SAO『罪と罰』 〜何故彼は力を手にしながら表舞台に現れないのか?〜   作:トアール凡人

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今回はラフコフの親玉さんの独白です。

いろいろと捏造設定満載ですが
許してください。


Third section11〜狂人のひととき〜

久しぶりに入ったこのお店だけど、運良く思い入れのある席が空いていた。窓辺で外からは見えないけど、中からだと外がよくわかる席。私が奥の席に座って、私の相棒であった彼はその前に座っていた。

私はさっそく注文をする。今日はステーキにシチュー、それから山盛りのサラダを頼んだ。もちろん、デザートは目をつけている。一通り頼み終わるとしばしの空き時間だ。昔だったら話し相手がいたけれど、今はどうにもならないから仕方ない。

ふと思いついたら行動せずにはいられないのが私だ。食べたいものがあればお腹いっぱい食べるし、食後に甘いものが食べたくなったら別腹で味わう。特に最後に飲むほうじ茶は譲れない。彼は好んで紅茶を飲んでいたが、それはそれで、彼の雰囲気に合っていた。

私は楽しいことに目がない。究極的な快楽こそが私の生きがいだ。誰にも邪魔されたくはない。

 

だから、はじまりの日に彼を見つけていてもたってもいられなかった。案の定彼は私の思い描く人間だった。子供のときから、周りの人間はいつも私のやることをうとましそうに見ていた。ことあるごとに行動する私にたいして、彼らは関わろうとすらしなかった。

でも、彼は違った。ぶつくさと文句を言っていたが、それでも彼は私の話をちゃんと聞いてくれた。それは私にとっては嬉しかった。初めてだったのだ、そんな人に出会ったのは。

だけど、彼は私の行動を一つだけ否定した。うれしいのは、彼が私を止めようとしてくれたことだ。あいつらだったら、きっとコソコソと逃げるのだろう。だけど、今も彼は私のことを追っている。もしかしたら、刺し違いになるかもしれない。でも、無視されるよりはそっちの方がましだ。

彼はPKという言葉に過敏だった。そんな彼のそばにいた私が初めてPKをしたのだから、彼にとっては裏切り以外の何者でもないのだろう。

ねぇ、なんで殺しちゃいけないの?

私は国家同士の「ケンカ」とか、国の名の下での「合法的処罰」の話ではなく、単純に個人による殺人のことをいってる。

こういう動機の殺人事件がある。

金が欲しくて、むかついて、邪魔になって、殺してみたくて、刑務所に入って死刑になりたくて……だから殺した。

それにたいしてみんなこう言うんだ。

「身勝手だ」と。

なるほど!つまり、利己的だから殺すのはダメなのか!!

いや、ちょっと待ってほしい。

世の中には正当防衛という名の下での殺人が許されている。極端にいえば、殺されそうになったA君は、「殺されたくない、自分がやらなければやられる」という利己的な発想でやり返すのだ。もっと殺しの定義を広げちゃえば、例えばお魚を毎日殺してるじゃないか。家畜として牛も鳥も豚も馬もそうだ。ベジタリアンだって同じだ。野菜だって、植物だって生き物に変わりない。殺しているのだ。

そう、つまり人間というのは利己的での殺しは許しているのだ。特に食べるときはみな「感謝」をして、胃の中に放り込む。一種の慈悲だ。

じゃあ、どうして殺人はいけないとされはりのか。簡単だ。世間一般の人々は、個人の快楽による殺しを許さないのだ。

食欲は許しても、その他の快楽による殺生は許されない。

でも、ここでも私は思う。

どうして快楽を我慢しなきゃいけないの?

「そんなやつがいたら、社会がめちゃくちゃになるじゃないか」

私は社会なんてどうでもいい。むしろ世紀末みたいな荒廃した世界のほうが面白い。

「死んだ後に地獄に行くぞ」

昔の人はこうやって、戒めていた。でも地獄だっておもしろい。何の苦しみもない無味乾燥な天国にも極楽にも行きたくない。そんなとこに行っておもしろいの?

いつか死ぬのなら、私は今生きているときに、最高の快楽を味わいたい。

そして、いつ戻れるのかもわからない、この仮想空間にいるのならその思いはますます高まる。

でも、彼は認めてくれなかった。

そして私は彼を失った。

私は誰よりも彼がPKを否定していたのを知っていた。

わかってくれないのは理解していたはずなのに、自分を止められなかった。

それを後悔している自分もどこかにいる。

きっと、そうなのだろう。

私がパフェを食べている前でブツブツと言いながら紅茶を飲む彼といるのが、一番の楽しみだった。

今、私の前は空席だ。だから、いくら食べていてもお腹はいっぱいにならない。

 

いつからだっただろうか。犯罪行為をしても街の中に入れるようになっていた。

犯罪行為をすると、もれなくカーソルはオレンジ色に変わり、特典として主街区には入れなくなり(正確に言えばこわ〜い門番に追い出され)転移門は使えなくなるので移動が面倒になる。

だが、街に入ると私の象徴ともいえるオレンジカーソルがつまらない緑になるという怪奇現象が起こるようになった。私は戸惑ったが、すぐに理由はわかった。ユニークスキル《ロキ》、それが私のスキルストレージに入り込んでいた。あらゆる犯罪行為をしても一切の懲罰がないというVIP待遇。だから、自由に街に出入りできるし、わざわざ免罪クエストをやらなくてもいいのは驚きだった。

