自殺願望の錬金術師が幻想入りするそうです。   作:クレシアン

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ギリギリ間に合った……
約4000文字、これはさすがに二話に分けた方が良かった気もします。

それはさておき、一章人里の英雄編、最終話となります。


失った物、これから得る物

 

「皆さん!避難してください‼︎

南東から敵襲、かなりの数です‼︎」

 

 

僕は叫ぶ。

 

阿求さんの協力もあってか避難は上手く進みそうだ。

 

 

(ならばする事は一つ。)

 

 

 

満員電車の如くうじゃうじゃと湧く牛鬼に矢を放つ。

 

 

「⁉︎」

 

「オオオオ‼︎」

 

しかし牛鬼は硬い手を盾にし矢を弾いた。

 

 

 

ルーカスはすかさず数本矢を放つが全て弾かれてしまう。

 

 

(こいつら…!仲間の死で学習している⁉︎しかし、どうやって‼︎⁉︎)

 

 

 

「弓ではもうダメだ、このままでは里に入られる。」

 

「了解!」

 

ルーカスは自身に聞かせ、南東へ向かう。

 

 

 

「まずいな…まだ避難が進んでいない。」

 

 

人が居なければアブソリュート=ゼロを使い敵全体を氷漬けにしてやるつもりだったけど…

 

 

「5等級錬金術、形状変化!」

 

白金製の斧を作り出す。

人里に入らせる訳にはいかない、全力で止めなければ。

 

 

 

「そらよっと‼︎」

 

 

「ぐがああああああ⁉︎」

 

 

僕は斧を振りかざし牛鬼を真っ二つにする。

こちとら筋肉を改造してんだ、矢と斧じゃあ違うのさ。

 

 

「「「オオオオオオオオオオオオ‼︎」」」

 

 

「さあさあ一緒に遊びましょうや。」

 

 

 

煩い怒号に答える様に僕は言った。

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

既に20〜30体は倒しただろうか。

 

 

 

 

「ぐっ…‼︎」

 

 

 

 

僕は斧で牛鬼をカチ割っていく。

しかし囲まれてしまってはこちらが不利、拳を貰った僕は吹っ飛んで行く。

 

 

 

残りの力量は52か…このままいけば問題ないかな?

それに、

 

 

 

「周囲の人間の避難が済んだ様だ。」

 

「おっ、いいね。

水に飲まれろ…メイルストロム‼︎」

 

 

 

牛鬼達に水を流す。

 

「全てを白紙と化せ」

 

 

妹紅さんに撃ったのとは違う、正真正銘の。

 

 

 

「アブソリュート=ゼロ‼︎」

 

 

 

絶対零度だ。

本来なら達する事のない、錬金術により分子と原子を静止させるか、磁場で電子のスピンを揃え、断熱消磁をするか。

僕は大抵前者を選ぶが今回は後者だ。

 

 

ケルビン数一兆分の1kの世界。

それだけじゃない。

今の状態は外部からの磁場を打ち消す完全反磁性、即ち超伝導状態。

 

 

 

僕は手提げから磁石を取り出し、放り投げる。

 

 

投げ出された磁石は地面に落ちる事無く浮遊する。

それが反磁性。さらに電磁石と同じで電流が流れる。

 

 

 

 

「全てを霹靂(へきれき)と化せ」

 

 

 

絶対零度では電気抵抗が0になる、即ち。

 

 

 

「レジスト・オブ=ゼロ‼︎」

 

 

氷漬けにされた牛鬼達の身体が粉々に砕ける。

 

これが錬金術だ。

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

僕は辺りを見渡し、ホッとする。

 

敵襲はここまでだろうか、なんとか職を全うす……

 

 

 

 

 

 

「いや、待て!人里の真反対側に侵入している、数は…200を越える‼︎」

 

 

「嘘だろ⁉︎まさか……陽動⁉︎」

 

 

見事に敵の策に引っかかってしまった。

真反対側、つまりは人々を避難させた場所。

とにかく急がなくては!

 

 

「ウロボロス!人体錬成だ‼︎」

 

 

僕は筋肉を錬成する。

人間は如何に速くてもチーターの様には走れない、それは筋肉がチーターの様に造られていないからだ。

これはあくまで動物性の話だが。

 

 

僕が変えるのはその筋肉の質。

つまりは人間でありながら、その限界を越える走りをする。

全力疾走。

 

 

 

 

「ぐっ……あ……」

 

 

もちろん無理に身体を変えれば負担が大きい、僕の脚は皮膚が崩れ、血が溢れる。

 

 

 

 

「はぁ……はぁ…」

 

 

 

なんとか僕は北西に着く、息が上がり、脚が崩れ、それでも這いずり街道に出た。

 

 

 

 

 

 

 

「あ…………」

 

 

 

 

唖然。

まさに僕にその言葉が似合うだろう。

 

 

 

死屍累々とした血で染まる街。

 

 

 

 

「ああ…………」

 

 

 

 

僕は足元の遺体に気づいた。

 

 

八百屋の…おっちゃん……?

