狂人の闘争記   作:マルコス

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第七話

第四層にやって来ていた兵士達は絶望していた。

 

魔法支援を受けた屈強な戦士の攻撃を片手で受け止め、もう片方の手に握っている大剣を袈裟斬りし一刀両断する。

 

後方から火の中位魔法、ファイアーボールを受けても傷一つどころか火傷の一つもできない。

 

角も覆えるように設計された兜を装着し、漆黒の鎧に身を纏う鬼の将軍。敵は百鬼将軍、怨嗟の塊、首切り侍、鬼四匹の計六体の魔物が相手だ。

 

六体vs.二十名の兵士、この戦闘が何度繰り返されたであろうか。数えるのも億劫になるくらいの数、第四層に攻め込んだ。高名な魔術師も、実力派の戦士も、圧倒的な兵力差も、全ては無意味。

 

大人が関係者以外立ち入り禁止の区域に入ろうとしている子供を追い払うかのように、軽くあしらわれる。但し、殺される。

 

誰もが絶望し諦め掛けていたその時、その男は現れた。

 

「お困りのようですねー。最強の俺、シンヤ・カマタが手伝ってやりますよ!」

 

その男、シンヤ・カマタ(鎌田真也)は勇者であった。

 

sideシンヤ

 

 

 

 

ここは何処だろう。さっきまで病院で横になっていたはずなんだけどなーおかしいな。

 

周りの景色も、自分の服装も見るからに異世界である。おまけにゲームのようにステータスの画面まで見ることができる。

 

「異世界じゃん!まじかよ...サイコォォオオじゃん!」

 

 

〜〜〜

 

父は死に、母はパチンコでスっては闇金から金を借り、返せずにジャンプするの繰り返し。体を売るのは当たり前、そして遂に俺に自殺しろと迫ってきた。

 

もう、何もかもどうにでもなれと自暴自棄になった俺はトラックに轢かれたのだ。運がいいのか悪いのかはわからないが、奇跡的に助かることができた。

 

しかし、母親は俺の生命保険にしか入っておらず、医者が容体を伝え終え看護師などが部屋を退出した瞬間に今まで浮かべていた柔和な笑みを消し、他の患者が俺の部屋にいないことをいいことにいきなり怒鳴りだした。

 

「なんで、あんたは生きてんのよ!死ねって言ったでしょ!?生命保険にしか入ってないのよ、保険料なんて払えるわけないじゃない!今すぐ死ね!」

 

信じられない。何故こんな人間が親なのだろうか、その頃の俺はもう心が折れており、何をする気にもなれず、かろうじて行けていた(・・)学校の友達に勧められたスマートフォンのゲームだけを生きがいにしていた。

 

そしてついにあの時が来たのだ。

 

深夜0時頃、母親が病室にやってきた。両手に手袋をはめ、ロープを持って...

 

あの時のことは今でも覚えている。自分を殺してもすぐに誰が犯人か判明してしまい、捕まるのは目に見えているのに襲ってくる。

 

母の目は狂気に染まっていた。恐らく、体を売っても闇金の利息分すら払えない域に達したのだろう。

 

八方塞がりで身動きが取れなくなり、遂に俺に手を出した。それに気づいた俺はもうどうでもよくなった。

 

あぁ、こんな親の元にさえ生まれなければ...ゲームの中の主人公のように強敵と戦いつつも仲間に恵まれている。もし、生まれ変われるのならば、親がこんなクズではない世界に生まれていたのなら、魔物と戦うのだって辞さないというのに...

 

「ほんっと...糞みてぇな人生だったな」

 

こうして、鎌田真也の人生は幕を遂げた。

 

ハズだった...

 

〜〜〜

 

死を受け入れ目を閉じ次に目を開けた時、目の前には草原が広がっていた。自分の今の服装はスマホでやっていたゲームキャラの装備だ。

 

決して最強というわけではなかったが、上位プレーヤーには割り込んでいた。無課金だったがやっていた年数が違う。

 

廃課金プレイヤーに勝るとも劣らない装備の数々を持ち、羨ましがられていた。そして、ゲームのような世界だと認識し少し落ち着いてきたところで、大軍が洞窟に攻め込んでいくのが見えた。

 

「あれは、何だろう?」

 

興味本位で魔法を使用し、軍の目的などを探る。

 

探査魔獣召喚(サモン・サーチビースト)

 

青い鳥を召喚し、前方に見える大軍の司令部と思わしき所に飛ばし、司令部近くにあった木々のうちの一本に止まり、声に耳を傾ける。

 

「なに?第二陣、壊滅?!、おまけに第三陣も壊滅寸前で救援要請だと!」

 

ふざけるなと司令部の机を叩きつけるバルハート。第一陣はたったの一回層しか突破できず今は情報に無い、第四層で詰まっているという。

 

しかし、第一陣が破れたバルハートの軍団には極大戦力となりうる軍団は一つしかない。冒険者によるパーティである。

 

このパーティは冒険者ギルドが用意したパーティではなく、王国が高い報酬を用意して雇ったものだ。更に、ダンジョン攻略に貢献した暁にはダンジョン内に存在する宝も、大方譲り渡すという条件も含まれている。

 

それは、王国にとっては非常にまずい話でできれば切りたくないカードである。王国も少なからず今回の遠征で金を消費しており、元を取らねばならないからである。

 

だが、そうも言っていられない状況になった。

 

