SAO『罪と罰』 〜何故彼は力を手にしながら表舞台に現れないのか?〜 作:トアール凡人
もはや原作のアルゴの面影やいかに……
ご覧ください。
あたしは、リズさんとの会話で思いついた人に会うべく知人の男性にその人のことを尋ねた。
「えっ!シリカちゃんアレに会うの?やめときなよ女の子相手でも容赦なくぼったくるやつだよ」
「大丈夫です。あたしはどうしても会いたいんです」
「わかった…そこまで言うなら手配するよ」
男の人は気が進まない様子であったが、
あたしはその人が会える場所にすぐに飛んだ。そこはとある層の主街区の繁華街を一歩路地に入ったところで、昼間でもあまり光が差し込まないような路地裏の一軒家だった。辺りには人通りが少なく、あたしは恐る恐るその家のドアに手を伸ばした。
「きゅる……」
ピナも不安そうにしている。その声はか細くて怯えているようであった。
「大丈夫よピナ。相手もあたしと同じ女の子らしいからね。でも、どんな人なんだろうね。《鼠のアルゴ》さんって」
あたしが今会おうとしているのは世間では鼠の名で知られるこの世界一のやり手の情報屋さんだ。なんでも、情報であったらどんなものでも金に糸目をつけなければ提供してくれるスゴイ人らしいのだが、鼠と5分話すといつの間にか莫大な情報料を請求されるなんて噂も立っているため、先ほどの男性もあたしに注意を呼びかけたらしい。でも、本当にそんな人なんかいるのかな?
「それがいるから、この世界は回ってるんだゾ!」
「きゃっ!!」
あたしは後ろから急にする声に飛び上がってしまった。ピナも驚いて一緒に「きゅる!?」なんてひっくり返ったような声を出している。
「あははは♪これは可愛いお客さんだね。もっと顔を見せてヨ!」
言うと、その女の人は両手であたしの顔を自分の方に向けると「ほほ〜」と興味深そうにあたしの顔を見ていた。正直言って同性でもこれは恥ずかしかったのであたしは手を振り切ってしまった。
「ありゃりゃ〜もう少し見せてくれたっていいじゃないカ」
「い、いやです……それよりあなたは誰ですか?」
すると女性はわざとらしく驚いたフリをして返した。
「おや?わかんなかったカ。ほらほらオイラの頬のペイントを見てみナ」
言われる通りに彼女の頬を眺めると三本の線が左右両方に引かれていてまるで、ヒゲみたいに……ってそうか!
「あ、あなたがアルゴさんなんですか?」
「ご名答〜!君がシリカちゃんだねー。
うんうん、アーちゃんとはまた別の領域でかわいい子だナ〜。オネエサンも負けられないナ」
勝手に一人でうんうんとうなずく彼女を片目にあぜんとしてしてしまった。あれ?なんか思っていた人とはちがうなぁ。もっとスパイ映画に出てきそうな寡黙な女みたいな感じだと自分で想像していたため、目の前でケラケラ笑っている女の子が本当にアインクラッド一の情報屋なのかいささか疑問を抱かざるを得なかった。
「あの、あたし相談したいことがあるんです」
「まあ、仕事の話なら立ち話も野暮ダ。中でしようカ」
アルゴさんはあたしが立ち尽くしていたドアを開けると、あたしを中に招いてくれた。通された部屋はこじんまりとした中にポツリと椅子がテーブルを挟んで向かい合っていた。あたしはアルゴさんに勧められて椅子に腰をかけると「ちょっと待ってて」という言葉をかけて、アルゴさんはその部屋の端っこの台所スペースに行き、慣れた手つきでカップと紅茶を淹れてそれをあたしの前にさしだしてくれた。あたしはいただきますと言って一口お茶を味わう。どんな葉っぱを使っているんだろう。今まで味わったことのないような香りが口いっぱいに広がって嗅覚を優しく刺激する不思議なかんじがした。あたしは、カップをテーブルに置くと本題を切り出すことにした。
「あたし、アルゴさんに教えて欲しいことがあるんです」
「んー、内容によるけどね〜個人情報は高くつくよ〜でも、初回サービスで安くしてあげるから言ってくレ」
