3度目の人生は静かに暮らしたい   作:ルーニー

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狂った人間は、自分が狂っていることに気が付かない。

だって、自分が信じていることを成そうとしているだけなのだから。


保育園児2

 突然だが、俺の朝はそれなりに早い。前世からの習慣と言うか、むしろ前世からの強迫観念と言うか体力作りや知識を整理している。

 

 朝6時には起きて30分ぐらいランニング。子供の身体だからそこまでキツく出来ないのが怖いが、下手に無理をして身体を壊すことはしたくない。何か起きた時に万全の状態じゃないと死んじゃうじゃないか。

 それはともかく、ランニングを終えたら汗を流し、そのまま都市伝説について調べる。え?巻き込まれたくないんじゃないのかって?巻き込まれたくないから調べているんだよバカヤロウ。

 そして調べているときに朝食の時間となって朝食を食べる。ある程度時間が経ったら隣に住んでいる(肉体的に)同い年の子供と一緒に保育園に行く。そこで普通の、本当に普通の本を読んで時間を過ごし、時々先生の手によって子供たちの相手をさせられる。そして家に帰っては誕生日に買ってもらった純金属に魔力を保存する呪文を唱える。この呪文は純金属に魔力を保存していく呪文で、前世でも嫌なことに頼りになった呪文だ。そしてそれを終えてから飯風呂寝るの三連コンボ。順番は日によって変わることはあるが基本的にこの順番だったりする。

 休日も基本的にこれから変化はない。通ってる空手道場で鍛えて、魔力を貯めて、都市伝説を探す。基本的にこの繰り返しなんだが、最近になってその繰り返しも変わってしまった。

 

「なぁ~、しんや~。いっしょにあそぼうや~」

 

 背中に張り付いてはそうゴネル関西弁の幼い少女。名を八神はやて。隣に住んでい()両親の友達の娘だ。両親が仲が良かったから俺と言う意識が出てきてからの付き合い、と言っても2年程度なんだが、数ヶ月前にはやての両親が事故で亡くなり、今は俺のところで預かると言う状態だ。

 両親が死に、駆け落ちだったために親族からは絶縁状態にあった八神家での親の死は、足が不自由になりつつある娘のはやての親権をどうするかでかなりもめていたらしい。

 そしてその中で名乗りを上げたのが、イギリスで働いているグレアムなんとかと言う人らしい。そのグレアムとかいう人が親権を得ることになったのだが、彼はイギリスにおり、仕事の関係上どうしても日本に来ることができないらしいのだ。

 重要な書類については輸送でしか無理だと言う状態にあるらしく、このままではイギリスに行くか日本で孤独に生きるかのどちらかになるしかなかった。

 

 そんな少女を引き取ったのが、家の両親だ。まぁだから八神家のドロドロした事情について知っているのだが、その内容を息子の前で愚痴るのはどうなのだろうか。おかげで知りたくもない事情を知ってしまったじゃないか。

 そして始まったはやてとの生活。最初の頃は両親の死が受け止めきれずによそ猫のごとく静かだったが、最近やっと立ち直ってきたのか自分を出すようになった。

 そんで、一応部屋は空いているんだがまだ5歳の子供だということから同じ部屋で寝ている。つまり結構な時間を共にする事になったのだ。

 

 これに関して、結構マズイ。儀式のために個室が欲しいといってわがままを通して手にいれた部屋だと言うのに、このままだと儀式が出来ない。というかここ数週間魔力を保存出来ていないのだ。

 

「今忙しい」

 

「どこがなん?いっつもからてしてるか、てつにむかってなんかゆうてるだけやん」

 

「後で相手してやる。本でも読んでろ」

 

「えぇ~」

 

 文句をいいながら身体を揺らし、けど相手にされないのを理解したのか俺の背中から離れて本棚に向かっていく。

 俺の部屋の本棚はいわゆるオカルト本が多い。都市伝説を探ると題している怪しい雑誌や世界中の神話、伝承が書かれている本を集めている。

 理由?んなもんそこにいかないようにするために決まってる。なんで危険のある場所に好き好んで行くようなことをしなきゃいけねぇんだ。

 

 しかも狂いそうなことにクトゥルフ神話の影がちらほらと見かけるのだ。アーカムやミスカトニック大学は無かったから安心したのに、どうも覚えのある異形の化け物を見かけるようなことがあるとか噂が立っていることが時々あるのだ。

 魔術が使えることを鑑みるに、おそらく神格やグレートオールドワンは存在しているのだろう。

 

 そう考えるとそれに連なる化け物どももそいつを崇拝している狂信者たちも存在していると考えるのが妥当だろう。さらにエイボンの書やネクロノミコンといった魔導書も存在していてもおかしくないこの世界で、前世であんなことがあったのに安心して一生を終えることができるか?出来るわけがない。

