3度目の人生は静かに暮らしたい   作:ルーニー

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狂った男のそばにいる少女

 え?しんや?しんやのことを聞きたい?なんでまた?まぁ、私はええけど。

 う~ん。でも、しんやのことは私もよくわからんのよ。どうしても私主観になってまうけど、それでもええ?

 

 しんやは、そうやね。一言で言ったら他人に興味がないわけのわからない人、かな?

 しんやが他人と思ったら最低限の付き合い以外は滅多に関わろうとしない、基本的に興味ないみたいな態度を取っとる。人と話すこと自体に忌避感すらあるような部分もあったりするけど、けど他人じゃないと思ったら本当によく面倒を見てくれるんよ。ぶっきらぼうなところもあるけど、でも足の悪うなった私の面倒も、今お世話になっとるしんやのお父さんとお母さんにも気遣いみたいなのをかけとる。それこそ小学生なのに大人みたいなところが見えてくる、本当に不思議な人なんや。

 

 そもそもの、しんやとの出会いは、覚えてへんのやけど本当に記憶のないころからやね。私のお父さんとお母さんと、しんやのお父さんとお母さんは本当に仲良しで、よく4人で遊びに出かけたりもしとったらしいんや。そんなことやから、お互いの子供がおんなじ年に生まれたことにえらい喜んだみたいやで。

 

 あぁ、ごめんごめん。しんやのはなしやったね。ほんで、私の記憶にある中で1番古いんは、保育園の頃やね。

 あの頃からしんやは何かに怯えるようにいつもビクビクしていたのを、今でも覚えとるわ。いつも周りを気にしていたからみんなからは弱虫だなんていわれとったけど、本人は全く気にしたことはなかったな。むしろ勇敢なのはバカだなんて言ってたほどやったのを覚えとるわ。

 

 でも、しんやは本当にいろんなことを知っとった。まるで見てきたように、学んできたかのようにいろんなことを知っとったし、なによりそれでもいろんなことを、主に都市伝説や噂をよく調べとった。今でも、むしろ今の方がひどいと思えるほどに知識に貪欲に見える。まぁ、私もその影響はないわけやなんやけどね。

 

 まぁ、そんな態度をしとったからガキ大将みたいなのにえらい目をつけられてたんよ。そいつ私にもえらいちょっかいをかけてきて、それでしんやはめんどくさそうやったけど私をかばってくれた。今思えば、その時から私のことを家族みたいな感じに見ていたんとちゃうんかな。

 そんで、まぁそんなしんやがえらい気に食わんかったみたいである日ついに掴みかかったことがあったんよ。体格も向こうの方が大きかったんやけど、それも簡単に、それこそ慣れているみたいにいなして逆に泣かしてたんよ。

 

 そこからひと悶着あったんやけど、まぁ変なところで大人顔負けなことを言ってその場を収めていたのは、なんか、不思議な感じやったなぁ。だって、子供が大人を言い負かしとるんやで?こっそり見とったけど、あれはちょっとかわいそうに見えたわ……。

 

 まぁ、そんな感じでしんやは小さいころから、その、異常な感じやったわ。

 たまにしんやの家に遊びに行っても、鉄に向かってブツブツと何か言っているか、勉強しとるか、ネットや本で変な噂とかを調べてるか、空手の練習しとるかのどれかしかほぼしてなかった。しんやのお父さんとお母さんも本当に子供っぽくないしんやにどう接すればいいのか分からへんみたいなことを私のお父さんとお母さんに話していたのを見たことがあるけど、ホンマ子供っぽくないって私も思った。

 

 だって、誕生日とか記念のプレゼントに欲しがったものってゲームとかおもちゃとかじゃなくて、鉄とか、なんやったかな?しんきゅう?を欲しいって言っとったって聞いた。ゲームとか買おうとしたこともあったみたいやけど、そんなのはいらないから鉄をくれって言ってたみたいや。

 でも、普段はわがままとか言わへんし、勉強もかなりできる。自分勝手なことばかりしているわけでもない、ときたま起こす奇行にさえ目を瞑れば本当にいい子なのが災いしてたんやろうな。異常やって分かってても、本当に自分の息子が好きなのか欲しいと言ったものを、しんきゅうは無理やったらしいけど鉄を買ってあげてた。しんやは喜んでたけど、しんやのお父さんとお母さんは心中複雑やったやろな。