 

 

 

 

「あ………ああああ………」

 

 

 

手が震える。

 

おっちゃんだけじゃない、他にもお世話になった人……教え子の生徒…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うああああああああああああああああああああああ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしてこうなった?

 

 

否、どうすればこうならなかった?

 

陽動に引っかからなければ?

 

もっと早く敵の狙いに気づいて、妹紅さんに、慧音さんに伝えていれば?

 

それ以前に未来視で見抜けた筈では?

 

敵を足止めだけにとどめて、冷静に動けていれば?

 

 

 

Alles wegen mir(全部僕の所為だ)……WasistderAlchimist.WasisteinHeld.WasistdieZukunft(何が錬金術師だ何が英雄だ何が未来だ‼︎)

 

 

 

 

僕は肘の裏にナイフにした鉄片を突き刺す。

 

 

 

 

 

Nie verzeihen(絶対に許さねえ)………」

 

 

 

こいつらだけは……

 

 

 

Konvertierung-Fähigkeit(変換能力)

 

 

 

「オオオオオオオオオオオオ⁉︎」

 

 

肘から溢れでる瘴気が周囲の牛鬼と僕を包む。

 

 

 

 

 

 

 

 

Eingebettet in ein Meer der Gefühle(感情の海に沈め)

 

 

 

俺が殺す‼︎

 

 

 

 

 

 

「ロスト‼︎‼︎オブ‼︎=ソウル‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「なんだこれは……」

 

 

 

 

 

藤原妹紅は人里から発せられた謎の気配に身震いし、即座に人里へ向かう。

 

 

 

「ルーカス⁉︎」

 

 

 

大量の牛鬼や人々の死体と共に倒れるルーカスを起こす。

どうやらまだ生きている様だ。

 

 

 

 

「どうしたんだ⁉︎一体何が起きた⁉︎」

 

 

 

「あ……ああ………」

 

 

 

ルーカスは口をぱくぱくと動かすが掠れた声しか出ない。

 

喉が焼け、全身の体温も考えられない程高い。

 

 

 

 

(どうして喉が再生しない?)

 

 

私はルーカスの肘に刺さるナイフを取り除く。

 

 

5。

確かに考えられない程下がってはいるが本人は特に支障のある数字ではないと語っていた。

 

 

「‼︎」

 

 

 

ルーカスが右指を動かし血で地面に文字を書く。

 

 

<変換能力による代償です、水をください。>

 

 

 

「あ、ああわかった。」

 

 

 

こういう時でも器用さを見せるものだと頭の端で考えながらも私は水を汲みに行った。

 

 

 

水を受け取るとルーカスは全身に水を掛け、錬金術で身体を凍らせていく。

 

 

大分落ち着いてきた様だ。

 

 

 

「教えてくれないか、一体全体人里とルーカスに何が起きたんだ?」

 

 

 

 

ルーカスは今まで見せた事も無い暗い顔をし、指を進める。

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

妹紅さんに全ての事を伝えた。

 

人里が襲われた事。

迎撃したが一部の人が死んでしまった事。

僕が禁忌に等しい変換能力を使用した事。

 

 

 

 

 

 

 

伝えている途中、僕の頬に涙が流れる。

 

妹紅さんが驚いた顔で僕を見る。

 

 

「っ……‼︎」

 

 

 

情けなく、ポツポツと、雨の様に。

 

 

 

 

「…………っ……‼︎

…………っ‼︎」

 

 

 

 

本当なら泣き叫びたかった。

無様な実態がこの様な事態を招き入れた。

 

 

 

涙が止まらない。

 

だめだ、負の感情を出しては僕の命に関わる。

 

 

だけれども、だけれども。

涙が止まらない。

 

 

 

兄ちゃんならこの悲しみを力にできる、

姉ちゃんならこの怒りを力にできる。

 

 

「っ〜〜〜〜‼︎」

 

 

 

けど僕は、

あまりにも脆い。

 

 

 

 

「⁉︎」

 

 

 

 

突然僕を抱き寄せる妹紅さんに驚き、涙で湿る目を見開く。

 

