狂人の闘争記   作:マルコス

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第三話

sideガイン(盾持ち前衛の男)

 

7人は前に現れた、廃墟にモンスターの魂が宿ったかのような巨人モンスターに驚きしばらく動けないでいた。誰もが呆然としている中相手の巨人が話かけてきた。

 

「我が名はグラシス。お前達が侵入者か」

 

どこから話しているのかわからないが重低音で心臓に響くように重い声をしている。目の前に居る巨人に、漸く立ち直った一行のうちの前衛盾持ちが答えた。

 

「そうだ。私達は冒険者で、このダンジョンを攻略しに来たのだ」

 

「そうか...ゴブリンキングを倒したところを見ると、相当な手練のようだな。そして、私に対して物怖じせずに返答したその勇気を認めて今ならば見逃してやろう。...どうする?」

 

ゴブリンキングをやっとの事で倒し、この階層までやってきた。盾持ち前衛ことガインは己の使っていた盾の一つを真っ二つにされたのだ。

 

私情で言えば、絶対に引きたくはない。しかし、後方に控える仲間たちの意見も聞かなければならない。この場にいるのは自分だけではないのだ。

 

そう思い、ガインが後ろを向いた。

 

「イイっすよ、俺は」

 

「私も、構いません。折角ここまで来たんですから...」

 

「そうである。ここで引く訳には行きません」

 

上から順に、ケン、アリア、レイピア使いのバルベル。他の三人も同様に恭順の意を示す。

 

「悪いが...引く気はないぜ。」

 

「そうか...ならば、ここで死ね」

 

それを合図にグラシスは巨大な拳を振り上げる。明らかにあんな物に直撃すれば、ガインと雖もペシャンコに潰されてしまうだろう。

 

ここは回避を重視し、自分も攻撃に加わろうと考えたガインは盾を部屋の隅に投げ捨て、腰に差していたショートソードを装備する。ガインが敵に向かって行った頃丁度詠唱が終わったのか、魔法が発動する。

 

「ファイアーボール」

 

「ハイ・パワー・ストレングス」

 

「ハイ・リーンフォース・エンデュランス」

 

炎の玉、前衛の攻撃力上昇、前衛の耐久力上昇。魔法を扱う者の中でも上位に立つものが唱えることができるとされる、上位魔法。

 

これらを扱えるものが自分たちの国に何人いるか。両の手だけで足りる人数なのだ。

 

本来盾役である自分の攻撃ですら、相手の巨人に傷をつけることができている。後衛のメイジ達が中心に狙われているが、自分を『レイト・エンハンス』で移動速度を上昇させ軽々と避けている。

 

攻撃が掠った前衛の一人が大怪我をしていたが、グラシスは攻撃速度が遅くしっかりと避ける事が出来れば問題ない相手であった。

 

sideグラシス

 

留守を承ったグラシスはダンジョンを攻略しに来たという7人の冒険者たちを観察する。非常に連携のとれたパーティで、互いが互いのmissのカバーを行い被害を最小限に抑えている。

 

それに加え、並みの冒険者では避けることができないような攻撃を受け流し反撃を与えてくる。身体強化の魔法が後方支援によりかけられており、一撃一撃がしっかりとグラシスの体力を削っていく。

 

後方支援のメイジを倒そうとするが、なんらかの魔法により敏捷性が増しており攻撃が当たらない。相手側から見れば詰みである。

 

しかし、

 

「このまま勝てると思ったか」

 

ここに来て漸くグラシスは魔法を使った。

 

「ハイ・レイト・エンハンス」「暗黒の雨(レイン・オブ・ダークネス)」「魔法封じ(マジック・シール)

 

3つの魔法を無詠唱で発動する。ハイ・レイト・エンハンスはレイト・エンハンスの上位魔法で、移動速度や攻撃速度を上昇させる魔法。

 

魔法封じ(マジック・シール)は、その名の通り相手が魔法を唱えるのを阻害する魔法である。

 

暗黒の雨(レイン・オブ・ダークネス)は一定時間黒い雨を広範囲に渡り、降らせる魔法である。種族不明のモンスター以外には、毒、混乱、幻覚、の状態異常になる魔法である。種族不明のモンスターだけは何故かこの魔法を受けると回復する。※種族不明のモンスターは通常の回復魔法では回復できない。

 

「ぐわぁ...」

 

「ゴホォゴホォ!」

 

「や、やめてくれー」

 

幻覚を見たものが騒ぎ出し、毒を受けた者が血を吐く。あっという間に阿鼻叫喚となり、辺り一帯に血が広がってゆく。

 

全状態異常回復(オール・キュアー)

 

しかし、その一つの魔法で惨劇は終わりを告げる。その後、状態異常を無効化する霧が張られ先程のような事になることはなかった。

 

「ほう、やるな。」

 

グラシスはその様子を見て、素直に感心していた。

 

sideアリア

 

ありえないありえない!目の前の巨人が魔法を唱えたことにも驚きだが、いま唱えた暗黒の雨(レイン・オブ・ダークネス)は闇魔法の上位互換である暗黒魔法に位置するもの。

 

その存在は書物にて伝えられてはいるものの、暗黒魔法は使用者にも被害が出る物が多いので習得しているものはいないだろう。ましてや、その魔法を受けてこの巨人は回復していったのだ。

 

一切の状態異常を受けることなく...

