遊戯王GX 2nd Generation   作:加藤あきら

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TURN3『子供の頃の思い出』(後編)

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 野上(のがみ)(たか)という男は今でも『機獣ゾイック・アンドロイド』が好きである。

 彼が小学生の頃に放映されていたそれは、当時の小学生たちを魅了し、お金のある子供はバカ高い大型のプラモデルのキットを買っていた。

 だが、鷹はそんなにお金を持っている小学生ではなかった。プラモデルのキットも小型の安いキットが限界。

 だが、そんな彼に朗報が舞い込んできた。

 それが、ゾイック・アンドロイドとデュエルモンスターズのコラボ。

 デュエルモンスターズは高いカードは本当に高い。かのレッドアイズ・ブラックドラゴンは一〇万円を超える金額で取引されていた。そういうカードには手は出せないものの、パック単位で買えば大した金額ではない。これなら自分でも買える。そう思った鷹は貯金箱の中身を確認した。

 今は生産されていないが、機獣シリーズが収録された特別なパックを、なけなしの月のおこずかいで少しずつ買っていった。

 だが、機獣シリーズは所詮コラボ企画のものでデッキを組むほどにカードプールは広くはなかった。なにより主力となるようなカードが少ないのだ。上級としてはレベル5のモンスターが二種類のみ。

 まさに、これでどうやって戦えばいいんだ状態である。

 そんな彼に更なる朗報があった。

 テレビで懸賞の応募の告知だ。

 それこそが彼の今の切り札である《機獣(ゾイック・アンドロイド) ユーティリティ・ライガー》のカードとそのサポートカードである。

 鷹はその懸賞へ応募した。

 だが、プレゼントされるのは百名のみ。狭き門だ。

 自分の下へとあの白い獅子のカードが届くことを願いながら長い日々を過ごした。

 そして奇跡が起こったのだ。

 自分の下へとユーティリティ・ライガーのカードとそのサポートカードと派生カードの計七枚セットが届いたのだ。

 その時、彼は目を輝かせていた。

 自分は一生このカードを大事にすると誓った。案の定、友達はうらやましがり、盗んだ盗まれた事件が発生したが、無事に自分の下へと帰ってきたからよしとする。

 もうこのユーティリティ・ライガーのカードを使い続けて十年以上の月日が経つ。

 未だに綺麗な状態を保っていることから、とても大事にしていることが分かる。

 

(なぁ、ライガー……。いつまでも俺の相棒でいてくれよ)

 

 彼はいつしかライガーの咆哮が時々聞こえるようになった。

 これは幻聴なのか、はたして……?

 

  5

 

 (たか)のフィールドにはユーティリティ・ライガーが存在している。これをソリッドビジョンで見る事なんて今後ないだろう。感動的だ。

 

「さあ、遊一、俺のライガーを倒せるかな?」

 

 鷹はそう言う。

 アレミラの効果で武装融合のカードは手札にあるものの、正直、遊一の手札ではユーティリティ・ライガーを倒せるモンスターも、魔法も、罠もない。

 

(装備魔法を全然引かないだなんてな……。ま、こんなこともあるか。でも、このデッキは武装融合しなくたって十分強いんだ。そのことを証明してやる!)

 

 遊一にターンになりカードをドローするが、それでも攻撃力2400を超えられるカードが来てくれなかった。

 

「仕方がない。ここはこれで耐えるしかない。俺は《円卓の騎士 ケイ》を守備表示で召喚! 更に装備魔法、《鋼鉄の盾‐ライオネル》を装備する」

 

 

《円卓の騎士 ケイ》

モンスター・星4・地

戦士族・効果

攻撃力 800 守備力2000

このカードに「鋼鉄の盾‐ライオネル」が装備されている場合、このモンスターの元々の守備力は2400になる。

 

《鋼鉄の盾‐ライオネル》

魔法カード・装備

装備モンスターは1ターンに1度、相手モンスターの攻撃を無効にできる。

このカードが墓地へ送られたとき、「武装融合」をデッキから手札に加える。

 

 

「これでケイの守備力は2400になり、一ターンに一度、戦闘を無効にできるようになった。ユーティリティ・ライガーを倒せずとも、俺はその爪でも牙でも貫けぬ盾を用意した。さて、俺からも言わせてもらうぜ。俺の鉄壁の盾を貫けるか?」

 