そう決心して、冒険者パーティ達が10名程いるテントへ顔を出したのだが、そこに居た彼らの顔は、軍団長バルハートが来たにも関わらず曇ったままであった。

 

「どうした、冒険者達よ。私が来たということはそういうことなのだぞ?嬉しくないのか」

 

「...普段ならば嬉しいさ、ダンジョンの宝を根こそぎ持っていけるんだからな。しかし、今回のこのダンジョンは相当まずいぜ」

 

「....何故だ」

 

「俺達はアンタらが攻めるのを初めは見ながら酒の肴とか土産話にしてやろうとか思って見ていたんだがな...グラシスとか言う魔物が出てきたあたりからかな、俺たちがヤベェと思い出したのは」

 

リーダー格の男が言った事に付け加えるように後方の女魔導師が言った。

 

「あのグラシスという魔物は我々人間と会話するだけの知性があるだけでなく、暗黒魔法を使用していました。そしてあろうことか、人間にとっては害悪でしかない魔法で彼らは回復していたのです」

 

「暗黒魔法だと!?」

 

「それに、今戦っているあの鬼の将軍、百鬼将軍だったか?あいつはもっとやべえよ、物理に特化しているのは見てわかるが中位魔法のファイアーボールの直撃を食らって無傷とか俺たちでも無理だよ」

 

「馬鹿な...では、勝算はないというのか」

 

「少なくとも、今の戦力じゃ勝てねぇな」

 

「まさか、そんなことが...」

 

その後も色々な情報が飛び交っていた。

 

ーーーどうやら魔法による情報収集によると、この世界に存在するダンジョンというものに挑んでいるらしい。

 

それが、最近できたダンジョンの癖に以上に強いモンスターが出現するとかで、これ以上このダンジョンが強力になって魔物で溢れかえり、人間たちの住まう王国などに攻め込まれるのを防ぐのが目的なのだそうだ。

 

「これは俺が行くしかないな」

 

そう言って転移魔法を使用し、司令部へとシンヤは転移した。

 

side end

 

「お困りのようですねー。最強の俺、シンヤ・カマタが手伝ってやりますよ!」

 

突如そんなふざけたことを言い現れたその男は俗に言う、勇者と呼ばれるものだった。この世界に存在しない衣服を着込み、この世界の誰もが知りえない知識を保有する。

 

嘗て、その知識を求めて勇者に弟子入りした者が居たようだが難しすぎるためその知識を受け継ぐことは不可能だったという。『あにめ』や『まんが』と言った意味不明な物を聞いたその者は頭がパンクしてしまったという。

 

「お前、勇者か!」

 

「まー、そーかもしれませんねー。」

 

「おし!これならいけるぞ!勇者がいれば恐れるものなんてなんもねぇぜ!頼む、力を貸してくれ!」

 

「困っている人を助けるのは当たり前...なんだけど、報酬として要求したいことがあるんだけど...」

 

と、バルハートの方に顔を向け申し訳なさそうに言うシンヤ

 

「何でしょうか」

 

勇者は一般的にに敬われている存在なので、一応丁寧語で話すバルハート。

 

「出来れば、王国での身分の保障とそれなりの階級が欲しいのですが...ね」

 

「その程度ならば問題ありません」

 

「まじで!ありがとー」

 

王国における自分の身の保障と貴族階級を得られることに安堵し、より協力的になったシンヤ。

 

それが、報酬となるのならばそうさせてもらおうと考えているバルハート。

 

この世界においては、その程度の事は勇者であることが判明され次第手に入れることができるものなのである。しかし、勇者は大抵そのことを知らない時の方が多い。

 

加えて、勇者や冒険者に力を借りるというこの状況は王国にとって、経済的な理由で美味しくないので極力金の消費は避けたいのだ。故に、そのことは黙ることにした。

 

「それじゃあ、準備が出来次第俺に声をかけてくれ勇者!頼りにしてるぜ」

 

そして、各自散会しダンジョン攻略のための準備に取り掛かったのであった。

 

そして、一時間後。

 

準備を終え、バルハート、シンヤを含む15名のパーティが第四層百鬼将軍が居る階層へとやって来ていた。

 

「それじゃあ、開けるぞ」

 

リーダー格の男が確認を取ると、後ろにいる仲間全員が頷く。

 

そして重厚そうな扉を開けるとそこに居たのは、百鬼将軍一人であった。

 

先行した部隊が、怨嗟の塊と首切り侍を重点的に狙い倒したのであろう。情報によると取り巻きの鬼たちはすぐに蘇生するが、先の二匹は蘇生にかなりの時間が掛かるとわかっていた。

 

そんな事を考えていると、百鬼将軍が答えを求めない一方的な問いを、投げかけてきた。

 

「ふむ...お前達は他の奴らとは一線を画した力を持っているようだな」

 

玉座の横に立てかけられていた大剣を右手でゆっくりと持ち上げる。人間であれば両手でなければ持つこともできないであろう物がやすやすと持ち上げられる。

 

剣が持ち上げられ構えられたのと同時に百鬼将軍の後方から、四匹の鬼が出現した。そして、人間達の方も各々武器を構え戦闘態勢に入った。

 

武人気質なのか、全員が戦闘態勢に入るまでは全く動かなかったが、戦闘態勢に入ると大剣を振り上げ突撃してきた。

 

「人間共よ!覚悟しろ」

 

こうして、正真正銘王国軍最大戦力vs.百鬼将軍の戦いが始まったのである。

 

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