遊戯王GX 凡骨のデュエルアカデミア 作:凡骨の意地
「デュエル!!」
戦いの火ぶたが切って落とされる。お互いカードを5枚加え、ちらりと確認する。悪くない手札だ。戦法としては、相手に依存するものだった。相手が高火力モンスターばかり使ってくるならサイコロ系のカードで返り討ちにしたりする。特殊能力を使うようなら、罠カードなどで対処する。そういった戦いだった。
久々にデュエルするから、プレイングミスとかしそうで怖い。でも、四の五言っている暇はないようだ。ここは男らしく、攻めるデュエルをするまでだ。デッキを信じる心がある限り、絶対に負けることはないのだから。城之内は、きっと目を細め、叫ぶ。
「まず俺の先行、ドロー!」
カードデッキに手をかけて、カードを一枚引く。6枚の手札がある中、どの行動を選べばいいか。まずは守りを固めるしかない。
「俺はカードをセット。さらにリバースカードを二枚伏せて、ターンエンド」
「アナタらしくない堅実な守りデスーノ。デハワタシのターン、ドロー。ワタシは古代の機械騎士を召喚ナノーネ」
古代の機械騎士 星4 ATK1800 機械族 地属性
クロノスが召喚したのは、古代の機械騎士。大槍も、盾もすべて機械でできているようだ。しかも、攻撃力もなかなかだ。ただ、クロノスの目線は、目の前にあるリバースモンスター。恐らく、リバースモンスター効果を警戒しているのだろう。
(あれはリバースモンスターの可能性があるノーネ。迂闊には攻撃できないノーネ。でも、それを防ぐ手立てがナイーノ、ならば―――)
「古代の機械騎士でセットモンスターに攻撃ナノーネ!」
「そうはさせるか! 俺は罠カード《攻撃の無力化》を発動、効果により、お前のモンスターの攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる!!」
「ナンデスーノ!? なぜ攻撃を止めたのデスーカ?」
クロノスは叫んだ。常識的には考えられない行動である。何故なら、守備モンスターが攻撃されても、ダメージは受けない。リバースモンスターだとしたら、その効果で反撃ができる。わざわざ守る意味とはなんなのか。それともただのプレイングミスであるのか。
「……ワタシは一枚伏せてターンエンドナノーネ」
「じゃあ行くぜ、俺のターンだ。ドロー!」
城之内はドローカードを見る。その顔がふっと笑っていたのを見て、クロノスは全てを察した。
(そうだったノーネ。シニョール克也は、キングオブデュエリストは上級モンスターを召喚するためだったノーネ。それでリバースモンスターだと錯覚させて、もしそれで引っかからなかった場合は、罠で攻撃を食い止めるということだったノーネ。でもそれ、残念ながら無駄なノーネ。私の伏せは、落とし穴。それでおしまいナノーネ)
クロノスのデュエル歴は長い。生け贄召喚で攻撃力の高いモンスターを召喚し、相手を圧倒していくデュエリストは何人も見てきた。だが、それらの弱点として、罠を警戒しない。だから罠を仕掛けておけば、相手は大きな損失をこうむり、負けへと直結する。
だが、クロノスは本当の意味で分かっていなかった。今戦っているのは、10年のブランクこそあれ、元はデュエルキングと肩を並べる、伝説のデュエリストであることを。
「来てくれたな、俺の相棒!! 俺は、セットカードを生贄にして《人造人間ーサイコ・ショッカー》を召喚!!」
セットカードが光の粒子となって去り、新たにサイコ・ショッカーが現れた。機械の目を持つ人造人間には、罠は通じない。長年のデュエル経験を持つクロノスには解らざるを得なかった。
(そうか……キングオブデュエリストはそこまで考えて、サイコ・ショッカーを召喚したノーネ。ワタシが罠を張っているのを分かっていて……さすがナノーネ)
人造人間ーサイコ・ショッカー 星6 ATK2400 機械族 闇属性
城之内の代名詞の一つである人造人間を見た時、クロノスはしてやられたと思った。自分の仕掛けていた罠なんて、最初から読まれていた。相手は罠を過信するデュエリストをよく知っているから、サイコ・ショッカーを出す手順をきちんと踏んでいたのである。
「よし、バトルだ! サイコ・ショッカーで古代の機械騎士を攻撃、サイキック・ウェーブ!!」
