SAO『罪と罰』 〜何故彼は力を手にしながら表舞台に現れないのか?〜   作:トアール凡人

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幕間①〜二人の盟約〜

 

 

アルゴは困惑していた。あの2人との連絡が全く取れないのだ。情報屋であるだけあって、その気になればアインクラッド中から2人の所在を突き詰めることもできなくはないはずなのだが、そもそも、世間での知名度がそこまで高くはないため、どうしても情報が入ってこない。片方の少女に関しては一方的に連絡網が遮断されている。これはオカシイなと気づいたものの、なんとなく、大丈夫だろうと放置していたが、いかんせん

もう一週間以上連絡がとれないというのは、今までにないことだったので、おのずと不安がつのってくる。

 

「レットにハーちゃんどこにいっちゃったんダ?」

 

はじまりの町にある生存者を示す銘板にも2人の名前はあるため、その点は心配ないがいったいどうしたというのだろうか。

 

コン、コンコンコン、コンコン

 

リズムよくアルゴの隠れ家の扉がノックされる。アルゴはもしやと思った。彼女は情報屋で生計を立てているためその分危険を冒すこともあり、どこに潜んでいるのかは全くつかめていないのだが、ある隠れ家としている。ところは特定の人物に教えていたのだ。目が鋭く苦労人の男性プレイヤーだけに。

アルゴは急いで扉の前に立ち、勢いよくドアを開けるとそこには確かにレットがいた。でも、その顔は蒼白でいつもの彼らしくなく、腕は震えていて、目は怯えるウサギのようであった。

 

「どうしたんだヨ!!」

 

「…来る。あいつが……はやく……助けてくれ……」

 

「誰かに追われてんのカ?ハーちゃんはどうしたんだヨ!!」

 

ハーちゃんという言葉を出すと彼はますます取り乱してしまった。その名前が彼にとっての最悪の記憶と結び付けられていることを知らないアルゴはおかしいと思いつつ、ひとまず彼を中に入れて落ち着くのを待つことにした。なんとか椅子に座った彼に、好物のハーブティーを出したが、いっこうに口をつけようとしない。アルゴはしばらく何も言わずにその様子を見ていたがカップから湯気がすっかり出なくなったくらいになると、ようやく彼はおもむろにカップに手をつけて冷めたお茶で喉を潤して、話をする決心がついたようであった。沈黙を破ったのはアルゴだった。

 

「この一週間なにがあったのか教えてくれるカ?」

 

アルゴの問いに首をたてに振って応じた。

 

「取り乱して情けない姿を見せたな……」

 

低く下がったトーンで口を開いた彼は

すべてを語った。あの日、起こったことを……

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

すべてを語り終えた彼は今まで内に秘めていたものをしゃべったことで、少し平静さを取り戻したように見えた。しかし、聴衆側のアルゴにとっては到底信じられらない、いや信じたくないような真実を語られて、戸惑っていた。

 

「じゃあ、ハーちゃんは本当に殺人ギルドを作っちゃったっていうのカ……」

 

この世界でも数少ない女性プレイヤーの

その中でもごく少数しかいないアルゴの女友達だったハニーことPOHの狂気に満ちた行動を受け入れられない。レットは悲痛そうな表情で語った。

 

「もしかしたら、俺のせいかもしれないんだ。あいつがこんなことをしだすなんて。一番近くにいたはずなのに、なにも気づけていなかった。笑えるだろ?戦闘でいくら優れた連携プレーができても、互いの腹の中は何一つわかってなかったんだ」

 

彼は、自分のことを軽蔑するかのような口調で言う。

 

「そんなことない!!アタシだって彼女のことを……」

 

思わず、普段の口調が崩れたことに彼が苦笑を浮かべる。アルゴははっと気づくときまりが悪くなったが、かまわず続ける。

 

「彼女はもしかしたら何か教えてくれていたかもしれない。自分がこれからしようとしていることを……それを理解しなかったオイラは……」

 

そうだ。アルゴはいつもこの二人がふざけあったり、連携して華麗な剣の舞をみせたり、仲良くしている光景が好きだったんだ。そんな彼らと一緒にいるときの楽しさは目を閉じずとも脳裏に焼きついている。

 

「だから、もしキミが罪の意識をもっているとしたら、オイラも同罪だ」

 

アルゴはまっすぐに彼の黒い瞳を見つめて言い放った。これは情報屋としての自分ではなく、友人への本心からの言葉だった。

 

「……アルゴ、お前がそういうのも分かる。だが、お前が罪の意識をもってどうなる?」

 

レットは険しい顔で問いかける。

 

「彼女を止めるんだヨ!」

 

アルゴはためらわずに宣言した。

彼の鋭い目が険しさを増していく。

 

「情報屋のお前に何ができる。相手は人を殺すことになんの躊躇も持たない奴らなんだぞ」

 

レットは攻め立てるような厳しい調子で

語ったが、一転して悲痛な表情になった。

 

「お前まで、危険に巻き込みたくない……」

 

アルゴはまっすぐに見つめた瞳を離すことなく席を立ち、彼の目の前に進み

 

「パアーーーーン」

 

自分でも気づかないうちに右手で彼のほほを平手打ちしていた。

彼女の目は獲物をとらえた勇敢な獅子のように座り込んでいる彼を見下ろしていた。

 

「バカなことを言うんじゃないよ‼︎」

 

彼は、ジワジワと熱を帯びてくる自分の中左ほほに手を添えたまま、目を丸くしている。

 

「キミひとりで何ができるんダ!ハーちゃんみたいな女の子1人満足に扱えないようなバカ野郎1人で、彼女を止められるのカ?キミの自己否定も自己反省なんか知らない、アタシのできることならなんだってする。だから、勝手に1人でカッコつけてんじゃないっ!」

 

アルゴは初めて人に対して怒りを爆発させたため、一通り言いたいことを言ってそのあとどうすればいいのかわからず、

手持ち無沙汰になってしまった。

すると、クスりと笑った彼は気まずそうにしているアルゴに優しく語りかける。

 

「もうすこし理性的だと思っていたが、まさか手を出されるとは思ってなかった。ハハハ……結局、お前のことも俺はわかってなかったんだな」

 

「情報屋のベールは何重にもなってるんダ。そう簡単にわからせてたまるカ、でも、もし知りたいならそれは料金しだいダ」

 

2人はなんとなく、笑い出してしまった。彼はジンジンするほっぺのことなんて忘れて、彼女はさっきまで殺すような勢いで怒っていたことを忘れてすっかり笑いこけてしまった。

 

「なあ、アルゴ」

 

「なんダ?」

 

「頼みがある」

 

彼の依頼に半ば驚きながらも聞き終えるとアルゴはニヤリとして答えた。

 

「料金は、後払いで十分だヨ」

 

こうして、2人の間で密約が交わされたのであった。その内容はゆくゆくわかることだろう。だが、これだけは言える。

レットとアルゴ、この二人はきっとこれから先、長い時間がかかっても互いを理解していくのだろう。本当の言葉でぶつかったもの通しの絆というものは不思議なことにより固くなる。アルゴはそんな意味でもニヤリとした表情で彼を見つめていたのであった。

 




次回から原作要素を絡めていきます
そしてシリカ登場!
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