SAO『罪と罰』 〜何故彼は力を手にしながら表舞台に現れないのか?〜 作:トアール凡人
2000字程度しかありませんがご覧ください。
「ゴメンねシリカちゃん。なんか少しでも情報があったらすぐ伝えるからね」
「いえ、ご気遣いありがとうございます、では……」
あたしはその少し小太りの男性プレイヤーにぺこりとお辞儀をしてその人が見えなくなるのを待って小さなため息をついた。これで50人に聞いたことになるが有益なことは何も知れなかった。あたしは道を歩きながら、この一週間のこと、彼と別れてからの日を思い返す。
彼と別れ、そしてピナを生き返らせ、あたしは嬉しさと感激もつかの間、かれのことがどうしても気がかりだった。考えてみれば、たった2日しか一緒にいなかった初対面の男性に対して、こんな感情を抱くのはいささかおかしいのかもしれない。でも、彼はあたしにとってそして、ピナの恩人だ。ちゃんとした感謝の気持ちも告げられないまま、あたしはただ目の前の状況の波に飲み込まれて、何もできずにいた。これではダメだ。あたしはこれまで自分がさも子供ではないように振舞って、必死に自分のことを強く見せようとしてきていた。しかし、その結果、自分の生命の危機と何よりもピナを犠牲にしてしまった。幸いにもピナはもう一度帰ってきてくれたけど、結局あたしが変わらなければまた繰り返してしまう。どんなにうまく取り繕っていても根本から変わらなければいけない。だからこそあたしは彼にもう一度会いたいのだ。会って、自分の弱さを言葉にして、彼にすべての感謝の気持ちを伝えなければ、変われない。なぜなら、彼がいたからこそあたしは自分の弱さを実感したからだ。
そうして、あたしは彼の情報について調べることにした。アルトというプレイヤー個人よりもあたしはまず、《仮面》の名で情報を得ようとした。あたしは今までパーティを組んでいただいた人を中心に手当り次第の知り合いに《仮面》について聞き回った。読み通り、《仮面》について知っている人は大勢いた。ただ、それはどれもかれも、《仮面》が犯罪者ギルドを手当り次第に壊滅させていること、《仮面》によって投獄された黒鉄宮のプレイヤーは《仮面》の名を出すと途端に取り乱してしまい、「死神」という言葉を出すこと。《仮面》の正体は不明だということなど、やはり『アルト』という名につながるものはなかった。
そもそも、《仮面》そのものの存在の実態もほとんど明らかになっていない。それは、《仮面》が犯罪者ギルドの前にしか現れないことが原因だ。つまり、彼は犯罪者の前でしかあの仮面の姿をしていなく、それ以外では何の足跡も残していないのだ。だから、アインクラッドで流される情報新聞にもほとんど《仮面》についてのことは書かれていない。あたしは自分が今まで手に入れてあまり読み込んでいなかった新聞をかたっぱしから読み込んだが、《仮面》についての記事は片手で数えるしかなく、それも右下の目立たないところにちょこんとお情けのように乗せられているものだった。内容も『ある犯罪者ギルドが《仮面》というプレイヤーの手で投獄された』という事実のみを伝えたもので、とりわけて強調されていないのだ。
そうしたわけで、一週間もの間で得た情報はほんとうに頼りのないもので、あたしはどん詰まりになっているのだ。
「はぁ、思ったよりもうまくいかないなぁ」
これで、街を歩いて偶然彼に再会できたらそれはほんとうにドラマチックでロマンがある話だけど、広すぎるこの世界ではそれはありえない。彼自身ももしかしたらあたしのことを避けているかもしれないし……
「キュー?」
ピナがため息をついて行き詰まっていりあたしのことを心配するような様子で鳴いている。
「ピナ〜、どうしよう。このままだと本当にもう会えないかも……」
あたしはだんだんとしぼんでいく声でピナに話しかける。するとピナは「キュー!!」力強い声で落ち込んだあたしに喝を入れる。その励ましにあたしは何とか答えたいものだが、でも今はもはや打つ手なし。こうゆう時はどうするべきなのだろう。
「よし!ピナ、気分転換に外で狩りでもしよう!久しぶりの戦闘だから準備運動しっかりしなきゃね」
「キューキュー!」
ピナも元気よく返事をする。そうして、あたしは第27層のフィールドに出て、手当り次第にモンスターを見つけて、三撃ほとで一体を倒した。……のだが、その時思わぬアクシデントが起こった。
「うーーん、ついてないなぁ……」
愛用していた短剣の耐久値が切れたのだろうか、使用していた剣が突然青いポリゴンとなってしまったのだ。あたしの使用する短剣は量産型で効率性がよいのだが、どうしても消耗品になり途中で使い物にならなくなるのだ。
「……やっぱり、ちゃんとした武器屋でメンテナンスしたほうがいいのかなぁ」
今まで、パーティでの戦闘では後衛で主力となることはなかったが、前で戦えるようになりたい。普通の長剣もゆくゆくは使えるように今からでもソードスキルを上げておくのがようだろう。
すると、武器屋という単語であたしはある人がぽっと思いついた。そうだ、あの人なら安心して相談できるかもしれない。あたしはすぐさまフィールドから街に戻って転移門に行き、その人のところへ飛ぶことにした。
「転移『リンダース』!」
はい、次回は『リンダース』に拠点を構えるマスタースミスの女の子登場です。
どうでもいい話ですが結構お気に入りですね。
しばらくはオリ主は出てこないのでシリカ主体で物語は続きます。
感想と評価をご飯を食べながらお待ちしています。