3度目の人生は静かに暮らしたい   作:ルーニー

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はい。お待たせしてすみませんでした。最近忙しいのとどうもモチベーションが別のものに行ってしまい執筆が遅れてしまいました。

今回オリジナル呪文(超強い)が出ます。解説は一応入れますが、ぶっ壊れ性能なのでもしかしたら嫌悪感が出るかもしれません。

そんな時はお気に入り解除をしてくださいね!



追記
はい。リーゼロッテとリーゼアリアがごっちゃになってリーゼとロッテの姉妹と間違って書いてしまいました。心の底からごめんなさい。


無印9

「……今日も八神はやてに異常なし」

 

 どこにでもあるような住宅街。夜になれば街灯がついているが、それでも歩くには心細い程度にしか照らされていない不気味さすら感じる街の中、私はとある家を見ていた。

 そこはどこにでもあるような、ごく普通の家だ。強いて違いを挙げるとすれば、ここの住む夫婦が両者ともに医療関係の仕事に就いているおかげかかなり裕福な暮らしができるているのがうかがえるぐらいには大きい、ということだろう。

 

 この家、久藤家にはある少女が住んでいる。その少女はその夫婦の子供ではないのだが、親友の子供で引き取り相手がいないということで引き取られた、可愛らしい少女がここにいる。

 名前は、八神はやて。足が動けない身体障がい者であることを除けばごく普通の少女なのだが、私はこの少女を監視しているのだ。

 

 正確には、この少女が持つ世界最悪とも言えるであろうロストロギア、闇の書を私たちは監視している。

 この闇の書、魔力を(あつ)めれば莫大な力を得ることができるという、ロストロギアの名にふさわしい力を持っているのだが、この書を手にした者の結末は、誰も彼もが世界を半壊以上させる被害を出して自滅する、最悪のものだ。

 そして、その最悪の象徴とも言えるのが、闇の書の持ち主はランダムに決まるということにある。持ち主が死んだあと、次の持ち主を探すかのようにその場から消え、何千何万という世界の中からたった1人の主を探す。そのおかげで闇の書の被害が起きるたびに所存不明になるという、下手な地雷よりも性質が悪い爆弾なのだ。

 

 だけど、今は違う。死ぬことで新たな主を探して消えるというのなら、生きたまま永遠にどこかに閉じ込めることができたのなら、それですべてが解決する。

 そのための手段を私たちは、お父様は持っている。闇の書の場所も見つけてある。あとは、封印が解けたタイミングを見計らって封印をすればいい。今は、八神はやての身に何か起きてまた闇の書がどこにあるのか、何てことにならないようにしなければならない。

 

 そのためにも、数少ない、しかし小さいはずなのにとてつもなく巨大に思える障害とも言える存在をどうにかしなくてはならないだろう。

 

「……今日は、いないみたいだね……」

 

 その存在の名は、久藤信也。八神はやてと同じ年齢で両親は八神はやての両親の友人。八神はやての両親が亡くなってから引き取り手のいなかった彼女を居候という形で家に招いている。

 両親、父は医者で母はメンタルセラピストをやっていて、両者とも経歴に不可解な部分はない。

 

 だというのに、その息子は、どこか壊れているような、そんな雰囲気を覚える不気味な子供だ。

 表面上はただの猫である私の視線に気付き、果てには警戒している。ロッテと一緒に久藤信也を警戒はしているけど、ただでさえ少ない時間を使って八神はやてを監視している現在、不気味で怪しいということしかわかっていない。

 サーチャーを使って調べてみても、この世界では珍しく魔力を持っているが、精々ランクはDに達するかという程度。デバイスも持っていない子供が、私たちの驚異になり得る筈がないとは、分かっている。

 わかってはいるんだ。けど、それなのに私たちの気配を感じ、警戒している。時々真夜中というのにどこかに出ていったりしたことはあった。その行き先を調べようにもいつも私たちがいないときに行動を終えているか、あるいはまるで消えているかのように見失ってしまう。

 

 サーチャーを増やして探ろうにも、これ以上管理外世界で、しかも理由が理由なだけに慎重に行動をせざるを得ない今、不用意にサーチャーを使うわけにはいかない。ただでさえ八神はやての監視に少ないリソースを使っているんだ。これ以上増やして監視するとボロが出てもおかしくない。

 だから、まだ自由に行動できる今、久藤信也を監視するしかない。サーチャーは使えなくても、自分の目で見ているだけでも何か掴めるんだから。

 

 久藤信也は、今はどこにいるか分からない。カーテンを引いているせいで中の様子は見えない上に家のドコに彼がいるのか分かっていない。どこで何をしているのか気になるが、私たちを警戒しているのがわかっている以上、ヘタに行動をするわけにはいかない。ここで下手に動いて厄介な行動に出られたら、八神はやてと闇の書のことが管理局にバレるかもしれない。

 それではだめなんだ。闇の書は、私たちが処理をしなければならない。お父様の大切なご友人を殺した、あの闇の書は、私たちが処理するんだから。

 

