狂人の闘争記 作:マルコス
軍団長バルハートの号令を合図に前方の部隊が一気にダンジョン内に突入した。先ずは第一層ーーースライム達の階層である。
「な、なんだ?この階層は」
「スライムしかいないじゃないか。本当にこのダンジョン危険なのかぁ?」
「お前、話聞いてなかったのか?このダンジョンは第二層からが本番なんだよ」
「え、そうなのか」
第一層がスライムだけの階層だった為、少なからず油断した兵士が一部存在した。
そして、第二層ーーーゴブリンキングの階層である。
前回の襲撃の際に装備していたものから一新し、さらに戦力が強化され統率のとれたゴブリン達が兵士達の前に立ちはだかった。
「また人間か、皆殺しにしろ!!」
「ギィィィイイイ!!」
ゴブリンキングの号令を合図に王国兵士達と交戦に入った。以前にも増して統率されたゴブリンの部隊の奮戦により5000の兵達が重傷及び死亡した。
最後に残ったゴブリンキングに彼等は甚大な被害を受けてしまった。
ゴブリンキングのような階層BOSSは、倒されてしまうと周囲の配下モンスターの蘇生もこの個体が蘇生するまで停止する。BOSSモンスターの蘇生にかかる時間は、満3日。
この時点で、この戦いにはもうゴブリンキングが戦線復帰することは不可能だろう。ダンジョンマスターがこの場にいたらDPを使って蘇生を早める事もできるが、コクビャクは今はいないので意味はない。
その頃、第六階層に居たクラーケンは遂に交戦に入ったのでコクビャクに報告する事にした。
sideコクビャク
「コクビャク様、宜しいでしょうか」
「何用だ?未だ我が出発してから数時間しか経っていないではないか、やはりお前達は割れがいなければ何もできんのか」
「コクビャク様が居ていただければ安心するのは確かですが、今回はそのために連絡したのではありません」
「と、いうと」
「どうやら、王国軍と思われる騎士団の軍勢二万がダンジョンに侵入。現在、ゴブリンキングが倒されましたが相手側の被害も甚大です。」
「成る程な、敵襲か。して、お前達にはそれは対処できない事なのか」
たいして驚いた様子もなく、敵襲と認識したコクビャクに戸惑いを隠せないクラーケンであるが漸く気付いたことが一つあった。ーーーそう、対処しきれない相手ではないのだ。
「申し訳ありません。敵襲など初めてだったものですから、すこし慌ててしまっていたようです。本当に申し訳御座いませんでした。」
.「...そうか、助力が必要ならばいつで言うといい。すぐに殲滅してやろう」
「それは、頼もしい限りです。が、我々とて、負けはしません!それでは、失礼します」
相変わらず電話越しでも伝わるような恭しさを残して通話を絶った。
「ま、彼奴らならなんとかなるだろう」
コクビャクは再び王都を目指しての旅を再開した。実際、王都とは真逆の方向を向かっていることとは知らずに...
side大先生
私としたことが、みっともないところを主に見られてしまった。敵襲に怯えて自然と主人に連絡してしまった。
普通のダンジョンならば、敵襲があった時に連絡するのが普通だがこのダンジョンにおいてはそのような常識はない。自分たちで対処できないようなら応援を要請することを許されているが、自分たちで対処できる事物に対しては一切の連絡が不要と前々から伝えられていたのだ。
しかし、実際に敵襲が来てしまうとどこかで怯えてしまい主人を頼ってしまうところがある。それは、当然のことである。
大先生と呼ばれているこのクラーケンは海に棲息していた時は敵という敵が一切寄り付かなかったからだ。クラーケンが群れをなし、大海を彷徨う様は他の魚達から見れば恐怖以外の何者でもなかったのだ。(群れといっても二三匹程度だが)
これは、父の頃からこの様にしており大先生が棲息していた大海ではすでにそのことが知れ渡り誰も攻撃してこようとしなかったのである。故に、現状このようなところに召喚されて階層を任せられる身になってしまった。
確かに、自分たちの群れの中でも最強だったこのクラーケンが召喚に選ばれたのは必然かもしれない。敵に不慣れな大先生がこのようなmissをすることは当然のことだと思っても良いだろう。
「さあ、気を引き締め直して迎撃するぞい!」
若い声でありながら、ジジ臭い言葉遣いを扱う大先生は各階層主に指示を飛ばすのであった。
side end
兵士達は遂に第三階層へと侵攻を開始した。5000という甚大な被害を受けても尚怯むことなく突き進んでくる。
そして、漸くここでボスラッシュ仕様にしたこのダンジョンの利点が顕になる。それはーーー
「な、なんだこの部屋は?20人しか入れねぇぞ!」
「ど、どうなってやがる...」
BOSSの部屋には20人迄のパーティしか入れないのだ。門を20人目が通ると同時に無理やり入ろうとするものを吹き飛ばし門を閉じてしまうのだ。
「我が名はグラシス。征くぞ!!人間共」
グラシスは以前にも増した自動回復の速度に加え、ニンゲンの攻撃パターンなどにも慣れてきて非常に良い戦いをした。グラシスの奮戦により第一陣総員一万人が死亡した。
が、第二陣の突撃により遂にグラシスは息絶えた。
そして、第四層ーーー魔界の鬼将軍、(百鬼の将軍)の階層である。
そして、例のごとく20人しか入れないその扉を潜り抜けて目にしたのは身体が多数の刀によって構成されている謎の魔物、体に怨嗟の声を撒き散らす顔を無数に浮かべるこれ又見た事のない謎の魔物、そして極め付けは、この二匹の中央に存在し、玉座に座る巨躯の大男。
その男がゆっくりと立ち上がり、玉座に掛けてあった両手剣を手に取る。
「我が名は百鬼の将軍、百鬼将軍とでも呼んでくれ、では早速だが...死んでもらうとしよう」
「グゥオオオオオオオオオ!!」
身体を構成している刀がブンブンと高速回転しながら相手の中心地へと飛んでいく首切り侍、
「いだぃぃぃいいい!!!!」「ヤメて..お願い...もう、やめてください」「た、タスケテェ...」「苦しいよぉ...」「ユルサナイ...」
怨嗟、苦しみの声が身体中から放たれているのにもかかわらず全く気にもとめず騎士団に襲いかかる怨嗟の塊。
「人間ども...貴様らは皆殺しだ!!鏖殺だ!」
奥から次々と頭にツノを持った鬼たちが出現する。
「コロセ!コロセ!コロセ!」
全員が武器を振り上げ戦闘が開始された。これは、今までにない規模の被害が出る、そのほんの序章でしかなかったのです。