SAO『罪と罰』 〜何故彼は力を手にしながら表舞台に現れないのか?〜 作:トアール凡人
やっとここまでこぎつけた……
ご覧ください。
森に囲まれた開けた場所にひっそりとある木造の一軒家。その中には2人の年頃の男女がテーブルを挟んで向かい合って座っていた。女は2回目とはいえ、まだ慣れていない家でソワソワとして落ち着きがない。対して、家の主である男は毅然としてティーカップに口をつけて余裕のある様子だ。男はおもむろに話を切り出す。
「ベッドがないな」
「えっ……」
男は急にそうつぶやくと、女に尋ねてきた。
「このままじゃ今夜は寝られないな……」
「ね、寝られない⁉︎」
女は男の言葉に反応して、胸の鼓動が速まっていく。
「困るだろ、夜は長いんだぞ…」
男は落ち着いた声で女にかたりかけてくる。女はますます血液の流れが加速していく。長い夜……眠れない……ベッド……も、もしかしてそれって……いや、でも初めての夜からそんな……
「部屋はあるとしても住むために必要なもんがないんだ。日が沈まないうちに買いに行くぞ、シリカ」
はい、おふざけはここまで。あたしは、今、小池のほとりにあるアルトさんのホームのリビングにる。あたしはアルトさんのホームに今日から住むことになったのだ。アルトさんはそもそも1人で暮らしていたため、自分以外の家具はもっていない。そのため、急遽居候することになったあたしのベッドがないというわけだ。うん、どうしてこうなったんだっけ?
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「同居?」
「ど、ど、ど、どうきょですか?」
アルトさんとあたしは同時に反応した。
「そうだゾ!同じラフコフに目をつけられた同士、仲良く一緒にいた方があっちもいたずらに手出しできないだロ?」
「そうだとしてもだ」
アルトさんは我先にと切り出した。
「シリカは年頃の女の子だぞ。俺みたいな男と同じ屋根の下なんて嫌に決まってるだろ」
アルトさん、そこですか、そこ気にしちゃいますか?あ、あたしは別に嫌じゃないですよ、お、同じ屋根の下で枕を並べて……
「うーーん、そこは問題ないんじゃないかナ〜」
アルゴさんはあたしの方をニヤニヤして見つめていた。うん、完璧にバレてる。
「そうか?シリカ、嫌じゃないのか?」
「あ、あたしは構いませんよ!というか、その方がいいですよ!うん!!アルトさんのお役にたてるならなおさらです」
あたしは開きなおって立て続けに言葉を並べていく。アルゴさんは「シリカちゃんは肉食だね〜」なんてボソボソと言っているが構わずに続けた。アルトさんは
複雑そうな表情で話す。
「まあ、この事態は俺に責任があるからな。シリカの安全になるならそれでいい」
「それじゃあ、決まりだナ。安心しろ、オイラは可能な限りお前らの情報が外部に流れないように引き続き手配するゾ」
アルゴさんはそう言うと、「オイラはもう帰る」と言って、立ち去ろうとしたが、帰り際に何かアルトさんに耳打ちをして、それに対して彼は一度は真剣な表情にったが、二言目を聞くと眉間にしわを寄せて呆れ顔をしていた。なんのことだろ?そうしてアルゴさんは
「じゃあな〜シリカちゃん、ちゃんとやるんだゾ〜」
と手を振りながら森の道の奥へと姿を消していった。アルゴさん、何をちゃんとやるの意味なんでしょうか。
という事情の中で、あたしの寝具を買い揃えに主街区に出てきて、イロイロと物色をしながら、なんとか買い物を終えたあたしたちは街で夕食をとることにした。
「やれやれ、今日はいろんなことがあって疲れた……」
一通り食事をすました、アルトさんが話を切り出す。
「ごめんなさい、おこがましくて……」
「いや、そのことはいいんだ」
アルトさんは、もうあたしと同居することについては決まったことだし、何も気にすることはないと優しく語ってくれた。しかし、話題が変わると彼は眉間にしわを寄せた。
「問題はラフコフなんだ……」