「ああ、貫けるさ。遊一、お前が守りに徹したとしてもそれを攻略するカードが俺の手札にある。ユーティリティ・ライガーは無限の可能性を持っている。このままではお前の盾を貫くことはできない。だが、俺のライガーは常に進化を続ける!」

 

「ふはははは! それは楽しみだ。俺はこれでターンエンド」

 

 

野上(のがみ)(たか) LP4000 手札3枚

場 《機獣 ユーティリティ・ライガー》

魔法・罠 なし

セット なし

 

輝司(きし)遊一(ゆういち) LP3700 手札4枚

場 《円卓の騎士 ケイ》

魔法・罠 《鋼鉄の盾‐ライオネル》

セット 1枚

 

 

「俺のターンだ! 俺は魔法カード、《アーマー・チェンジ》を発動する!」

 

 

《アーマー・チェンジ》

魔法カード

デッキから「アクセラレーター・ユニット」、「ブレード・ユニット」、「フォートレス・ユニット」のいずれか一枚を手札に加える。

手札を一枚捨てることによって、このカードを墓地から手札に加えることができる。

 

 

「このカードで持ってくるカードはコレだ。《アクセラレーター・ユニット》! さぁライガー……お前の可能性を見せつけてやろうぜ」

 

 彼はアクセラレーター・ユニットを発動する。すると、ユーティリティ・ライガーの白い装甲が次々とはずれていき、黒い素体が露わになる。これはこれで可愛いが、次の瞬間にはカッコいいライガーがそこに爆誕していた。

 

「GO!! アクセラレーター!!」

 

 青い装甲に包まれたユーティリティ・ライガーがそこにいた。背中には大型の何かを背負っている。名前から判断するに、あれは加速装置か何かだろう。

 

「《アクセラレーター・ユニット》の効果。ユーティリティ・ライガーを生贄に、更なる進化を遂げた姿に変える。それがこのアクセラレート・ライガーだ」

 

 

《アクセラレーター・ユニット》

魔法カード

『機獣 ユーティリティ・ライガー』を生贄に捧げ、デッキ、または手札から『機獣 アクセラレート・ライガー』を特殊召喚する。

 

《機獣 アクセラレート・ライガー》

モンスター・星7・地

機械族・効果

攻撃力2400 守備力1000

このカードは獣族としても扱う。

このモンスターは通常召喚できない。『アクセラレーター・ユニット』の効果でのみ特殊召喚できる。

装備モンスターが守備表示のモンスターを戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わずに守備表示のままそのモンスターを破壊する。

この効果で破壊したモンスターのレベル×300ポイントのダメージを与える。

 

 

「アクセラレート・ライガーは守備表示モンスターを問答無用で破壊する。それがたとえライガー以上の守備力だったとしても」

 

「だが、一つ忘れてるぜ? ライオネルは戦闘を一度無効にする効果を持っている。つまり、それだけでは足りないんだよ」

 

「まぁ、そう焦るなよ遊一。そんなことは百も承知だ。言っただろう? この状況を攻略するカードが手札にあるって」

 

「そういえばそうだったな。じゃあ、見せてくれ。お前がどういう風にこの場を攻略するのかを!」

 

「もち!」

 

 遊一は歓喜していた。これほど熱くなれるデュエルがこう立て続けに出来るという事を。ウインドマジシャンの朝倉楓に機獣使いの野上鷹。この島には強い奴がうじゃうじゃと居るんだ。そう考えただけで手の震えが止まらない。

 自分が整えた場が攻略されるのは悔しい気持ちでいっぱいになるが、それだけじゃない。一見、攻略不可能と考える状況をカードを巧みに使って攻略する。その瞬間がたまらないのだ。それが自分だろうが相手だろうが。

 今の鷹とのデュエルもそうだ。一見、このままでは鉄壁の守備力と効果を持つケイを倒すことが出来ないように見える。だが、彼にはまだ手札があるのだ。その数だけ希望がある。戦術がある。未来がある。

 

「バトルフェイズ。アクセラレーターでケイに攻撃!!」

 

「《鋼鉄の盾‐ライオネル》の効果を発動。相手の攻撃を一度だけ無効にする」

 

