3度目の人生は静かに暮らしたい   作:ルーニー

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人が恐れるのは死ぬこと自体ではない。

死の先にある未知の領域にあるものが怖いのだ。


小学生2

 1年。学校に入ってから1年が経過した。学校自体は3回目であり、小学生ながらにしてかなりレベルの高い授業をしているのだが、あくまで小学生レベルだ。

 かなり時間は経っているが2回大学を卒業してきた身としては小学生レベルなんてものは余裕だ。最低限の知識はあるし、今でも高校の復習はしている。学校で習う内容もバカにはできないものが多い。高校生レベルでも役に立つものはある。

 

 そんな感じでこの1年は特に問題もなく過ごすことはできたのだが、この1年間の中で気になっていたのは、こっちを観察するように見てくる猫だ。

 その猫は毎日いるわけではない。だがその猫は決まってはやてを観察するかのようにジッと見つめているのだ。時々俺や親父、お袋辺りも見ているように思えたが、基本的にはやてを見ていると考えていいだろう。

 

 さて、あの猫はどうするか。儀式を行うにもあの猫が見ている時に儀式を行うのはマズいだろう。神話生物は神格クラス以外は対策はたてられるし、物理的に排除することも出来るものも多い。対策をたてられたらどうしようもない。

 だからこそ初見で■す必要があるし、その準備をさせないことも重要だ。

 

 幸い、俺は複数の神話生物の招来、使役させる方法を知っている。招来を知ってはいるが条件が厳しいもの、そもそも使役できないものもいるから数は限られてはいるが数体は何度か使役したことがある。油断や慢心さえしなければ大丈夫ではあるだろう。

 だが、それらを使役、ないしは招来させるには準備が必要になる。その準備で何を使役させるのかを悟られればこちらが不利になるから内密に事を済ます必要がある。

 

 それに、今回は念には念を入れて複数の神話生物を使役できるようにしておいた方がいいかもしれない。相手が何をしようとしているのかわからない以上、単体のみを準備してそれで対処ができないということになる可能性も大いにある。それだけは避けなければならない。

 だが、種類が増えればその分招来に必要な魔力も多くなる。俺の魔力はそこまで多くないから魔力を貯めたものを持ち運ぶ準備も必要だ。

 

 あぁ、そうだ。どうせ相手は原因不明の死になるんだ。精神力を奪っておいた方がいいか。精神力を奪うナイフを作れる準備もしておいた方がいいな。どうせ死ぬときに精神が狂うか狂わないかの違いだ。

 

 それと、死体を処理する方法も準備しなくては。幸い死体の処理を進んでするやつらを知っている。死体はそいつらに処理させればいいんだから、あとはそいつらを呼ぶ準備をすればいいか。

 

 いや、待てよ。旧初台駅にいった方が早いか?けどあそこにいるとは限らないか。……いや、青山霊園だ。あそこには赤い目が見えた、獣臭いという情報がネット上で流れていた。あそこにいけばほぼ間違いなくあいつらはいるだろう。

 問題なのは俺の話を聞いてくれて、かつ協力してくれるかだ。前世では住処と蛇人間の儀式の阻止をしたからその借りとして色々と手伝ってはくれたが、今世はまだ1度もあっていない。それにキミタケもいるかどうか怪しいものだ。またshieldを相手にしないと会うことが出来ないなんて事になっているのなら会うことすら考えなければならない。銃持ち相手なんか2度としたくない。してたまるかクソが。

 

 ……いかんな。まだどこのどいつを■すのか判断できていない今、とらぬ狸の皮算用をしている場合じゃねぇ。

 今は何が必要なのか、必要なものを揃えたあとでどうするのか、■したあとの処理方法はどうするのかを考えなければならない。

 

 とりあえず、今は最低限あれを使役するための道具を作らなければならない。夜に行動することを考えて別のも使役する準備をしなければならないか……。

 だが、神話生物を使役するのは難しい。今から準備しようとしているものでも6時間の絶え間ない詠唱を続けなければ作り出すことはできないし、もうひとつの方の使役には魔力の籠ったナイフを準備しなけりゃマズい。そのナイフを作るにも人を■す必要がある。

 なにかを○すことになれば少なからず世の中が騒がれることになる。それを防ぐにも手間がかかるし、さすがにそんな手間のかかるものを作るぐらいなら他のものを準備した方が効率はいいだろう。

 

 ……いや、敵を■すもっと楽な方法があるか。相手に過去か未来を見せればいい。そうすりゃ運が良ければ猟犬が勝手に■してくれる。証拠も出ないし、出るとしてもこの世に存在しない物質だけだ。

 だが、万が一を考えたら猟犬の利用はやめておいた方がいいか。下手をすればこっちに狙いを定めてくる可能性もある。真球が作れるならまだしも、そんなものを作れる伝もないし、コネもない。猟犬の利用は最終手段にしたほうがいいか。

 

 魔力を貯めてある純金属もそろそろ所持するにも限界になってきているし、その前に純金属を買う金もない。誕生日の度にあれをねだってはいるが、その分も既に貯めている。もっと貯めないと不測の事態に対応できない。

準備しなければ、やつらは俺を簡単に■す。俺を簡単に■す事も出来るんだ。

 

 準備しなければ。備えなければ。死んでしまう。

 準備しなければ準備しなければ準備しなければ準備しなければ準備しなければ準備しなければ……。

 

「しんや?」

 