サイコ・ショッカーの機械の目から放つ、紫色の光線は、機械騎士をとらえて破壊した。衝撃がクロノスを襲い思わずのけぞった。
「ノォォォォッッ!!」
クロノス:LP4000→3400
「俺は一枚伏せてターンエンドだ」
サイコ・ショッカーの効果でお互いに罠を使うことはできない。恐らく伏せたのは速攻魔法だ。とにかくサイコ・ショッカーを早急に撃破しなくては、面倒なことになる。次のドローは、どう出るか。
「そうデスカ。では、ワタシのターンドロー」
城之内は、相棒サイコ・ショッカーが登場してくれたことで安心する。罠が封じられたことで、相手の逆転の芽を摘むことができる。だが、相手はデュエルアカデミアの講師。そう簡単にいきそうにない。
クロノスがドローをした。その時、勝ち誇ったような笑みを見せる。
「ヌフフフフ。ワタシのドローは素晴らしいノーネ。ワタシは手札から、《サンダー・ボルト》を発動スルーノ。効果により、あなたのフィールドのモンスターをすべて破壊するノーネ!!」
「なっ、サンダー・ボルトだと!?」
サンダー・ボルトはいわずと知れた、最強の除去カードだ。ノーコストで相手モンスターすべてを破壊できるなんてインチキにもほどがある。
クロノスがカードを掲げると、突如空が暗くなり、雷が落ちる。槍のように先細った雷光がサイコ・ショッカーに真っすぐ突き刺さり、消滅してしまった。
「サイコ・ショッカーが!!」
「まだまだ終わりじゃアリマセンーノ! ワタシは手札から《死者蘇生》を発動ナノーネ。あなたのサイコ・ショッカーを貰うノーネ」
「サンダー・ボルトに死者蘇生か……いい手札じゃねえかよ」
千年アイテムの一つにそっくりの死者蘇生が掲げられ、サイコ・ショッカーが光にまとわれて、クロノスのフィールドに復活した。コントロールも奪われるうえに、罠も使えないなんて最悪だ。城之内は思わず舌打ちする。
「このままバトルナノーネ。サイコ・ショッカーでダイレクトアタック!! サイキック・ウェーブ!!」
このままいけば、2400の大ダメージが襲い掛かってくる。それは、かなりまずい。念のために用意しておいたリバースカードをオープンする。
「攻撃宣言時、俺はリバースカードをオープン! 速攻魔法《収縮》を発動!! 効果により、サイコ・ショッカーの攻撃力を半分にする!!」
海馬が使っていたのだが、結構強力だったからちょこっと入れてみた。まさかここで役立つとは思っていなかったが。
収縮が発動されると、サイコ・ショッカーの体が徐々に小さくなり、半分の大きさになってしまった。だが、それでも光線は止まることはない。
サイコ・ショッカー ATK2400→1200
「ナルホド、守りを固めてきましタカ。デスーガ、攻撃はさせてもらうノーネ。サイコ・ショッカーでダイレクトアタックナノーネ!!」
サイコ・ショッカーが放つ光線は弱まったものの、城之内目がけて突き刺さった。
「ぐっ!!」
熱による暑さとかそういうのは感じないが、何しろ衝撃がすごい。久しぶりに訪れるノックバックに思わず倒れそうになるが、何とかこらえる。
城之内:LP4000→2800
「ではワタシはターンエンドナノーネ」
クロノスのターンは終了した。ここでどう逆転するかによって、勝敗は変わってくる。手札は3枚。サイコショッカーをどうにかしなければ、この先に希望は見えない。
「俺のターン、ドロー!!」
城之内のドローしたカードは《ものマネ奇術師》。これなら、倒せるかもしれない。
「俺はものマネ奇術師を召喚! モノマネ奇術師の効果を発動、相手フィールドのモンスターを一体選択し、もともとの攻撃力、守備力をコピーする! 俺が選択するのはもちろん、サイコ・ショッカーだ!!」
ものマネ奇術師 星1 ATK0→2400 魔法使い族 闇属性
ぴょんとカードの枠から現れた奇術師は手元にある鏡をサイコ・ショッカーに向ける。すると姿がサイコ・ショッカーそっくりになってしまった。
「なるほど、これで相打ちをするのデスーネ」
「いや、相打ちじゃねえさ。バトルだ、サイコ・ショッカーに攻撃!! サイキック・ウェーブ!」
「迎え撃ちナサーイ、サイコ・ショッカー!!」
サイコ・ショッカーにまねたものマネ奇術師は見様見真似でサイキック・ウェーブを放つ。本物のサイコ・ショッカーも同様に放つ。
