SAO『罪と罰』 〜何故彼は力を手にしながら表舞台に現れないのか?〜   作:トアール凡人

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Third section⑨〜ガールズトーク〜

Third section⑨〜ガールズトーク〜

 

「ズルイですアルトさん!あたしもアスナさんに会ってみたかったのに」

 

「だから、悪かったって」

 

「ぶ〜〜」

 

あたしはアルトさんがあの二人と会っている間にアルゴさんと一緒にラフコフの足跡を探っていた。オレンジカーソルの彼らは主街区や転移門を利用できない。そのため、限られた移動しかできないため、うまく行けばどこを拠点にしているかもわかるかもしれなかった。けれど、成果はゼロだった。特に、親玉のあの女性の足取りがつかめなかったのだ。アルゴさんと歩き回っていても、黒いフードの女性という目立つ特徴のプレイヤーの情報はなかった。そんなわけで、あたしは結局無駄足となったのだ。

あたしがわざと膨れっ面をすると、アルトさんは申し訳なさそうにしていた。

 

「うーん、そうだなぁ、今回は結構無理なことしてもらったし……悪かったな」

 

全く本当ですよ!アルゴさんには道中ずっとからかわれたんですよ。内容はいえませんが……

 

『シリカちゃん、料理作ってやってるんだロ』

 

『ええ、そうですけど』

 

すると彼女はニヤニヤしながら小声でささやいた。

 

『男の胃袋つかむなんて、隅に置けないねぇ〜』

 

『なっ……!!』

 

でも、たしかにアルトさんに気に入ってもらえてるみたいだし、もっと頑張って作ったほうがいいのかな……

そんなことを考えていると、アルトさんは唐突に閃いたという感じで

 

「そうだ!シリカ、明日久しぶりにリズのところに行ったらどうだ?このところ、会えなかったらしいし、いい息抜きになるんじゃないか?」

 

「突然お邪魔して迷惑じゃないでしょうか?」

 

「まあ、そこは俺に任せとけ♪」

 

何か含みのあるような言い方だったが、気にしなかった。

アルトさんはすぐにリズさんに連絡を取っていたようだったが、なぜだが、その顔はイタズラをしようとしている少年みたいだった。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

翌日、あたしはリンダースに向かった。

アルトさんはというと

 

「楽しんでこい」

 

と言い残してどこかに消えてしまった。むむむ、いったいどこに行ってしまったのだろう。

 

「あら、いらっしゃい」

 

綺麗な水車が目立つ建物の前では女店主が立っていた。今日はお店が休みのようだ。

 

「リズさん、お久しぶりですね。急にすみません」

 

「あー、別にいいのよ。アルトが頼んでくるなんて珍しいからね」

 

リズさんはあいかわらずサバサバとした調子であたしを家の中に招いた。

リビングに通されると、リズさんはお茶を出してくれたのだが、なぜかカップが3つあった。

 

「あれ、一つ多くないですか?」

 

「ああ、これはね〜」

 

すると、店のほうからドアを開ける音がして、女性の声がした。

 

「リズー、遅れてごめんね」

 

「大丈夫よ、アスナ上がってちょうだい」

 

はい?今なんておっしゃいましたか。

 

「今日はリズのお友達も来ているんでしょ?どんな子かしら」

 

あわわわ、と、突然のことにあたしは慌てふためいてしまった。

そんなことをしている間に女性はリビングへとやってきてしまった。そして、あたしと眼が合うと驚いた表情をした。

 

「あら、あなたこの前喫茶店で……」

 

「え、ええ…その節はどうも……」

 

「なんだ、顔なじみだったのね。だったら話が早いわね〜」

 

リズさんは時代劇の代官のような悪い顔をしていた。も、もしかして、初めからこうなることを!ということは、アルトさんも……

あたしが目で訴えると悪代官は目をキラりと光らせて

 