 突然背後から声をかけられた。机の上に置いてある純金属を手にして座っていた椅子を蹴飛ばして声のした方を向くと、そこには驚いたような表情をしたはやてが車イスに乗っていた。

 

「ど、どないしたん?急に?」

 

「…………いや、なんでもない」

 

 ため息を吐きながら純金属を机の上に置き、蹴飛ばした椅子を立てて座り直す。幸い椅子は壊れた様子もなく、蹴った足もそこまで痛みを感じない。

 だが、自分のものが壊れなかったことよりも、なにも起きていない日常はまだ続いていることに安心するよりも自分の警戒心が薄れてきているとこに頭を抱える。

 

 ダメだ。今回ははやてだったからよかったものの、これが神話生物だったら肉体的にか精神的にか、どちらかが死んでいた。もっと周りに気を張り巡らせないと、もっと周りを警戒しないと、またあの苦しみを味わうことになるんだ……。

 

「なんでもないって、あんな切羽詰まったような反応の仕方されたらこっちが不安になるやん。なんかあったんやろ?私でよければ相談に乗るで?」

 

「大丈夫だ。まだ、大丈夫だ」

 

 そうだ。はやての事を除けば何一つ問題はないんだ。いつも通りに辺りを警戒して、いつも通りに学んで、いつも通りに準備して、怪しいやつを調べて■していれば問題はないんだ。まだ、邪神の影は見えていない。大丈夫だ。まだ、大丈夫だ。

 

「……大丈夫ならええけど、ホンマにダメなときはちゃんと言ってや?私が力になるから」

 

「……あぁ」

 

 心配そうな表情をしながら、でも安心させようと笑みを浮かべるはやてに、日常にいることの安心感を感じて一息つく。

 

「……それで、なんのようだ?」

 

 一息ついたあとで、はやてに話しかけてきたわけを聞く。別に話しかけてくること事態は珍しいことでもないが、呼び掛けてきたということは何かしらの用事があるから話しかけてきたんだろう。

 

「え?あ、えっとな、そろそろ検査入院するからその準備を手伝って欲しいなって思って……。ダメかな?」

 

「……あぁ、そうか。もうそんな時期か」

 

 はやての足はまだ治ってはいない。むしろ症状が悪化してきている。入学した頃はまだ足は動かせていたが、今じゃもう足を動かすことはできないほどに症状が進行している。

 今日の検査入院の結果次第では学校も休学することになるかもしれないと、母さんは心配そうに言っていたことを思い出す。

 

「わかった。着替えと暇潰しのものを用意すればいいんだろう」

 

「うん。暇潰しのものは適当に見繕ってくれたらええで、着替えの用意だけ今は手伝って欲しいんよ」

 

 足が動かせないから満足に準備もできない。慣れの部分もあるんだろうが、まだ車いすになって1年ぐらいしか経っていない。1人で過ごしてきたのならまだしも、俺や母さん、父さんが一緒に世話をしているんだ。できない部分があってもおかしくはない。

 

「わかった。鞄に服を用意しておく。本は適当でいいだろう?」

 

「うん。それでお願いな」

 

 それだけ言うとはやては部屋から出ていき、向かいの部屋へと入っていった。

 あの部屋は検査入院が終わってからはやての部屋となる場所だ。もともと物置として使っていたのだが、そろそろ思春期と第二次性徴期になってくる。そういう意味ではそろそろ部屋を分けた方がいいんだろうということで急遽物置の片付けが始まった。

 まぁもともと棚や箪笥はそこにあったからあとはベッドや机、服と細々したものを移動させるだけだからそこまで手間はかからない。

 そういうことで、今頼まれたのは病院で使う服とはやての部屋となる場所に服を移動させることだ。

 

 ……そうか。はやてはこの部屋から出るのか。そうなれば今まで出来なかったことも出来るようになるか。

 だが、部屋を分けたといっても防音性はそこまで高いものじゃない。呪文を唱えるものは聞こえてしまうこともあり得る。

 

「……検査入院しているときに儀式をする必要があるか……」

 

 となれば、今が儀式をする数少ないチャンスということか。なら、早くはやての服を用意してさっさと準備を済ませるか。

 

 全ては、平穏な日常のために。

 




わんわんおの召喚はキャンセルされました(真顔)ティンダロス好きのそこのあなた。残念でしたね!(オメメグルグル)
いやぁ、まさかティンダロスが好きだという人がいるとは、その、なんというか、危篤ですね(オブラート)

タイムスリップした陰陽師……。いったいどこのビルをパルメザンチーズ状にすることのできる凄腕陰陽師のことなんだ……←
という冗談はさておき。はい。角に棲むんだったら丸いものにだったら封印できるんじゃね?(ちげぇ)という考えを参考にさせていただきました。ミニガンフルぶっぱしてようやく殺せる猟犬を一日本人がどうやって殺せるんですかホント!封印ぐらいしか手がないじゃないですか!その封印方法も真球に猟犬を封印する呪文を唱え、かつ猟犬に数秒触れてなければならないという、完全に下位互換のものとなっています。

あと、私の書き方が悪いせいか勘違いされている方が多いようですが、主人公は全ての人外を排除しようとしているわけじゃないのです。
自分に危害を加えるもの全部を排除しようとしているのです!(さほど変わらねぇ)
原因と言ってもユーノくんのような場合は大丈夫で、闇の書は、ん。言い逃れできないね(目逸らし)

あと、神はどこにでもいるんですよ?

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