「へっ、勝つのは真の所有者だ! 俺はダメージステップに速攻魔法発動! 《天使のサイコロ》! サイコロを振った目の数×100ポイント攻撃力、守備力をアップさせる!! いくぜ!」
「ナッ!!」
サイコロを持った天使が現れ、ぽいっと転がす。出た目は、2。したがって、ものマネ奇術師の攻撃力は200上がる。
ものマネ奇術師 ATK2400→2600
ものマネ奇術師は、天使の力を得て、わずかだが、サイキック・ウェーブの威力が上昇した。サイコ・ショッカーはその衝撃に耐えられず、競り負けてしまい、消滅した。
「ヌゥゥ……!」
クロノス:LP3400→3200
「俺は一枚カードを伏せて、ターンエンド! エンドフェイズにものマネ奇術師の攻撃力は2400に戻るぜ」
ものマネ奇術師 ATK2400
サイコ・ショッカーは城之内の墓地に戻り、クロノスのフィールドはがら空きだ。
クロノスは歯噛みしながらも、カードを引く。すると、心底嬉しそうな表情をした。何故なら、今引いたのは彼の切り札なのだから。
「ワタシのターン、ドロー!! ……ヴァララララ!! ワタシは最強のカードを引いたノーネ!!」
奇声をあげながらたった今引いたカードを裏のままにして掲げる。
「けっ、切り札を引いたっていうのかよ……!」
「その通りナノーネ。まずワタシは《二重召喚》を発動するノーネ。効果により、ワタシは二回召喚出来るノーネ」
二重召喚は、上級モンスターの召喚によく使われるカードだ。だが、上級モンスターの中で屈指の攻撃力を持つサイコ・ショッカーはそうそう倒せないはずだ。デーモンの召喚が入るようなデッキでもなさそうだ。
「ではまずワタシは、《古代の歯車》を召喚するノーネ」
古代の歯車 星2 ATK100 機械族 地属性
歯車に車輪がついたような、ちっこいモンスターが現れる。まるで遊戯が戦いの儀に使ったガジェットたちのような感じだ。
「さらに、場に古代の歯車がいる場合、手札の古代の歯車を特殊召喚できるノーネ」
フィールドの古代の歯車がカタカタとなり始め、手札の古代の歯車がそれに応えるように出現する。まさかこの二体で、最上級モンスターを召喚するのか!? クロノスは、初めからこのモンスター二体と、二重召喚を握っていて、そのコンボを狙っていたのか!?
ニヤッと笑ったクロノスは、ドローカードを表にして掲げ、高らかに叫んだ。
「では、二度目の召喚ナノーネ! ワタシは手札の、《古代の機械巨人》を二体の古代の歯車を生贄にしてショウカーン!!」
古代の機械巨人 星8 ATK3000 機械族 地属性
二体の歯車たちが消滅し、天から巨人が現れた。歯車があちこちについており、土煙が待っている。まさに古代の機械だ。
「古代の機械巨人は、バトルフェイズに魔法と罠を封じる効果があるノーネ。さらに相手の守備力を攻撃力が上回っていればその差の分だけダメージを与える貫通効果もあるノーネ!!」
「なにっ……!?」
つまり、このモンスターの前には、相手の攻撃に反応するミラーフォースや魔法の筒、時の機械タイムマシーンも使えないということか。しかも守備表示にして耐えることすらできない。古代といっても侮るなかれ、守りの手段は一切通用しない。
「バトルナノーネ!! 古代の機械巨人で、ものマネ奇術師に攻撃!! アルティメット・パウンド!!」
古代の機械巨人の剛腕が大きく振りかぶられ、サイコ・ショッカーに扮した奇術師が下敷きになる。サイコ・ショッカーではあるが所詮偽物、本体の力はとても脆い。
「くっ……やべぇな」
城之内:LP2800→2200
「では、ワタシはこれでターンエンドナノーネ!!」
クロノスはターンエンドの宣言をした。手札は1枚。次のドローで、すべてが変わる。これで引けなければ、城之内は負ける。
しかし手札には、モンスターは一体しかいない。しかも、この場では何にも役に立たないレッドアイズだ。このままダイレクトアタックを食らってしまえば、俺は負けてしまう。勝つためには、最低でもあのカードを手札に加えなくてはならない。
(静香……頼む。俺に力を貸してくれ……。ここで負けるわけには、いかねぇんだ……)
今ごろ本田とツーリングしているであろう静香に、城之内は願う。俺の運命が決まるラストドロー。そこに全てを……賭けるッ!!
