ララと出会った翌日の放課後、オレとララ、そして隠れてるヤツ以外は誰もいない河原に来ていた。
ちなみにララには昼飯を用意しといて、そしてオレが帰って来るまでオレ部屋でジットしてるように言ったらちゃんと大人しくしていた。
もっとも、オレの部屋に置いてある本を色々と読んでたりゲームしてたみたいだが。
「どうしたの? リクオ。ガッコから帰って来るなり外に私を連れて来て」
「なに、少しララに聞きたい事があったからな」
オレの部屋で聞いてもいいが、外の方が都合がいい。
「ララがどうしてあいつらに追われているのかとララが何者なのか知りたい」
オレは昨日の夜寝る前に聞くかどうか考えた結果、ララに聞くことにした。
「私ね、本当は家出をしたの。毎日毎日パパが呼んだ後継者とお見合いばっかりされて……。昨日の追手はパパの部下の人達なの」
………………家出?
……………………家出だったとは、オレの予想の斜め上を言っていた。
しかし、毎日見合いか……。
『ねぇリーデル、これからも私を守ってね』
『当たり前だろ、俺にとってユウは誰も信じられなかった俺を変えてくれた大切な人なんだ、守るのは当たり前だ。俺よりも強い相手に俺一人で立ち向かうには無理があるが、シンやカオスたちがいる。カオスたちも言ってただろ、ユウだけじゃない、大切な仲間は守るってさ』
『ええ、そうね』
『…………リーデル、私もう嫌よ、毎日毎日お見合いをさせられるの。来る人は皆私の家のお金や地位が目当……それに私を見る目がイヤらしい過ぎるの。私にだって結婚する相手を選ぶ権利があるはずよ』
『大丈夫だ。もしもユウを襲うなんて事が起きれば俺が直ぐに駆けつける、相手が俺よりも強くてもユウが逃げるだけの時間稼ぎはする』
『私……もう無理よ。あんなヤツが時を止めて毎日私を襲っていたなんて。それもヤツの子供を身籠ってしまうなんて……ごめんなさい、リーデル。私はもう、生きていたくない』
『やめてくれ! 俺にはユウが必要なんだ! ユウが好きなんだ!! ユウがいないと俺は……』
『ありがとう、リーデル。その言葉、嬉しい……でも、もっと早くに聞きたかった……ごめんなさい、リーデル。さようなら』
『ユゥゥゥゥゥウ!!』
『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!』
「……………………」
「どうしたの? リクオ」
「あ、いや、なんでもない……」
少し前世での仲間の事を思い出しただけだ。
「そうか、ララが逃げていた理由がわかってオレは満足だ」
そしてオレは後ろを振り返り、隠れているヤツに視線を向ける。
昼頃から感じていた視線。
まるでオレがどんな人間なのか見定めるような視線をズット感じていた。
今オレをそうやって観察するヤツはただ一人、ザスティンと言うヤツだけだ。
「そろそろ出てきたらどうだ?」
オレは背後にいるおそらくザスティンに声をかける。
「やはり部下の報告通りただの地球人ではないようですね」
「ザスティン!!」
現れた男は……一言で言うなら趣味の悪い鎧姿の男だった。
顔はイケメンの部類に入るだろうが、鎧が全てを残念にしている。
そしてなぜか足を犬に噛みつかれていた……。
「フフ……全く、そこの地球人を探すだけても苦労しましたよ。警官に捕まるわ犬に追いかけられるわ道に迷うわ……これだから発展途上惑星は…」
いや、全てにおいてお前自信のせいだと思うが……。
そんな姿で歩いてると当然警官に捕まる。
犬は……知らん。
犬の尻尾でも踏んづけたんじゃないか?
いや、その鎧、骨に間違えられてるんじゃないか?
