SAO『罪と罰』 〜何故彼は力を手にしながら表舞台に現れないのか?〜 作:トアール凡人
現在彼らは第四層にどのプレイヤーよりも、いち早くたどり着いていた。本来は真っ先に主街区に行って4層解放をしなければならないのだが、そんなことは彼らには知ったことではない。きっと、さっきの攻略組の誰かがその役割は果たしてくれるだろう。そもそも、彼らにはボス攻略をしたという自覚はないしこれからもそんなことはする予定もないのだ。
レットは主街区に着いて手頃な宿屋をみつけるとそこの部屋を直ちに取り今回の戦利品の確認をすることにした。もし、この中に手がかりがなければこれから彼らは無名のままこの世界を生きていかねばならないのだ。自然と緊張が走った。
「よし、ハニー出してくれ」
「りょーーかい!」
ハニーがアイテムストレージからボス攻略の景品を選択しオブジェクト化すると
二つの指輪が現れた。一つは金色で太陽のごとくもう一つはやや黒みを帯びた黄昏時のような色だ。さながら月のようであった。
「これがそうなのか。何か手がかりになるのか?」
「そうだね〜、アイテムの説明では
第三層のボスがかつてある部族から奪い取った秘宝。攻撃、防御、スピードで
一定の向上効果があるって書いてあるよ
案外しょぼいね〜。よくわかんない紋章があるし……んー?」
「どうした?」
「なーんかコレ見たことあるような……」
どうやら、指輪に刻み込まれた模様が気になるらしい。すると「もしかして」とつぶやいたハニーは、アイテムストレージからあのカンテラをとりだした。
「この前、あの小人さんからくすねた
これに……」
オブジェクト化されたカンテラの底をみると、驚くなかれ指輪と同じ模様が描かれているのだ。
「……灯台下暗しとはこのことをいうんだな。」
「オネイサン、びっくりだ〜」
そのセリフなんかのパクリなのか?
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「おお、それは我らホビット族の秘宝『ツインリング』じゃ。おぬしら、あの大怪物(三層のボス)を倒したのじゃな」
彼らはホビット族の族長に例の指輪を見せるとあたりだったらしい。イベントが発生した。
「おじいちゃん、私たち実はねえ……」
「言わんでもわかるぞい。
洞窟で女にあったのじゃろう」
ビンゴ!翁はさらに続けた。
「あれは、わしのムスメでのお。我らホビットは人族よりもはるかに長寿であるから、いつのことだったかは忘れてしまった」
翁のながーーい話を要約すると翁のムスメさんのイリナはかつて一族の禁忌を犯してしまった。それは集落を離れ、他の部族と結ばれること、イリナは人族と駆け落ちをしたらしい。けれども、数ヶ月後、イリナは集落に連れ戻されたらしい。その時彼女はずっとこう言い続けたらしい『私はイリナではありません、その名はもう捨てました』とそれからして、思い人に二度とあえなくなった彼女は徐々に衰弱し、ホビットにしては早すぎる生涯を閉じた。一族の中でも際立って美人で気立てが良かった彼女の変貌にホビットたちは悲しみ憐れみ、やがて彼女が変わってしまった元凶ともいえる人族を忌み嫌うようになったそうだ。
「わしは本当は知っておった。人族の男がすばらしい奴であったと。彼はムスメの死後にこの集落に続く洞窟で瀕死の状態で発見されたのじゃ。その後、ひとことをわしに言い残して消えてしまった。
わしらは一族の掟にとらわれ過ぎたのかもしれぬ。若い命を二つも失ってしまったのじゃから。」
なんだか、すごく重い話でさすがのハニーも今回ばかりはうつむいて真剣に話を聞いている。
「おぬしらに、人族の男の遺言を伝えよう。これであの子も天の神の御所への行くことができるじゃろ。彼女の名前は・・・」
こうして、名もなきユーレイの本当の名前を知った。俺たちは直ちに女のところにいった。翁の話を聞いて、自然と足取りが早くなったのは気のせいだろうか。
『わたしの……名前……ない……あなたたちの……奪った……だけど……わたしの……わからない……』
「安心しろ。俺たちがちゃんとわかっててるぞ○○○!」
『それが……なつかしい……いま……行く……待ってて』
突然、暗い洞窟に光があふれだした。ユーレイが徐々に光のカケラになって消えていく。
『ありがとう、おとうさま』
一筋の涙がこぼれるとそれが彼らに向かっていく。女は消えてしまった。
「ん〜、ようやく返してもらったね〜」
俺たちもようやくプレイヤーネームが正常に表示されるようになったのだった。
「なんやかんやでリングも手に入ったし〜」
ハニーの指には漆黒のリングがはめられている。キラリと紋章の部分が光っている。彼の左手にもごがね色のリングが彼女と対照的にある。かくして、長い長い小人たちとの因縁が終わりを告げたのだった。
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「やれやれ、人を呼び出すのはいいにしろ、また洞窟かよ」
レットは今、とある層の洞窟に向かっていた。というのも、ハニーがこんな書き置きを残していなくなっていたからだ
『ついに、ギルド結成だよ〜結成会をここでやるからはやく来てね〜』で、その会場が趣味の悪い暗がりというのも、俺へのあてつけだろうか。なんにせよ、ギルド結成に奔走していた彼女が数人ながら同志を見つけたらしい。どんなやつなのか期待と不安を抱きながら、レットは歩いていた。
ふつう、初めての人との出会いは予想だにしないことが起きるものだ。相手が、こわもてであっても話してみると案外いいやつだったり、逆に、おとなしそうなやつが意外なところで活躍したりと初見の印象と本質との間に齟齬があることが多いだろう。だが、 ハニーの場合は違うとレットは感じていた。彼女は最初から、おちゃらけていたし自分の好きなこと面白いことを人のことも考えずにやりだして、苦労が絶えないやつだった。彼自信もこんなに長く同伴するとは思っていなかったが、なぜか、ずっと一緒にいてしまった。きっとなんやかんやいって
居心地がよかったのだろう。天真爛漫でも、彼女が次に何を言いだして、どんなことが起きるのかが楽しみになっていったのだ。
だから、彼は決して予想もしなかったのだ。この後、彼に起こることも。そして、この先の彼と彼女の運命も。
次回でひとまず一区切りです
いつまで続くか毎日更新……
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