SAO『罪と罰』 〜何故彼は力を手にしながら表舞台に現れないのか?〜   作:トアール凡人

39 / 58
Fourth section〜狙われたものたち〜

 

時々、街中を歩いていると、通行人の誰もが振り返ってしまうような美人がいたりする。俺も、思わず見てしまう経験はある。でも、ほとんどは自分の手の届かないような、雲の上の存在であるから、結局はそれっきりなわけになるわけだ。

そういえば、俺の妹も考えると童顔のわりに結構な美少女だった。そういえば、一緒に道を歩いていれば、道行く男の注目の的だったなぁ。でも、一件以来妹とはうまく話せなくなってしまった。リズから聞いた話だと、この前にアスナとともにもう一人の少女とお茶をしたらしい。その少女は俺も一度だけ見たことはある。たしか、席を立とうとして転んでしまった少女だった。よくよく考えればなんとなく妹に似ていた気がする。今頃あいつはどうしているのだろう。剣道を今でも続けているのだろう。もしも、この世界を終えたらちゃんと話をしたいものだ。

さて、今日も俺は道を歩いていると、何やら周りが騒がしい。すると、目の前に現れたのはまごうことなき美人だったのだ。一つだけ違うとしたら、それさ俺の知り合いであるということかもしれない。彼女は周りのざわめきに耳を傾けず、何やら深刻そうな顔をしていて、さすがの俺も話しかけざるを得なくなった。

 

「アスナ、どうしたんだ」

 

「キリトくん……」

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「怪事件?」

 

「そうなのよ」

 

俺はアスナから奇妙な事件の話を聞いていた。

事件の概要はこうだ。

最近、立て続けにプレイヤーが何者かに襲われる事件が発生。犯人は黒いフードをかぶっていたことだけが分かっている。襲われたプレイヤーは幸いにも殺されるには至らず、気絶させられるにとどまっているらしい。

 

「で?何人犠牲になってるんだ」

 

「もうこれで10人になるわ」

 

「そんなにか?」

 

アスナはストレージから何かメモを取り出して俺に見せてきた。

 

 

ーー報告書(KoB作成〕ーーーーーーー

 

1、事件の概要

(略)

2、被害者

クリス

『天の海』副長

 

ヒルダ

『イカロス団』リーダー

 

イリア

『碧楼』幹部

 

エリス

『聖霊騎士団』副代表

 

フローラ

『ドラゴン•ハンターズ』、『フローラ 武道具店』店主

 

オリビア

はじまりの街で『食料調達組』代表

 

ふうか

『アインクラッド解放軍』25番部隊 副隊長

ケイト

元『ブラット•ナイツ』副代表、『アインクラッド解放軍』所属

 

オルガ

『テミストクレス・イポテス』副長

 

ビアンカ

第26層で『ティエール•レストラン』経営

 

3、・・・・・・・・・・・

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「被害者が全員女性なのか」

 

「ええ、それに何かしらの肩書きをもっている人ばかりなのよ」

 

女性を狙って、そこそこの地位を得ている人を中心に行ってるのか。

アスナは眉間にしわを寄せて悔しそうな顔をしていた。

 

「もしも、犯人が男だとしたら卑劣だわ……」

 

それは同じ女性が絡んでいることからの同情とやり切れなさからだろう。

 

「今のところは死者はでていないみたいだけど、もっと凶悪なものになる前に、対処したほうがいいかもな」

 

アスナは、残念そうに首を振った。

 

「私もそう思ったけれど、ダメだった。血盟騎士団の方針として、単なる愉快犯に過ぎないから、干渉はしないそうよ」

 

俺は耳を疑った。どうして、そんなに悠長なんだ。

 

「団長の鶴の一声で決まったわ。攻略に専念すべきだって」

 

「さすが、あの団長様だ。お厳しい限りで」

 

するとアスナは食い入るように俺を見た。

 

「でも、私はイヤよ。私だけでもこの犯人を追うわ」

 

アスナの目はまさに正義感をひしひしと感じるような率直さがあった。なんか、変わったな。この前の圏内事件以来、アスナは攻略の鬼というよりも、純粋にこの世界のことを気にかけるようになった。自分よりも立場が弱い人のことをちゃんと頭にいれてるってところだ。力を持ちすぎると忘れてしまいそうになるような観念を彼女はしっかり意識している。いいリーダーの素質があるんだなぁと俺は思っている。

だとするとだ、それを分かっている俺がこの少女に協力しないわけにはいけないだろう。

 