 

「気分は落ち着いたか?」

 

 

 

一体何を言って…

 

 

 

「…よくやった、よく頑張った。

落ち着くまではこうしてやるから。」

 

「っ‼︎‼︎」

 

 

 

 

だめだ、妹紅さんにはやっぱり敵わないや。

 

 

 

それでも僕の気分は落ち着く事なく、意識が徐々に薄れていった。

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

翌日、僕は自分の家で目を覚ました。

 

どうやら妹紅さんが送り届けてくれたらしい。

 

 

「………」

 

 

やはり声は出ない。

出せない事もないが喉がものすごい痛みに襲われる。

 

 

 

……覚悟は決めた。

今日はそれを皆に伝える。

 

 

 

 

 

 

 

「ルーカスか?おはよう。」

 

 

 

<おはようございます。>

 

 

慧音さんに挨拶をする。

僕は声が出ないので用意した数枚の髪と鉛筆で伝える。

 

 

「「…………………」」

 

 

 

 

2人に長い沈黙。

 

恐れるな、怖がるな、逃げるな。

自分に言い聞かせ、

僕は頭を下げようとした。

 

 

しかし、

 

 

 

「謝るな。」

 

「‼︎」

 

 

「君1人の責任にするつもりは毛頭無い、だから頼む、謝らないでくれ。」

 

 

 

「………」

 

 

 

僕は無言で頷く。

 

 

 

さて本件だ。

僕は慧音さんに伝える。

 

 

「そうか……修行か……君がいなくなると此処も寂しくなるな。」

 

 

<僕は弱い、皆を守れる強さが欲しい。>

 

 

「わかっている、引き止めはしない。

他の皆にも挨拶していきなさい。」

 

 

 

 

慧音さんは昨日の件を上手く収め、広めてくれた様だ。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「そうですか……」

 

 

 

僕は阿求さんに避難を補助して頂いたお礼と人里を抜ける事を伝えた。

 

 

<一つ頼みがあります。>

 

 

 

「?なんですか。」

 

 

<僕を幻想郷縁起に載せてください。>

 

 

「‼︎」

 

 

<ただし、今回の件の事もしっかりとお願いします。

誰がどう許しても僕は逃れられるとは思ってません。>

 

 

 

「……わかりました。

しっかりと書かせてもらいますね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後ほど聞いた話によると僕はこう書かれていたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

人里の英雄

ルーカス・ローゼンベルグ

 

 

危険度 極高

人間友好度 極高

 

主な活動場所 不明

 

瞬時に大地を凍らせ、迅雷を操り、魂をも消滅させる特殊能力を持つ。

彼は自身の罪を滅ぼす為、大切な物を守る為に立ち止まる事はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

これはルーカスの名が広がり、激戦地に入る出来事だった。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

最後に妹紅さんの元へ。

 

既に知っていそうだけど本件を伝える。

 

 

 

「本当に……行ってしまうのか?

もう少しゆっくりしても…」

 

 

 

不安そうな顔でこちらを見るが、僕はその顔を騙って見返す。

 

妹紅さんになら、わかる筈だ。

 

 

「…………私にとって、ほんの一瞬でしかない、たかが一週間の事なのにルーカスとはえらく昔にあった気がするな。」

 

 

<いろいろな事があったからね。

初めて会った時はいきなり妹紅さんと衝突しちゃったし。>

 

 

「寂しくなるなあ、慧音の気持ちもわかる。」

 

 

<またすぐに会えるよ、それこそ一瞬で。>

 

 

「……そうだな。

行ってこい、次こそ本気で勝負だ。」

 

 

 

 

<ぜ、善処します。>

 

 

 

 

 

僕は竹林から人里へと足を進める。

 

もう後戻りはできない、自分の足で、目で幻想郷を感じるんだ。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

ふと後ろを見ると、妹紅さんも後ろを向き歩き出している。

一瞬ではあるがまだ浮かない顔をしていた。

 

 

妹紅さんには色々とお世話になってしまった。

僕としては久しぶりに『大切な人』なるのかもしれない。

 

 

 

 

僕は痛む喉を抑え付け、

全力で声を出す。

 

 

 

 

 

 

「ありがと……な……妹紅(・・)

 

 

 

妹紅が驚いた顔をする姿の未来を見ながら僕は再び歩き出した。

 

 

 

 

 




かなり急ぎ目の展開にしてしまった感が半端ないです…
実際章のわりに人里の滞在期間も短めでしたね。

次回は一章の反省、技の考察をします!
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