そんな主人公で俺は幸せです!!
俺が最初に感じたのは、雪の冷たさだった。
「―――ん…?なんだ…?冷たいなぁ…」
自分の体が柔らかいものに沈み込んでいく感触と、雪の日特有の湿気の香りが、俺の意識を徐々に復活させていく。
ゆっくりと目を開けて、視界に表示される情報を感じ取る。
「…あり?………ここは…どこだ?」
俺の目には、どこまでも広がる一面の銀世界が映っていた。
地平線までがはっきりと見えるほど広い平原に、際限なく積もる雪。
命の危険を感じるのに、綺麗だと感じてしまう雪景色。
俺の背中に感じた柔らかい感触は、どうやら雪に沈む感触だったらしい。
ここはどこなのだろうか。意識がなくなる前は、時計塗れの通路にいたはずなのに…。
頭を強制的に働かせ、疑問の答えを探し出す。
(確か、蛍光ピンクに塗りつぶされた後は…)
俺が最後に見た、時計塗れの通路での光景。それは…
「―――女神様に、平手打ちされてたな」
あ、そうそうそれだった、といった感じでぽん、と手を叩く俺。
―――うん、意味分からへんがな。
「ぶたれただけで、なんで失神してるんだよ、俺。弱すぎないかねぇ?」
ぶたれた理由は分かっているのだ。俺が女神様のパンツガン見しちゃったから。
でも、それでされた平手打ち1発で、意識を失うってどーいうことやねん。
「それに、ここはどこだよ…」
辺り一面の銀世界しか、俺の視界には映っていない。
こんな景色なんて、三原で見たことないんだけど…。
「―――あ、もしかして俺、転生しちゃった系?」
一番最高の結論が、俺の頭の中にぽやっと浮かんできた。
おお、あの女神様がマジで転生さしてくれたのなら、ここは異世界ってことになるな。
っていうか、そんな感じしかしなくなってきたぜ。異世界ってすげー。
「…ん?」
異世界を隅々まで見るために立ち上がろうとした俺の左手が、何かに触れた。
それは俺の手が触れると、かさっという小さな音を立てる。
「―――紙、かこれ?」
それを拾い上げると、それは確かに紙のようなものだった。
しかし何故か雪に濡れておらず、皺一つない。
「んじゃこら?」
紙ならざる紙ってところか。じゃぁなんなんだよって話になるんだが。
「駄目だ、何にも書いてねーし………ん?」
俺がその紙を捨てようとすると、突如文字が浮かんでくる。
それだけで「異世界っ!!」と感じてしまう俺はバカなのだろうか。
いつの間にか、紙には達筆な文字で、
―――詠め
《
《
とだけ、描かれている。
実にシンプルな文言。たった6文字。
正直、気味が悪い。
「―――まぁ、詠めって書いてあるから、これを読みゃいいんだろうけど…」
なんとなく怖い。人外生物になっちゃいそうで怖い。
異世界初っ端がこれかいって、苦笑してしまう。
「ま、いいや。どうなっても知らね」
そんな迷いを3秒で断ち切った俺は、すっくと立ち上がる。
そして、書かれていた文字を、唐突に詠んだ。
「―――そんじゃ行くぞ…
指を上に上げて、びしっとポーズをとる。
―――しかし…、
「…おいこら何も起こらんぞ。いきなりバグですかコラ」
何も起こらない。
何回叫んでも、何回ポーズを決めても、何も起こらないのだ。
千里眼が使えるようになるわけでもなく、ただ普通に、雪の上に俺がいるだけだった。
視力も前の俺と同じ。むしろなんか悪くなってないか?見通しが悪い。
「…あー、なんだよホントに。慧眼とか書いときながら近眼が進行したんですけど。あの女神様、俺飛ばす世界間違ったのか?」
まるで半透明の物体を間に挟んだかのように、遠くのものほどぼやけて見える。
うーむ、俺近視になってしまったのか…艦こ○やりすぎたかな…。
「…?およ」
しかし、依然半透明のままの視界に、少し違和感を抱く。
この視界、俺の前には出ているが、俺の後ろには出ていない。
後ろははっきりと、綺麗な雪景色が見える。
―――うん?おかしくないか?
それに、なんか…文字が…右下の方に見えてきたぞ?しかも英語。俺らの良く知るイングリッシュ。
なんて書いてあるんだ?ええと………「Now roading」?ゲームとかで、よく見るあれか?
でも、それが何でここに。
「え?俺、ゲームの世界きちゃったの?ノーゲーム・ノー○イフ的な?」
仮説を立てるとするなら、俺の迷い込んでしまった世界の問題だろう。
俺が
あとは………あの、
わからんけど…。
「―――同期完了まで、あと2分15秒?だいぶかかるな…」
とりあえず、この画面(?)に何か表示されないとなんにも始まらないので、俺は同期が完了するまで、気長に待つことにする。
気長に…気長に…。
―――あ、凍え死ぬわこれ。待ってるヒマなんてねぇな、見る前に俺が死んじまうよ。
気長に待つことを速攻で諦めた俺は、一先ず情報と食料を探すことにする。
…あー、歩くの辛いわ。雪のせいで一歩一歩が重いし、第一目の前の半透明物体のせいで前が
鬱陶しいことこの上なっしんぐ!
というか、いろいろありすぎて、俺の精神が疲弊しきってる。休憩が欲しい。
「お、同期完了したみたいだ」
そうやって歩いているうちに、2分15秒が経過していたらしい。
また、なんとなくイラッとくる「Now roading」画面に戻る。
「さぁて、とりあえずは、これが出るのを待ってみようか。いーい情報も出るかもしんねぇし」
俺は再び、気長に待つことに決める。
凍え死にそうなくれー寒いけど、情報がないことには動きようがないしな。こいつを信じて待ってみるか。
ごろんと雪の上に大の字で寝転がる。不思議と、冷たさは感じない。
ガラにもなく興奮してるからだろうか。異世界というものに。いやー異世界転生ってマジ凄ぇわ。大好きです女神様!
俺は心中で叫び、ロードが終了するのを寒風吹きすさぶ中待ち続けた。
はい斬っちゃいました!
このくらいがちょうどいいと判断しました。まる。
それでは、また5話で!!