SAO『罪と罰』 〜何故彼は力を手にしながら表舞台に現れないのか?〜   作:トアール凡人

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歴史的名言にあやかってみました。

世の中には流行語大賞なんてものがありますが、

一度でもいいから誰の心に残るような言葉を
言ってみたいものですね。

それでは、ご覧ください



Third section⑦〜会議は踊るされど進まず〜

 

1814年、ヨーロッパのオーストリアの帝都ウイーンには欧州各国の首脳陣が集結し、フランス革命からナポレオン皇帝によって乱れた国際秩序の修復を話し合った。ヨーロッパの国境線はナポレオンによってめちゃくちゃになった各国は少しでも自分の国の利益を得ようとしたため会議は混乱した。それを見かねたメッテルニヒ議長は話し合いを中断しては夜の舞踏会に移り、みながみな、円を描くようにクルクルと回って踊っていたそうだ。その場からは移動しない踊りが、いっこうに進まない会議の様相を示していたのである。そんな会議のことを当時の風刺家は次のように表現した。

「会議は踊る。されど進まず」と。

現在、俺は緊急に集められた攻略組による会議に列席しているわけだが、目の前の光景がまさにそれなのだ。

 

「わけのわからない連中となんて手を組めない!」

 

「ラフコフの脅威があるのに、悠長なことなんていってられるか!」

 

「いっそ軍に協力を頼めば……」

 

「やつらが出しゃばるとロクなことにならないだろ」

 

 

各々の意見が入り乱れて収拾がつかない状態で、議事進行役のアスナはげんなりとした顔をしている。

そもそもはじまりはあの一連の事件から数日が経ってからのことだった。

 

「一度攻略組でも協議したほうがいいかもしれないわ」

 

アスナは悩みながらもそう言った。ラフコフの脅威と謎の「だから仮面》との接触をした中で、真剣にこの事態に対応しないといけない。そう思ってトッププレイヤーを集めた上で議論しようとなった。アスナはなるべく黄金リンゴに関連したことは伏せて、ラフコフと仮面についての簡潔な報告をした。

 

「・・・・・・ということです。私としては《仮面》が明確にラフコフを敵視している以上、彼らと協力することが現実的と考えます」

 

ここまではよかった。しかし聖竜連合の幹部の一人が発した一言が問題だった。

 

「今回の件でシュミットがギルド脱退を願い出て我われの戦力が減ったことも考えると、ここはKOB(血盟騎士団)のみなさんに頑張っていただきい」

 

「おい、待てよ。お前ら都合いいこと言って、レッドギルド討伐に参加しないつもりか?冗談も甚だしいな」

 

反論したのはアスナのいる血盟騎士団の幹部の一人だった。

 

「いや、我々はそのようなことな…だいたい、君たちの副団長も最近どうなんだ。一時期よりも攻略への積極性が低いじゃないか!」

 

「ビーターと一緒に行動してるってことも知ってるんだぞ!」

 

おいおい、それは関係ないことだろうが。俺が割って入ろうとすると、アスナに制せられた。

 

「私は今までもそしてこれからも攻略に対する意志は変わっていません。今回の件も円滑な攻略のために必要なことです、どうか冷静になって……」

 

さすが指揮官さまは度量がある。簡単な挑発に乗らないのは賢明なのかもしれない。だが、他の連中はそうではなかった。

 

「貴様!!副団長を侮辱するとは何事だ恥を知れ」

 

「最強ギルドは態度もでかいな!そもそもレッドギルドの問題を棚上げにしてきたのはそっちだろ!」

 

「なんだと!?」

 

「やるか、このやろう」

 

一気にヒートアップした議論、と言うよりもただの批判合戦はこのようにして火ぶたを落としてしまったのだった。

面倒なのは最大派閥のKOBと聖竜連合

の両者が見事に対立してしまったことだ。他のクラインやエギルたちが制止しようにも数の力には逆らえない。よって俺たちはただその様子を眺めるしかできないのだった。横目で副団長様の顔を見ると、彼女と目があった。

 

『キリトくん……ごめんなさい。私の力不足で……』

 

『そんなことない。仕方ないよ、こればっかりは』

 

なんとなくそんな会話を目でした挙句、仕方なく俺はエギルとクラインのところに行き小声で話し合った。

 

「エギル、いっそここでオノを振り回したらどうだ?お前が暴れたらみんな黙るんじゃないか?」

 

「やめてけキリト。エギルだって店があるんだ。こんなとこで汚れ役やらせるのはかわいそうだろ」

 

「じゃあ、クラインお前がやったらどうだ」

 

「俺はサムライとして無秩序に暴れないぜ」

 

「はっはっは!でも、キリトにはやらせられないからな、タダでさえ目の敵にされてるからな」

 

それはないぜエギル。たしかに俺の評判は悪いけどな、最近アスナと食事するようになって以来もっと風当たりが悪くなった気がする。俺が悪いのか?

