狂人の闘争記 作:マルコス
エルフ達の村から出立し、人間の形態になれる為自分のダンジョンへと向かったコクビャクは1時間程で到着した。その道中、擬態状態とそうで無いのとを比較していたが特に変わった様子は無かった。能力値に変動はないようだ。そのようなことを確認しながらついたコクビャクは久し振りにステータス画面を開き、レベルを確認した。
そして、己のレベルを示す数値は21であった。本来ならば、かなりのレベルアップに喜ぶところなのであるが、素直に喜ぶことができない。それは何故か、二万の軍勢を退けた経験値はコクビャクにも入っており、それに加えてエルフの村での戦闘。人間などであればとっくにレベルの上限に達している経験値だというのに上がったレベルは14。それだけ殺しても14しか上がらない、これは一体どういうことなのだろうか。普通のものならばそう悩んでもおかしくないだろう。しかし、彼はコクビャク。そのような些事は微塵も気にしない。
「さて、死んだ階層主を生き返らせて褒美をとらせねばな」
その事で頭が一杯なのであった。
〜ダンジョンにて〜
「という訳だ、何か欲しいものがあれば要求しろ」
以前おこなった大規模な階層増築の際、各階層に補充された装飾や食物などが大量にあり、それも無限湧きする為そういう系統の物は必要ない。そうした事もあり、ゴブリンキングことグリル意外の者たちは保留という結果になった。因みに、グリルの要求は言うまでもなく女であった。
それに対して、この後王都に行くからそこで何人か連れてきてやろうという事になった。そして、実質上全員に何も褒美を現時点では与えてないことに不満を覚えたコクビャクがダンジョンコアでメニューを開いた。
メニュー
・ ダンジョンの階層増築
現在増築可能な階層数
上限の12階層まで増築可能
・ダンジョンの階層改造(編集)
・ダンジョンのモンスター配置
・ダンジョンモンスターの復活or促進
・ダンジョン内の装飾
・食料等物資召喚
・スキル付与&魔法習得
現在所持DP 2400000
この中から選ぶとすれば、装飾も要らない、食料物資も必要ない、となれば必然的にスキル付与が妥当だと結論付け、選択するといくつかのスキル、魔法候補が上がってきた。そして、その中でもコクビャクが目に付けたのはこれだった。
・スキル付与&魔法習得
〜〜〜省略〜〜〜
《人型化》・・・ステータスに変動なく攻撃の範囲は変わるものの戦闘力に差はない。人型化することによって魔族、魔物とバレてしまう危険性を低くし、人の住む街や村に配下を連れ立って侵入するときに便利。狭い空間では不便な巨躯を持つ者には最大の恩恵。配下への伝染有り。 必要DP15000
少々高いが、階層主にこのスキルを付与すると配下の魔物にも伝染するようだ。将来的に配下に生娘をさらうように命令をしようと思っている自分にはこれ以上になく魅力的なスキルであった。自分が嫌う人型になるのは本当に嫌ではあるが、活動しやすい大きさであることは事実。ここは、我慢すべきところであろう、そう考えその旨を階層主達に伝えた。その後、まだまだ余りあるDPを使い、今度は階層増築、モンスター配置、部屋の改造を行うことにした。
ーー階層増築ーー
上限である一二階層まで増やした。実質増築したのは三階層であり、広さは今はまだ他の階層と同じである。何の手入れもされていない。
ーーモンスター配置ーー
new恐怖の粘液体 体長三メートルにも及ぶ巨大なスライム。戦闘力自体は大したことはないが、相手の冒険者達の道具を奪うことに特化した個体となっている。記憶も、個性も、感情もなく、ただ主人に仕える魔物である。自然界に生息はしておらず、非常に希少な個体となっている。このモンスターが体内に取り込んだ装備、道具は冒険者が装着していようとしていまいと関係なく分離させ、直接宝物庫に装備や道具だけを転移させてしまうことが出来るモンスター。又、斬撃系統の攻撃はすべて無効化し、物理攻撃は無効である。魔法による攻撃に対する耐性は低く、上位冒険者が三人もいればうまく攻撃を当てられれば倒すのが容易なボーナスステージとなる可能性もある。必要DP 95000
new奇術師・サイナ 体長は1.9メートルと、人間の中では大きい部類に入るが、ここにいる階層主達からすればチビとなってしまう大きさである。生前は人であり、人々を笑顔にさせることを生きがいとした手品師であった。仮面をしていた彼はテレビの出演なども数多くあり、彼のためだけに開かれる番組も少なくはなかった。しかし、報道陣を金で掌握した彼を妬む手品師達によって詐欺師だ、犯罪者だ、女遊びをしまくっているなどの虚偽の情報が数多く報道され、止む無く彼は表の舞台から姿を消した。報道による虚偽の情報を信じ、彼に石を投げつける子供やそれを容認する親。前まで自分が笑わせていたはずの人間たちが敵意を持って自分に揃いも揃って敵意を見せる。それ以来、彼は誰に見られることもなくひっそりと暮らすため、無人島へと旅立った。