「俺のターン……―――ドロー!!」
デッキからカードを全力で引く。この動作に、意味はない。でも、カードを信じる心があれば、自ずとこうなる。俺はカードを信じている。だから、カードを引いたまでだ。風が巻き起こり、デュエルディスクがカタカタとなる。俺には、取って置きのカードを引いたように思えた。
果たして俺のドローカードには―――《天使の施し》が握られていた。
(来たぜッ……!! これが俺の、ラストドローならば……やるしかねえ。全力で、やるしかねえ!!)
城之内は、クロノスを見据える。クロノスは、後ずさる。城之内には、今すさまじい覇気が感じ取れる。デュエルモンスターズを、遊びだと思い込んでいない、真剣な表情。並のデュエリストには絶対にできない、強い表情は、クロノスのあこがれだった。デュエルキングも、起死回生の一手を引いたときはいつもこんな表情だったのを、テレビのデュエル中継で見たことがある。少年時代のクロノスも、それを見てデュエルにあこがれたのだ。
―――やはり、伝説のデュエリストと呼ばれるだけのことはあるノーネ。
「俺は手札から魔法カード、《天使の施し》を発動! 俺は3枚ドローし、その後手札を2枚捨てる!! 3枚ドロー、さらに俺は《真紅眼の黒竜》、《雷の剣》を墓地に捨てる!!」
「真紅眼の……黒竜デスーノ?」
「レッドアイズ、今だけは墓地に眠っててくれ。さらに俺は、手札から《サンダー・ボルト》を発動! 効果により、クロノスさん、お前の古代の機械巨人を破壊するぜ!!」
「アンビリーバボー!?」
クロノスの使った魔法を引いた城之内は、とっさにそのカードを掲げて雷光を呼び寄せる。たちまち雷雲がフィールドを覆い、光の槍が、古代の機械巨人を貫いた。
「オーマイガーッ、マイフェイバリットカードが!!」
これでクロノスのフィールドはがら空きになった。あとは、一枚伏せてある魔法か罠カードのみ。けれど、恐れることはない。城之内には―――信頼している相棒がいるのだから。
「さらに俺は手札から、《死者蘇生》を発動! 人造人間ーサイコ・ショッカーを蘇生させる!」
「くっ、ここで出してきますか……厄介デスーノ」
クロノスは、次があると信じていた。何故ならサイコ・ショッカーの攻撃力は2400、ライフポイントは3200と、削り切ることはできない。手札もすべて使い果たしたのでもう何もできない。
けれど―――。
「何次があると、勘違いしてんだ、クロノスさん。もう、そんなのないぜ」
元プロデュエリストが発した、勝利宣言。真っすぐで、真実を射抜いていたけれど―――。
クロノスは納得がいかないように、尋ねる。
「何言っているのデスーカ? アナタの手札はすでにノーハンド! サイコ・ショッカーだけでは私のライフを削ることはデキマシェーン!」
クロノスの表情は焦っていた。あの眼は間違いなく、本物だ。本当に勝つと確信している眼だ。はったりなんかではないと、クロノスの脳内で警鐘が鳴っている。
「ハッタリではナイノデスカ!?」
「ハッタリなんかじゃないさ。《死者蘇生》にチェーンして……リバースカードオープン、《墓荒らし》を発動!!」
「墓荒らし!? ―――ま、マサカ!?」
墓荒らしは相手の墓地の魔法カードを奪い、2000ライフポイントを払えば使用できる罠カード。相手に依存するけれど、相手が使った強カードをもう一度使用できる強さを持っている。
……例えば、死者蘇生とか。
「そのマサカだよ! 俺はお前の死者蘇生を手札に加える!!」
「ノォォォォッッ!!」
表に現れた罠カードから飛び出した、いたずらっ子な悪魔がクロノスのデュエルディスクの墓地へと入っていく。そして、その悪魔は《死者蘇生》を手に持って、城之内の手札に運んでくれた。
「サンキューな。まずは、俺の死者蘇生を発動。効果により、人造人間ーサイコ・ショッカーを蘇生させる!!」
クロノスも用いた死者蘇生の力で、二度もやられたサイコ・ショッカーが復活する。俺のエースは、何度でも蘇るのだ。クロノスは、せっかく処理したカードが再び舞い戻ったことに歯噛みする。罠が使えないからどうしようもない。
「さらに俺はお前の死者蘇生を発動! その際、ライフコスト2000を払う!」
相手の死者蘇生を用いようとしたが、カードにこもった怨恨が城之内の体をむしばむ。
城之内:LP2200→200
だが―――その代償として与えられた、死者蘇生を使用する権利を使える。天に掲げたカードから、光が放たれる。すると墓地がその光に共鳴するように、輝き始め、一枚のカードが吐き出される。
―――さあ、飛翔しろ。紅き瞳を持つ、黒き竜よ!!
