インフィニット・ストラトス[IFルート]   作:駄菓子

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リアルがガチで忙しかったので遅れました。
失踪した訳じゃないので悪しからず。


6話

「よう、調子はどうだ?」

 

そんなくだらないことを言いながらセシリア・オルコットのいる筈のピットに入るものの、予想通りと言うべきなのか返事はない。

それどころか部屋全体がどんよりとしたくらい雰囲気にすら包まれている。

 

「随分と惨めな姿だなおい」

 

比喩でも何でもなく素直にそう思った。

愚直なまでにそう感じてしまうほどにエリートだの何だのとわめいていた姿はどこにもなく、ただ何かに震えるかのように膝を抱えていた。

 

「...............なにを、しに来たのです」

 

「んー?話があるから勝手に死ぬんじゃないぞって言ってた筈なんだけどなぁ」

 

「そんなこと知りませんわ。...............どうせ、惨めに負けたわたくしをなじりに来たのでしょう?祖国のご信頼に背いたわたくしを」

 

ーーーお許しください。リリウムはご信頼に背きました...............

 

ぎりりととっくに壊れた筈の心が締め付けられるように苦しくなり、脳裏にとある少女の姿が浮かぶ。

淡々と感情のないような声で話すのに、花を見るのが好きだったのを覚えている。

そんな少女の最期と、セシリア・オルコットの姿が何故か重なって見えるのはどうしてなのか、その理由は全くわからない。

でも、何故かそう思うとこいつのことが放って置けなかった。

 

「あー全く。なんなんだよお前は?一回くらい負けたくらいでくよくよすんじゃねぇよ。見てるこっちがイライラしてくる」

 

「...............なにが」

 

「あ?」

 

「何が!見ているこっちがイライラするですか!わたくしの気持ちも知らないくせに!」

 

「お前の気持ちなんかわかるわけないだろうが。人の心の中覗けるわけないのに何言ってんだよ」

 

何を言うのですか!

多分そう言おうとしたセシリア・オルコットの言葉を遮って俺は言い放った。

 

「誰も人の思いなんか分かるはずないんだよ。お前は積もる思いがあるんだろうけど、生憎俺はそんなもん知らない。お前からはどんな想いを抱えてるのか教えられていないからな」

 

どかっとセシリア・オルコットの隣に文句を言わせる時間を与えずに座り込む。

同じくらいの目線になったお陰で表情を読み取りやすくなった。

あえて言うなら目元が赤く腫れているために泣いていたなと、りかいできるくらいには。

 

「...............貴方に話せと言うのですか」

 

「別に?無理やり話せってわけじゃない。ただとある人にお前を助けてやってくれって言われたからな。そう言われてなかったら俺はこんなことしないし」

 

「普通そういうことを本人を前にして言います?」

 

「知るかそんなもん。俺に常識なんてモン期待するな」

 

「なんか癪ですわね」

 

「癪で結構」

 

しばらくの間を置いて癪だと言ったセシリア・オルコットはほんの僅かだが笑った気がした。

それも嘲笑うものではなく、苦笑の類い物。

相変わらずしょげているのは変わりないが、まぁ、笑うようになっただけでもいい収穫かもしれない。

 

「貴方はどうして、一度でいいから敗北してみろと言ったのです?わたくしには全く意味がわかりませんわ」

 

「どうしてねぇ?そうも言わないとお前は気づかないだろうが」

 

「...............気づく?」

 

「あぁ。日本にはこんな言葉があってな。勝利だけでは学べないものを敗北から学べ。敗北から学べることはたくさんある。今のお前にはぴったりじゃないか」

 

エリートとして勝ち組の人生を短いながらも歩んできたお前には。

そうまでは流石に言わないがこれだけで俺の言いたいことは伝わってくれただろう。

むしろ、伝えたいのはその言葉であって俺の考えなんかどうでもいいのだが。

 

「胸が痛くなる言葉です。確かにわたくしにはぴったりですわね」

 

「だと思うよ。お前みたいなエリートさんは負けるっていう挫折を味わう奴はいないらしいからな。だからなんともない挫折で心が折れちまう」

 

「えぇ、全くもってそのとおりですわ。もう、わたくしは折れそうでした。でも、いい機会なのかもしれませんね」

 

「別にお前がどう取ろうと俺には関係ない話だけどな」

 

「煩いですわよ。全く、如何してなんでしょうね?負けてよかったと、思うわたくしがいるのは」

 

知るかそんなもん。

そう言い返してやりたいところだったが、今は取り敢えず一応助けに来ているのでそういうことは止めておく。

勿論からかうことくらいのことはいうけど。

まぁ、心なしか何かを吹っ切れたような、そんな顔をしている奴の心をまたへし折るほど俺は鬼じゃあない。

少なくとも危害を加えない限りは。

 