『憧れの人に会わせるように手はずを整えてあげるなんて、アルトもワルよの〜』

 

そんなことを言っているような気がした。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「改めてだけど、ちゃんと自己紹介しないとね。私はアスナ、リズとはこの世界でも少ない女性の中でも親友よ」

 

「あ、あたしはシリカと申します。お会いできてうれしいですアスナさん!」

 

「あらあら、さっきまであんなに動揺してたのにね〜」

 

「リズさん、不意打ちはないですよ!」

 

「もう一人来るって、言わなかった?」

 

「聞いてませんよ!」

 

「まあまあ、二人とも」

 

アスナさんが苦笑して、止めに入る。あたしはそれに気づいて顔が熱くなった。

落ち着きを取り戻したところでリズさんが三人分のお茶を入れてアスナさんが持参されたクッキーが並べられた。むむ、この人は料理もできるのか、これならあたしも少しは太刀打ちできるかもしれない。残念なことにそれ以外は難しい。例えばこの目の前に誇る双子乳山の高さはアスナさんが富士山だとしたら、あたしは……いけない!こんなことで卑屈になったら。でも、アルトさんはどうなんだろう。

 

「どうかしたの、シリカ?」

 

そう聞いてきたリズさんもよく観察すると富士山8合目くらいはある。グスン、あたしはまだ登山も始めていないくらいだよ。あたしはなんとか立ち直って、ようやくまともになったため、三人で賑やかにお話をはじめた。そのうちに話題はあたしのことに移った。

 

「シリカちゃんはどこをホームにしているの?」

 

「あたしですか?ええと……」

 

いけない。ここでうかつにアルトさんと同棲しているなんて話したら……

だが、リズさんは何も考えていなかった。

 

「シリカはアスナよりも先に進んでいるのよ」

 

「リズさん!」

 

「ど、どういうこと?」

 

リズさんはクッキーを口にほうばりながら語った。

 

「ふっふっふっ、この娘、男を口説き落として同居するに留まらず、毎日朝になると一緒になって汗をかいて……」

 

「ふ、二人で!!」ま、毎日!?」

 

アスナさんはきっと勘違いをしている。リズさん、わざとやってますね。

 

「誤解です!毎日朝に剣のお稽古をしてもらっているだけです。それに、同棲といってもあたしが弟子入りしていて……その……口説いたとか、まだ口説いたことも…」

 

あれ、なんかおかしくない?

 

「ヘェ〜まだそこまで進んだことないんだ。その気なのに?」

 

リズさん、いい加減にしてください!

あたしはなんとか矛先を変えようとつい、話をずらしてしまった。

 

「そ、そういえば、アスナさんも男の人と一緒にいましたね?黒の……き、キリトさんでしたっけ?」

 

するとアスナさんは顔を真っ赤にして慌てた。

 

「ち、ちがうわ。彼とはそんな関係では……」

 

あれ?もしかしてこれ地雷だった?

リズさんは少し頬を膨らましていて、アスナさんは顔を赤らめていて……

リズさんが話を切り替えた。

 

「まったく、あんたらはいいわねー。まさにバラ色ってとこかしら」

 

「バラ色って……でも、気になるわね、シリカちゃん、その人はどんな人なの?」

 

「えーと……」

 

ここで変に仮面の話をしたらいけないのであたしは普段のアルトさんのことを言った。

 

「まず料理に無頓着です。いつもあたしがやらないとマトモに食事とらないんですよ。あと、すごく人をバカにするんです。今日だってリズさんのとこに来るようにすすめたのあの人なんです。なんか子供みたいに笑っていたのでまさかと思いましたが。ええと……あとそのわりに自分のこと紳士ぶってるんです。でもよく失言をして女性を怒らせてますね。本当にしょうがない人です!」

 

アスナさんは少し困ったような顔をしていた。

 

「け、けっこう厳しいわね」

 

あれ?もしかして悪口しか言ってなかったのかな。

 