 一通り八神はやての様子の監視をし終え、久藤信也がどこで何をしているのかを確認しようと行動に映ろうとした、その時だった。

 暗い、誰もいないはずの街路の中から、人の出るはずのない声がふと耳に入ってきたのだ。

 

「…………?なに、この声は?」

 

 どこかで歌の練習をしている、友達と談笑している、なんて優しいものではない。得体の知れない存在が狂った声を出しているような、狂ったナニカが喉から捻り出しているような、決して人間が出していいものではない精神を逆撫でるような声だ。

 機械で作られたようなものではない。機械音声ならもっと人間味が無くなったような、雑な部分が必ず出てくるはずだ。まだまだ発達途上のこの世界の機械ではまず作ることはできない。

 なのにこの声は、人間のものではないと思うこの声は、認めたくないが間違いなく機械ではないものだ。

 

 得体の知れない存在がここにいる。それだけが、その事実だけがこの空間を支配していた。

 

「なんだ……?なにが、ここにいる……?」

 

 耳に神経を集中させる。こんなところで八神はやてに何かあったら、あの計画が台無しになる。またあれを探すはめになる。それだけはダメなんだ。お父様の復讐を完遂させるために、今八神はやてに何かあるようなことはあってはならない。

 

 だが、そんな警戒を嘲笑うかのように、不気味な音とは違う別の声も聞こえてくる。

 

 くす。クスクス。クスクスクスクス。

 

 女性の笑い声が聞こえてくる。それも1人だけじゃない。2人、3人、いや、もしかしたらもっといるかもしれない。不気味な音と一緒に来るこの笑い声は、夜に聞くと不気味さしかない恐ろしいものに感じる。

 

 どこだ?どこからこの不気味な声は聞こえてくるんだ。

 

 何も見えない。どこから聞こえてくるのか分からない。不気味な音が、笑い声が、静かなはずの夜の街の中に響いている。あまりにも普遍離れした状況に、管理局で長い間働いているにも拘らず不気味さと不安が湧き出て、ヘドロのように纏わりついてくる。

 

 声は止まない。笑い声は移動しているし、拡散し、反響し、笑い声に混じるせいでどこに音を出している元があるのか分からない。

 

 メンテナンスやデータの提出の時に怪しまれる可能性があるのを覚悟してサーチャーを使い、この不気味な声の元凶を調べようかとデバイスに手を伸ばした時だった。

 突然、ピタリと気味の悪い音が止んだ。同時に笑い声も消えて辺りが不気味なほどに静かになった。まるでさっきまでの不気味な声なんて存在していなかったの如く、なにも聞こえない空間へと、突然変化した。

 

 なにがあったんだ?どうしてこんな急に静かになった?辺りを見回し続け、自分の視界の端に黒い子共のような影をアリアが発見した次の瞬間。

 

 突然の激痛とともに、粘性のある液体を多分に含んだ脂身と肉が焼けるような音が辺りに響いた。

 

「あぁぁああぁああああああ!?」

 

 突然の激痛。今が猫の身であることを忘れ。敬愛する主の敵を監視をする身であることを忘れ。本来ならここにいてはならないということを忘れ。

 突然の激痛、それも内側から焼き焦がすかの如く激痛が襲い掛かってくるのを、ただ悲鳴を上げることしかできなかった。

 

「あ、が、ぐぁ、ぎぃ……!」

 

 何度も大怪我を負ったことはある。その中には命を落としかけるほどのものすらあった。

 だが、今この身に起きている謎の激痛は今までにないものだった。ただただ痛い、苦しいが脳に埋め尽くされている中、これがこの世に絶対に存在してはならないものであることは、痛みで脳内を掻き乱されていても理解できた。

 

「ぐ……う、ぐ、ぁ…………!」

 

 伝えなければ。ロッテに、お父様に伝えなければ。ここに、お父様が長い間探していた怨敵の近くに、存在してはならない化け物がいることを……!

 

「ぁ……ぅ…………」

 

 もはや激痛を感じる神経はない。あらゆる器官が焼かれ、声を出すことも、動くことも、念話すらも満足にできないこの身で、最期の力を振り絞って、最期のメッセージをデバイスに入れる。

 

「ぁ…………ぉ……と、さ…ま…………」

 

 普通の住宅街が映っている。ろくな音声もない。あるのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「アリア!?そんな、どうしてこんなことに!?」

 

 ロッテの声が聞こえる。お父様の声も、もう何を言っているのかわからないほど体が壊れているけど、聞こえる。

 息は出来る。音は聞こえる。光は見える。固いところに倒れているのはわかる。けど、それだけしかわからない。かすれ声すら出せない。何を言っているのかわからない。光と影しか見ることができない。何かが触れているということしか、わからない。

 全てが最低限度の機能すらしていないほどに、この体は傷つき、痛め付けられ、破壊された。もう、体が持たないと、最期の時がすぐそこにあることがわかるほどに、もう、意識が、ない。

 

 でも、これだけは、伝えないと、いけ、な、い。

 

 あ こに 、 け物 、 る。   めて、  そ だ    け  を         て

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……消えた?」

 

 目の前にいたはずの猫は、俺の使った呪文を受けて苦しみもがいていたはずの猫は突然消えてしまった。

 ありえない。通常なら絶対にありえない。

 

