SAO『罪と罰』 〜何故彼は力を手にしながら表舞台に現れないのか?〜   作:トアール凡人

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オリ主とリズを一度関わらせたかっただけです。

一話で収まりきらなかった……


幕間②〜鍛冶屋とまみえて仮面は笑う【前編】〜

 

早朝、森の中から小鳥たちが一斉に朝の恒例行事のごとくチュンチュンと泣き出す。日が少しでも顔を出して、暗闇の世界に明かりがもたらされると反射的に鳥たちは目覚めて、新しい1日の到来に喜びの歌を合唱する。早起きをしたものだけが手に入れることのできる演奏会のチケットを手にしながらも、そんなことは気にかけずに剣を振るう影が二つ。朝霧が徐々に晴れ渡っていくと、その二人の様子が目に見える。片方の少年は隙をみて打ち込む。それに対し少女はなんとか攻撃を受けつつ、反撃を繰り出そうとするがどうしても受け身になってしまう。一方的な展開だが、剣と剣がぶつかり合う金属音は鳥たちの合唱に劣らず日の出の森に響く。

 

「シリカ、自分から攻めなければ敵に付け入られるだけだぞ」

 

「はい!」

 

厳しい言葉がかけられても少女はそれにはっきりと応答して、立て直しをはかる。少女は焦りを懸命にこらえながら、少年の剣ではなく姿全体をとらえようとする。

 

「そうだ。剣だけ見ていては、敵そのものは見えない。相手の全体を捉えて冷静に探るんだ」

 

わかっている。何度もなんども注意されたことだ。いくら短期間でスキルを上げても彼女らの敵になるであろう相手はそう簡単に倒せるものではないのだ。ならば、それに対応した鍛錬を積むまでだ。少女は落ち着いて相手を見すえる。すると、反射的に体がうごく。意図もせずにただ本能的に見つけた隙に剣を振りかざす。

 

「……!!」

 

「ここだーーー!!」

 

少年が剣を振りかざそうとした瞬間に一時的に空いた右肋骨あたりに彼女の細剣を差し込む。が、相手は一枚上手だった。少し驚きながらも紙一重で避けられてしまった。。

 

「うん、いいところだな。スピードもあったし、俺じゃなかったらいい攻撃になったぞ」

 

「う〜〜、今日もダメでした……」

 

シリカはうなだれてその場に座り込む。実力が上がっていることは自覚しているが、どうしてもアルトさんには勝てない。というか、この人の動きは綺麗すぎるのだ。脚本と演出家が結託して最高の舞台を演じさせるように、彼の動きは機敏でどんな状況にも応じていてつけ入られないのだ。シリカは悔しさで歯を食いしばる。そんな彼女の様子を見て彼は声をかけた。

 

「シリカはどんどんレベルが上がっているよ、この短期間にここまで上達するなんてたいしたもんだよ」

 

たしかに、最初の頃は手合わせしても数秒でノックアウトされることが多かった。瞬殺されなくなっただけ腕を上げたのだろうが、シリカはご不満の様子だ。

 

「まだまだです。明日こそはぜっ〜たいにやってみせます!」

 

「それは、楽しみだな。まあ、今日はここまでにしよう。腹が空いたよ」

 

時刻はまだ目覚めるには少し早いが、朝ごはんを食べていないまま、体を動かした身には辛い。すると、シリカはすくっと立ち上がった。

 

「そうですか、じゃあ、すぐに作りますね!」

 

そう言うとシリカは剣を収めて家の方へ駆けて行った。アルトはその後ろ姿を見つつ、ゆっくりと剣をしまってその後を追う。彼らの1日はこうしてはじまるのだ。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

もともと、食事はアルトが担当していたが、彼はそんなに料理スキルを上げているわけでもないのでこじんまりとした食事しかしていなかった。それを見かねたシリカは今までコツコツと上げていた料理スキルをソードスキルと並行してガンガンと上げ始めた。そのため、料理の腕前はかなり上がり、その結果、シリカが料理を担当することになったのだ。

 

「はい、できましたよ!」

 