彼は持っていた全財産を募金を行っている団体に匿名で寄付し、無一文でそこへと向かった。そこでは、毎日がサバイバルで他の人間達や、俗世間のことなどを考えている暇など一時もなかった。島で暮らし始め、余裕が出来始めた頃、最近出来たばかりの洞窟内に存在する彼の住まいに一匹のタヌキがやって来た。弱々しいおぼつかない足取りをしていたのを見かねたサイナは貯蓄していた自分の食料を少しだけ分け与え、看病した。それ以降、狸だけに留まらず他の動物達も彼を認め木の実などを持ってきてくれるものまで現れた。暖かくされた時に感じた温もりをその時思い出しその日、彼は絶えず涙を流し続けた。彼の死後、動物達によって墓が建てられ定期的に木の実が運ばれたりなど墓の手入れも島の動物達が行ってくれていた。彼はその後も体を持たぬ思念体のまま、動物たちに気付かれぬまま、その様子を見続けていた。ある日のこと、睡眠を必要としない彼が、目を覚ました時のことだった。森林が焼き払われ、動物たちが人間たちに殺されていくのが見えた。自分を追い出すだけでなく、己の友である動物たちにまでも手をかけるか.,.と。そこで、サイナは思ったのだ。何故こんな劣等種に俺は生まれてしまったのだろうかと、出来ることならば、人間を根絶やしにしたいと。そして彼の墓の墓石が吹き飛ばされた時、彼の意識も途絶えたのだった。ーー人間への強い恨みを残したまま。 必要DP150000
new偽りの王 体長は1.8メートルと男性の身長としては決して低くはない身長をしている。生前は、王家の血を引くものとして形式上の王として祀られ、敬われていた。お飾りの王であり、大臣や他の腹心達が仕切るのを面白く思っていなかった王であったが、彼等が自分が惚れた女と結婚したいという我儘を聞いてくれたので、仕方なく我慢していた。妻は有名な貴族の出ではなく、社交界のパーティで偶々見かけた低位貴族の娘だった。王家と結婚したことによって家名が上がり、今では上位貴族となっている。しかし、彼にとってはそんなことはどうでもよかった。唯妻さえいれば...そう、それは、妻が洗脳されていたことに気づかなければ...である。時折妻が何処何処の国を攻めたいな等と言ってくることがあり、それを王はお願いと受け取り全力で攻め立てた。それが大臣他、腹心たちの計画とも知らずに。ある日、大臣の腹心たちが、自分の妻が洗脳されているのがわかるような内容を話していたのを聞き、王は激怒した。妻は間違いなく王を愛していた。しかし、王には洗脳の解けた後の彼女の言葉すら耳に入る事なく腰に差してあった剣を抜き、首を切り飛ばし、王国最強の兵団『ゲバルト』、ドイツ語で暴力を意味する兵団を率いて大臣や腹心、その他妻を洗脳することに賛同していたものを吐かせて皆殺しにした。その後、荒れ狂った王はその兵団を引き連れ周辺諸国を壊滅させ、休みなく遠方の国々まで襲撃した。その大陸にある国家全てが甚大な被害を受け、その王の討伐軍が編成され漸く討伐された。しかし、王は死ぬ間際まで人間に対する猜疑心が尽きることなく、恨み続けた。人間を憎み続けていたという。彼もまた、誰も信じることなどできないといった思想を持って死んでいったのである。必要DP165000
new
体長不明。ダンジョン内で殺された冒険者、モンスター、コクビャクが個人的に殺した者の魂が蓄積され負のエネルギーが形となって出現したもので、殺した数に比例して強くなって行く。上限はなく、比喩なく膨大な時間さえあればコクビャクに匹敵するだけの力を持つことができる。しかし、それを成し遂げるには長期戦を想定し、最低でも500世紀は必要であるとされる。又、コクビャクもその間強くなり続けるので、恐らく追いつくことは奇跡に近いレベルでしか実現不可能と思われる。殺されたもの個人の
new超執事・クラーメン 体長は二メートルを少し超える程度。大魔王の血筋を持っているにもかかわらず、執事になることを決めた変わり者。その膨大な魔力で主人を支え、悪魔の癖に人間に慈愛を持って接し、時には助けることもあるという。どんな種族にも分け隔てなく接し、なんでもそつなくこなす当に万能タイプである。なんでもできてしまうため、彼以外の使用人は必要ないと言われたことも多々あると言われている。但し、彼を雇う際の金額は莫大な金額で国一つが買えてしまうほどの大金を積まねば、一年契約すらままならないという。それに加え、そんなに高額であるのにもかかわらず、彼を雇いたいという依頼が殺到しており、競争率は非常に高いのである。どこでも引っ張りだこで、愛想も良く、魔物にも人間にも好かれやすい者...コクビャクにとってはどうでもいい話ではあるが。 必要DP 450000
新たに追加されたモンスターの数が多いことに、その後三日間はモンスターの事だけではなく、ダンジョン改造計画も考えており、マスタールームに篭りきりのコクビャクであった。