道に迷ったのははじめて来たであろう地球になんの準備もなしに来たお前が悪い。
発展途上惑星もなにも関係ない。
「しかし!! それもここまで!! さァ私と共にデビルーク星へ帰りましょうララ様!!」
かっこよく決めているが、犬は噛みついたままだ。
「べーーっだ! 私帰らないもんね」
「そうだ、一緒に帰る必要なんてない。どうしてもララを連れて帰るってんならオレを倒してからにしろ。オレを倒せないヤツがララを連れて帰るなんて言うんじゃない」
「そうですか。このザスティン、デビルーク王の命によりララ様を連れ戻しに来た身……」
デビルーク王……ってことはまさかララは星を統べる王の娘。
「得体の知れぬ地球人に怖じ気づいて戻ってきたとなれば死罰もあれ得ない事ではありません。ですので……」
ザスティンは腰に右手を周し、鎧のようにあまり趣味がいいとは言えない柄のみの剣を取り出した。
「地球人、貴様の言葉の通り倒してから連れ戻させてもらう。おさがりくださいララ様」
そして剣の柄から“ブゥン”と音をならし刃が現れる。
「さて地球人、貴様の名はなんと言う?」
「結城リクオだ」
オレは名のりながら河原に誰も来ないように結界を張る。
「さぁリクオとやら、私からララ様を守ると言うのであればその実力を見せてもらう!」
ザスティンはオレに殺気をぶつけながらオレの正面に歩いていく。
ああ、久しぶりだ、対戦相手に殺気をぶつけられるこの感じ。
オレは戦闘狂なんかじゃないと思っていたが、久しぶりだからか心地よく感じる。
「リクオ気をつけて! ザスティンはデビルークNo.1の剣士って言われてるの!!」
No.1の剣士か、久しぶりの実戦の相手としては申し分ない。
「いざ勝負ッ!!!」
ザスティンは一気にオレに近づき右手に持った剣を降り下ろす。
ここは必要最小限の動きでかわして……いや、こいつはマズイ。
オレは地面を蹴って右に飛ぶ。
「クッ!!」
すると剣が地面を斬りつけると同時に剣を中心に衝撃波が広がり飛んだオレの体をさらに浮かせる。
「今の一撃を避けるとはなかなかやる」
「そっちこそ、No.1の剣士ってのは伊達じゃないみたいだな」
着地したオレはザスティンが斬り裂いた地面を見る。
地面には刃よりも長く太い切り口が残っていた。
あの剣の刃に使用しているエネルギー、シャレにならないほどの高エネルギーだ。
それとこれを後で直さないとな。
このままほっといたらちょっとしたニュースになるだろうな。
「オレも武器を使うとしよう」
空間魔法を使い、歪んだ空間に手を入れ一振りの長ドス――祢々切丸
祢々切丸を取り出すさいに前世の頃に入れていた魔法薬や追々売って金にしようとしていた宝石の類いが大量にぶつかった。
結構痛かったな、捨てるか? いや、捨てるの勿体ないな。
となると整理か……整理は今度するとして、祢々切丸は特典として頼むのを忘れていたが、オマケとしてか魔法薬等と一緒にオレ専用のこの空間に入っていた。
ちなみに祢々切丸は和服だと懐に入れればいいが、制服姿だとどこに入れて持ち運べばいいのかわからない。
……いや、和服でも懐に入れて自由に動き回れるのが不思議で仕方がない。
これはぬらりひょんの孫を読んでいた頃から思っていたことだ。
なぜ祢々切丸を懐に入れといてなぜ不自由なく動き回れる? と。
それに技を使うさいにどこからともなく巨大な盃を出したりもする。
……二次元にそんなツッコミをするのはヤボだな。
どんな二次元にだって似たような事が沢山ある。
オレの事にたいしても二次元の特典を得たから二次元のような事になっていると思おう。
オレの身長の半分ほどの長さの祢々切丸を懐に入れて自由に動き回れても可笑しいことはなにもない……うん。
「その様な化工しただけの木の棒で私に勝てると思っているのか!」
「どうだろうな?」
しかし、祢々切丸は妖怪を斬るための刀……はたして宇宙人は斬れるのか?
「多くの星で戦ってきた私も嘗められたものだ!!」
持っている物で相手をしようとしているオレがしゃくにさわったのか、いかにも怒ってる顔で先ほどよりも速い速度で近づいて来る。
オレは右手で祢々切丸の柄を、左手で祢々切丸の鞘を握り、一気に引き抜きザスティンの剣と唾競り合いをする。
ザスティンが持っている剣が鉄ではなくエネルギーで出来た刃のため鉄と鉄がぶつかりあう音はしないが、ザスティンの剣からは『バチッ!』『バチチッ!』と音がする。
「……まさか仕込み刀だったとは」
「ちゃんとした武器だろ?」
他の星にも仕込み刀ってあるんだな。
「しかもその刀はただの鉄で出来てはいないようだ。イマジンソードをもってしても斬れないとは」
イマジンソード……なにげにカッコいい名前がついてた。
「だが、力は私の方が圧倒的に上だ!」
そう、力はザスティンの方が上。
なぜなら唾競り合いをしているオレの足が地面を削りながら後退していく。
デビルーク人……想像以上に力が強い。
「でもな、力の強化方法はいろいろとあるんだよ」
オレは魔法で身体能力を強化してザスティンを押し返す。
「ッ!? 貴様、なにをした?」
「言ったろ、強化方法はいろいろとあるってな!」
押し返したザスティンに斬りかかるがザスティンはイマジンソードを使い、いなしていく。
「ハアッ!」
いなされていき、オレから生まれた一瞬の隙をついて今度はザスティンが斬りかかる。
オレとザスティンの攻守が入れ替わり、ザスティンの連撃を今度はオレがいなしていく。
いなされて地面を斬りつけたイマジンソードは地面に大きな傷跡を残していく。
…………こいつは直すのが大変だ。
攻守の入れ替わりを何度かし、再び唾競り合いをする。
「貴様は本当に地球人か? 地球人は貧弱と聞いていた。それに今日見た地球人はまさしく貧弱だった」
「地球人を嘗めるなって事だ!」
唾競り合いをしていたザスティンの鳩尾に蹴りを入れ、後ろへ蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされたザスティンはバウンドし、足や後頭部等を強打し、倒れたザスティンは動かなくなる。
……少し強く蹴りすぎたか?
