SAO『罪と罰』 〜何故彼は力を手にしながら表舞台に現れないのか?〜   作:トアール凡人

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今回から視点をいろいろと変えていきます。



Second section 〜ソウグウ〜

 

あたしはビーステテイマーのシリカ!

周りからは《竜使いシリカ》なんて呼ばれてるけど、あたしの一番の友達ピナは相棒だよ。ピナと出会ってからもう1年経つけどあたしは中層でいろんなパーティに誘われては入ったり抜けたりを繰り返してるの。2週間前から入っているこのパーティで今日は35層の迷いの森で冒険に参加してるんだけどなんだか、さっきからある女性プレイヤーが不機嫌そうなんだなぁ。でも、そろそろ主街区に戻るみたいだし、いいかなって思っていた矢先

 

「帰還後のアイテム分配だけど、あんたはそのトカゲが回復してくれるから、ヒール結晶はいらないよね」

 

カチン、頭の中で何かが切れる音がした。

ふざけないでよ!ピナはあたしの相棒なのにそんな言い方おかしいよ。

 

「そういう、あなたこそろくに前面にでないで後ろをちょろちょろしてるだけじゃないですか」

 

一度出た言葉は頭の中の沸騰が収まるまで止まらなかった。リーダーの人がなだめようとしているけど、そんなの知ったことじゃないわ。頭に血が上ったのがわかる。

 

「アイテムなんかいりません。あなたとはもう二度と組みません。あたしを欲しいパーティは他にも山ほどあるんですからね!」

 

そういって、何かリーダーがあたしに言っている言葉も聞かずにあたしは気分を悪くしたままドンドンパーティと別れて進んだ。

 

けれど、しまったとは気付いた時は遅かった。この森は一定周期でエリアがランダムに入れ替わってしまう。そのため森の散策には必ず街で地図を購入しないといけない。もちろん、記憶とスピード勝負で森を抜け出すこともできるだろうけれど、あたしにはそれは不可能だった。

今もまたエリアが入れ替わって、もう途方に暮れてしまった。しかし、神様というものはシャワーのようにあたしを不幸に陥れていく。ピナがくるるるると、鳴くながら頬に頭をすりつけた。

ああ、神様もう自分を特別なんて思わないからどうか助けてください。

徐々に暗くなり足元の様子がわからなくなり、ますます不安が募ってきた。

すると、肩の上にいる相棒がきゅる!っと鳴いた、近くにモンスターがいるらしい。周りを見渡すと困ったことに三体のゴリラのようなモンスターが視界の前にいた。ここでは一番強い敵の出現に唇をかんだ。けれど安全マージンも十分にあり、レベルもこの猿人たちを相手にするには楽勝だった。あたしは短剣を取り出して、一番近くにいるゴリラに切りかかった。4度ほど斬りつけると、今度はもう一匹が攻撃してくるのでやむなく後方に退きながら、そいつにも短剣を浴びせた。だが、最初の猿人はやはり霊長類特有の知恵があるのだろう。おもむろに壺のようなものをとりだして、それを飲み出した。すると体力がみるみる回復していく、それでもひるまずに攻撃を与えていくが、一方に気を取られていると休んでいるゴリラは傍らで回復をしてしまう。このままではらちがあかない。回復ポーションももう切れてしまった。

どうしよう……

そんな隙をすかさずゴリラは見逃がすことなく攻撃をしてくる。あたしは避けきれずに攻撃をくらった。

あたしの体力は三割削られていた。いくらピナのヒールがあってもこのままではじり貧だ。そう思うといっそう動揺してしまいあたしは何もできずに立ちすくんでしまった。だが、無慈悲な猿人は棍棒を振りかざしてくる。

終わりだ。あたしは恐怖から反射的に目を閉じてしまう。空中で小さな影が動いた。鈍い衝撃の音がする。ピナはあたしをかばって棍棒をくらったのだ。

 

「きゅる……」

 

力なく、つぶらな瞳でピナはあたしを見つめる。

 

「そんな、ピナっ」

 

直後に、目の前に青い結晶がキラキラと輝きだした。結晶は砕け散ると長い尾羽が一枚舞い上がりあたしの前に落ちた。

「そんな……ピナっピナっ」

 

相棒の死を受け入れられないそんな!

ピナはいつでもあたしのそばにいてくれたのに。どんな時もあたしのいちばん大切な友達なのに。嫌だよなんでよ。

猿人が棍棒を振りかざす。今度は間違いなくあたしに当てるだろう。なんとか退避して逃げ惑うがジリジリと攻撃を少しずつくらい、大木の根元に追い詰められた。猿人の赤い目と森の薄暗さがあたしの絶望の感情をさらにかきたてていく。

 

「ピナ、ごめんね……」

 

覚悟を決めて、座り込んでしまったあたしは敵の棍棒を見つめながら一筋の涙をこぼした。ピナ、ごめんねあたしが不甲斐ないせいで……

だが、突然猿人たちの様子がおかしくなった。と思うと次々に青いポリゴンとかしていった。

いったい何?