こうして、今も主街区の店に出入りできているのだ。

「趣味が悪い神様だな」

彼ならそう言いそうだ。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

夜の街に繰り出した私は暇つぶしに人間観察を始めた。三人組でケラケラ笑いながら歩く男たち、その話の内容は私にはちっとも面白くなかった。キョロキョロと辺りをうかがう女の子、はじめてここに来たのだろう、興味深そうにでも不安気な様子は初々しさが出ていてかわいらしい。男女のカップルが広場のベンチに座ってお互いを見つめて愛を語らいあうのは、なんだか微笑ましいが、だんだんむしゃくしゃしてきて、自分が情けなかった。

 

「私も、彼といたときは……」

 

彼を本当にそうゆうふうには見ていなかったか過去の自分に問いたい。でも、彼はきっと私のことなんて今は女としては見てはいないのだろう。あんなにかわいらしい子猫ちゃんと一緒にいるんだもん。子猫ちゃんもあきらかに惚れてたからね〜。オネエサンとしては応援したい気持ちもある、かわいいものには目がないからだ。あんなに純粋そうな女の子はいない。でも、その一方で1人の女としては、そんな子猫ちゃんを潰してやりたくもなる自分がいる。それは醜い、どこまでも深すぎる闇のようなもので、すきあらば私の心を埋めてしまおうと虎視眈々と狙っているのだ。私はそれを押しとどめて、もう一度カップルを見た。うん、やっぱり、私と彼には重なるところなんてない。とすると、彼と私は結局なんなのだろう。

 

「この答えは、後でもいいよね」

 

私は、互いに顔を近づけていて、もうこちらからは表情は読み取れなくなった男女(察してよ!!)を見ているのは耐え難くなって、その場を去った。

 

「そろそろ行かなくちゃね」

 

私は本日の本当の目的を果たすべく、

転移門を通じて55層に飛んだ。

 

「なんか感じ悪いな〜〜」

 

まるで現実世界に帰ってきたような鉄でできた建物とズラズラと無秩序に並ぶ塔をみると、つまらない都市風景を思い出し、神経にさわった。

だが、今日の目的はその中でもひときわ高い塔だ。血盟騎士団本部の前に来た私は入り口に見張りがいるのに気づいた。

 

「ん〜〜、邪魔だなぁ」

 

こんなとき、私のユニークスキルが役に立つ。私はつむじ風のごとく一瞬で二人の衛兵を切り裂くと、彼らはバタリと倒れた。圏内でもダメージを与えられるのはいささかチートではないのだろうか。でも、しょうがない。できちゃうんだもん。

 

「大丈夫♪睡眠毒だからね、しばらくお休み〜〜」

 

衛兵の守っていた扉を開けると、中はガランと広がっている空間だった。やはり、夜だと人がいないみたい。

話によると、もう一人のユニークスキルの使い手の団長さんとやらは、この本部の中を寝床にしているそうだ。そう、今日の目的はヒースクリフだ。最強ギルドの親玉がどんなやつか、敵情視察というわけ。

 

「ええ〜〜、この階段登るの……」

 

どこまでも続くような螺旋階段。仕方がないからテコテコと駆け上がるが、エレベーターはないのだろうか?

 

「もう、お金持ちなんだったら、設備投資はしてほしいよ〜」

 

ブツブツ言いながら、ようやく上がりきると、明らかにボス部屋のような部屋の扉があった。私は、チート版聞き耳スキルと探知能力をフル稼働させて扉をうかがう。

 

「……中にはいないみたい」

 

部屋の中には、プレイヤーの鼓動は聞こえない。おかしいな?お出かけしちゃったのかしら。夜遊びはよくないな〜

あっ、私もそうだった。

あはははーー♪

 

その時だった。急にドアを伝ってゾクッとする感覚がした。頭の中で情報処理をした結果導き出した答えは……

 

「くっ……隠れなきゃ」

 

私は危機を感じて、すかさず広間の大きな柱の影に隠れた。

すると、仰々しい音を立てて、あの扉が開いた。どうして?中に誰もいないはずなのに……

お出ましになったのは、みんなのヒーローヒースクリフだった。うーん、若いはずなのに老成した感じの男だなぁ。そんなことを考えながら私はできる限り気配を消した。こうしていれば絶対にバレることはない。

 

「……」

 

男は周りをうかがうと、特に何もなかったそぶりで扉を閉めた。ふー、気づかれなかったーー。スリル、ドキドキで最高の気分だね〜。

私は十分な収穫を得て、ギルド本部から退散した。一刻も早くこんなところからおさらばしたいのもあったが、むしろワクワクが止まらなかったせいだ。

 

「うふふ〜〜、あの男、なんかあるね〜」

 

私はなんとなくだが、ヒースクリフという男の秘密の入り口を見つけた気がした。これは、宇宙人を見つけて富士山の上でおにぎりを食べて、友達になるくらいのことだ。興奮しすぎて、自分でも何を言っているのかわからなくなっている。

 

「調べてみる価値はありそうね」

 

いないと思っていた部屋の中から突然現れる。そんなこと、ワープでもしないかぎり不可能だ。だからといって、彼にワープ能力まであるとは思えない。ただでさえ、ユニークスキルを持っているだけで、彼は私と同じくチートなのだ。もっとチートだというのだろうか?いずれにせよ、これは先が楽しみだ。アルゴほどではないが、私も情報収集は得意だ。あらゆる、PKをするために備わった能力をこんなところで応用できるかもしれないなんて思ってもなかった♪

 

私は鼻歌を口ずさみながら、闇の中へと舞い戻っていった。

 

でもね、まだわかってなかったの。

この興奮が、自分の、彼の、そしてすべてのプレイヤーの運命すら変えてしまうことになるなんてね。ま、分からないからこそ楽しいんだけど……

 




彼女が語り手で三章はおしまいです。

次章は事態が大きく動きます。

シリアスの前に一本閑話をいれようかな……

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