SAO『罪と罰』 〜何故彼は力を手にしながら表舞台に現れないのか?〜   作:トアール凡人

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Second section④〜ジンモン〜

あたしは目の前に繰り広げられている光景が理解できなかった。アルトさんが犯罪者処刑人?《仮面》?ラフィンコフィン?どれもかれも聞いたことがあるようでよくわからない言葉にあたしは頭の整理がつかなかった。すると、ロザリアが我に返った。

 

「ふ、ふざけんじゃないよ。ガキごときになんて……っち」

 

ロザリアは形勢の圧倒的不利さに逃亡を図ろうと青い結晶石《転移結晶》を取り出そうとするが、それを見逃すはずがなく、《仮面》は何か鋭い針を彼女に放った。バタリと地面に倒れこむロザリアは結晶石を手から落としてしまい、それを取ろうとするが身体がまったく動かない。

 

「くっ……何をしたの……」

 

「前線でつい最近手に入った毒針だ。一瞬で身体が麻痺し、しばらくは動けないぞ。チョロチョロと往生際がわるいおばさんだ」

 

《仮面》は動けなくなったロザリアの元へゆっくりと歩いて行き再び問いかける。

 

「さて、こうなった以上は強行手段も取るしかないな。さっさと《ラフィンコフィン》の情報を吐け」

 

ロザリアそれでも、口を開かずそっぽを向く。

 

「ほう、残念なことだ」

 

彼はアイテムストレージから短剣を取り出すとそれを女の左手に勢いよく刺した。

 

「ヒッ!!」

 

体力が1割ほど削られる。どうやら加減をしてダメージを与えているらしい。彼のカーソルはオレンジになった。

 

「ジワジワと死の恐怖を味わいながら死ぬなんてめったにないだろう?」

 

彼はそう言うとまた取り出した短剣を今度はロザリアの肩に刺した。ロザリアは顔面蒼白になっている。体力はまた1割減っている。

 

「おい、やめてくれ……殺すならひと思いに殺しておくれよ」

 

「ほう、自分が楽に死ねるなんて思ってるなんて大層えらいもんだな……立場をわきまえろシロアリが」

 

今度は急所の胸に勢いよくナイフを刺す。体力は一気に残り20%まで削られた。あと2、3回続けば完全に0になるだろう。あたしはすっかり腰を抜かしていて何もできずにに傍観するしかなかった。このままでは彼はロザリアを殺してしまう。いやだ、そんなのいやだ。この人はアルトさんはそんな人になって欲しくない!

 

「アルトさ……」

 

あたしの声が彼の声でかき消される。

 

「選択肢は2つだ。このまま最高の恐怖を味わいながら死ぬか、ラフコフのことを吐いて牢獄にぶちこまれるかだ。さっさと決めろ!」

 

すると、ロザリアは悲痛な表情で懇願した。

 

「わ、わかった。わかったから知ってることは言う!だから、助けて、こ、殺さないでおくれ……‼︎」

 

すると彼は振りかざした短剣の動きを止めてそれをしまった。

 

「はじめからそうしろ。手間とらせやがって」

 

ロザリアは未だに毒によって動けない彼はそのままの体制で尋問を始めた。

 

「お前らはラフコフと繋がりがあるのか?」

 

「な、ない。あたしらみたいなチンケな奴らとあいつらなんて月とすっぽん……奴らはあたしらみたいのに裏のルートを使って下働きを要求するんだ……あたしらはそれに従ったりするがそんなに多くない今まで1度か2度あっただけだ」

 

「ほう、だがそれは知ってるなあ。では、質問を変えよう。ラフコフの頭のことで何かわかるか?」

 

「わ、わかんないよ。そんなの、手下のことはよく情報が流れているけど、あんな悪魔みたいな奴らの親玉なんて……もし、なんか知ったらあたしらだって殺される!」

 

あたしはようやく思い出した。ラフコフすなわちラフィンコフィンはこの世界で最も恐れられている殺人ギルドだ。中層にはめったに現れないため噂でしかしらなかったけど、上層の特に攻略組のメンバーが襲われたことは聞いたことがある。今までに被害にあった人数は両指じゃ足りないくらいだ。

 

「……い、いや、一つだけ知ってるだけど、たいしてことないことよ」

 

彼は黙ったままだ。「言え」ということなのだろう。

 

「ラフコフのリーダーは必ず『殺しの現場に立ち会う』んだ。自分が殺るときはほとんどないらしいけど……」

 

「……最後に聞こう。奴らのアジトはどこだ」

 

「わからない……」

 

彼は黙ったまま何かを考え込んでいる。

その場に沈黙が走る。すると、彼は顔を上げてロザリアの方を向いた。

 

「……その様子だとこれ以上は聞き出すことはできそうもないな。さて、そろそろ毒も切れる頃だし、最後の一仕事をするかな」

 

《仮面》は短剣ではなく、彼が使用する長剣を取り出した。それをゆっくりとロザリアの鼻先に近づける。

 

「ま、まっておくれ。あたしは全部しゃべっただろ!殺さないでくれるはずだろ」

 

「ほお、そんなこと言ったかな」

 

あたしは経験したことのないような衝撃が体に走った。彼が話しているのは向こう側なのに、あたしまで恐怖で身体の震えが出てきたのだ。

 

「ふ、ふざけるんじゃないわよ。あんた嘘ついたのか。こ、この人でなし……!」

 

彼は冷淡な声で一瞥した。

 

「……今まで何人のプレイヤーがお前に同じ感情をもったんだろうな。思い知れ、信じたものを裏切られたときの絶望と苦痛……さあ終わりにしてやるよ」

 

「や、やっ……やめて、お願いしますお願いします……いやだ、死にたくない……!!」

 

《仮面》はロザリアの必死の嘆願に一切耳を貸さず剣を振りかざす、動きの取れないロザリアはジタバタと地面をもがいて懇願の目で訴える。だが、仮面の下の彼の表情は読めない。いけない……ダメだ、そんなの!

