SAO『罪と罰』 〜何故彼は力を手にしながら表舞台に現れないのか?〜   作:トアール凡人

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First section ③〜そして彼女は思いつく〜

 

 

 

『第一層攻略‼︎』大々的に伝えられたその情報は瞬く間に全SAOプレイヤーに知れわたった。彼らもまたそうであった。

 

「一人死んだのか…」

 

開放された第二層の主街区の辺りを見渡せば、みな、表情がやわらかくニューフロンティアを興味深そうにあちこち探索するため、人口密度が高く、息苦しく感じられたが、一ヶ月もの間、攻略が遅々として進まず、もうこのまま何もできないのかと多くのものが不安に思っていた最中のこの朗報だ。新聞記事の左下にポツンと書かれている『犠牲者1人』という記述に目をやり、その場では悲痛に思うだろう。けれども、それ以上に一層突破という大事件にすぐに心移りしてしまうものだ。誰しも、悲しい出来事には同情するものである。だが、それは長続きしないどんなに大々的な事件であっても

当事者でもない限り、その記憶は風化してしまう。

特に、この特殊な世界ではたしかにゲームオーバーが死に直結するのは頭で理解していても、その確実な証拠もないし仮にその死の責任の所在を問おうものにも、あの科学者がこの世界に存在しない以上、責任はその身の置き場を失い、やがて人々の間でもそれは消え去ってしまう。死が確かにあるのに、その実態がつかみどころのない。コレが正常であろうか?

 

「君はマジメだね〜。きっとこんなに真剣に『死』を考えてるのは君くらいだよ〜」

 

ハニーはイチゴアイス?のようにみえる

デザートを食べながらケラケラと言うコラコラ、食事中のお喋りは行儀が悪いぞ

 

「……」

 

彼は表情を変えないまま彼女の食べる姿を眺め続けていた。

 

「ん〜〜でも、確かにね〜〜」

 

「何が?」

 

「正常かどうかって話!そんなの異常に決まっているよ。周りを見なよ。みーんな なんて事もなしにこの世界に生きている。一ヶ月という時間でだよ?………みんなこの世界に」

 

「……馴染むまではいかないが」

 

「適応?ってとこがピッタリくるかな」

 

柄にもなく彼女がまじめに話をしている

いつものわざとらしい語尾はどこにいったのだろう。彼女は眉毛をピクピクっと動かし、喜々として続ける。

 

「リアルじゃないけど、新学期で5月辺りになると、みーんな仲良くなって教室の雰囲気も何となく『こんな感じなのか』ってなるよね〜」

 

4月という時期は精神的にも肉体的にも新しい環境に適応しようとアレコレしようとするものである。学校であれば、自分のクラスを確認して、まっすぐにこれから1年滞在することなる教室に駆け込み、そこに顔を合わせたことのあるようなやつが1人でもいれば、ほっと胸を撫で下ろして、そいつのいるところにわざとらしく笑みを浮かべながら「おまえと一緒かよ」なんてやりとりをはじめられるだろう。だが、そんな奴が1人もおらず、さながら初めて見知らぬ土地の電車に乗ったような微妙に居心地がわるいような雰囲気をなんとか、周りにいる未知の級友に悟られないように、自分の席について、なんとなくあくびをするものだ。恐らく、この世界の住人の中の半分くらいは後者の経験をしているだろう。

けれども、GW明けくらいになると、

大々その年の環境の大枠はほぼ完成するため、もはやわざとらしい冗談も眠くなもないのにあくびなんかする必要もなくなるわけだが、同時にそれとなーく

 

「でも、そうなるとつまんないよね〜」

 

怠惰が始まるのだ。いたって自然な論理で同感だ。

 

「なんかおもしろいことないかな〜」

 

彼女はちゃっかりアイスもどきをたいらげ、ペロリと舌でくちびるにつけたものを舐めとった。「うふふ♪♪」と笑みを浮かべている。どうやらお気に召したようだ。ちょっと艶めかしい感じがわざとなのかは定かではない。冷たいものの後は温かいものが飲みたくなるものなのだろう。

 

「お茶が飲みたい〜」

「紅茶ならあるのでは?」

 

「日本茶を湯呑みで飲みたい♪♪」

 

「せめて和風のものを出すレストランで言えよ………」

 

バリバリ世界観に合致したファンタジックな店で「緑茶ください‼︎湯呑みで‼︎」

なんて言葉は合わないだろう。そもそも湯呑みなんてあるのだろうか?ありそうだが

 

「メニューを見ても……ないなハーブティーで我慢しろ」

 

「え〜〜お茶が飲みたいのに〜」

 

「茶であることには違いないだろうが」

 

「ぶーー」

 

「じゃあ、代わりにおもしろい話して?」

 

もはや唐突とかそういう次元でもなくなった!

 

「俺にそんなことを期待するなよ」

 

「つまんないなぁ〜実に面白くない。」

 

彼女はわざとらしくやれやれとポーズをとる。いやキョンのヤレヤレじゃなくて

両手広げてヤレヤレのポーズだが

 

「まあないことはないが………」

 

「あるの!!」

 

「いや…お前が興味を持つかわからんのだが」

 

「ナーニ?なーに?」

 

「ギルド創設クエスト?っていうのが

第三層からあるらしい。……いよいよ派閥とやらが現実味を帯びるってことだな」

 

たしかにパーティを組むことは最初からできた。だが、ギルドとなると少し事情がちがう。おそらく、普通のゲームであれば、仲の良いメンバーが気軽に組むのがふつうだろう。それは、普通であるから、この世界でもそんな集団は出来ていくはずだ。しかし、現場を見ると攻略組には既に二つの派閥が形成されているようだ。バカなことにどうやら、派閥のボス同士の仲は良いわけでなく、むしろ険悪のようだ。この先、攻略では二つのギルドがシノギを削ることになるだろう。

競争はそれが、良きレースであれば、両者の実力を相互に高め合うことができる。

だが、その競争が行き過ぎれば後々取り返しのつかないことになりかねない。特に組織が巨大になればなるほどだ。パーティーには人数制限があるが、

ギルドはどうやら無制限だ。両者ともにコレから熾烈なメンバーの引き入れ合戦をはじめるとすれば、この先の攻略に必ずしも利点だけでなく、穴となることもあるだろう。リーダーが優秀であっても、組織は腐っていくものだ。まして、彼らが愚かな扇動家であったとすれば………

 

「……」

 

ハニーはまたもや黙り込んで下を向いている。「なるほど〜♪」何を考えているのやらと思ったら、バンっ‼︎と机を叩いて立ち上がり不敵(素敵)な笑みを浮かべた。急に立ち上がったから、周りの人がおどろいているだろうが……

 

「んふふ〜♪よしやろう‼︎」

 

彼はその時初めて彼女がこれまでに彼に見せたことのない無邪気でとても楽しそうな笑顔を見たのであった。

 

そう、楽しそうな……

 

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