 あんなものは焼いて世の中から消すしかないんだ。そうしないとあれを追ってくる狂信者どもや化け物どもと殺し合いをするはめになるんだくそふざけんなよあいつらなんでミ=ゴやムーンビーストや星の精やショゴスや深きものどもがいるような場所にいくんだつれてくんだ対処させるんだ俺を巻き込むんじゃねぇよあいつら死ねしねしねしねしねしねしね

 

「しんや?どうしたん?」

 

 ふと背中に重みと温かみを感じ、耳のすぐ近くではやての声が聞こえた。それと同時に思考に集中していた頭が現実に引き戻される。

 

「ちょ、て!てぇけがしてるやん!」

 

 その声に反応するかのようにじんわりとした痛みが手から感じ、確認すると金属を強く握りしめすぎたせいか角を握っていた部分から血が流れていた。

 

「ちょっとまっててや!いまばんそうこうをさがしてくる!」

 

 そう言ってはやては不自由な足を一生懸命動かして部屋を出ていく。ちょうどいいからはやてがいない間に新しい金属に魔力を貯めていく。魔力が無くなっていく、全身から何かが抜けていく感覚に襲われ手に持った金属が冷たいナニカを出しながら淡く光る。それを今までの分を入れている木箱に入れてベッドの下に入れておく。

 

「ばんそうこうもってきたで!」

 

 そこまでを終わらせて一息つくと救急箱を持ってきたはやてが部屋に入り、無理やり俺の手を取って怪我をした部分に拙いながらに貼っていこうとする。

 

「いい。これぐらい大丈夫だ」

 

 イゴーロナクの手に噛まれたわけじゃなく、グラーキの棘に刺されたわけでもない、ただ皮膚を少し突き破った程度なんだ。別に放っておけば問題なく回復するんだ。

 と思っても、目の前の少女はそれを許す気はないのかしっかりと俺の手を持って絆創膏を張り付ける。

 

「あかん!けがはちゃんとなおさなあかん!」

 

 どこか必死な表情に、おそらく両親の事故死を思い起こしているんだろう。若干血液恐怖症(ヘマトフォビア)を患っているようにも見える。実際に見ていないはずなのに、これが子供の想像力の弊害とでもいうんだろうか。

 

「ぜったいにけがはしたらあかん!わかった!?」

 

「はいはいわかったわかった」

 

「わかったならええわ」

 

 やや適当に返したにもかかわらず、それに満足げに頷いてはやては俺の背中にのしかかる。いくら子供とは言えこっちも体格的にきついことは変わらないんだが、まぁ子供のやることだ。多少は目を瞑ろう。

 しかし、なんでこうも背中にのしかかるんだろうかこの子は。ヘマトフォビアを患っている可能性があるし、もしかしたら軽度の独居恐怖症(モノフォビア)を患っている可能性がある。こりゃ母さんか父さん、もしくは行きつけの医者にも伝えた方がいいかもしれないな。

 けど、こうも引っ付かれるとやりたいことも出来ないのも事実だ。どうも最近満足に身体を鍛えていないし、魔力タンクを作ることもままならない。やはりモノフォビアを治すしかないか。じゃないと俺の行動に支障が出る。もしもの時の備えがないと、いつ神話生物が襲い掛かってくるのか分からないんだ。あいつらに備えないと、備えないと、そなえないと

 

 そなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないとそなえないと




主人公の永久的狂気

永久的狂気『神話的事象への過度の備え』
前世での経験による、神話的事象への恐怖からの過度な備え。すでに大量の魔力を貯めた純金属を部屋に貯めている。具体的にはMP200ポイント近く。
他にも純金属のナイフを欲しがっているがそれは危険なため、メンタルセラピストの母親や医者の父親による精神分析や投薬によって落ち着かせている。

永久的狂気『安全への異常な執着心』
現在は特に不審な事件も起きていないためなりを顰めてはいるが、ひとたび自分をまきこむ事件が起きればその原因を始末するために様々な手段を用いる。それこそ事件が解決するのならば殺人や召喚すらも厭わないほど。

オリジナル呪文

『貯蓄』
純金属に魔力を貯めるための呪文。5ラウンドの間呪文を唱え、純金属に自身のMPから1D6ポイント移す。純金属に貯められるのは1立方センチメートルにつき10ポイント貯められる。
必要な代償は1ポイントの正気度と2+(移すMP)




主人公はSAN値0。そのうちこういうタイトルの小説とか出てもおかしくない(真顔)
主人公あんな恐ろしい思いをしていながらよくもまぁ大学卒業まで正気を保てていたもんだ、なんて言われていますが、ゲーム的に言えば毎回のシナリオで黒字を出して生還しているようなものです。そうでないときもありますが、全体的に見れば黒字の数がおおいという感じです。

オリジナル呪文については結構扱いやすい部類の呪文だと思います。まだ初心者の域を出ない身のため、もしかしたらゲームバランスを崩しかねないか?などと思いつつ出したいなぁとか思っている呪文です。
いつか自作シナリオで出したいなぁとか思っているんですが、どういうシナリオに出すべきか、かなり悩みます。

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