SAO『罪と罰』 〜何故彼は力を手にしながら表舞台に現れないのか?〜 作:トアール凡人
今回の元ネタはゲームの中から拾ってきました。
私自身はプレイしたことはありませんが、
いつか暇なときに手を出したいです。
それでは、アルゴとの絡みをご覧あれ。
「楽しんでこい」
そう言ってシリカを送り出した俺は、情報屋さんに呼び出された場所に向かった。そこは田園風景溢れるエリアの小さな村の入り口だった。俺がダラダラ歩いて行くと、ちょうど門前に見覚えのある鼠がいた。
「やあ、今日はすまないナ」
「いや別に構わないぞ。この前は世話になったからな」
「オイラもシリカちゃんと話せて充実したからな。おあいこってとこダ」
ほお、やっぱり女同士だと気心が知れていて話がはずむのだろうな。きっとシリカも今頃は驚いているだろうな。
「キミも少しは融通がきくもんだナ」
「シリカはよくやってくれてるからな。彼女が楽しんでくれるなら幸いだよ」
「仲良くやってるみたいでオネエサン安心したゾ」
最近は文句を言われることが増えたがな。
「でも、そうゆうことを言える仲なんてそうそうできるもんじゃないはずダ」
「そうだな、おまえみたいな友人がいることも喜ばしい」
「照れるなぁ〜」
褒め言葉で取るなんて調子がいいな。
さてさて、今日は別に世間話をしに来たわけではない。
「今日は何の用で?」
「ああ、実はクエストを一緒にやって欲しいんダ」
「はぁ、お前でも手こずるようなのか?」
「ん〜〜まあ付いてきてよー」
怪しいな。何かおかしい。長年の付き合いからそう悟った俺は少し探りを入れてみた。
「なんか見返りをくれるのか?俺だってタダ働きはいやだぞ」
「も、もちろんダ。報酬は半分ずつで分けるし。お、オイラも時々はこうやってキミと親睦を深めたいなぁと思ってだナ」
珍しく歯切れが悪い。まぁ、ここまで言うならいいだろう。
「さっすがアルトは違うな〜♪」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
難しいものではなかった。単純なお使いクエストで、村人からお願いされたものを手に入れて渡せば終了というごく単純なものだ。
「ふぅ、あと一つだけだな」
「そ、そうだナ」
さっきからキョロキョロと周りを見て落ち着かない様子だが一体なんなのだろうか。と、思っていると、いたいた、アレが最後だな。
「よし、俺が捕まえてくるぞ」
俺は牧草地の近くで散歩をしているソレをヒョイと持ち上げた。
「アルゴ、お前もどうだ」
「いや……」
「そう言わずに、小さくて扱いやすいだろう」
「いや……」
ここで、俺はようやくアルゴがここまで嫌がっているのに気づいた。なるほど、意外性があって、いじりがいがあるじゃないか!
俺はソレを抱えたまま、ソッポを向く彼女に近づいて、ソレを彼女の目の前に突き出した。
「いやって言ってるだろう!!オイラは無理なんだよーーーー!!!」
「こんなに可愛い子犬を嫌ってるなんてもったいないぞ、まぁこれを機に克服してみてはどうだ」
「無理ダ!!オイラは、たとえ自分以外の人類が滅亡したとしても、そいつとだけは絶対に生きていかない。だったら、鼠のほうがましダ」
いや、鼠はお前だろ。言ってみたらどうだ。チューーって
「言うカ!もういいダロ、早くクエスト完了するゾ」
むむむむ、残念だな。じゃあ最後にもう一発。
「おい、アルゴ後ろにチワワが……」
「ひぃ!イヤーーーーー!!!」
こんなに簡単に引っかかるとは。アルゴは叫びながら走り去ってしまった。仕方ないので俺は彼女を追いかけて、なんとかなだめると子犬を依頼主に引き渡して無事にクエストを完了した。その間、アルゴはずっとムスッとしていた。
「おいおい、機嫌なおしてくれよ」
「ふん……乙女の純情を汚した男なんて最低だナ」
「たかが、犬で汚されるものか?」
「たかがじゃないんダ!」
どうしてここまで嫌ってるんだろう。よっぽどの理由があるにちがいない。
「なぁ、どうしてそんなに犬に抵抗があるんだ」
「話すつもりはないゾ」
「ほお……情報屋の鼠が犬を見て泣き叫んだって記事があったら、みんな興味わくだろうな〜」
「ふ、ふざけるナ!そんなことさせないゾ」
もちろん、そんなことはしないさ。秘密にしてやるから、教えてくれよ。1人に聞かれるのは不特定多数に知られるよりもましだろ?