アルゴさんは鼻歌を歌いながら自分の分のお茶を飲んでいる。あたしは一度大きく息を吸ってそれを吐き出して、決心がついてはっきりとした口調で言った。
「《仮面》について教えて欲しいんです」
すると、さっきまでおどけた顔をしていたアルゴさんは打って変わって目を鋭くさせて、真剣なまなざしになった。
「おやおや、その名前を知って、さらに聞いてくるやからがいるなんて驚いたナ」
あたしは、相手の声のギャップに怯まずに続ける。
「あなたが発行している情報新聞には《仮面》についてのことが少なすぎて何もわかりませんでした。だから、編集者に直接聞きたかったんです」
アルゴさんは静かに返した。
「《仮面》についての情報はアレが全てさ。オイラに聞いたって結果は同じ。だから、悪いけど何も教えられないナ。んー情報屋としては不甲斐ないけどこれが限界ってとこダ」
あたしは、アルゴさんが普通を取り繕っているけれど、どこか動揺しているように見えた。さっきから視線の先が少し斜め下であたしの方を見ようとしていないからだ。あたしはさらに追及する。
「そんなことありえません。あなたは知ってるはずです。あの新聞だって、あなたが、意図して情報を少なくしているとしか考えられません」
アルゴさんは黙ったままだ。あたしがなめられているのはたまた、何も語る気がないのかはわからないが、あたしは決して止まらなかった。
「あなたの、評判はいろんな人から聞きました。あなたをぼったくりだと言う人もいます。でも、口を揃えてこうもおっしゃってました。どんなことでもそれに見合った対価を出せば必ず情報をもたらすと。あたしはどんな言い値を言われても出します。足りなかったら友人に借金してでも、どんなことしてでも払います。だから、教えてください。あなたが知っていること《仮面》のことを」
アルゴさんは黙っていた口をゆっくり開く。
「……《仮面》の情報はたとえ、君が全財産をはたいても、アインクラッド中の全てのコルを目の前に積まれてダメだ。悪いけどそういうことダ」
あたしは、無慈悲なその言葉に堪えているものが溢れ出てくるのを抑えきれなくて、バンと机を叩いて訴えた。
「それじゃあ……あの人に会えないんです。『アルト』さんに!!」
あたしは激しい剣幕でアルゴさんに詰め寄ろうとするが、アルゴさんはうろたえることがなかった。というよりも、あたしの言葉に対して驚愕の表情をしていた。
「キミ……!その名前をどこで……」
あたしは勢い劣らず返す。
「アルトさんは……あたしの恩人なんです!どうしても会わなくちゃいけないんです!!」
すると、彼女はあたしをなだめるような口調で。しかし、動揺をにじみ出しながら語った。
「き、きみの言うことが本当なら、きみは彼に出会ったのカ?《仮面》としての彼のみならず『アルト』としての彼にか?」
アルゴさんはうーんと悩みながらあたしに詳しい話をするように促した。あたしはアルゴさんの思わぬ反応に戸惑いながら、彼女に語った。あの森のこと、ピナのこと、そしてロザリアのことと、別れを……
語り終えてのどがカラカラになったあたしは飲み残した紅茶を一気に飲み干した。時間が経って湯気が消えたその飲み物は少し冷めていた。アルゴさんは眉をひそめながら「んー〜〜」と悩んだ表情を見せている。
「彼はねアルトとは、長い付き合いなんだ。彼が《仮面》になるとき、いやそのずっと前からの友人なんダ」
あたしは黙って彼女の話に耳を傾ける。
「詳しいことはやっぱり話せないけど、彼はねあたしとこういう盟約をしたんだ。これは情報屋アルゴとしてでなく、友人アルゴとしてね……」
アルゴさんの口からはもうずっと前の話が続けられた。それは《仮面》になることを決意した、裏で生きていくことを決めた剣士のはじまりの話だった。
次回は時系列で言うと幕間①の直後になる回想です。
なんか、アスナ成分が足りないな……
そろそろ絡めたいです。
感想と評価を夢見心地でお待ちしています。