 ケイが持つ盾から光が発されたかと思うと、アクセラレート・ライガーの体が弾き飛ばされてしまった。

 ここまでは誰もが予測できる展開だ。

 セットカードがない鷹がここから状況をひっくり返すには、手札からの速攻魔法しかない。

 案の定、鷹の右手は手札のカードへと伸びる。

 

「これが今回の切り札だ。速攻魔法、《追撃》!! このカードの効果により、アクセラレート・ライガーはもう一度モンスターへ攻撃することが出来る」

 

「なんだって!? それじゃあ……」

 

「もちろん、ケイにはご退場願うぜ」

 

 

《追撃》

魔法カード・速攻

自分フィールド上のモンスターが1体のときに発動することが出来る。

戦闘を終えたモンスターを1体選び、そのモンスターはもう一度戦闘を行うことができる。

また、そのモンスターが2度目の戦闘によってモンスターを破壊した時、デッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「さぁ、ライガー、ケイに攻撃だ! フォトン・ブレイク・クローォォォ!!」

 

 アクセラレート・ライガーの背中に装備されている大型のブースターが展開。そこから物凄い爆音が聞こえたかと思えば、次の瞬間にはケイの身体には爪跡が刻まれていた。あまりにも攻撃が早くて見えなかったのだ。

 さて、《追撃》の効果でカードを一枚引きたいところだが、残念ながら今回は戦闘破壊でなく効果破壊なのでドロー効果は不発に終わる。

 

「ケイを効果破壊したことにより、ライガーの更なる効果を発動する。破壊したモンスターのレベル×300ポイントのダメージを相手に与える。ケイのレベルは4! つまり、1200ポイントのダメージだ!」

 

 次の瞬間、遊一の身体は猛烈な強風に襲われる。身体を引き裂くようなその風はいわゆるかまいたちになるのだろう。ソリッドビジョンによる擬似的な衝撃により、怪我をするほどではないが痛みは多少なりと感じる。

 

 

輝司:LP3700→2500

 

 

 身体の痛みを我慢しながら遊一は宣言する。

 

「墓地に送られた《鋼鉄の盾‐ライオネル》の効果により、デッキから《武装融合》を手札に加える」

 

「了解だ。さて、これでターンエンド。さぁ遊一、お前の場には伏せカードが一枚だけ。これまで発動する気配がないってことはたぶんそのカードはブラフなんだろう。そして、お前の五枚の手札の内、二枚が《武装融合》のカード。だが、使わないところを見ると、手札の装備魔法がさっきの《鋼鉄の盾‐ライオネル》しかなかったみたいだな。さて、融合装備魔法を使えないお前に、俺のライガーを倒せるかな?」

 

 完全に手の内を読まれてしまっている。遊一はそのことにプレッシャーを感じ、汗で額を濡らす。だが、手の内を読まれてしまうのも当たり前だ。これまでの自分のプレイングを見ていれば容易く予測できる。この伏せカードがブラフだってことも、手札に装備魔法カードがないということも、すべてが見通せてしまう状況にしてしまったのは自分のプレイングスキルが足りないからだろう。

 だが、抜け道がないわけじゃない。

 現状の手札と場に関しては予測できるだろうが、鷹も次に自分が引くカードまでは予測できない。デッキトップのカードを見通すなど、《天変地異》の魔法カードがない限り不可能だ。

 そこが抜け道。

 確かに、鷹の予測は当たっている。この遊一の手札では鷹のアクセラレート・ライガーを突破することは不可能だ。

 つまり、頼みの綱は次に引くカードのみ。

 幸い、彼の場には伏せカードが存在していない。どうやら、守りの札までは用意できなかったようだ。

 この状況なら、突破するカードは遊一のデッキに数枚眠っている。それを引き当てれるかどうかが運命の分かれ道。

 遊一は引きたいカードをイメージしながらデッキへと手を伸ばす。

 デッキトップのカードを手に取り、勢いよくそれを引き抜く。

 そのカードを見た瞬間、遊一は勝利を確信した。

 

「鷹、この勝負……もらった!!」

 

「なに!?」

 

「俺は、《円卓の騎士 アコロン》を召喚する!」

 

 

《円卓の騎士 アコロン》

モンスター・星4・光

戦士族・効果

攻撃力1500 守備力1200

このモンスターに「雷の剣‐ボールス」が装備されている場合、手札の魔法カードを2枚墓地に捨てることで、相手フィールド上の表側表示のモンスター1体選び、墓地へ送る。

 

 