 

 結局あの日まで、私はしんやは変なやつや、としか思ってなかったんや。あの日が、私の運命が変わった日が来るまでは。

 

 私のお父さんとお母さんが死んで、その時から足が悪くなっていた私を引き取ろうとした親戚は誰もおらんかったんやけど、私のお父さんとお母さんの親友やったしんやの家に引き取られたんや。最初はお父さんとお母さんが死んだことに対して、足が動かんくなってきている不安もあって、悲しすぎて、もうどうにでもなれって、そう思ってたんや。やけど、引き取られてからしばらくしてからかな。私は夢を見たんや。

 私の部屋にもなったしんやの部屋の中でしんやがなんかやってたんや。詳しいことは分からんかったんやけど、何かし終わったと思ったら、お父さんとお母さんが、目の前に来てくれたんや。お父さんとお母さんには触れられへんかったけど、でも先に死んだことを謝ってくれて、私のことを愛しているって、言ってくれたんや。

 

 もう、泣いたわ。もう会えなくなったと思ってたお父さんとお母さんに会えて、会話もできた。夢の中とは言え、そんなことができたことに、私は嬉しさも感じてたんよ。

 そんで、気が付いたら朝になってた。しんやも日課のトレーニングに出て、部屋の中も寝た時と何ら変わりなかったからあれは嘘じゃないんかって、思ったんや。やけど、そんな中しんやは、信じれば嘘じゃなくなる、って言ってくれた。不思議なことに、しんやの言葉はすんなりと信じることができた。だから、私は夢でも、夢の中でお父さんとお母さんに会えたんやって、そう思うことにした。

 

 それからかな。私はみんなと、しんやとしんやのお父さん、お母さんにベッタリになったんは。誰かと一緒にいるのは暖かい。みんなと一緒に食べるご飯は温かい。誰かが傍にいることは、あたたかいんやって、お父さんとお母さんが死んでから気づいた私は、しんやか、しんやのお父さんとお母さんが傍におらへんかったら怖くて怖くて仕方なかった。

 

 検査入院をするときになったら、夜中が怖くて仕方なかった。誰も傍におらへん、お父さんとお母さんが死んだときみたいで、しんやとしんやのお父さんとお母さんを呼びたくて仕方なかった。

 けど、私の担当医になってくれた石田先生が本当に親身になってくれて、しんやのお母さんに甘えることができて、しんやのお父さんと会話することができて、しんやと一緒にいられるんやって、そうわかった時からその怖さも無くなった。

 

 それからは、状況を観察できるぐらいには落ち着いてきた。お父さんとお母さんが死んで余裕がなくなっていた時とは違って、事実を事実として受け入れるぐらいには成長できたんやって、そう思ってる。

 

 そんで、はじめはしんやを観察しとった。私の1番近くにおるんて、しんややったからそうなるのはごく自然なことや。

 しんやは、そこまでしゃべるようなことはない。必要最低限しかしゃべらへんってわけやないけど、でも口数は多くはない。

 そんで、かなりの勉強家や。ずっと前からやってる空手を真剣にやっとるし、毎日勉強もしとる。ちょっと勉強しとるところを見たことあるけど、漢字がいっぱいで、アルファベットもよく出てくる本ばかりを読んでは問題を解く、ということをしとった。中には辞書を片手にアルファベットですらないものを読んどったこともあったなぁ。

 けど、多分1番よく知っとるのはオカルト関係やと思う。各地にあるさまざまな伝承や伝説、神話上の生物、さらには最近できたであろう噂話ですら網羅しとったのを聞いたときはなんでそんなものを知っとるんやって呆れたこともあったわ。

 けど、それだけやったら変な子供ってだけやったんやろうけど、傍で見ていた私にはそんなことは言えへんかった。勉強や空手をしとるしんやの表情は、真剣なんて言葉じゃ足りへんと感じるほどに、それこそそれをせえへんかったら死ぬと言わんばかりに必死にやってたし、今もやっとる。

 