 

「アルトさん、やめてください‼︎」

 

あたしの叫び声が響くが、彼の動きは止まることがなかった。あたしは剣が振り下ろされる。ぐっと目を閉じてしまう。

不気味なほどの沈黙が花畑に漂う。

あたしは恐る恐る目を薄く開けて見ると

アルトさんの剣は鋭くロザリアさんの顔もとのわずか左の地面に刺さっている。

ロザリアさんは口をパクパクと開けていて気を失っている。

アルトさんはというと剣を地面から引き抜いて、収める。

 

「ふん、お前なんかで剣を汚すなんてしないさ。この世界の終わりまで牢獄でもがき苦しめ」

 

彼は転移結晶を取り出すとロザリアを牢獄へと転送した。青い光が消えた後彼は仮面を外すと大きなため息をついた。

ようやく動けるようになったあたしは

彼の元へゆっくりと近づいていった。

 

「アルトさん……」

 

「悪かったなシリカ。嫌なもん見せちまって」

 

彼はあたしに背を向けたまま語る。あたしはようやく頭が働き始めた気がして、同時に湧き出してくる言葉の一つを選んだ。

 

「アルトさん、あなたは強いということは薄々分かっていました。でも、なんでわざわざ犯罪者ギルドなんかを……」

 

「強い?俺が?ふふ、それは嬉しいお世辞だ」

 

あたしは質問がはぐらかされたことにぐっと堪えながら言葉を絞り出す。

 

「アルトさん、こんな時にふざけないでください……あたし…あたし、本当に怖かったんです……」

 

すると、ようやくこちらに首を向けた彼は悲痛な顔をしている。

 

「本当にすまない、俺のせいで……」

「違います‼︎」

「………!?」

 

彼はあたしの叫び声に肩をビクッと上げる。

 

「あたしは……あなたが、アルトさんがどこか遠いところに行ってしまいそうで……もう届かないような気がして……それで…それで……」

 

こうゆうときに、あたしは涙と嗚咽で声がちゃんとだせない。堪え切れなくて声を出して泣いてしまいそうになったとき不意に彼があたしの小さな体を抱きしめた。あたしは彼の暖かく広い胸に顔をうずめる。あたしは泣き顔を見せたくなかった。だから、声をできるだけ絞って彼の胸で涙を流してしまう。しばらく経ってあたしは自分の気を高くもってなんとか涙を止めようとした。彼が優しく語りかける。

 

「レディを流すなんてバカな男だな俺は」

 

あたしは涙が止まった後も彼の胸に自分の身を任せた。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「お別れだシリカ」

 

突然切り出したのはアルトさんだった。

あたしは動揺しながらも問いかける。

 

「ど、どうしてですか?」

 

「俺はどうしてもやらなけねばならないことがある。それは自分の命をかけるほどの危険と引き換えにだ。もう俺と一緒にいては危ないんだ。だから、ここで君とはさよならだ」

 

「で、でもあたしはイヤです。まだ、ピナに、そうあたしの友達に会ってもらっていません!」

 

彼は苦笑を浮かべて、優しい表情をする。どうしてそんな顔をするんですか?

 

「それは……心残りだな。でも、大丈夫キミは1度失っても取り戻した。だから強いんだ。すごいんだよ、俺なんかよりも何倍にも強くなったんだ」

 

彼は懐から青い結晶石をとりだした。

 

「行かせませんよ」

 

あたしは彼の前に立ちふさがる。

彼はクスッとわらう。

 

「ヤレヤレ、じゃじゃ馬なところは変わりそうはないな」

 

彼は結晶石をあたしに向ける。なにをするというのだろう?

 

「これは、とあるボッタクリの情報屋に秘密裏に教えてもらって手に入れた特殊な転移結晶だよ。……第三者を指定して飛ばすことができるんだ」

 

そ、そんなの聞いたことがない。

 

「転移!」

 

あたしの周りに青い光が溢れる。

いけない、このままでは……

 

「安心しろ。27層の主街区行きだ。街に着いたらピナとやらによろしくな」

 

「アルトさ……!」

 

不意に視界が暗くなる。彼の顔はもう見えない。

 

気づいたらそこは見覚えのある街並みだった。あたしはまっすぐに宿屋に行き、1人部屋をとるとそこに駆け込んだ。

アイテムストレージから『ピナの心』と

奇跡の花を取り出す。二つを同時に操作すると暖かい光がベッドの上にまばやく。

 

「ピナ、おかえり。あたしね……まだ、あの人にお礼も入ってないんだ。ピナを助けてくれた恩人だよ。だから、会いたいなあの人にね……」

 

「きゅーーー!!」

 

ドラゴンの高い鳴き声が1人の少女しかいない部屋の中で響き渡った。

 

 




まだまだ、これからだ!

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