「敗北から学べることもある、ですか。なんだか楽に、軽くなった気がしますわね」

 

「...............そんなデカイの二つつ付けといて?」

 

勿論束のにはかなわないが。

ついでに何をとも言わない。

 

「...............頭ぶち抜きますわよ?」

 

「あはっはっは。ジョークだよジョーク」

 

俺からすれば本当にジョークのつもりで言ったのだけど、どうやら地雷を踏みぬいたらしい。

出会ったばかりの頃を彷彿させる殺気を遠慮なくぶつけてきた。

軽くなるじゃなくて肩凝るんじゃね?と思ったのだけど違ったのか。

うーむ、俺の知り合いにはそれの話題はNGなのが多いな。

因みに。

頭をぶち抜かれた程度じゃ何てことないのは黙っておこう。

いくら痛覚神経を遮断できるとはいえ、頭を吹っ飛ばされるのは気分的にとてもよろしくない。

 

「全く。貴族の務めだとか、候補生の誇りだとかそれが馬鹿馬鹿しくなってしまいましたわね。貴方の所為で」

 

「俺は責任取らんぞ?」

 

「別に責任とれというわけじゃありませんわよ。寧ろ感謝しているくらいですわ。大切なことに気づかせてもらったんですから」

 

「...............良い精神科を知ってるんだけど紹介しようか?」

 

「し、失礼な人ですわねっ!!素直に感謝されることくらい出来ないのですか!?」

 

「いやだってあんなに毛嫌いされてたのにこうも態度を軟化されると。なんか、なぁ?」

 

「...............あぁそうですか。全く、素直に感謝したのが間違いでしたわ。優しい人だと伺っていたのに、存外そうでもないみたいですわね?」

 

「お前だけ例外な」

 

「...............」

 

あ、やべ。

と思った時にはすでに時遅し。セシリア・オルコット、めんどくさいからセシリアでいいか。

セシリアのこめかみはピクピクと動き、額にははっきりと分かるほどの青筋を浮かべていた。

あれ?これって束が切れたり姉さんを怒らせ時くらいまずい気がしてきた。

どうしてこうもポンポン人を逆撫でするような言葉を言ってしまうのだろうか。

今までは興味ない奴は無視してきたから気にしなかったけど、これからは気をつけないと色々と苦労するのかなと思う。

て言うか今この瞬間に苦労しかねないんだけどな。

 

「...............ふ」

 

「...............ふ?」

 

「ふ、ふふふふ...............。少しだけ貴方を見直したのが間違いでしたわ」

 

地獄の底から響いてきたかのような、それほどまでに恐ろしい声だった。

すでに人が発したものだとは思えない。

いやちょっと待ってこれ本格的にやばい気が。

 

「試合では負けましたが今度こそ減らず口を叩けないようにするどころかカクジツニムゲンジゴクニタタキコンデヤリマスワ」

 

「ひぃっ!?」

 

背筋が凍りつかんとする勢いだった。

て言うかセシリアの背後にある半透明なものは一体なんなんだろうなぁ〜(錯乱)

今まで生きてきて最大級のヤバさかもしれない。

 

「マジぶっ殺す」

 

セシリア口調崩壊してるぞ!?

そうツッコミを入れる隙もなく放たれたBTレーザーをかろうじて避ける。

俺の周りに浮かぶ4つのビットと向けられたスターライトMKⅢ。

 

「...............に、逃げるが勝ち!」

 

「逃がすか!」

 

因みにこの後姉さんにとっ捕まり、仲良く二人揃って正座させられ説教を受ける羽目になるまでの約1時間、命がけ(?)の鬼ごっこがIS学園内で繰り広げられたのは言うまでもない。

別にBTレーザーを一発喰らったくらいじゃ死にやしないのに必死に避けて逃げたくなったのはなんでだろう?

何も悪いことしてないのに警察が追っかけてくると逃げようとするのと同じなのだろうかね?