そう言うと、アルゴは急に黙り込んで下を向いて、ボソボソと言った。
「ひっかけられたんダ……」
「は?」
そう返すとアルゴは顔を紅潮させて、今度は俺に向かって叫んだ。
「だから!ひっかけられたんだよ、あいつらに。道を歩いていてちょっと目を離したら…その……ぬれてて……」
俺はここでクールにしていたほうがよかったのかもしれない。だが、このアルゴに限って、こんな話を聞いて、落ち着いていられる奴がいるとしたら、そいつは聖人君子以外の何者でもないだろう。俺は決して決して聖人でも、仏でもないのだ。
「……くっくっくっ」
俺にできたのは笑いをこらえるくらいだった。
「わ、笑うなーーーー!!」
すでに涙目の彼女はポカポカと俺の胸を叩いている。普段の悪い大人じみた姿はすっかりなく、抵抗虚しい、愛らしい女の子がいたのだった。今日くらいは彼女に対してタダでコーヒーをおごってやってもいいような気分だ。もっと言えば、コーヒーよりもオレンジジュースが似合いそうだが、それはあまりにも侮辱的だろうから、ここはコーヒーに落ち着かせるのがいいのだろう。そうと決まれば話は早い。
「お嬢ちゃん、好きなもの買ってあげるから、お兄さんについてきなさい♪」
「なんだその怪しい誘拐犯の手口は」
うーん、難しいもんだな。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「まったく!とんだ災難な日だヨ!」
「そうかな、俺は結構充実してたぞ」
「キミは散々オイラをいじめただけダロ」
「まあまあ、久しぶりにこの店にくるきっかけにもなったんだから」
ここは下層にある、喫茶店だ。上層に比べたら出てくるものはやや見劣りするが、往年の記憶がそれを補完してくれる。
「ここだったよな、俺が最初にぼったくられたの」
「ぼったくったとは失礼な。サービスまでしてやったんだゾ」
ここは、俺がこの情報屋に初めて出会ったところ。今座っているこの席で、1人でコーヒーをすすっていたらコイツがトコトコとやってきたのだった。
『オニイサン、1人かい?カッコつけてるけど、少し虚しく見えるヨ』
『虚しいのはひどいな、でもカッコつけて悪いか?』
『そこは否定しないのカ……』
『まあな。別にただボッチやってるんじゃないよ。相方がどっかに飛び出してるから待ってるだけ」
『へぇ、もしかして女の子かな?』
『なぜわかる?』
『いやー、オネイサンはなんでもわかるんだナ〜』
『そうなんダ〜』
『おっとこの喋り方は専売品なんダ。一回まねたら100コルダゾ』
『り、理不尽だ……』
それで俺が払ったのがいけないんだ。後悔したよ。その後にことあるごとに難癖つけられて、金をむしり取られたからな。
「でも、それにプラスしてちゃーんと有益なこと教えてやったんダ、プラマイゼロだナ」
「そういうことにしてやるよ」
まぁ、こいつのおかげで、初心者ながらうまく序盤をやり抜けたからな。それは感謝なのかな。
「でも、やっぱり足りないヨナ」
アルゴは俺の隣に一人分あいた隙間を眺めて懐かしそうに、でも少ししんみりと言った。
「そうだな」
俺はそれしか言えなかった。今はこうして逃げているのが精一杯だから。
「まあ、『いずれ来る日』を楽しみにしておくかナ。その時は、またおごってもらえそうダ。」
彼女はそう言って、わざとニコっとしたが、俺には十分すぎるくらいの乙女の笑顔だった。
「ああ、何杯でもな」
俺もできる限りの微笑みを返してやった。そして思うのだ。こうして居心地のいい空気を作ってくれる友人がいることに、なんてすばらしいんだって。逃げでもいい、いや逃げ場所を作ってくれる相手が1人くらいいても神様は見逃してくれるだろう?
「でもなぁー、キミに弱みを握られるのはシャクだナ〜」
「えっ?」
おい待て待て人がうまーくまとめて終わらせようとしているのに。
アルゴは再び悪い大人のニヤけ顏で言った。
「キミの弱みなんて、オネエサンにかかればゴミあさりよりも簡単に見つかるんだヨ。まっ、ばらさないであげるからそこは安心しろヨ〜」
まったく、変わらないやつだな。
「あっ!でも、シリカちゃんならバラしてイイかナ」
「それはやめてくれ……」
お願いします。それだけは…
俺はそのあと何度もテーブルに頭をこすりつけて、最後の男としての体裁を崩さずに済んだのだった。
慕ってくれている子にはカッコつけていたいんのだ。
でも、そういう感情を胸に抱く本当の意味をその時の俺はまだまだ理解していなかったのだった。
閑話休題を終えたところで
次回は三章のシメに入ります。
次回「狂人のひととき」
お楽しみに。