに強制参加させられ、コミュニティは……コミュニティとして活動していくために必要な全てを奪われてしまいました」

 

 なるほど。……魔王というのは、それほどの力を持つということか。全く持って恐ろしい。仮にも神の一端を担うであろう黒ウサギがここまで怯えるとは、……全く面倒くさい。だがまあ、生前よりはやりがいがありそうだ。

 

「成程ね、そういうことなのね」

 

 十六夜君も、飛鳥ちゃんも耀ちゃんも黒ウサギを見つめている。

 かくいう俺も見つめている。喉元にはもう銅鏡は突き立てておらずに、俺の背中にある。

 

「……成程。黒ウサギ、お前はそのことを黙っていたというわけだ」

「……ハイ。申し訳ありません」

「ハッ!確かに黙っていたことは気に入らねえ、だけどな魔王を倒す。————めっちゃ燃えるなオイ!」

「確かにそうね」

「……うん」

 

 皆、黒ウサギのコミュニティに入ることにしたようだ。やれやれ、燃えるとかそんな問題ではないだろうに、そんなんじゃいつか痛い目を見るぞ?まあ、俺たちも他にアテはないし入るしかないんだがなぁ。

 

「み、みなざんっ…………!黒ウサギはぁ……ぐろうざぎばぁっ……!!」

 

 黒ウサギはそのことがよっぽどうれしかったのか、それともこれまで耐えてきたものが一気に漏れたのか、泣きわめく。

 

「…………え?なによコレ?」

 

 ……そんな状況を起きたばかりのメリーさんは、戸惑っていた。まあ、確かにこの状況をいきなり見れば残念美人なバニーが泣きわめいているとしか解釈できないしな、そりゃあ戸惑う。

 

 

 ま、これからどんなモノが待っているのか、僅かに俺の体が疼いている。やはりこういったものにはワクワクしてしまうのが男の子の性というものだろう。

 これからどんな冒険があるのか楽しみだ。




次回の投稿は未定。
少なくとも九月中旬には投稿します。
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