 そんで、何回かしんやがしばらく遅くまで帰ってこうへん時期があった。遅いってゆうても真っ暗になる前、大体6時前後ぐらいに帰ってくるようになった時期があったんや。その間暇やった私は、しんやの部屋を探ったことがある。あの日のことは、今でもよく覚えとる。

 しんやの部屋は私が寝るためのベッド、まぁそこそこの広さがあるとはいえベッド2つも置いたらさすがに狭くなるから2段ベッドなんやけど、と私としんやの机、しんやの本を収める本棚があるだけのシンプルなものや。しんやはよく隠し事をするようにこそこそしとることが多い。やからちょっとしたイタズラ心というか、探求心というか、そんな感じで部屋を探ることをしたんや。

 

 まず確認したのは、しんやの本棚やった。しんやはよく雑誌を、それも都市伝説とかを取り扱っている胡散臭い雑誌をよく買っては読んどった。今でもそれは続いとって、スクラップ帳に目ぼしいものを切り取っては張るということをしとった。棚には既にスクラップ帳が数冊並んでおり、まだスクラップ帳に張ってない分の雑誌も何冊か並んでいた。他にも大学入試のための本とか、気象云々って書いてる本、物理云々の本、医学書、果てにはドイツ語、中国語、ギリシャ語、ラテン語に関する本までもがそこに並んでた。

 節操無く学んでいるということは知っとったけど、ここまでとは思ってなかった私は呆れすら感じていた。だって、算数ドリルとか漢字ドリル、最近流行りの漫画とかが置いてあるのが普通のはずやろ?なのにドラマとかであるどこかの学者みたいなものばかりを置いているのが、今更感はあったけど本当に変な子やなぁって思ったわ。

 

 次に調べたんはしんやが使っているベッドやった。まぁベッドでなんかしているはずもなく、変なものはほとんど見つからんかった。強いて言うなら、どこかの小さなカギぐらいやった。けど、それがパンドラの箱を開けることになる鍵だってことを知ったのは、このすぐ後やった。

 

 そして、最後に調べたのが、しんやの机で、この中に、とんでもないものがあった。

 しんやの机の下には誕生日とかでもらっていた鉄が段ボールの中に納まっとった。けど、しまっていた鉄はなんか妙に冷たく、それこそ冷気を発していると思うぐらいのものを感じた。中にあったもの全部がそうやったから、段ボールを開けた瞬間凄まじい寒気が襲ってきたのを覚えとる。

 不気味に思いながら、その段ボールを奥にしまって、次に机の上や中を探し始めた。机の上に置きっぱなしのものはペンや定規といった筆記用具ぐらいで、あとは綺麗にしてあった。1つを除いて引き出しの中は筆記用具やルーズリーフ、ファイルといったものがビッシリと詰め込まれいただけで特に何かがあるようには思えなかった。ファイルの中も今まで学んだことをまとめたものばかりで特に目ぼしいものはなかった。けど、結構多かったのは数学に関するもので、逆元だとかアフィンだとか書かれていたのを覚えている。理解なんてちっともできなかったけど。

 それで、机の中には1つだけ鍵のかかった引き出しがあった。試しにベッドで見つけた鍵を挿し込んだら、ぴったりとそれで開くことができた。なんだか秘密を探っている探偵みたいやなって思いながら引き出しの中を開けたら、その中には1冊のファイルがあった。なかが透けて見えないようにか、黒い革のようなものを表につけ、それにはタイトルはおろか文字すらなく、けど引き出しの中にはそれだけしかなかった。

 湧き出る好奇心を抑えることなんてできず、その本を手にして中を見て、背筋に怖気が走った。

 ファイルは途中までしか書かれてなくて、でもなんて書いてあるのかは分からなかった。最初のページの欄外に小文字のアルファベットと大文字のアルファベットが書かれていて、本文にはアルファベットがでたらめに書かれてあった。ただそれだけのはずなのに、なぜか私はこの本に書かれていることを理解してはいけないと、そう本能が訴えかけてきた。

 

 それからは迅速だった。すぐさまファイルを閉じて引き出しの中へしまい、鍵をかけて鍵をもとあった場所に隠した。

 なんであんなものがあるのか、どうしてあんなものを書いているのか、しんやは一体何者なのか。しばらくの間そんな疑問が頭の中でグルグルと回ってたんや。

 けど、普段のしんやを知っているから、きっとなにか意味のあることなんやって、そう思うことに、私はしたんや。

 