うーむ。よく分からんけど、当初の目的であるセシリアが吹っ切れたみたいなので良しとしようか。

 

「って、寮内でレーザぶっ放すな!」

 

「心配なく!貴方以外には当てないよう細心の注意を払っていますわ!」

 

「無駄に高い技術のカミングアウトをありがとう!」

 

「おぉ!おりむーとせっしーが仲良くしている〜!」

 

「うーむ、これは一大スクープね!私の記者魂に火がつくわ!」

 

「これが仲良く見えるなら病院行け!」

 

あっはっはっは。

泣けるぜ。

 

 

 

 

 

「と言うわけで1組のクラス代表は織斑一夏くんに決定しました!みなさん拍手〜」

 

「...............はぁ?」

 

次の日。

何気なく始まったSHRで唐突に言われたことに、思わず間抜けな声を出した俺は悪くないと思う。

 

「ちょっと待て。なんで俺がクラス代表になることになってんだ。てか、何がと言うわけだよ」

 

「それはわたくしが辞退したからですわ」

 

「はぁ!?お前何勝手にそんなことしてんだよ!」

 

何言ってんの?と言わんばかりの態度のセシリアに思わずツッコミを入れた。

昨日のしょぼくれた惨めな姿は何処へやらと思うばかりの堂々としていた。多少角が取れた感じがするけど、今はどうでもいい。

...............辞退ってできたんかい。

 

「何をも無いですわよ?わたくしは言ったはずです。クラス代表には“もっとも優れた者がなるべき”と」

 

「確かにそんなこと言ってた気がする。...............ん?まさか」

 

「えぇ、その通りですわ。貴方はわたくしと比べるまでもなく強い。どちらがクラス代表にふさわしいかなんて考えるまでもありませんわ」

 

「ぐ...............」

 

正論なお陰で言い返す言葉がなかった。

 

「と言うわけで精々頑張りなさいな!」

 

「...............お前絶対根に持ってんだろ」

 

「え?わたくしにはなんのことだかさっぱり。気のせいじゃありませんこと?(しれっ」

 

(こ、こいつ...............!)

 

清々しいまでの満面の笑みを浮かべているけど、もちろんその裏には明らかなしてやったりと言う感情があるのは言うまでも無い。

してやられたようだ。

逃げ道を完全に塞がれた上でこのトドメの切り札。

こんな中で俺がやりたく無い何て言おうものなら大ブーイングは間違いないし、それ以前に姉さんの説教が怖い。

嘘だろ。夢なら醒めてくれよ。

 

「...............分かったよ。やればいいんだろ」

 

ぐったりと諦めムード全開で言った俺に帰ってきたのは、無慈悲と言う名前の歓声だった。

 

「さっすがぁ!やっぱりそうでなくちゃ!」

 

「織斑君がクラス代表なら1年間は安泰だね!」

 

「おりむー頑張ってねぇ〜!」

 

正直な事を言えばクラス代表なんか絶対にやりたくない。

でも、まぁやりたく無いと文句を言って暴動を起こさなくった辺り俺も幾らか成長できたのかもしれない。

嬉しいのか悲しいのか全くわから無いけど、まぁ良しとしよう。

取り敢えず姉さんに怒られる心配は少なくなったし。

 

「それにしても、織斑君自身のことなのに知らなかった何て意外だよね」

 

「だよねー。織斑君がクラス代表になるって知った他のクラスはお通夜ムードだもんね」

 

「そうそう!他のクラスどころか先輩たちも勝てる気がしないって言ってたよねー」

 

「...............なんじゃそりゃ」

 

なんだか訳がわからないうちに、これまた訳わからない話が耳についた。

お通夜ムードってどういうこと。

 

「えー?単純に織斑君がクラス代表になったから絶対勝てないからだよ?そりゃああんな試合を見せつけられれば、ねぇ?」

 

「だよねぇ。流石にあの試合はとんでもないと思ったよ。なんていうのかな、絶対に越えられない壁っていうか、織斑先生に敵わないのと同じ感じ?」

 

「そうそう!あんな残像すら捉えられないような常識外れの動きをしちゃうんだもんね。それは仕方ないよね」

 

「...............へー」

 

常識外れの動きと言われてもストレイドの機体性能のお陰であって俺の実力じゃないんだけども。

 

「それに判断っていうかとっさの行動も早かったもんね!」

 

それも俺がデザイントだからなんですけどね。

なんせ戦うためにだけに生み出された訳ですし、極限までスタンドアローン化された戦闘兵器ですから。

戦場のど真ん中で判断遅れでとんでもない目に遭わないために、頭というか脳みそは現行のスパコンをはるかに凌駕するコンピューターに置き換えて神経系は光ファイバーにしてるし。

 

「そういう訳だからクラス代表頑張ってね!クラス代表トーナメントの優勝賞品期待してるからね!」

 

「ん?クラス代表トーナメント?」

 

「うん。来月末にあるクラス代表全員が戦う試合だよ。優勝賞品はデザート半年無料券なんだ」

 

「へぇー来月末ねぇ」

 

来月末にはもうそんなことをするのか。

IS学園はいちいちやることが凄まじいと改めて思う。

って、来月末?

確か束が無人ISを送り込んでくる手はずだった気がする。

...............あれ?それ無理じゃね?

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