 

自分は以前、暗黒魔法を使う気の狂った魔導師に痛い目を見た為対策を行っていたのだ。暗黒魔法で最も付与されることが多いとされる、混乱、幻覚、を無効化するアイテムを身につけていた。

 

毒は受けてしまったが、全状態異常回復(オール・キュアー)を必死に習得したので問題はなかった。直ぐに仲間全員にその魔法をかけ、態勢を立て直す。

 

他の仲間が「白の霧(キュアー・ミスト)」を唱え、再び状態異常になるのを防ぐ。そして私は自分の残り魔力残量を確認し、魔力回復ポーションを一瓶呷り、前衛にも聞こえる声で言った。

 

「皆、あれは暗黒魔法よ!一気にケリをつけないと厄介だわ。私の全状態異常回復(オール・キュアー)の使える回数も限られているから、次で決めて!」

 

「わかった、各々自分が持つ最大の技で彼奴を攻撃しろ!魔力消費、アイテム消費を惜しむな!」

 

ガインが全員を鼓舞するように声をあげ、剣を振り上げる。そして、それに仲間たち全員が答えた。

 

「「「「「「了解!」」」」」」

 

相手は巨大な拳を振り下ろそうとしている。これを止めるのは、私の役目だ。

 

行動阻害(ビヘイビア・インハイビション)!」

 

グラシスの体に黄色い蛇が巻きついていき、腕、頭を含む上半身全てを巻きつけた蛇のおかげで完全に動きが止まった。

 

「ヘル・ライン!!」

 

グラシスの苦し紛れの最後のあがきにより、四方に向かって紫色の線が伸びて行き、運悪く線上にいたガインが悲鳴をあげることなく死んだ。しかし、その目に宿る闘志は消えることなくともり続けている。まるで、早く殺れとでも言わんばかりに。

 

他の仲間たちもそれを察したのか、猛攻撃を開始した。

 

「スキル...死突、デス・ショット」

 

巨紅焔(ヒュージ・クリムゾン)

 

この二つを始めとした、上位魔法、高威力スキル等が連続で発動しグラシスの両腕は崩壊、上半身も穴だらけで紅く恍惚と光る眼も片方しか付いておらず点滅している。

 

「グッ...申し訳ありません、コクビャク様...」

 

それを言い残し、光となって消えていった。そして、奥には階段が現れた。

 

「いこう、皆。ガインさんの死を無駄にしちゃダメだよ。このダンジョンの機能を停止させなくちゃ。」

 

アリアの言葉に啜り泣いていた仲間たちがヨロヨロと立ち上がり、階段を下っていった。

 

ーー第四層ーーー

 

階段を下るとそこには青銅製の大扉があった。しかし、以前と違って威圧感を感じず又青色の扉もあり、躊躇わず開けた。

 

「ここは...」

 

「すげぇな...宝の山じゃねぇか」

 

冒険者が持っていた金貨、装備何もかもがそのままの状態でそこには保管されていた。そこにあるものすべてを集めれば、小さな王国であれば国家予算に届くのではないかというほどである。

 

所々に存在するレア物の中に時価が高いものが複数見受けられる。

 

「それらを盗るのはいいけど、ダンジョンコアを壊してからにしてね。私達が全員このダンジョンから出るまでダンジョンは崩落することないんだから。」

 

一般に、ダンジョンはダンジョンコアを破壊すると機能は停止すると言われている。しかし、どういう訳かダンジョンコアを破壊した人が出るまではダンジョンが崩壊しないのだ。

 

故に、パーティであればその人物だけダンジョンに残り、ダンジョン内にある宝を仲間たちと運び出すのが定石となっていた。又、ダンジョンコアを破壊するとダンジョンにいるモンスターは蘇生せず、生きているモンスターも光となって消える為、安心して宝を運び出すことができるのだ。

 

「それじゃ、行くよ」

 

どうしても我慢できなかったのか、仲間の内の何人かは既に気に入った装備を拾い上げて装備している。勿論血は拭き取っている。

 

宝物庫を抜けたところに階段があり、再び下の階層に進んでいく。

 

ーー第五階層ーーー

 

階段を降りると、目の前には赤い大扉があった。しかし、グラシスを倒した時と違い、プレッシャーを感じない。しかし、赤い大扉をくぐるとグラシスが現れたように何かしらあるのだろうと警戒して6人となってしまった一行は警戒を強める。

 

そして、大扉を開けると...

 

何もなかった。

 

「あれって..ダンジョンコアよね」

 

「そう、みたいだな」

 

玉座は在れど、誰も座っていない。外に出ているのだろうか。

 

「と、取り敢えず、ダンジョンコアを壊しましょう」

 

仲間達も若干動揺しながらもダンジョンコアへと向かう。なんというか、その、最後は呆気ないものだな。

 

そう思って、全員でダンジョンコアを攻撃し始めた時だった。突然ダンジョンコアから突風が吹き出し、3メートル近く吹き飛ばされたのだ。

 

事態を把握できずに混乱していた時...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイツはやってきた。

 

顔なし口なし、鼻もなし。顔のパーツが一つたりともない化物。

 

体は人間と同じような形をしてはいるものの、左半身は黒で塗りつぶされており、右半身は真っ白で、人間ではないのは明らかだ。

 

「誰だ?この俺様の楽しい楽しい捕食タイムを邪魔した愚か者は」

 

其奴は不機嫌そうにそういったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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