青い光が完全に消え去り、森の暗闇と平穏が戻るとあたしの目の前に一人のプレイヤーが立っていた。背は高い、二本のレイピアのような長剣を両手で構えているその人は、灰色のフードを被り、落ち着いた雰囲気を醸し出している。けれど、顔の部分になにやら仮面をつけていて男の人だろうけれど、表情は全く分からなかった。

 

「……」

 

仮面の男は黙ってあたしの方を見つめている。おもむろに座り込んだ。

あたしから何か言ったほうがいいのだろう。

 

「ありがとうございます。おかげさまで命が助かりました」

 

仮面の下の表情の変化は読み取れない。すると相手も口を開いてくれた。

 

「……相棒の使い魔を助けられなかった。礼なんて言わないでくれ、申し訳ない」

 

「そんなことありません。あたしがバカだったんです。だから……ピナは……あたしを……」

 

いけない、知らない人の前で涙が抑えられない。嗚咽を堪えながらなんとか会話をつなごうとする。仮面の人は冷静な声色で言う。

 

「……その羽、彼の羽だね。アイテム名があるだろう」

 

あたしは顔を上げて、羽をみる。

《ピナの心》

そう呟くと彼はふむと言ってあたしに言葉を発した。

 

「47層の思い出の丘。そこのフィールドダンジョンに使い魔の蘇生アイテムがある」

 

あたしは耳を疑った。ピナが生き返る?目の前に光が見えたような気がした。

 

「だが、期限は3日だ。その羽を持って行って使い魔が助かるのは死後3日のうちだけだ」

 

今いる層の12上。あたしのレベルではとてもじゃないけど安全とはいえない。自然に期待が薄れていくのにつられて視線が落ちてしまう。すると、彼は大丈夫といった。

 

「今のキミのレベルでは難しい。だが、簡単なことだ。優秀な護衛を雇えばいい話だ」

 

「でも、そんな人を雇うようなアテもありません……」

 

「問題ない」

 

彼はゆっくりと仮面のをはずし、初めてその表情を見せてくれた。優しい見守るような顔だ。少し目元の鋭さがあるけれど、立ち居振る舞いと合致した大人っぽい雰囲気の男性だ。あたしといくつ違うのだろう。

 

「護衛なら俺がいる。もちろん料金はタダだ。レディから金を巻き上げるのは紳士の正道に反するからな」

 

あたしは驚いて口をあけてしまった。

まさか、こんなことを言ってくれるなんて思ってもいなかった。

 

「な、なんでそんなに、あたしに親切にしてくれるんですか?」

 

彼は少し視線を横にやると小さく呟いた。

 

「……相棒がいなくなる辛さは俺も知っている。そんなやつは見過ごせない」

 

あたしはハッとした。この人は何か過去に辛い別れをしたのだろう。あたしと同じビーストテイマーとしてか、それとももっと別の何か……

 

「それにな」

 

「それに?」

 

彼はニヤッとした。

 

「じゃじゃ馬ムスメを扱うのはあいにく慣れてるもんでね」

 

む?なんでそんなことを見抜いているのだろう。というかいきなり失礼なこと言ってきた!

 

「じゃ、じゃじゃ馬ではありません!あたしはそんなに子供じゃないんです」

 

「そうかな?俺の経験では君みたいな子は大半そうだったんだけど」

 

「どんな女の子と会ってきたんですか!

あたしはあたしです」

 

あたしはムーっとふくれっつらをする。

今まであたしに優しくしてくれた人はたくさんいるけれど、毒舌をはいてくる男の人なんていなかっただけに、なんともいえない感情がわいてきた。でも、なんでだろう、この人からは悪意はみられないのだ。

 

「調子を取り戻したみたいだな、よかったよ見込みがまちがってなくて」

 

わかった。この人はあたしで遊んでるんだ。だから、こんなに楽しそうなんだ。

 

「むーーー」

 

あたしはジトーとした冷たい目つきで彼を睨みつけた。

 

「うん、その方が自然だし。俺も扱いやすいな」

 

もうこれ以上の抵抗はやめた方がいいかもしれない。彼は顔つきを改めると立ち上がってあたしにこう言った。

 

「短い間だが、旅を共にする同士だ。

自己紹介が遅れたな。俺はアルトだ。

この仮面をつけているから、《仮面》と呼ばれることもあるがな」

 

《仮面》?何か聞いたことがあるような響きがしたが、記憶があいまいでいまいちピンとこなかった。あたしも立ち上がって返答をする。

 

「シリカです。アルトさん、ピナのために一緒に思い出の丘に連れてってください。お願いします」

 

ぺこりとお辞儀をすると彼は「思ったよりも小さい子なんだな」とかぼやいている。

 

「女の子に小さいとか言っちゃいけません!」

 

「ふつう、逆なんじゃないか?」

 

「気にしてる子もいるんです。あなたは紳士なのか無礼なのかよくわかりませんね。あたし以上にじゃじゃ馬なんじゃないですか?」

 

「それは初めて言われたな……まあいい」

 

彼は仮面を持っていない方の手を差し出してきた。あたしも慌てて右手を差し出して、握手をした。

 

「よろしく、頼むぞ《小さな竜使いさん》」

 

「小さなは余計です!」

 

こうして、あたしはこの不思議な男性と巡り合った。このときはまだこの先に起こることなんてわかんなかった。けれど

この人は決して悪い人ではない、それは出会ったこのときからわかっていたことだとあたしはここに宣言しておきたい。

 

 

 

 




シリカのしゃべり方が難しいですね。
可愛らしさを存分に出したいです

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