SAO『罪と罰』 〜何故彼は力を手にしながら表舞台に現れないのか?〜 作:トアール凡人
それからあたしたちは迷いの森を抜け出して主街区に戻ってきた。もうすっかり夜は更けていたので宿に泊まるプレイヤーで街は賑わいを見せていた。その一方でチラホラと見かけたことがあるようなプレイヤーと目があうと、
「シリカちゃん!今度は俺らのパーティーにはいんないか?いい狩場があるんだ」
あたしはいつもならそこでOKをするところであったが、笑顔を取り繕って
「ごめんなさい。今、この人とくんでいるので、また今度で」
また、今度は外国の人が日本人に言われたくない日本語第1位らしい。なぜなら日本人の今度は永久にこないからだ。
相手の男の人は残念そうな表情をしてトボトボと向こうに行ってしまった。
すると共同戦線を結んだ彼が少し驚いたような顔をしていた。ちなみに今の彼は仮面を外して繁華街に行けばどこかにいそうな風体でいる。
「人気者なんだな」
「ええ、よくお声をかけてもらいます。でもあたしがいつも調子に乗って大きな態度をとったりしていたからピナは……」
ピナのことを考えるとどうしても心が落ち込んでしまう。すると相手の男性は落ち込んでいるあたしを気遣ってくれたのだろう
「君の友達は俺が責任をもって生き返らせる。これは世界のすべての神様に誓っていえるぞ、なんなら仏様も追加してもいい。だから、安心しろ。ピナはちゃんと帰ってくる」
なんだか、柄にもないことを言ってるからだろう、少し顔を赤くしている。恥ずかしいなら言わなきゃいいのに。でもあたしは少し胸がほっこりした気がした。
「似合ってませんよそのセリフ」
「似合ってなくてもいいんだよ、言わないより言った方がいいにきまってる」
「でも、ありがとうございます」
「どういたしまして……といっておくかな」
本当になんでイマイチとっかかりにくい人なのだろう。もしかしてあたしのこと子供って思ってるからだろうな。たしかに背もあり部位もまだ大きくないけど。
「あれれ〜森を抜け出したんだー。てっきり今頃森の中で泣いてるんだと思ってたわ」
今日は本当についてない。前からした声にイヤイヤ顔を向けるとあの女の人がいた。
「おや?あのトカゲいないじゃない」
本当はわかっているのにわざと聞いてきている。あたしは頭にカーッと血がのぼるのを抑えて言った。
「ピナは死にました。でも生き返らせます」
「ふーん《思い出の丘》に行くんだ。でもあんたのレベルで行けるの?」
「それは……この方と一緒に」
あたしは耐えられなくなって彼の方に目を向けた。彼は「めんどくさいなあ」って顔をしていた。うう、助け舟がない。
「あんたも、その子にたらしこまれたって口?へえーなかなかイケてるお兄さんじゃない。ねぇそんなガキとじゃくてあたしとくまない?ガキのお守りは大変でしょう」
どうしてこう次から次へとひどいことを言えるのだろう。あたしはいつもなら言い返したところだが、なんだかこの女の人に対しては言葉が詰まってしまった。
すると、今までずっと黙っていた彼が口を開いた。
「あのさあ、『おばさん』。年をとると口の油がよく滑ってよくしゃべるのはわかるけどさぁ。いい加減飽きたんだけど」
突然でてきた暴言に『おばさん』は一瞬狼狽したがすぐに顔を赤くして険しい表情になった。
「誰がおばさんですって?ふざけんじゃないわよこのガキ」
対する『このガキ』も話の加速度がついてしまった
「誰が見てもおばさんだろう。明らかに傷心な少女に対してあからさまな意地悪な発言の数々。まさにシンデレラに出てくる義母、白雪姫の美貌に嫉妬する王妃そのものじゃないか。アインクラッド100人に聞いてみなよ。100人いたら99人は残念な年増だと答えるさ。あとの1人?よかったじゃないか!その1人は熟女好みらしいぞ。世の中十人十色でよかったな、義母でも王妃でもハッピーエンドがあるだけラッキーだ」
まさかここまでのことをスラスラ言えるなんて。あたしは目の前に繰り広げられる独壇場に唖然としてしまった。
「くっ……覚えてなよクソガキどもが」
そういって逃げるように後を去った女性を尻目に彼は不満足そうな顔をしていた。
「まだ、いくらでも言えたのになあ」
「ドSですか!あなたは」
「まあ、これで少しはスッキリしただろう?友達のことを馬鹿にされたら腹がたつもんだ」
彼は子供みたいな笑顔でいた。たしかに、少しは胸のしこりが取れたかもしれない。ん?そういえば
「さっきの話の中のシンデレラと白雪姫って……」
「図に乗るなよじゃじゃ馬娘」
「ひどいです!」
この短い間でまた再確認できたこと。それはアルトさんは人をいじるどころか、もてあそぶのが趣味のようだということ。特に、あたしで遊ぶ時はいつもいたずらっ子みたいにニコニコしてるということだ。
「しかし、夜も遅いな。腹が減った」
あっ、そういえば
「アルトさんはこれからどうされるんですか?」
「とりあえず飯を食って適当に宿を探すかな?明日の朝一で出れば十分蘇生にも間に合うだろうし、今日はグッスリ寝て英気を養えばいい」
ということは
「あの、よろしければ宿と食事をご一緒しても……」
「構わないぞ。明日の予定も確認したいし、一緒の方が楽だろう」
そうか〜よかった。ってあれ?なんであたしちょっとほっとしてるの?というか、一緒にってもしかして部屋を……
「部屋は別だぞ、もちろん」
「な、な、なんでわかるんですか」
すると彼はニヤニヤした顔をしだした。
しまったつい漏らしてしまった
「女の子も男の子と変わらないんだな〜」
「ち、ちがいますー!!」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ふーー。今日はいろいろあったなー」
あの後、NPCレストランで外食したあたしたちは中の上くらいの宿屋で一夜を明かすことにし、今ようやく1人になったあたしはベッドに仰向けになっていた。
「いつもは足下にピナがいたのにな」
ベッドに寝転がるときまってあたしの右の太ももを枕にしていたときの温もりが感じられないことにどこか寂しさを感じていた。
「うんうん、ダメ。明日きっとピナを生き返らせるんだから」
彼は今、部屋で何をしているのだろう。初対面のそれも男の人なのにこんなにお世話を焼いてもらうなんて、あたし図々しいのかな?夕食と宿泊費もいつの間にかあたしの分払ってくれていたし。なんかこれじゃあ本当に子守されているみたい。明日はもっとあたしの良いところ見せられるかな?