「ぐおおおおぉ!!!」
しばらくの間一切動かなかったザスティンが頭から血を流しながら急に起き上がる。
以外と元気だ……。
「この程度では私は負けぬぞぉーーーー!!」
頭から血を流しながらザスティンは突撃してくる。
持っている武器が剣だから仕方がないだろうが、突撃ばかりしてくるな。
オレはそんなザスティンに向かって左手を伸ばし、魔力を性質変換させ――
「氷の楯
本来ならオレ自信の目の前に出し、防御に使う魔法だが、今回はザスティンの目の前に出現させる。
ついでに大きさも調節して三メートル程の大きさにしとく。
……これじゃあ楯と言うよりも壁と言った方が正しいな。
「な!?」
突如現れた氷の楯
しかし、いい音したなぁ……“ビターーンッ!”って音がしたぞ“ビターーンッ!”って。
「なんのこれしきーー!」
ザスティンは真っ正面からぶつかった後、即座にバックステップをし、イマジンソードで砕いた。
「明鏡止水
砕かれた氷でお互いの視界を遮った瞬間、畏
「消えただと……!」
いきなり消えたオレを探すためにザスティンは周りを見渡す。
明鏡止水は自分の存在を相手に認識させず、相手の懐に入り込む技。
畏を断ち切られるとなす術がなくなるが、ザスティンが畏の断ち切り方を知る余地もない。
(まさかララ様の発明品か……いや、ララ様もあの地球人を探している。なにより、そんな素振りはなかった。と言うことはこれもあの地球人の能力!!)
消えたオレを見つけるために辺りを見回しているザスティンの背後に回り込む。
(ならば気配で!)
「ふっ飛べ!」
『奴良家一子相伝 フライング妖怪ヤクザキック!!』
オレはザスティンの背中に飛び蹴りをし、河に落とし、ずぶ濡れになったザスティンの胸ぐらを掴んで畏を解き、言いたかった言葉を言う。
「お前、無理矢理見合いをさせられるヤツの気持ちがわかるか?」
「なに?」
「オレはそんな事を経験したことがないから予想は出来てもソイツのハッキリとした気持ちはわからない」
「そしてララの父親が星の頂点に君臨してるって事はわかった。だからこそ自分の次に星の頂点に立つ者を選んでるんだろうが、ララの気持ちを考えた事があるか?」
「好きでもないヤツとの結婚をさせられる者の気持ちが……オレの昔の仲間にも似たようなヤツがいた。毎日毎日見合いをさせられ、やって来る連中はみな金や地位が目的の連中ばかり……」
「ソイツには好きなヤツがいてヤツもソイツが好きだった……だが、ある事が原因でソイツは絶望し死を選び、ヤツも絶望した」
「……ララに普通の恋愛をさせてやれよ! 少しは自由に好きな相手を探させてやれよ!」
言いたかった言葉を言ったオレは肩で息をしていた。
初対面の相手にこんなに一方的に喋ったのは久しぶりだ……。
「リクオ……ありがとう。私ね、自分の好きなように自由に生きたかったの」
オレが一方的に喋ってる間にララは側まで近づいて来ていたようだ。
「まだまだやりたい事たくさんあるし…結婚相手だって自分で決めたい……そう思ってた」
「私をザスティンたちから身を呈して守ってくれて私の気持ちも理解してくれる。私……リクオとなら本当に結婚してもいいと思う」
「ううん、結婚したい!!!」
……話の流れが可笑しな方向に。
「……負けたよ、地球人」
「デビルーク王の命に従うのが私の役目……それゆえ私はララ様の気持ちも知らず……いや、知りつつも考えないようにしてきたのだ」
ザスティンはなぜか泣いていた。
……どこに泣く要素があった?
「それを指摘されては……私の負けだ」
ザスティンは河から上がり、きびすを返してオレとララから離れていく。
……噛みついた犬、結局離れなかったな。
いや、今はそこじゃない。
「宇宙に数多くいるララ様の許嫁候補どもが納得するかわからぬが、デビルーク王には私から報告しておこう」
「お前なら任せられる・と!!」
「ララ様のお気持ちを真に理解できるお前なら……!!」
ザスティンは涙を流しながら去っていき、ララは満面の笑顔でオレに抱きついてくる。
話が斜め上に進んでいく……オレは会って間もないララの婚約者になってしまったようだ。
美柑になんて説明すればいいんだ……。