あたしはどうしても、気になっていたことがある。今日会った、ラフコフの親玉の女性。彼女は何かアルトさんに含みのある口調であった。それが彼と彼女との因縁のように思えたのだ。たしかに、それは語りたくない、過去の記憶なのかもしれない。でも、あたしは決めたのだ。この人と行動を共にする以上、このことを知らなけばいけないと。するとアルトさんはそんなあたしの心中を察したのだろう。
「あれを……ラフコフの首領、奴を止めることが俺の義務なんだよ」
あたしは、じっと彼の目を見据えて話を聞く。彼の目は昔のことを思い出して、遠く、店の壁を越えたどこか遥か彼方を見ているかのようだった。
「昔話をしようか。今から1年以上前のことだ。まだ、攻略もほとんど進んでいなかった時のことだ……」
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真夜中、あたしはまわりの全てが活動を止めて夢の世界を冒険している中一人だけ現実に目覚めた。枕元で船を漕いでいるピナは幸せそうな表情だ。あたしはピナを起こさないように、自分のベッドを抜け出して家の外に出た。木造作りの家のすぐ近くにある小池のそばに行き、そのほとりに腰を下ろした。まわりの暗い森の中で池の水は月明かりを浴びて幻想的な雰囲気を醸し出し、夢の中にいるような心地がする。
「こんな遅くにどうしたんだ。まさか、枕が変わると眠れないのか?」
後ろを振り返ると彼が家のドアの前に立っていた。
「ええ、そうかもしれませんね」
あたしはなんとなく小馬鹿にされたことに腹を立つ気にもなれなかった。
「そうか、それは困ったもんだな」
彼もまた水辺に歩み寄ってきた。
「じゃあ、しばらく暇つぶしのために俺も起きていることにしよう」
彼もあたしの隣に腰を下ろしてボーッと月明かりが反射した水面を眺めた。
「はじめてだな。ここに住みはじめてからこうしてこの池を眺めたのは。こんな風だったんだな」
「そうなんですか。じゃあ一緒ですね。あたしもはじめてですから」
ここに長く住んでいた住人と、はじめて夜を明かす新人が同じ価値観を共有するなんてこともあるのだと思うと少しおかしい気がする。でも、これからはずっと同じことを共有するのだろう。この経験はきっとその第1番目になるのだ。そう思うと胸の差し支えが取れて、なんだかほっこりとしたぬくもりを胸の奥に感じられた。あたしは口を開く。
「アルトさん……」
「なんだ」
あたしは彼に宣言する。
「あなたとあの女性のこと、やっぱりわからないことがあるんです。でも、それはきっとあたし自身が見つけることなんだと思います。これから、いろんなことを知ってそれでわかることなんだって」
「…………」
「アルトさん、あたしに剣を教えてください。短剣だけじゃなくて、アルトさんのように長剣を使いこなしたいんです」
彼は驚きもせず、顔に笑みを浮かべてあたしを見た。
「ほう、弟子入りか?」
「弟子入りです」
すると、彼はすくっと立ち上がった。
「いいだろう。教えてやるよ。ただし、生半可なもんじゃないぞ。ラフコフといつ衝突するかもわからないんだ」
「はい」
「……いい目だな」
あたしはどんな目をしていたのだろう。わからない、でもただジッと彼の目を瞬きをせずに見据えた。
「よろしい。シリカ、明日からよろしく頼むぞ」
「はい、おねがいします!師匠!!」
「師匠はやめてくれ……」
彼は苦笑を浮かべている。あたしは彼の本当に嫌そうな顔を見てなんとなく笑いがこみ上げてきてしまった。それにつられて彼も声を上げて笑っていた。真夜中の森の中の池のほとりで、二人の男女の笑い声が響き渡りアインクラッドの夜は今日も更けていくのだった。不思議な巡り合わせで出会った彼と彼女、これから先に起こる彼と彼女の物語を森と池の水は静かに見物していくのだった。
なんとかここまで来れました。
ここまでは初期段階で構想していたことなのですが、思ったよりも時間がかかりました。次回は少し箸休めの話を入れるつもりです。
第3章の視点は誰なのでしょうか(実はまだ迷っている)
毎日ほそぼそと更新していますが、この作品を見てくださる方がいてくださり本当に励みになります。
これからも『罪と罰』をよろしくお願いします。
エネルギーが尽きるまで更新を続けていきます!