「コンコン」
そんなことを考えているとノックの音が聞こえてきた。
「シリカ、夜分遅くにすまない。明日の作戦を伝えたいんだが」
「はーーい、今開けます」
あたしはベッドから勢いよく起き上がると扉を開けるためにドアの前に立った。
そのとき自分の格好に気づいた。装備を外して、上はスポーツブラで下はパンツという姿であの人の前に出てしまったらもう恥ずかしくて二度と顔を見れなくなってしまう!
「あ、あわわわ。ちょっと待ってください!!」
「あ?アーそうかそうかはやく着替えてくれ」
「だからなんでわかるんですか!」
あたしはホームズもビックリするほどの勘の良さにツッコミをいれながら急いで装備画面をあけて普段着に着替えた。
そして、ようやくドアを開けると彼が目の前に立っていた。
「お待たせしました!」
「いや、手間を取らせたな。おじゃまする」
彼はベッドのそばにある小さな机に小さな小箱を取り出して置いた。箱の中には小さな水晶玉があり、深い紫色のガラスに部屋の明かりが反射していた。
「きれい……何ですかこれは?」
「《ミラージュスフィア》っていう名前でな。まあ見てみな」
彼が指先で水晶玉をクリックしていくと瞬く間に水晶自身が青い光を放ち大きな円形のホログラフィックが現れた。
「これが47層の概形だ、初見でもわかりやすいだろ」
あたしは夢中で珍しい半透明の地図を覗き込んだ。どこからどこまでとても精巧で小さな世界を眺めている巨人になったような気がした。彼はそんなあたしの姿に笑みを浮かべながら説明を続けた。丁寧なしゃべりでとてもわかりやすく、時々分かっているかを確認してくれるのでまるで先生みたいだ。
「それで、この道を行けば目的地の思い出の丘だ……」
説明が終わりに入ろうとしたとき急にしゃべりが中断された。
「アルトさん?」
すると彼は指を唇にあててドアの方をじっと睨みつけていた。
そして、稲妻のような速さでドアまでかけていきバタンと扉を開け放った。
離れたところでどたどたと走る音がする
「ふむ。どうやら小鼠に盗み聞きされていたみたいだな」
彼は悔しそうな顔をしてあたりを伺い、静かにドアを閉めた。
「どうして盗み聞きなんかする人が?」
「世の中盗み聞きするやつなんて2通りだけだ。一つは悪趣味なやつ、もう一つは自分の利益のために情報を得ようとするやつだ」
じゃあ、もしかしたら何か妨害をされるのかもしれないのだろうか。でも、そんなことされたらピナが……
「心配するな、鼠に噛まれる猫はいるだろうが、獅子がネズミに噛まれても動じることはないさ」
それは自分がライオンと言いたいのだろうか
「中途半端になってしまったからな。また奴らがくるかもしれないし、俺の部屋で続きの話をしよう」
彼の部屋に移動すると
彼はベッドに腰を下ろしてあたしも横に腰掛けて彼の話を聞いた。
一通り終わるとあたしはやっぱり不安になってきてしまった。
「あたし、足手まといじゃないでしょうか」
「何を言っている。君が行かなきゃ何も始まらないよ。友達思いの主人に加えて優秀なサーバントがいれば万事心配などいらない」
「でも、さっきの立ち聞きも気になりますし……」
そう言うと、彼は少し笑顔を見せて
「そのうち、解るよ。ちょっとメーセージを打つから待っていてくれ」
そうして、ウインドウを開きあたしからは見えなかったが彼は誰かにあてての伝言をホロキーボードで打ち込んでいく。
「これはまたやつにつっこまれそうだな……」なんて独り言を言いながらキーを叩く姿を見ると現実世界でパソコンに向かっていつも家で遅くまで仕事をしていた父親の姿に重なってなんだか暖かいものに包み込まれたような感じがした。
その姿を見ているとだんだんまぶたが重く感じられてきた。もうあたしはすっかり不安と恐れの感情が消えていて、徐々に目を閉じていったのであった。
微妙に原作とアニメの違いがあるので
読み込んだり観て確認するのが面白かったです。
ストックが切れてきました。
そろそろ更新が遅くなるか?
感想と評価お待ちしています。