カードから、激しい炎をまとった何かが現れて、フィールドに登場した。爆音がとどろき、炎のバリアが解かれていく―――。
「グルウウウウアアアアアアァァァッッーーーー!!!」
天地を揺るがすほどの、叫びをあげる黒竜の姿は雄々しかった。青眼の白龍を究極の美とするなら、真紅眼の黒竜は、未完成の美。だけれども―――その竜は可能性を果てしなく追い求める。勝利への可能性を秘めた、伝説の龍は、ここに爆誕した。
真紅眼の黒竜 星7 ATK2400 ドラゴン族 闇属性
「これが……真紅眼の黒竜……」
クロノスが、思わず声をもらす。このドラゴンは高価で取引されていて、使うデュエリストは数人もいない。所有者は、ほとんどおらず、なかなかお目にかかることはできない。だから―――クロノスは感動していた。目の前で、あこがれだったモンスターを見られたのだから。このモンスターに、やられるならば―――悔いはない。
「久しぶりだな……レッドアイズ」
城之内は、語り掛けた。真紅眼の黒竜は、グルルと息を漏らして答えた。それだけで、意思疎通はできた。
長年戦ってきたパートナーだ、遠慮はいらない。
城之内は、にっと笑う。これで、最期だ。
「バトルフェイズに入るぜ。サイコショッカーで、ダイレクトアタック!! サイキック・ウェーブ!」
レッドアイズの横に立つ、サイコ・ショッカーが目から光を放つ。クロノスに命中し、爆発が巻き起こる。
「……」
クロノス:LP3200→800
さあ、これで最後にしよう。
黒龍は、口を大きく開く。がら空きのフィールドに、一撃が突き刺さりそうだというのに、クロノスは笑っている。
「いけっ、レッドアイズ!! クロノスにダイレクトアタックだ!! 黒炎弾!!」
真紅眼の黒竜は、口に強力な炎のエネルギーをためる。この世のすべてを燃やし尽くしてしまいそうなほどに、熱い。その一撃が―――放たれた。
クロノス:LP800→0
***
あのデュエルから、数日後。城之内は正式にデュエルアカデミアの講師になれた。クロノスに激しく感謝され、困惑しながらも楽しいデュエルができたことをうれしく思った。
今城之内は、デュエルアカデミアの職員室にいる。今日の授業内容を確認し、部屋を出る。
廊下を歩くと、チャイムが鳴る。生徒たちがあわただしく教室に戻る。懐かしい景色だ。城之内もよく、外や廊下で遊んでいて、急いで教室に戻ったものだ。
今自分は教師としてここを歩いている。想像していなかった未来だ。もしかしたら、あの男に、遊戯に合っていなかったらつかめない道だったかもしれない。親友というのは、デュエルモンスターズというのは、捨てたもんじゃない。
(なあ、静香。俺、遠くの島に来ちまった。お前を置いていくことになっちまったけど、俺は今、うれしい気分だ。デュエルモンスターズは、将来を破滅させるものかもしれない。だからこそ、俺はデュエル以上に大切なものを、教えていきたい。だから、応援してくれ。たまには、帰ってくるからな)
遠く離れている妹に、想いを馳せる。静香はきっと、元気でやっていることだろう。俺の合格を、自分の事のように喜んでくれるほどに優しいやつなんだ、きっと大丈夫。そう、思っている。
俺の担当の教室へと着いた。どんなデュエリストの卵がいるのか、楽しみだ。俺から、どれだけのことが伝えられるだろうか。できるだけ多くの事を、教えていきたい。
若干の緊張が身を固くする。でも、どうにか振り払う。俺は教師だ、デュエル以上に大切なものを教える、教師なんだ。だから―――行こう。
ドアに手をかけて引く。ガラッと音を立てると同時に、生徒たちが城之内を見る。その目が驚きと歓喜に変わる中で、一人教壇に立った。
「始めまして、今日よりデュエル実技を担当する、城之内克也です。どうぞ、よろしく」