「そして、たった今引いたカード。これが、お前のライガーを倒す! 装備カード、《雷の剣‐ボールス》をアコロンに装備だ。このカード自体は攻撃力を400ポイントアップするシンプルなカードだが、アコロンに装備することによりその力を発揮するんだ。手札の魔法カードを二枚捨てることにより、相手フィールド上のモンスターを一体破壊する!」

 

「くっそ!! 俺のライガーが……やられる!?」

 

 

《雷の剣‐ボールス》

魔法カード・装備

このカードを装備しているモンスターの攻撃力は400ポイントアップする。このカードが墓地へ送られたとき、「武装融合」をデッキから手札に加える。

 

 

 遊一は手札にある二枚の《武装融合》のカードを墓地へと捨てる。これにより、アコロンが持つ剣に魔力が集まり、雷が纏っていく。

 アコロンは剣先をアクセラレート・ライガーに向け、雷を放射。

 ライガーは吠えながら力尽きる。ソリッドビジョンの破壊のエフェクトによってアクセラレート・ライガーの姿が消える。どこかしら寂しい表情をする鷹だが、これも全力のデュエルだ。変な同情をすれば、それこそ相手に失礼だろう。

 だから、ここは心を鬼にする。

 

「俺は、《死者蘇生》を発動。墓地に居る《円卓の騎士 ペデゥヴィア》を蘇生する」

 

 アコロンの攻撃力は1900、ペデゥヴィアの攻撃力は2100、その合計値は4000ポイント。鷹の手札に《クリボー》のような手札誘発のカードがない限り、鷹の敗北が決定してしまう。

 

「行くぞ、アコロン、ペデゥヴィア。鷹にダイレクトアタック!!」

 

 二人の騎士が鷹の下へと駆け出す。強く剣を握りしめ、二本の剣が鷹を襲った。

 

 

野上:LP4000→0

 

 

 これにて勝負は決した。

 機獣と騎士の戦いは騎士の勝利で幕を閉じる。

 

「ふぅ……。良いデュエルだったぜ、鷹」

 

「おうよ!! しっかし、融合装備魔法を使わないお前に負けちまうとは、ちと悔しいねぇ。手札が噛み合ってないように感じたときはしめたと思ったが」

 

「最後のターンでキーカードを引けたから勝てたんだ。全体的なプレイングはお前が勝ってたと思うよ。今回は運が良かっただけだ」

 

「いや、運も実力の内って言うし、そんな謙遜すんなよ。そんな風にされると逆にイラッと来ちまうぜ」

 

「あはは……それもそうだな。ごめん。じゃあ、今回の勝負、俺が勝たせてもらったぜ」

 

「ああ。次は絶対に負けない」

 

 遊一と鷹は、この瞬間に本当の友達になれたのかもしれない。全力でぶつかり合う事で友情を確かめ合う。友と書いてライバルと読むと誰かが言ったが、その通りなのかもしれない。

 

「イイハナシダナー」

 

 二人が盛り上がってところに女性の棒読み台詞が入ってくる。

 キャシーだ。

 結局、二人のデュエル中は蚊帳の外となってしまった彼女はとても寂しい思いをしていた。

 

「はぁ、二人ともデュエルに熱くなりすぎて私の事忘れてないですかー?」

 

「ごめんごめん。もちろん忘れてないぞー。なぁ、鷹?」

 

「お、おう! 友達の事を忘れるわけないだろー。そういう風に思われるのは心外だなー。ア、アハ、アハ、アハハハハ……」

 

 正直、野郎ども二人はキャシーの事は思いっきり忘れていた。こんなにも楽しいデュエルをして満足してしまっていたのだ。

 

「このデュエルバカが!! ま、いいか。良いもの見せてもらったし」

 

「ん? 良いもの?」

 

 キャシーのつぶやきに疑問を抱いた遊一は問いかける。

 だが、キャシーは軽いウインクを返して、

 

「内緒! でも、遊一もいつかは見えるといいね」

 

「?」

 

 時々キャシーはこう言った不思議なことを言いだす。遊一はこれまでもこれに似たような事を言われたことがあるが、未だにその意味は分からない。

 見える……ということは何か霊的なものなのだろうか? でも、状況的にそんなオカルトを言い出すタイミングじゃない。

 最初から最後まで、その言葉の真意を、遊一は理解することは出来なかった。

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