 

「キリト……男ってのは嫉妬深いもんなんだぜ、社会人のおれが言うんだから間違いないぜ」

 

クラインの現実感のある言葉に俺はゴクリと唾をのんだ。

そんなやりとりをしていると入り口のほうでザワザワとしたどよめきが起こった。異変に気づいた俺はその方向を見ると、なんとまあ珍しい奴がいた。

 

「ヒースクリフ団長……」

 

アスナの声に、言い争っていた連中も圧倒的な存在感の壮年の男性に釘付けになった。

 

「アスナ君をあまり困らせないでおくれよ。まあ落ち着きたまえ」

 

団長様の言葉にさすがにプレイヤーたちも従わざるを得ない。

ヒースクリフは現在攻略組で最大勢力を誇る血盟騎士団のトップだ。なぜ、こんなに影響力があるかというと、彼の戦闘力の高さにある。最大の特徴として彼のもつ巨大な盾による防御力があり、俺もこの人相手ではなかなか攻め崩せそうもない。ボス攻略の際もそのカリスマによってプレイヤー達を統率しているのだが、実務的なことはほとんど副団長のアスナに委任していて、本人はほとんど会議などには現れない。しかも、攻略以外にはあまり興味を持っていないようでアスナも「上位プレイヤー以外は目に入っていないみたい」と語っていた。

 

「レッドギルドの活動も気になることだ。だが、このことで攻略組が割れていてはいけない。そこで提案だが、この一件しばらくはうちの優秀な副団長とそこにいるソロプレイヤーに任せてはどうかな?」

 

おうおう、大変だなそのソロプレイヤーは……っておい、どうして俺のほうを見てるんだよ、まさか俺か!?

 

「何を言ってるんだ、キミ以外にソロプレイヤーなどいないだろう」

 

それはそうでした。ってオイオイ、俺たちに委任していいのか。

 

「ここでいつまでも結論の出ない議論をするよりは、《仮面》とやらに接触したことのある君たちに任せておいたほうがいいはずだ」

 

その団長様の言葉に、まあいいか、団長がそうまで言うなら、とチラホラと同調の動きが見られた。お前ら、めんどくさいだけじゃないか。

 

「よし、ではこの提案に異議はないか?」

 

「異議なし!」

 

「そうゆうことだ。後は任せたよ」

 

そうして、会議は鶴の一声で閉じられてしまった。ちなみに、ウィーン会議は散々もめていたが、島流しされていたナポレオンが脱出したという報告で、これはヤバイということになって一気にカタがついたらしい。いつの時代も天才の影響力は甚だしいな。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

会議の場から出て外の空気を吸って伸びをしていたら、アスナが近づいてきた。

 

「やぁ、お疲れ様」

 

「ええ、今日はどうなるかと思ったわ。団長が来てくれて助かったわ」

 

やや疲れが見える彼女だったが、その目はまだまだ燃えていた。

 

「これで誰の邪魔もなくあの男を問い詰められるわ」

 

アスナさんはこの前のことを余程根に持っているようだった。大丈夫だろうか、あの男は……

すると、後ろから不意に声をかけられた。

 

「オイオイ問い詰めるって、怖すぎるだろ……」

 

俺とアスナは聞き覚えのあるその声にまさかと思って振り返ると、灰色のフードを被り顔をいつものように隠した男がそこに立っていた。

アスナは待ってました言わんばかりに剣を抜いて……ってオイオイ物騒だな。

 

「ま、待て、この前のことは悪かった。あ、あの後十分過ぎる罰を受けたから……この通りだ」

 

慌てて《仮面》は頭を深々と下げて、アスナに怯えきっていた。さすが、泣く子も黙る副団長だけある。犯罪者たちに恐れられている男が、閃光の美少女にビビっているなんてな……

同情の余地があるぜ、ほんとうに……

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