SAOは料理自体はあっけなく終わるが、その味はスキルの有無で大きく異なってくる。今日はパンにハムとレタスを挟んだサンドと、色鮮やかなサラダ、それと、彼女お手製のオムレツだ。アルトはこれくらいは自分でもやりたいと、ハーブティーをいれる。彼に言わせれば、紳士たるものお茶にはこだわらなけらばならないのだ。英国かぶれもここまでくると深刻なのではないだろうか。

 

「いただきます」

 

「はい、めしあがれ!」

 

シリカはニコニコしながら、アルトの食事する姿を眺めている。アルトはその視線に少し居心地の悪さを感じつつも、下を巻くほどの腕の食事を味わうことに集中する。それでも、彼女は視線を変えないため、彼はボソッと「今日もうまいぞ」と呟く。シリカはピンク色に頬を染めて「ありがとうございます……」と少し視線を下げて返した。和まし朝食を一通り済ますと、そういえばとアルトは話を切り出した。

 

「シリカ、お前が言ってた武道具屋さんだっけ?一回行ってみたいな」

 

「ああ、リズさんのお店ですね。いいですよ……はっ!」

 

シリカはしまったという顔をする。アルトは何のことなのかさっぱりわからないようだが、そのキョトンとした顔が罪だ。シリカはかつてリズベットに言われたセリフを頭に思い返した。

 

『その男とうまくいったら紹介しなさいよ♪』

 

まずい、ここでアルトと一緒に店を訪れたら茶化されるのは目に見えている。でも、ここで「行けません」なんて言えないし、どうしよう。シリカはグヌヌと悩みもがく。事情を知らないアルトは不思議そうにしながら、お茶を飲んでいた。すると、救世主が舞い降りた。

 

「あれ?……アルゴさんからメールが」

 

シリカは突然の連絡に首をかしげながら、メールの本文を読む。すると今の現状を監視カメラで覗いていたかのような、シリカにとって喜ばしいことが書かれていた。

 

「どうした、アルゴが何だって?」

 

すると、シリカはわざとらしく返した。

 

「いやー、アルトさん。あたし今日、アルゴさんにどうしても会わなきゃいけなくなっちゃいました〜」

 

内容は『シリカちゃん、今日二人だけで話したいことがあるんだけど、いいカ?』という趣旨のものだった。アルトはそうかと言うと

 

「じゃあ、友人の武道具店に行くのはまた今度に……」

 

「いいえ!せっかくの機会です!!あたしリズさんに連絡しておきますからアルトさんだけでも行ってきてください。いやー残念だな〜あたしも行きたかったな〜でも、アルゴさんの頼みですからね。仕方ありません!」

 

さっきの早朝稽古とは打って変わって、シリカの一方的な押しにアルトは

 

「そうか……そんなに言うなら……」

 

と、すっかりシリカの策略にはまっていた。シリカはそんな様子の彼を見て、心がチクリと痛んだのだった。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

朝早くから、水車が勢いよく水を循環させている武器屋の作業場には、カーンコーンと気持ちのいい高い音が鳴り響く。この店の店主である少女は、今日も全身全霊でハンマーを振るう。気持ちを込めたところでシステム的に良い剣が生まれるというわけではないが、それでも彼女は「良い剣」を生み出すのに気持ちを込めるのだ。それは職人として流儀なのだろう。若い女店主は真剣な眼差しで打ち終えて完成した剣を見る。まあまあの出来だ。でも、もっともっと良いものを作らなけらばならない。そうして新たな素材を取り出そうとすると、誰かからメールが来た。女店主はハンマーを置くと、画面を開いて差出人をみる。

 

「あれシリカじゃん、なになに……」

 

『今日、リズさんのお店にあたしの知人が行きます。あたしは行けませんが、よろしくお願いします♪』

 

「ふーんシリカの知り合いか。どんな人なんだろう」

 

この時、両者の間で齟齬が発生していた。シリカが意図してやったのかはわからないが、少なくとも女店主は少し勘違いをしてしまったのだ。

 

「この世界には女性プレイヤー少ないからな〜。仲良くなれたらいいな」

 

 

 

 

 




もう9月は終わり……
月日が流れるのがどんどん早まっていきますね。
今年は秋らしいことができるのだろうかと
ベッドでウダウダしているわけであります。

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