「そうねぇ。キリト君も普段はだらしないからなぁ。攻略組が迷宮に潜っていても昼寝してたり、カエル肉を食べようとするし、あと、気に入ったものすぐに買っちゃうからお金がなくなっちゃって」

 

するとリズさんも、うなづいていた。

 

「そうね、あたしも自信作の剣を折られたことあるわ。あの時はさすがのあたしも戦闘態勢にはいったわ」

 

「リズさんは常時戦闘態勢では?」

 

「うるさい!あんたのお師匠にだって、散々暴言言われたわよ、あのとき、もしシリカと知り合いだって言わなかったら、あたし一発は殴っていたわ」

 

お、恐ろしい……

アスナさんもクスクス笑っている。

カップのお茶に口をつけると、

アスナさんは静かに遠くを見るように言った。

 

「でも、大事なときには頼りになるのよね。だから、そばにいると安心できるのよね」

 

「わ、わかります……あたしなんて、いつも肝心なときに守ってもらってばかりなので……」

 

リズはあたしとアスナさんを羨ましそうに見ていた。

 

「いいわねー、男に守ってもらえるなんて、うらやましいわね」

 

すると、あたしはそういえばと思い返した。

 

「でも、たしかリズさん、前に雪山で遭難していたときにキリトさんと一緒だったそうですよね?」

 

「そういえば……あのときはリズが心配でそれどころじゃなかったけど。どうだったの?」

 

突然の攻勢にリズさんはギクッとして顔を背けた。

 

「いやー、どうだったかしらねぇ」

 

これは聞かないほうがよさそうだ。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

気づくともう日が傾く時間になっていた。アスナさんも明日からはまた攻略らしく、あたしもホームでアルトさんがそろそろお腹を空かしていると思ってお暇することにした。

転移門までアスナさんと一緒に歩いて行った。憧れの人がこんなに身近にいるなんて、不思議な感覚だ。

 

「話をぶりかえすようだけど、シリカちゃんはその人のことどう思っているの」

 

アスナさんの言葉は決して人をからかうようなものではなかった。なんだか、あたしを超えて自分自身に問いかけているような感じがした。あたしは悩むこともなく率直に話した。

 

「そうですね。最初は憧れでした。彼の姿を見て自分もそうなりたいと思っていました。でも、今は……」

 

「今は?」

 

最初に出会ったとき、あたしは守ってもらった。救ってもらった。それで、憧れた。彼のもつ強さに憧れた。それは力だけでなく、彼自身の優しさだ。あたしを見守ってくれるときの彼の目は、あたしの不安を取り払ってくれる。でも、優しさに甘えているだけではダメだ。だからこそ

 

「あたしは彼の横に立ちたいです。後ろに控えて怯えているだけじゃない。一緒に横に並んでいたいんです」

 

アスナさんはあたしの話をちゃんと聞いてくれていた。

 

「そっか……シリカちゃんってすごいね」

 

す、すごい?あたしが?

アスナさんのほうがよっぽどですよ。

あたしは、彼女の顔をよーく眺めた。夕焼けに照らされて少し赤らめた白い肌が普段の美しさに磨きをかけていて、街ゆく人が一度立ち止まってその顔を拝んでいる。本人もそれを自覚しているけれど、決して飾っていない。あたしの方が恥ずかしくなるほど美しい。

そんな彼女が笑顔であたしに優しくささやいた。

 

「シリカちゃんにここまで言わせるってことは、その人っていい人なんだろうね」

 

アスナさん……今、あなたが褒めた人、あなたにケンカ売った人なんです。

 

言えない…こんな美しい笑顔の前で、正直に言えないよ!

 

あたしは、無邪気に手を振りながら転移門に消えていく、女性に対して複雑な思いを抱きながら手を振り返したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




シリカたちがガールズトークをしているとき
アルトは何をしていたのでしょうか?

次回「アルゴの依頼」

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