 今使った魔術、『焼害』は相手に激痛を与える魔術だ。身体の内側から身体を燃やす、実質1度付いたら2度と消すことのできない最悪の炎だ。魔術の効果もすぐに現れる厄介な魔術だ。しかし、この魔術には難点はある。対象に声が聞こえている、目視ができている状態である、そして失敗することなく詠唱しなければならない。少しでも間違える、あるいは詠唱を止めることになれば、その炎は自身を焼くことになるのだ。

 

 メリットよりもデメリットの方が大きい。こんな呪文を好んで使うやつはほとんどいない。だが、この小さいメリットは、人を苦しめ、確実に殺すという点に限って絶大な効果を発揮するものだ。

 拷問、なんて優しいものじゃない。しゃべることもさせず、考えることもさせず、ただ激痛を与え、絶望させて殺すだけの、かの嗤う(あざわらう)邪神を象徴するかのような魔術だ。

 

 今回、自分が死ぬ可能性を出してまで危険を侵してこの呪文を使ったのは、確実にこの猫を殺すためだ。猫のように見えるこの存在は、明らかにこの家を、家族を、はやてを、俺を見ていた。まるで観察するように、監視するように、だ。

 このまま観察をされていたら、ちょっとしたヘマで俺のことがバレてしまう可能性があった。

 だから、殺した。殺される前に、これ以上なにかに気づかれないうちに。

 

 だが、あの猫は、消える寸前に確かに人間の言葉を話した。猫の叫びではない、人の叫びを、していた。

 

「なんなんだあの猫は。しゃべっていただと?消えたのは、窓の創造を使えるのか?ありえない。なぜ猫が魔術を使う。まさか、あれはバースト神だったのか……?」

 

 しまった。可能性としてはあったはずなのに、行動を起こさなければ殺されると冷静さを欠きすぎた。よりによってバースト神を攻撃するなんて。

 マズイ。マズイなんてものじゃない。どうする?このままでは、バースト神の報復がある。このままでは猫に

 

 ……いや、まて。やつは本当にバースト神か?確かにバースト神は気まぐれな部分はあるが、それなりに理由のある行動をとる。

 考えられるのははやてがバースト神に何かをしたのか、あるいは興味のあるなにかをはやてが持っているのか。

 

 バースト神が気になるものと言えばなんだ?猫に関して虐げるようなことをすれば報復をしに訪れるということは知っているが、はやてがそのようなことをするとは思えない。

 

 ……いや、待て。確か、呪文があったはずだ。動物になる魔術が、あった、はずだ。

 ……あった。魔導書とも言えない、羊皮紙に書かれているだけのものだが、確かに書かれている。コウモリに化ける呪文が、ここに記されている。

 これを使ったのか。これを使って、やつは猫に化けていた。ここには猫に化ける呪文は書かれていないが、コウモリの部分を俺の知らない言葉に、猫の部分に変えてしまえば化ける動物を変えれる可能性は十分にある。

 

 やはり、相手は魔術師だった。何故はやてを、俺たちを監視していたのかはわからない。生贄を求めていたのか、それとも俺たちに何らかのものがあったのか。

 

 だが、これで1人は殺した。猫に化けてでも怪しまれないようにしてきた奴らのことだ。相手に魔術師がいると分かればより慎重な行動になるか、

 もしこれで短絡的な行動に出るのならば、もっと残酷な生を与えてやる。生きることも苦しいと感じる、最悪の生を、与えてやる。

 

 




オリジナル呪文
『焼害』
・コスト:MP50+任意のMP、正気度2D10、かつPOWが25以上
・範囲:呪文をかける対象を目視でき、かつ声が聞こえる範囲。
・効果:3ラウンドの詠唱で使用可能。体の内側に魔術で作り出した炎を送り込む呪文。他者のMPを使うこともでき、その場合は誰か1人が呪文を唱えるだけでいい。その炎は、炎を作り上げた際に使用したMPの数値とPOWの対抗に成功することで消すことができる。しかし、この呪文は体内から作り上げて燃やしているため、対抗するための集中が出来ないため実質消すことは不可能。
ただしこの呪文は非常に繊細なため、少しでも間違えれば効果は自分に返ってくる諸刃の剣。





はい。やってしまいました。原作キャラがいなくなりました。しかもオリジナルの呪文を使って。
いや、最初はちゃんとルルブにある呪文を使おうと思ったんですよ。でもあまりにも殺傷能力が高過ぎる(萎縮)ものだったり火力が足りない(ヨグ様の拳、剃刀)ものが多く、体内が燃えるような苦しみの果てに殺すような殺意マシマシな呪文ないかなぁと探しても見つからなかったので、こうなりました。

ホントすいません。苦しんで苦しんだ挙げ句家族のもとで逝くようなものにしたかったんです。
消費MPとかヤバくして滅多に使えないようにしました。信也は貯蔵分を消費して使ってますか、本来は生け贄を集団で囲んで燃やすために使うようなものです。個人で使えるのがおかしいんです。

さて。Asがとんでもないことになりそうですな(白目)

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