 ……ここまで言っといてあれやけど、私はしんやのことはほとんど分かってへんのや。

 1度だけ、私が行きたいって行った場所に行こうって言ったら、恐怖と悲哀と憤怒を混ぜ合わせたかのような、そんな複雑な表情をしとったんや。

 やから、すぐにそこには行かんで別のところに行こうって言ったら、しんやは心底ホッとしたような表情をしとったわ。

 なんであそこまで怖がっていたのか、私にはわからへん。今まで1度も行ったこともないのに、映画とかも怖がったこともないのにたまにしんやはそういった表情をすることがある。

 

 けど、旅行が終わって家に帰って、ニュースを見たらしんやのあの恐怖は当たっていたんやって、心の底からゾッとしたわ。

 水族館が原因不明の事故により死者多数。時期も旅行に行くのと全く同じだったから、もしあそこに行っていたらと思ったら、恐怖を覚えずにはいられなかった。

 そして、それについて調べてたのかしんやがパソコンを見てたんやけど、突然恐怖に顔を青ざめさせて叫びだしたんや。しんやのお父さんが物理的に黙らせたんやけど、でもあの怖がりようは普段のしんやでは全く想像もできんかったぐらいやった。

 

 何が書かれていたのか気になった私はしんやが見ていたページを見たんやけど、それはしんやがよく使っている掲示板やった。真偽はともかく噂を集めるならピッタリのそのページには、鱗のついた人間擬きだとか玉虫色のナニかだとか、そんなことが書かれていた気がするんやけど……。

 

 多分、しんやは鱗のある人間擬きか、玉虫色のなにかに怯えたんやろうけど、なんでそんなものに怯えるのか私にはわからへん。

 でも、あの怖がりようは、きっと嫌なことがあったんやろうことは容易に想像できる。そう思えるぐらいに、あの怖がりようは普通じゃなかったわ。

 

 ……これぐらいやな。私が言えることは。けどなんでまたしんやのことについて聞きたかったん?まさか、惚れたとかそんなんか?

 ……家族として知っている身から言うけど、しんやはやめといたほうがええと思うで。確かに表面上はええ感じに見えるけど、きっと本心に触れたら戻ってこれへんくなるかもしれへんで。

 

 まぁ、それでもって言うなら応援ぐらいはするけどな。あ、もう帰らなあかん時間や。

 ほな、またね。今度は君のことを教えてな、名井ちゃん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれ?そういえば、名井ちゃんって、誰やったっけ?どこで会ったんやったっけ?まぁ、ええか。はよ家帰ってしんやと遊ぼっと。

 




い、いったい名井ちゃんの招待は何なんだー(棒)
ということで、はい。授業中に投稿です。何やってんだろ俺。まぁいいか。

今回は前もって考えていた、はやてちゃんの主人公に対する考えや行動についてを書いてみました。不評だったら消そうと思っています。
時系列的には無印が始まる少し前ぐらいとなっています。ジュエルシードの事件が始まる数カ月前にはやてちゃんは美少女に会っちゃいました。まぁその後滅多に会うこともなくなったんですがね。

さて。そろそろ次からは無印の始まりにしようかと思います。本編に入るかはまだ未定ですが、それでも近々無印には入りたいと思います。これ以上はさすがに広げた風呂敷がたためなくなりそうなので。

では、無印前の主人公の簡単な能力値等をTRPG風に書こうと思います。

久藤信也 (無印開始前)
事件の愛され子/転生した幼子/生ける魔導書/無貌のおもちゃ

STR:11  CON:11 SIZ:8  DEX:12
APP:13 POW:26 INT:16 EDU:30
SAN:0

アイデア:80 こぶし:70 キック:70 回避:30
目星:75 聞き耳:75 隠す:65 隠れる:80
忍び足:63 応急手当:70 武道(空手):65 言いくるめ:65
運転:35 オカルト:75 コンピュータ:55 図書館:65
薬学:41 天文学:42 心理学:80
クトゥルフ神話:97
ドイツ語:5
中国語:5
ギリシャ語:5
ラテン語:5

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