「アスナ、俺も手伝うよ」

 

すると、アスナはキョトンとした顔をした。おいおい、なんだよその顔は。

せっかくうまい流れでもっていこうとしたのに。

 

「いいの?私の勝手なワガママよ。……ただ自分の感情が抑えきれないだけなのに……」

 

「じゃあこうすればいい。俺の勝手なワガママでキミを手伝う、それなら問題ないだろう?」

 

それを聞くとアスナは納得したようにクスっと笑った。

 

「ふふふ、じゃあお願いします」

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

その日は夜遅くまで酒場にいたんです。

ちょうどギルド結成から1年の記念日だったんです。みんなでその日は今までの思い出を語らいながら楽しんでいました。私もギルドの副リーダーとして、ひしひしと感じるものがありました。夕方からはじまった宴会は時の流れを忘れさせるほどであっという間に遅い時間になってしまいました。私がギルドのメンバーと別れたのは夜の11時頃だったと思います。

 

「じゃあ、また明日」

 

「おう!夜道は気をつけろよ、イリカ!」

 

ええ、リーダーはそう心配してくれていたのですが、主街区はアンチクリミナルエリア(犯罪防止地区)ですからね。私はあんまり警戒していませんでした。ところが、主街区でも脇道に入ってからでした。突然目の前に黒のフードを被ったプレイヤーが現れたんです。

 

「…………」

 

私は警戒しました。身体がぐっと強張ったんです。何か危ない気がする、そんな気がしました。

すると、相手は鈍器のようなものだったのでしょうね、それを私にふりかざしたんです。一発目はなんとかかわすことができました。しかし、その時に倒れこんでしまって、あわてて剣を抜いたんです。でも目の前には姿がありませんでした。きっと後ろに回りこまれていたんでしょうね。ドスッという音が頭に響きました。それで気絶してしまったんです。不思議ですよね、圏内でそんなことになるなんて。目が覚めた時には、青ざめた様子のギルドのメンバーが私を心配そうに囲んでいました。腕には自信があったんですが、相手の方が一枚上手だったみたいです。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

新たな被害者から事情を聞き終えた俺たちは、彼女を見送り、ため息をついた。

 

「これで11人目……しかも、圏内では初めてよ」

 

「すぐにアルゴに知らせるとして、ますます厄介だな」

 

「ええ、圏内事件とはまた違った、圏内での犯罪……」

 

もしかすると、ラフコフも一枚かんでいるのではないかと思ったが、奴らは基本的にPKしかやらない。とすると、犯人はまた別なのか……

 

「いずれにせよ、ヤツにも教えた方がいいかもな」

 

アスナは少しひきつったような顔をしたが、仕方がないとあきらめ顔だった。

 

「そうね、あの男もこうゆうときにはさすがに協力すると思うけれど……」

 

アスナ様はイマイチ乗りが悪かった。

《仮面》が追っているのは、あくまでもラフコフだから、今回の件をみるに、あまり関連性はない以上、交渉は難航するかもしれない。

 

「別にいいぞ」

 

即答かよ!!

呼び出された彼はすぐにOKをだした。

ちなみに、今日は彼と一緒に女の仮面も一緒だった。

アスナも思わず唖然としていた。

 

「本当にいいの?あまり、ラフコフと関係があるとは思えないのに」

 

「女性ばかりが狙われている事件なんだろう?あんただって、許せないんだろう。だったら協力しない理由はない」

なんと、義理堅いヤツなのだろう。俺は感動した。その後の言葉を聞くまでは。

 

「まあ〜このことで、副団長さんに貸しを作れるんだったら、こんなにいいことはない。あはははは〜」

 

ドスッ!!

 

「イタイイタイ!!シリ……S!なんで足を踏むんだよ」

 

Sさんは、アスナを代弁する形で男に制裁を与えていた。

 

「……最低です」

 

「じょ、冗談だから……」

 

思うのだが、この男はSさんに頭が上がらないのではないだろうか。うーん、いったいどういう関係なのだろう。

すると、アスナがニコニコしながらSに話しかけた。

 

「Sさんといったかしら?」

 

「は、はい!!」

 

「ありがとうね♫」

 

よかったな、仮面。さらなる災厄は免れたみたいだ。

 

「えー、まぁ、とりあえず、俺たちも調査はするから、何かあったら伝えてくれ」

 

そう言い残して仮面たちはその場を後にした。

だが、その夜にさらなる被害者が同時に二人も出た。しかもそのうちの一人は……

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。